境界線上の竜鎧   作:黒河白木

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2話 RUN Ⅱ

 爆音。銃撃、剣戟、破砕音に爆発音etc.etc.

 既に艦に住む者達からすれば馴染みとなっている光景、そして音だ。

 その出所は中央後艦〔奥多摩〕から届いてくる。

 音は移動を続けており、ついでにあちこちから戦塵が巻き起こっているため危険対処の物見達も観測は楽に行える。まあ、内心穏やかではないが。

 

「“後悔通り”を艦首側に行くぞォーーーー!!」

 

 声が上がったのは奥多摩右舷から。つまりは音は右舷二番艦である〔多摩〕へと向かっているのだ。

 その結果、左舷の表層住民達は万歳三唱を行ない喜びを露にし、逆に右舷の表層住民達は怨嗟の声やら恨み言やら、果てはガチめの呪いをぶちまけたりとマジでキレていた。

 だが、一部店主達はというと

 

「まあ、いつものことかね。通り道にならんことを祈るさ────なったら泣くが」

「俺達も昔は似たようなことやってたし────代々続けば名物ってものよ」

 

 そう言いながらも店主達は防備の術式やシャッターを下ろしたり、と店を閉めていく。

 だが、一件だけなんの反応を示さない店があった。

 “青雷亭”というパン屋と軽食屋を兼任している店だ。

 いや別に、客が居るわけでもない。現に店主は配達に行っており店の中に居るのは道に対して横向きになったカウンターに収まる一人のみ。

 

「………………」

 

 彼女は自動人形。名前をP-01sという。一年ほど前にこの青雷亭の前で店主に拾われ以来ここで朝のバイトを行っていた。

 振動は徐々に近付いてくる。

 

 

 ■◇◇■◇◇■◇◇■

 

 

 右舷二番艦〔多摩〕はその表層部に石造りの町並みと公園を有しており、立看板には他国言語も併記しており観光町という側面も持つ。

 そんな屋根の上を駆ける一人の女性。その背後からは多数の光弾が雨霰のごとく降り注いでいる。

 

「ハッハッハ!よぉしいいぞ貴様ら!もっともっと金を使えェ!」

 

 自身の前に無数に現れた契約申請の表示を一纏めに合掌で挟んでお辞儀をするシロジロ。彼の顔は頗る輝いていた。流石金の亡者である。

 

「契約成立ぅー!ありがとう御座いましたぁー!」

「受け取れ!商品だァーーー!!!」

 

 ハイディが承認の声をあげ、シロジロが両手を空へと振り上げる。

 浮かび上がる多数の式達。その後ろにつけるのは箒に乗った二人組。

 

「商品ありがとー!」

「いくよ、マルゴット」

 

 股がる箒の柄にマルゴットが弾丸となる媒体をセット、その前に柄に対してマルガが一本の線を引いた。

 これで術式の準備は整った。

 

「いっけぇ!」

 

 マルゴットが柄を叩けば媒体は柄を発射台として射出される。その先には先程シロジロから買った術式が浮かんでおりそこを通過すると多数の光弾として対象へと降り注ぐのだ。

 

「どう?マルゴット、いけそう?」

「うーん、ちょっと厳しいけど崩せそう!」

 

 光弾の当たるもののみを選別して背の長剣を使って捌いていくオリオトライにとにかくマルゴットは空襲を続けていく。

 これは布石だ。倒せれば儲けもの。倒せなくとも姿勢が崩せればそれで良いのだ。

 

「あーら、アデーレ。貴女が一番?」

「自分、脚力自慢の従士ですんで!」

 

 最初に追い付いたのは武骨な具足を身につけたら先端を潰した身の丈を越える突撃槍を持つ金髪眼鏡の少女だ。

 彼女は足元に加速術式を起動させ、本の少しだけ速度の落ちたオリオトライへと肉薄していく。

 

「従士、アデーレ・バルフェット!一番槍、お相手願います!」

 

 突撃槍の強みはやはりその刺突だろう。槍を構えた右腕を引き、加速と合わせた渾身の一突きを繰り出した。

 槍との戦闘で左右に逃げるのは悪手だ。反復横跳び等を見れば分かるが左右移動は逆方向へ移動する際に慣性を打ち消すためにエネルギーが完全にゼロに成るタイミングがあるためだ。

 そこを横薙ぎに狙われれば骨を砕かれる。

 それは突撃槍でも変わらない。故にオリオトライは前に出た。

 背負い直した長剣の金属製の柄を用いて槍を受け流し回転しながら槍の側面を滑るようにアデーレの懐へと入り込む。

 

「ヨォイショオ!」

「ふぇえええ!?」

「カレー!いかがでゲフォ!?」

 

 伸びきった腕を掴んで前へと進みながら回転。ターバンを頭に巻き、カレーの大皿を頭上に掲げた少年へと振り抜くことでその腹部に重撃を見舞う。

 少年はカレーを死守しながら町並みの向こうへと落ちていき、振り回されたアデーレも目を回してふらふらしている。

 

「ご、ごめんなさい~~~」

「せぇっのっ!ホームランッ!」

「あいたぁ!?」

 

 リアルアマゾネスのケツバットを受けたアデーレはキレイな弧を描いて飛んでいってしまった。

 それを見送りオリオトライは口を開き

 

「ほら!アデーレとハッサンがリタイアしたわよ!」

「っ!イトケン君!ネンジ君と一緒に救護を頼むよ!」

 

 街道を駆ける一団の中から眼鏡の少年が叫び呼応するように二つの影が飛び出す。

 全裸のムキムキな男。その背には黒翼を背負っており、彼は精霊系夢魔族のインキュバスだ。ツルリと光る禿頭の彼はハッサンを回収して片手を挙げた。

 

「おはようございます!怪しい者ではございません!淫靡な精霊、インキュバスの伊藤・健児と申します!」

 

 見た目にそぐわぬ言動に一瞬先を行く面々が半目を向けたが彼は動じない。

 そして更に彼に負けず劣らずの色物が現れた。

 端的に言って薄い朱色のスライム。眉目を示す黒い感覚器を備えた彼?の名はネンジ。一メートル程のスライムだ。

 

「アデーレ殿!今助け…………!?」

 

 ネンジ、無惨。後ろから来ていた喜美が彼を踏み潰してしまったのだ。

 仮にネンジスライムでなければものスッゴいグロいことになっていただろう。

 

「フフッ、ご免ねネンジ~!悪いと思ってるわ!本気よ!私はいつだって本気なのよ!!」

「ちょっと、喜美!」

 

 あらあらうふふ、と笑う喜美に下から叱責が飛ぶ。

 そこにいたのは街道を疾走するデカイ縦ロールを5つも付けた少女だった。

 

「喜美、貴女、謝るときはもっと誠意を込めなさいよ!淑女として────」

「なによ、この妖怪説教女め!しっかしミトツダイラ、アンタ何で地べた走ってんの?いつもみたいに鎖でドカンとやれば良いじゃない」

「なっ!?ここら辺は私が治める一帯なんですのよ!…………それを貴女達は……!」

「あらあら、先生に勝てない女騎士が狼みたいに吠えてるわ。恐ろしいから嵐のおバカに守ってもらわなくっちゃ♪」

 

 喜美が振り返りついでにミトツダイラも振り返ればそこにはまだ距離があるものの、そろそろ追い付きそうな白黒頭が見えていた。

 

「やっぱり速いね。さって、そろそろネンジ君大丈夫かい?」

『うむ、再生も完了した。ガードの体勢をとっていたのが幸いしたな』

「ガード?」

『こうして、な』

 

 救護者の二人を側に置いたイトケンとネンジの二人は少しの雑談に興じる。

 すると、連なる屋根の一角で盛大な破砕音が響き渡った。

 どうやら先行組の誰かが仕掛けたらしい。

 

 

 ■◇◇■◇◇■◇◇■

 

 

 近接攻撃系の面々は漸くオリオトライの背を捉えていた。

 その中で最初に接敵したのは忍者としてスペックの高い点蔵だ。

 

「ここで来るのは君だと思ってたわ!」

「Jud.!お相手お願いするで御座る!」

 

 この一帯は屋根の斜面が少し急になっており、更に左右の壁が高いためその方向への回避という選択肢を狭めることが出来る。

 オリオトライはその屋根を一直線に進んでいる。途中の煙突やその他の障害物や屋根と屋根の間にある隙間も彼女の速度を落とすには至らない。

 後を追う生徒達はそれらに阻まれて思うように速度を出せない。

 そんな彼らの中で唯一、悪路走行に慣れている点蔵が前に出るのは自然なことだ。

 とはいえ、点蔵は思う。もし、嵐がなんの枷もなければ一番槍からずっと、それこそゴールまで先生についていただろう、と。

 そこで思考を打ち切り彼は前を向く。何故なら、今、この場で最も動けて尚且つオリオトライに接敵できるのは自分なのだから。

 故に宣言した。

 

「戦種、近接忍術師、点蔵────」

「忍者が叫んで良いのかしら?!」

 

 問題ない。何せこれは

 

「参る!」

 

 布石なのだから。

 叫び、点蔵は速度を上げた。前方を走るオリオトライとの距離は目算で凡そ15メートル。

 その距離を点蔵は殆ど倒れるような前傾姿勢で駆け抜ける。前に上体を倒すことで自然と踏ん張ろうと足が出る。その足を蹴り足として加速を得ているのだ。

 更にこの近づき方には別の側面もあった。

 オリオトライの得物は長剣だ。走りながら振り向いて振るうには向かない武器と言える。そして長物は、そのリーチからか下段への攻撃が難しい。剣の軌道は円軌道だ。低い位置には当たりづらい。もし、当てようとするならば、足を止めて姿勢を少々落とさなければならない。そんな体勢では走れない。

 点蔵は蛇のごとく下からを心掛けた接近を試みて──────思った以上に突っ込めていなかった。

 

「……くっ…………!」

「ほらほら、来ないの?だったら置いていくわよ!」

 

 既にオリオトライが合わせを行っているからだ。仮に突っ込めば上段からハンマーのごとき一撃を叩き込まれ、反動と強く踏みしめた右足による大跳躍で逃げられる。

 だが、体勢的に既に突っ込み始めている点蔵に止まる選択肢は取れない。不用意に止まれば長剣に大の字で熨されるか更に酷ければ屋根突き破ってこの建物の一階で熱いベーゼをかますことになってしまう。

 瞬間、長剣は彼の予想通りの軌道にのり射出された。

 だから、点蔵は叫んだ。

 

「行くで御座るよウッキー殿!」

「応…………!」

 

 応えるのはオリオトライの頭上。太陽を背に空中からの強襲をかます半竜のウルキアガだった。

 その姿を視認し、オリオトライは感心の声を上げた。

 

「へぇ……!」

 

 そして、先程の点蔵の宣言も側面の建物の屋根を走るウルキアガに気付かせないための動きということにも気付く。

 彼女からすれば小細工だ。

 だが、同時に思う。その積み重ねが大切なのだと。敵わない強敵相手には策を弄して搦め手を使うことが慣用だと。

 さらにちょっとの小細工ではどうにもならない相手がいるということを教師として教えねばならない。

 

「────!」

 

 オリオトライが動く。

 その動きを一瞬の世界でウルキアガは見ていた。

 彼は航空系の半竜だ。短距離の飛行や加速を行える。

 それを利用した視覚害からのパワーダイブだ。

 

「腰のは使わないのかしら!」

「異端審問官である拙僧は異端ではない者には振るうものを持ってはいない!!」

 

 ウルキアガは宣言し加速した。突き出す外殻に包まれた両腕に自然と力がこもっていく。

 

「神道奏者は殴るに能わず!故に拙僧、私的に打撃を差し上げる!」

「無理だわ、それ!」

 

 瞬間、ウルキアガの視界が勢いよく下へと向けられる。

 向いた本人は何故こうなったか分からないが、点蔵は見ていた。

 なんと、オリオトライは振り抜いていた右手の長剣の鞘を一時的に解放し瞬間的に射程を伸ばしたのだ。鞘が刀身をレールに進んだ分、リーチは伸びる。そして鞘尻が突撃してきたウルキアガの脳天を捉えて彼を屋根へと叩き落としていた。

 オリオトライは背負い紐を口でくわえて引っ張り鞘を元に戻し、流れのまま点蔵へと打ち下ろす。

 彼はそれを見ながら、自身の得物である短刀を腰から引き抜き、右手に逆手、左手を添えるように順手に構える。

 直後、甲高い音をたてて両者がぶつかった。

 そこでオリオトライは、おや?と思う。

 長剣が跳ねてかえって来ないのだ。

 原因は点蔵。彼が全身をクッションの変わりとして衝撃を全て落としたからだ。

 これによりオリオトライの動きは一瞬ながら止まる。そこで彼女は気付いた。

 

「ノリキが本命ってこと!?」

「分かってるなら……言わなくて、いい!」

 

 点蔵の背後より彼の忍術で隠れていたノリキと呼ばれた少年が、ボクシングで言うピーカブースタイルのまま突撃、若干右拳を引き左肩が前に出ていた。

 オリオトライには分かる。ノリキの武器は己の拳。そこに術式をかけることで威力を上げている。

 二段構えの策だった。この光景に長剣を止めていた点蔵は、とった!と思った程だ。

 しかし、リアルアマゾネスは甘くない。

 突如として点蔵は手応えの無さを感じた。慌てて見上げれば彼の短刀を支点としてシーソーのごとく下りていた切っ先が跳ね上がっていたのだ。

 鞘尻の狙う先はノリキだ。

 

「くっ…………!」

 

 彼の拳が射出されて甲高い金属音が響く。

 オリオトライは自身の武器を態と手放した。それにより身軽になった彼女は右足を踏みしめて大跳躍による宙返り。ついでに飛んでいた長剣を回収して駆けていってしまう。

 腰を落とした点蔵、拳を振り抜いたノリキ、撃墜されたウルキアガの3人はそれを見送るしかできない。

 しかし、まだ策は残っている。

 

「浅間殿ーーーー!!!」

 

 それに呼応するように少女は動いていた。自身の武装である弓を取り出して構えると先程の眼鏡の少年が指示を飛ばす。

 

「ペルソナ君!足場になって!」

 

 呼ばれた頭に甲冑を被った上半身裸の大柄な男は右手を地面と平行になるように手のひらを空へと向けて駆け寄っていく。

 それを確認し浅間はその上へと飛び乗る。彼女の背に支えるように左手が添えられた。

 

「いきます!地脈接続!」

 

 左目の義眼でオリオトライを捉えて息を1つついた。

 内心ではリアルアマゾネス等と呼ばれているオリオトライに戦慄を隠せない。今も内心では思ったことを読み取ったかのように彼女は浅間をチラリ、と見ていた。

 

「すぅーーーー…………いきます!うちの神社経由で神奏術の術式を使用しますよ!」

 

 宣言に呼応するように彼女の制服の襟元が開くと僅かな光を帯びた二等親の少女が現れた。

 

「浅間の神音借りを代演奉納で用います!ハナミ、射撃物の停滞と外逸と障害の三種祓いに照準添付の合計四術式を通神祈願でお願い!」

『神音術式だから代演四ついける?』

「代演として二代演として昼食と夕食に五穀を奉納!一代演として二時間の神楽舞い!一代演として二時間ハナミとお散歩+お話を嵐君と行います!これで合計四代演!ハナミ、OKだったら加護頂戴」

 

 うんうんと首肯くハナミ。ッとそこで通神が新たに開かれた。

 

『おい!智!また俺を代演に使ったな!?』

『あー、らんー久しぶり~』

『おう、ハナミか!久しぶりだな、て違う!智!聞いてんのか!』

 

 ギャーギャー喚く嵐を無視して浅間はハナミへと目を向けた。彼が代演に巻き込まれるのはいつものことなのだ。

 

『うんうん、許可出たよ。拍手』

 

 パンッ、とハナミが手を打ち合わせれば浅間の弓につがえた矢に光が灯りそれが四段階で光を強める。

 それと同時にオリオトライを捉えるように鳥居型の照準が出現して浅間の義眼と同期した。

 

「義眼“木葉”、会いました!」

 

 同時に近接を仕掛けた3人もその場から離れていく。

 時は来た。

 

「行って!」

 

 射出される矢は空を裂き、通りを越えるために大跳躍により空中で回避行動の取れないオリオトライへと迫る。

 そこで彼女は背の長剣を抜こうとしていた。しかし、と浅間は思う。

 

「追尾だけじゃありません!障害祓いの回避性能も添付してるから回り込みます!」

 

 縦一閃に振り抜かれた長剣は空を切り、矢は直進から回り込むような横殴りの軌跡を描いて飛んでいた。

 そこで剣を引戻し盾としたオリオトライ。

 音が響き、光が炸裂する。

 だが、歓喜を上げる回りに対して矢を放った浅間は目を見開いて困惑の声をこぼす。

 

「あれを躱したっていうんですか!?」

 

 光が収まれば汚れ1つないオリオトライ。剣を鞘に収めると再び駆け出した。

 

「…………食後のアイスが……!」

 

 彼女の悲観の声を聞くのは足場となった彼のみだ。

 その隣を一陣の風が抜けていく。

 

 

 ■◇◇◇■◇◇◇■

 

 

「鈴、大丈夫か?」

「う、うん、だ、だいじょ、うぶ」

「そうか。ちょいと揺れるけど踏ん張ってくれ!」

 

 梅組の他の面々同様に屋根の上を駆ける嵐。彼の走りは走っている、というよりは跳んでいるといった方がいいかもしれない。

 一足で五メートル。視界の景色はグングン後ろへと流れていっている。

 既に彼はイトケンや浅間達を抜き去っていた。

 

「嵐、く、ん、も、もうすぐ、し、品川」

「オーライ。丁度見えたぜ。鈴、カバー頼むぞ」

 

 一度、通りへと降り立った嵐はより一層足に力を込めて跳んだ。

 垂直ではなく水平に対しての跳躍。途中、途中で地面を蹴ることで更に加速、視界に収めた軽装甲ジャージへと近づいていく。

 

「ら、嵐、くん、あ、あれ、!」

「ん?げっ……」

 

 鈴に示された先に居たのは金翼と黒翼の二人組。

 彼女達はオリオトライの上空をとっていた。

 

「マルゴット行くわよ!」

「はいはいガっちゃん急ぐと危ないよー」

 

 箒にまたがる二人は手を繋いでそこから飛び降りる。

 そこで二人は翼を開いた。翼は風を受け止めると二人を空へと滞空させる。

 

「行くわよ…………遠隔魔術師の白と黒!」

「堕天と墜天のアンサンブル!」

 

 二人は抱き合い、飛んだ。翼により押し出された風が暴風のように吹き抜ける。

 

「術式主体の連中が追い付いたってわけ?それで皆の術式展開の時間稼ぎに二人が来たわけだ」

「そういうこと、授業中だから黒嬢も白嬢も使わないでおいてたげる!」

 

 マルゴットが箒を構えて術式を展開、その補足やらをナルゼが術式を展開して箒へとぶちこんでいく。

 

「良いわよマルゴット!」

「狙い撃つよガっちゃん!Herrlich!!!」

 

 放たれる砲撃。だが、先程の浅間の一射に比べれば凌ぐのは遥かに楽だ。

 何せ向こうはこちらの攻撃を回避して追尾してくるのだから。直進しかしてこないなら躱すだけで良い。

 現にオリオトライは跳んで躱し、背後の連結縄に砲撃はぶつかり爆煙を上げていた。

 

「残念!足止めの前に全滅しちゃうかもよ!」

「そいつはどうかな!」

「!?」

 

 爆煙を突っ切りもうスピードで現れた嵐が勢いそのままに飛び蹴りをかます。

 反射的にガードしたオリオトライは靴底を磨り減らして止まる。

 顔をあげればそこには既に学生のズボンに包まれた足が迫っていた。

 

「容赦ないわね!」

「当然!五点とって楽をするためさ!」

 

 前に体を流しながらの飛び回し蹴りはオリオトライがしゃがむことで空を切る。その蹴りの風圧が威力を物語っていることだろう。

 そしてここで、始めてオリオトライの足が明確に止まった。


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