常識外れの最強種族 〜俺が始めた異世界歴史〜   作:リブラプカ

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第6話 ドラゴンヴァンパイアと初めての獣人達

第6話 ドラゴンヴァンパイアと初めての獣人達

 

 

 

 森に入り血痕を追う俺はどんどん森を進んでいく。 血痕は地面に落ちていることもあれば生えてる草や枝葉に付いてたりで探すのが面倒な場面もあるが、定期的にあるので何とか追えている。

 ……しかし、それも終わりがやってきた。

 俺が追っていた血痕が進行方向にないのだ。

 最初は何処かで見逃したのかと最後に血痕を見たところまで戻って周辺を隈無く探してみたのだが、見つからない。

 ここまで来て事件のたった一つの道筋が消えてしまったのだ。

 

「ここで血を流していた存在が跡になってるのに気が付いて治療でもしたのか? ……うむぅ、どうしたものか」

 

 俺はしばらく最後の血痕が落ちていた場所で下を向いて考える。

 

「しょうがないな」

 

 結局、俺は幾つかの血痕が落ちている跡から進行方向だと思われる方向に真っ直ぐ進む事に決めた。

 再び無言でひたすら森の中をどんどん歩いて進んでいく。

 今度は道標となる物が無いので先程より少しだけ慎重に進む事になった。

 ……もしかしたら途中で血痕が見つかるかも……という淡い期待を胸に抱きながら進んでいくが、まったく血痕は見つからない。

 

 それから数十分くらい森の中をただ真っ直ぐに進んでいた頃、森の奥木々の隙間から光が漏れているのが見えた。

 

「なんだ? また開けた場所にでも出るのか?」

 

 俺はその木々の隙間から見えた光に向かって進み続けて木々の間を抜ける。

 すると木々を抜けた俺の目に予想外の光景が飛び込んできた。

 なんとそこで森は終わっていたのだ。 俺は森を抜けてしまった。

 そして今、俺の目前には何処までも続いている大平原が広がっていた。

 その大平原は見渡す限り続いていて俺の強化された視力でも終わりが見えない。

 

「スゲェ……こんな広い場所、見た事無いかも」

 

 俺が目を見開いて驚きながらその大平原を眺めていると、遥か彼方に黒い点々が見えた。

 その黒い点々は幾つもあり、よく見てみると少しずつだが動いているように見える。

 

「もしかして……生きている? 生き物か!?」

 

 その僅かに動いている黒い点々が生き物だと考えた俺はその生き物に、もしかしたらあの血痕の落とし主が居るかもしれない……あの村の謎がわかるかもと思った。

 そう思った俺はすぐさま自らの翼を羽ばたかせ空へと飛び出し、上空からあの黒い点々を追いかける。

 それなりに速く飛んだ俺はすぐに黒い点々が人影に変わるのが見えた。

 しかし、その人影達が少しおかしい形をしているのに気が付く。

 

「……もしかして、もしかしちゃう!?」

 

 俺はその人影達がもしかして自分が探しにこの大陸にまできた目的なのではないかと思った。

 すぐに速度を上げてその人影達に追いついた俺はその人影達が2つの集団に分かれている事がわかる。

 片方が森とは逆方向に逃げる集団……もう片方がそれを追いかける集団。

 俺はその逃げる集団を追いかける集団の姿を上空から確認した。

 顔は茶色の鬣に覆われており頭部の方には丸い耳が2つ生えていて全身が毛深い……その姿は人間とは違う、まさに獣人である! しかも、獅子! ライオンだ!

 

「獣人キターーーーー!!」

 

 思わず声を上げてしまったが、それなりに高い場所なので下の獣人達には気付かれていない。

 ……とりあえず、あのライオン獣人達は獅子族と名付けよう。

 そして獅子族に追いかけられている者たちも獣人なのだろうか?

 俺はすぐに追いかけられ逃げている者たちの姿を確認する。

 追いかけられ逃げている者たちは皆、同じような姿で全身から白い毛を生やし頭部に長い耳が2つ生えている……こいつらは兎! 兎獣人! 兎族と名付けよう。

 

「いや~良かった。 この新大陸に辿り着いて数日と経たずに目的の獣人を発見するなんて運が良いな!」

 

 ……というかこれはどういう状況なのだろうか?

 何故、獅子族は兎族をあんなに追いかけているのだ?

 ……そういえば、獣人発見の喜びで少しだけ忘れていたが、あの村の謎も俺は探しに来たんだった。

 と、いう訳で獣人とのファーストコンタクトは後に回してもっとよくあの2つの集団を上空から観察する事にする。

 まずは、兎族を追いかけている獅子族の方を観察する為によく見る。

 ……どうやらあの獅子族の集団は全員が全員手に石槍を持っている……物騒だな。

 そして大事なことだが、あの獅子族集団は全員が男なのだ! ……なんだよ、女の獅子族も確認したかったのに。

 

 次に石槍を持った男だけの獅子族に追いかけられて逃げている兎族の方を観察する。

 ……こちらは獅子族とは違い武器も何も持たず着の身着のままで逃げているって感じ。

 そして兎族の集団には男だけではなく女や子供、更には老人まで混ざっている。

 兎族の集団の数は追いかける獅子族よりもはるかに多く40人は居るのではないだろうか。 その中には怪我をしている者も居るようだ。

 

……いや、もう分かったわ。 流石に分かるわ! 名探偵でも何でもない俺でもこんなに状況証拠が揃えば分かるっての!

 獅子族が兎族を襲っているのは一目瞭然……鬼ごっこをしている訳ではない。

 俺の推理ではあの村人のまったく居ない村は兎族の村で多分隠れてたんだと思われる。

 なぜ、あの村が獅子族の物ではなく兎族の物かってのは見ればわかる。

 獅子族は武装して男しか集団に居ない。 それに比べて兎族の集団は女も子供も老人も居て如何にも村全体で逃げてますって感じだ。

 つまり隠れて暮らしていた兎族の村を獅子族の誰かが発見した。

 それに気が付いた兎族は村を捨てて逃げるも獅子族に追いかけられてここまで来ていると。

 

 ……普通に見れば何もしてない兎族を獅子族が襲っているように見えるが、もしかしたら過去に兎族が獅子族に何かをしてしまったのかもしれないし俺にはわからない。

 このまま見ていれば兎族を獅子族が虐殺するのが目にみえている。

 まぁ正直今の俺に善悪なんて理解できないし、判断もしない。

 

 ――だから俺が判断するのは俺に対して敵対するか友好的になるかだ。

 

 俺は獣人たちとファーストコンタクトをとることにした。

 すぐさま俺は魔圧を2割程身体から放出して兎族の集団と獅子族の集団との間に飛び込んだ。

 すぐに魔圧の所為で何かが来るとわかったのだろう。 兎族は皆、震えて尻餅をついて俺を見ている者も居れば側の仲間に抱きついている者も居る。

 獅子族は皆、顔を強張らせ俺を見て身体を震わせてはいるが、何とかその足で立っている。

 騒がしかった状況が一気に止まり静かになり、俺以外の誰もが緊張しているのが伝わってくる。

 

 ……とりあえず、俺はまずは挨拶しておこうと口を開いた。

 

「こんにちはー。 ……いや、今はこんばんは、かな?」

 

 間違いなく通じていないであろうその言葉を聞いた者達は皆一様にビクリと身体を更に震わせた。

 さて、飛び込んで挨拶してみたもののこれからどうしようか?

 そう俺が考えていると獅子族の先頭に立って震えている男が垂れ下がった右手で持っている槍をなんとか構えようとしている。

 俺はその獅子族の男をじっとみつめた。 するとその男と目が合う。 その獅子族の男は俺と目が合った途端に構えようとしていた槍を手放し地に落とした。

 先頭に立つ獅子族の男が石槍を落としたことに後ろの獅子族の男達は驚いた表情を浮かべる。

 その中の1人の獅子族の男が震える身体を動かし先頭の獅子族と何かを言い合うとその獅子族の男は石槍を構えて俺に突撃してきた。

 

「huddddddddddddddddddd!!」

「何言ってるか分かんないけど」

 

 突撃してきた獅子族の男の石槍を避けもせずに俺は受ける。

 当然石槍など俺の身体には刺さらず止まり、俺はそれを見届けるとニコリと笑顔を見せて右手でその獅子族の男の頭を握り……潰した。

 

 ――敵対するんなら殺すよ?

 

 獅子族の男の頭が砕け、弾けた肉が俺と獅子族の男達との間に飛び散る。

 

「あ、そうだ。 今が血液補給のチャンスじゃん」

 

 ついでとばかりに俺は頭の潰れた獅子族の身体から血を根こそぎ血魔法で吸い出す。

 その獅子族の身体はすぐに全身の残った血という血をすべて吸い出され干上がった。

 

「ghyasubshajabhshshsha!!」

 

 それが契機となったのか、獅子族の先頭に立っていた男が声を上げて逃げ始め、それにつられるように殆どの獅子族の男達は俺に背を向けて逃げ始めた。

 逃げる奴らはわざわざ追いかけて殺す必要もないだろうと考えた俺は新しく手に入れた獣人の血の味を試し飲みする。

 

「ぺろっ……うぉ!? 今までで一番美味しい……かも?」

 

 そんな感想を漏らしながら横目で残った獅子族の男達を見ると、やはり身体を震わせながら……それでも何とか石槍を構えている。

 

「さて……次は君たちの番だ。 遊んであげてもいいけど、そんな事……まさか望んではいないよね?」

 

 まず一番近い獅子族の男の所までゆっくりと歩いて近付いた。

 俺が石槍に当たる距離まで近付いてもその獅子族の男はより一層、身体を震わせるだけで攻撃してこない。

 ……どうやらこの獅子族は逃げたくても身体が動かず、仕方なくここに残り石槍を構えているようだ。

 

「なぁんだ。 つまらない……じゃあ終わらせようか」

 

 俺はその身体を震わせるだけで動けないでいる獅子族の男の首を手刀で切り飛ばし、血魔法で首の断面から一気に血を吸い上げてその獅子族の身体を干上がらせた。

 そして次の獅子族の男に近付いていくが、その獅子族の男も石槍を構えて震えるだけで俺に攻撃してこない。

 

 ……まさか、ここに残った奴らは全員同じ状態なのか?

 試しに他の獅子族の男に近付くが、結果は同じで皆石槍を構えてはいるが身体を震わせるだけで攻撃してこない。

 

「なんだよ。 みんな動けないだけか……まぁでも殺すけど」

 

 だって、俺に対して武器を構えたってことは俺を攻撃しますよ、俺と敵対しますって言っているようなものでしょ?

 ……だから殺すよ。

 逃げた獅子族の男達は武器も構えてはいないし、今はこの生け贄に免じて見逃してあげよう。

 

 俺は残った獅子族の男達一人ひとりにゆっくりと歩いて近付いては首を手刀で切り飛ばして、血魔法でその身体の血液吸い上げ干上がらせた。

 

 俺の側に血魔法で吸い上げ作り出した巨大な血液の球体が出来る頃にはもう立っている獅子族の男は居らず干上がって干物のようになった身体だけが幾つも落ちている。

 

「さぁて、次は兎族のみんなだ。 随分とおとなしく待っていてくれたようだけど、どう出るかな?」

 

 そう言いながら俺は少し笑顔を見せつつ兎族の集団が居た方を振り返った。

 

「……は?」

 

 そこには俺が想像もしていなかった光景が広がっていて、俺の表情は間違いなく驚き固まっていたであろう。

 

「……いや、一体何してんのさ?」

 

 数秒間、固まっていた俺は何とか言葉を絞り出す。

 俺の間違いなく伝わっていない言葉を受けても兎族達は動きもせず……そして一部の兎族を除き ――震えてもいなかった。

 

 俺の目前には、ほぼすべての兎族達が頭を地に伏せている……俺に向けて頭を下げている光景が広がっていた……ただし、子供たちは側の親だと思われる兎族に頭を押さえられている。

 

 

 ――これが、正真正銘俺と兎族とのファーストコンタクトであり……俺と兎族達との長い永い付き合いの始まりでもあり……後に語られる神話の始まりでもあった。


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