常識外れの最強種族 〜俺が始めた異世界歴史〜   作:リブラプカ

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序章 世界に放たれた怪物
第1話 ドラゴンヴァンパイア爆誕


第1話 ドラゴンヴァンパイア爆誕

 

 

 

 うぅ……ううん。

 何だか身体がふわふわしているような?

 これって……あぁそうか。 俺は……眠っているんだ。

 長い間眠っている気がする……だからもう起きよう。

 

 俺はゆっくりと閉じていた瞼を開く。横になったまま視線だけを動かし、自分がどこで寝ているか状況を把握しようとする。

 すると俺の目に真っ白な低い段差が積み重なった階段が映り、自分がどこに寝ているのかますます分からなくなる。

 もっと辺りを見ようと視線を動かす。 低い階段の上に恐らく椅子だと思われる脚と二本の巨大な人の脚が見えた。

 一瞬俺の目がおかしいのかと思い少し気だるい身体を起こしてしっかりもう一度見ることにする。

 ……やはり俺はおかしいのだろうか?

 俺の目には巨大な椅子に見上げる程の巨大な人間……巨人が座っているように見える。

 その巨人は身体にゆったりとした布を巻きつけた姿で金色の髪を短く切り揃えていた。

 俺はその巨人を見上げて口を開けポカン……としていた。

 

 しばらくして、虚空を見ていた巨人が俺を見下ろす。

 その瞬間、とてつもないプレッシャーが俺を襲いだした。 身体が震え、脂汗が全身から滝のように流れ、視線が定まらない。

 く、苦しい……このままでは身体も心も果ててしまいそうだ!

 俺は白い床に倒れ伏した。

 

 ……どのぐらい経っただろうか? 不意にそのとてつもないプレッシャーが消えてなくなった。

 

「ッ!? ァア――はぁ……はぁ……」

 

 俺はまるでずっと息を止めていたような苦しい状態から解放され空気を思いっきり吸ってから吐いた。

 余裕の出来た俺は『そうしなければいけない』ような気がして身体を起こし再び巨人を見上げる。

 巨人と視線が合う。どうやらまだ俺を見下ろしていたようだ。

 ゆっくりとその巨人の巨大な口が開く。

 

「やっと目覚めたか。いつまで待たせるつもりなのだ……人間」

 

 意外にも巨人の口から発せられたのは渋い声の日本語だった。

 

「……どうした人間」

「ハッ! すみません……えーっと」

 

 つい驚いて思考を停止してしまった。

 何をどう言うべきだろう? ……とりあえずこの真っ白で巨大な玉座のようなこの場所のことでも聞いてみよう。

 

「あのーここは何処なのでしょうか?」

「ここは【創造の間】」

「創造の……間?」

「そうだ人間よ。創造の間とは我が普段から居るべき場」

 

あーえー……どういう事?

 

「えーっと……家みたいな?」

「……そのようなものだ」

 

 いや!? 家なのかよ!!

 で、この巨人さんは何処の誰なのか? まぁ俺の事を人間って呼んでるし少なくとも人間ではないよな。

 

「……あなたは何処の何方で?」

「我は【創造の神】」

「……もしかして神様?」

「そうだ」

 

 あ、神様でしたか……。

 

 

 

「どぇええええええええええ!!!!」

「……それはなんの儀式だ?」

 

 俺が両手で顔を押さえて驚いている様子をみて変な事を言っている。

 

「いやこれは神様だって事に驚いているんです!!」

「……そうか」

 

 そうかって……普通驚くでしょ?

 そういえば、何で俺は創造の神様が住む創造の間に居るんだろうか?

 ……うん? というか俺は……誰だ?

 

「あのー神様?」

「なんだ」

「何で俺はここに居るんでしょうか? というか俺は誰?」

「ふむ……まずお前がここ創造の間に居ることだが……それは我が呼んだからだ」

「神様が俺を?」

「そうだ。そしてお前が誰かという事はこれからの事に必要に無いものだ」

 

 必要に無いって……どういう事だ? それに俺を神様が呼んだって……なんで?

 

「どういう事でしょうか?」

「お前はこれから転生をする」

「転生……」

 

 これって……もしかして!

 

「神様……転生」

「神様転生?」

「あ、いえあのっ」

 

 初めて表情のなかった神様の顔に、少し不思議そうな表情が浮かんだ。

 

「ふむ……少し待て」

 

 そう言うと神様は数秒間瞼を閉じてから再び開く。

 

「なるほど。 お前の生きた世界にはそのようなカルチャーがあるのだな」

「……」

 

 カルチャーってなんだか変な言い方だけど、目を閉じた数秒間でどうやって調べたのか……流石は神様だ。

 でも、これが神様転生ってなら……俺は……。

 

「神様……俺は……死んだんですか?」

「一つ言うとしたらある世界のある平凡な国のある平凡な男が1人その世界から消えただけだ」

「そう……ですか」

 

 不思議と俺の心は悲しくも苦しくもなかった。 これは俺が誰だか忘れてしまったからだろうか?

 

「あの……どうして俺なんですか?」

「お前とはお前が生前の頃交わした約束がある。 お前が輪廻転生をする際に少し便宜を図る……という事だ。 だからお前を呼んだ」

 

 いやいやいや! 生前の俺ってどんな人間だったんだよ!? 神様と生きた人間が約束事をするなんて。

 

「神様転生とやらを知っているなら分かると思うが、お前はこれからどの生命より少しだけアドバンテージを得る。これをどう使うかはお前次第だ」

「はい」

「お前に図る便宜は……新しい肉体を選ぶ権利」

 

 新しい肉体を選ぶ権利? どういう事だ?

 

「どういう事ですか?」

「今のお前は魂だけの存在だ」

「俺が魂だけ?」

 

 自分の両手を見たり触ったりするが、あまり変わらない気がする。本当に魂だけなのか?

 

「だからお前のなりたい存在にしてやる。その新しい肉体を我が創造する」

「神様が俺の身体を作るって事ですか!?」

「そうだ」

「どんな存在にもなれるんですか!?」

「そうだ。その代わり転生する先については選べないがな」

 

 凄い! 凄すぎる! 転生先を選べないとしてもこれはとても大きなアドバンテージだ!

 俺の身体が自然と熱くなる。

 

「もし……もし俺が神を望めば神様になれるんですか?」

「ああ……なれる」

 

 新しい神にだって俺はなれるんだ! それなら!!

 俺に中に二つの存在が思い浮かぶ。 俺が誰だかわからない、忘れてしまったが、俺が大好きな存在は思い出せる!

 

「じゃ、じゃあ……俺は……ドラゴンとヴァンパイアになりたいです!!」

 

 そう……俺はファンタジー最強の存在。大きな翼と力強い四肢を持ったドラゴン……闇に紛れ血を司るヴァンパイアが大好きだ! 生前の俺は間違いなく憧れていたんだろう……その最強なファンタジーに。

 

「同時に二つの肉体は得られない」

「はい……だから俺はドラゴンとヴァンパイアの混ざり合った新しい種族【ドラゴンヴァンパイア】になりたいです!!」

「ふむ……まぁいいだろう」

 

 やっっったぁぁ!! 許可は得られたぞ!!

 

「それで……詳細はどうする」

「えっとえっとあのどんなドラゴンだとかヴァンパイアだとか選べるんですか!?」

「できる」

 

 Fooooooooooo!!

 

「じゃあじゃあドラゴンは光を司る最強ドラゴン【光龍王】でヴァンパイアの方は全てのヴァンパイアの祖といわれる【真祖】で! それで弱点の無い最強のドラゴンヴァンパイアにしてください!! あ、見た目とかはカッコよければ人に少し近い姿でお願いします! でもでも翼と立派な角は必ず生やしてください!! それと勿論【光龍王】の光魔法や龍魔法、ヴァンパイアの闇魔法に血魔法も使えるようにしてください」

「う、うむ」

 

 なんだか少しだけ神様が引いてる気がしたが、そんな事はどうでもいいんだぜ!!

 

「では創造する」

「お願いします!」

 

 神様は片手を伸ばし掌を上に向ける。すると神様の掌の上が輝き始める。俺の身長じゃそのぐらいしかわからないけど、今多分あそこで俺の新しい身体が出来ていってるのだろう。

 数分間神様の掌が輝き続けたあと急にその輝きは収まり、神様の掌から一つの物体が降りてくる。

 

「出来たぞ」

 

 神様が一言そう言った。 降りてきた物体は俺の目の前に浮かんでいる。

 その物体は肉体だった。白髪の長い髪をした170cmくらいの引き締まった身体。その身体は背中から一対の巨大な黄色に近い白の骨格と赤い飛膜の翼を、側頭部から1本ずつ黒い角、臀部からは白い尻尾を生やした正に最強といえる肉体。

 だた一つ……その肉体は両性だった。

 

「なんでだぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 顔立ちはとても美しく、胸は程よく膨らんでいて股には見慣れた物がぶら下がっている。

 

「お前はどうやら二つの物を混ぜるのが好ましいようだから性別も混ぜて両性具有にしてやったぞ」

「oh……」

 

 そんな事は望んでないんですけど!? 混ぜるのが好きってそういう事じゃないから!! ……しかし今更やっぱやり直してなんて神様に言えない。

 すると狼狽える俺を見て何を勘違いしたのか神様が「餞別だ」といって黒い上下の服をその身体に着せた。

 いやいやいや!? 別に裸だから恥ずかしがってる訳じゃないから!?

 

「その服は自動修復機能に自動清潔機能が付いた優れものだ」

「はぁ……」

 

 神様は何処と無く満足気な顔をしているきがする。

 

「では同化を始める」

「え? いやっちょっまっ」

 

 俺が狼狽える間に神様はどんどん事を進め俺の抵抗も虚しく俺は新しい肉体に入っていった。

 

 

 

♢♢♢

 

 

 身体に力が漲っている。さっきまでとは雲泥の差だ。 

 俺はゆっくりと瞼を開く。

 

「凄い身体だ。今ならどんな事でも出来そう……最高」

 

 ……この身体が両性じゃなければなぁ。ま、まぁ完全に女になった訳ではないからまだマシだ! うん、そうそう!

 俺は自分にそう言い聞かせて無理矢理納得させる。

 

「そろそろこっちを向け」

「あ、はい」

 

 神様に背を向けていた俺は神様の方を向く。

 

「これで肉体への転生は終わった。次は世界への転生だが……これも既に決まった」

「え、もう? それって神様が決めたんですか?」

「いや、ランダムだ。ファンタジー世界なのは決まっていたがな」

「ラ、ランダム……」

 

 ここにきてランダムか。まぁファンタジー世界決定なのは俺の存在がファンタジーだからしょうがないね。

 

「お前が転生する世界はNo.18512世界のある惑星だ」

「えっと……どういう所です?」

「ふむ……人間やエルフ、獣人などがいる世界だな。 あとはモンスターなどだ」

 

 よかった……これでエイリアンじみた奴らしか居ないとかだったら最悪だった。 モンスターとかも居るみたいだし、きっとよくある中世風ファンタジー世界なんだろう。

 

「ただ、どこの種族も大した文化を持っていないようだな」

「え?」

「簡単な独自の言語を手に入れた程度だ」

「まじか……」

 

 どうやら俺が転生するのは中世風ファンタジー世界どころか古代ファンタジー世界らしい。

 

「では早速転生を」

「えっと……転生する世界を変えたりとかは……」

「ダメだ」

「ですよねー」

 

 くっそ……こうなったら古代でも何でも行ってやる! 

 俺はドラゴンヴァンパイアなんだからどこでも生きていけるだろう!

 

「ふむ……少しだけ行く世界のシステムを教えてやろう」

「システムですか?」

「ステータスを見たいと思ってみろ」

「ま、まさか!」

 

 ステータス!

 

 

======================================

 

名前:

種族:ドラゴンヴァンパイア

レベル:1500

 

======================================

 

 

 脳裏に見た事もないものが浮かんでくる。

 うおぉぉおおおお!! ステータスだ! すげぇ……でもなんか……。

 

「ステータス出ましたけど随分簡単な作りですね」

「そういう世界だ。レベルはその存在の強さの指標だな。 絶対ではない。お前がこれから魔法を学んだりモンスターを倒して経験を積めばレベルはどんどん上がるだろう」

 

 なるほど。レベルが低くてもレベルが高い相手を倒せたりするんだな。

 

「ステータスはこれでいいだろう。あとお前には一つだけ制約が掛かっている」

「制約?」

「そうだ。もしお前が愛する相手が出来て子供を作ったとする」

「ええ?」

「産まれてくる子供は多少お前の力を受け継ぐが種族は相手の種族で産まれてくる」

「えっと……つまり人間となら人間が産まれるし獣人となら獣人が産まれると」

「そうだ」

 

 それぐらいなら何の問題もないだろう。

 

「わかりました」

「うむ……最後にお前に名をやろう」

「名前……くれるんですか?」

「うむ……お前は今から【エルトニア・ティターン】だ」

「ッツ!!」

 

 神様に名付けられた瞬間、身体にとてつもない熱が灯る。それは次第に消えていくが、身体は今まで以上に力が漲っていた。

 

 

======================================

 

名前:エルトニア・ティターン

種族:ドラゴンヴァンパイア

レベル:2500

 

======================================

 

 

「神様……この力は」

「神が名付けたのだ。力も得よう」

「ありがとう……ございます」

「さて、もう行くがいい」

 

 最初はどこか恐ろしく感じていたけど、この神様は案外面倒見が良いのかもしれない。俺に高性能な服も名前もくれたしね。

 

「じゃあお願いします」

「ああ……ではな」

 

 次第に視界が白く染まっていく。

 意識が落ちそうになった時。

 

「あぁ……言い忘れていたが、人間の魂では身体に合わないからお前の魂を身体に合わせて変質させた。お前はもう人間ではない。それを忘れるな」

 

 そんな神様の言葉を聞いた。

 

 

♢♢♢

 

 

「行ったか」

 

 目の前に居た新たな生命は新しい世界へと転生していった。

 これで我と奴との約束は守られた。もうこの先を確認する必要はないだろう。

 我は目を閉じ静かに次の事へ意識を向けた。


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