出来損ないの最高傑作ーNT   作:楓@ハガル

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第一章開始です。相変わらず、なかなかゲーム本編には入りませんが。


第一章 災厄の復活
第九話 邂逅と偶事


 2月21日、午前11時、ハガルショップエリアの巨大モニター前。修了任務を乗り越えた新米アークスたちが、並んでおる。妾も、その中の一人。モニターには、昨日も船で見た、白いお偉いさんが映っており、長々と、何かを喋っておる。

 正直に、言おう。退屈じゃ。なにゆえ、お偉いさんと言うのは、こうも揃って話が長いのか。もうかれこれ、30分は話しておるぞ。

 あれか。妾以外の誰かが、長話しないと死ぬ祟りでも、掛けたのか。だとしたら、妾の所に来い。簡潔に話さないと自動扉が高確率で反応しなくなる祟りを、掛け直してやる。死ぬよりは、デコをぶつける方が、マシじゃろうて。

 

『――それでは諸君、アークスの使命を胸に刻み、日々、励みたまえ。以上』

 

む、ようやく、終わったか。モニターの映像が切り替わり、宇宙からのナベリウスの映像を、映し出した。

 

「以上で、任命式を終わります。それでは続いて、皆さんの、これからの予定を説明します」

 

とりあえず、軽く伸びをしようか、と思った矢先、妾たちの前に、六人の女性が立った。

 

「先に、自己紹介をさせて頂きます。アークス管理官の、コフィーです。よろしくお願いします」

 

ふむ。『くぅるびゅぅちぃ』を、絵に描いたようなお人のようじゃな。仕事の内容からして、それなりに関わる機会も、多かろう。……見極めるのも、楽しそうじゃの。

 

「オペレーターの、ヒルダだ。君たちが無事に帰れるよう、全力で仕事に当たるつもりだ。よろしく頼む」

 

「同じく、オペレーターの、ブリギッタです。今日と言う日を、心待ちにしていました。よろしくお願いします」

 

「め、メリッタです、わわ、私も、オペレーターですっ。至らないところもありますが、ど、どど、どうぞよろしくお願いしますぅ!」

 

仕事人と言った様相のヒルダ殿に、冷静沈着なブリギッタ殿、それに慌てん坊っぽいメリッタ殿、か。会う機会は少ないかも知れぬが、命を預ける方々じゃ。しっかりと、覚えておかねばな。

 

「クエスト及び任務のアサインを担当します、レベッカです。アサインカウンターで待ってます。よろしくね」

 

「同じく、アンネリーゼです。受注出来る内容は、レベッカのカウンターも、私のカウンターも、変わりません。お好きな方へ、お越し下さい」

 

ほんわかな雰囲気のレベッカ殿に、真面目そうなアンネリーゼ殿。縁起でもないが、場合によっては、このお二人のお顔が、生涯最期に見る、人の顔になるかも知れぬ。そうならぬよう、精進せねばな。

 

「クエストや任務に、直接的に関わるのが、我々六人です。訓練校で学習されたと思いますが、おさらいをしておきましょう」

 

 コフィー殿が、良く通る声で、説明を始めた。念の為、真面目に聞いておこう。

 

 まず、任務とクエストは、似ているようで、全くの別物。

 任務は、緊急性の高い内容になっている。重度の侵食を受け、暴走状態に陥った中型及び大型敵性体の討伐や、要救助者の救出などが、これに当たる。他の特徴としては、危険だ、と言う理由での、小型敵性体の討伐が含まれる。重度の侵食が起きていると言う事は、即ち、近辺はダーカー汚染の具合が酷く、他の生命体も、同様の状態にある可能性が高い。また、ダーカー出現の可能性も跳ね上がり、放置すれば、生態系に、重大な悪影響が出る。

 クエストは、名の通り、調査、探索的な意味合いが強い。最終目標は、やはり侵食された中型もしくは大型の敵性体だが、その侵食具合は、任務程酷くはない。しかし、行動範囲は任務の比ではなく、場合によっては、数日がかりにもなる。主な内容は、指定範囲の調査。土壌、植生、大気、微生物を含めた生命体など、各種サンプルの取得を行う。少々地味だが、ダーカー討伐だけでなく、生物種の保全も担うアークスとしては、これも、重要な仕事である。それらのサンプルを解析し、星の情報を得なければ、生態系の保護など、不可能だからだ。ベテランを集めたクエスト専門の部隊も、多数編成されている事から、アークスが、どれだけ重きを置いているか、窺い知れる。

 

 アークス管理官は、各アークスの実績から、受注可能な任務及びクエストを振り分けるのが、主な仕事となっている。実績とは、単に戦闘の上手さだけを指すのではない。他のアークスとの連携、洞察力の高さ、各種状況下での機転など、その内容は、多岐に渡り、それらを総合して審査し、クラスレベル上限や、任務などの受注制限を解除する権限を持っている。過ぎた力を持たせず、身に余る仕事を回さない為にも、管理官の仕事は、極めて重要である、と言えよう。

 

 アサインカウンターは、管理官から回されるデータを元に、受注可能な任務などを、提示する場だ。ここで、己の身の丈に合った仕事を受注し、キャンプシップに搭乗して出撃、と言う流れになる。アークスに、過度に危険な仕事を与えない為、と言う理由から、アサインカウンター職員も、大きな権限を持つ。敵性体討伐の報酬に目が眩み、分不相応な仕事に無理にでもアサインしようとする不届き者が、ごく稀に存在するから、だそうな。

 

 オペレーターは、担当アークスの周辺状況を分析し、適宜、指示を出す。基本的にアークスは、任務やクエスト内容の範囲内であれば、自由に行動出来る権限を持ち、戦闘やサンプル採取も、各自の判断によって行われる。しかし、異常事態が発生した場合は、即座にオペレーターから連絡が飛び、交戦あるいは撤退の指示が下される。明らかに仕事内容を逸脱した行為を働いたり、行動範囲外へ出ようとしている場合も同様だが、こちらは、より強制力が強く、従わなかったら、問答無用で査問会送りとなる。

 

「エネミーをどれだけ多く倒そうとも、それだけでは、アークスの責務を果たしている、とは言えません。この宇宙に住む、全ての命を守る為に、皆さんの全力を期待します」

 

要は、『オペレーターの言う事を聞いて、アサインカウンターで受けた仕事を一生懸命頑張れば、管理官に認めてもらえて、もっと強くなれる』と言う事じゃな。

 

「君たちにはまず、任務をいくつか、こなしてもらう。実戦である以上、当然、命の危険もあるが、油断さえしなければ、難しい任務ではない」

 

「修了任務時の二人か、四人での登録を、お勧めします。前衛と後衛で、バランスが良いですし、ある程度は、互いの勝手も分かっているでしょうから」

 

「そ、それと、皆さんに、修了任務達成の報酬とお祝いを兼ねて、基本的なユニット(防具)を一式、プレゼントです! しゅしゅ、出撃前に必ず、装備登録を、済ませておいて下さぁい!」

 

 ふむ。それは、ありがたい。防御フォトンを増幅し、身の守りをさらに強化してくれるユニットは、前衛後衛問わず、必需品じゃからな。

 任務への登録は、うむ。アフィン、ユミナ、アーノルドを誘ってみよう。あの激戦を、共に戦い抜いた戦友じゃ。命の危険がある、と言われようと、あの三人となら、心強い。三人ともが、妾と同じように考えてくれておるのなら、嬉しいのう。

 

「それでは一旦、解散とします」

 

コフィー殿の締めの言葉を合図に、訓練生全員が、ばらばらと動き出した。そこかしこで、互いを誘い合う声が上がる。とりあえず、アフィンを探そうかの。

 

 アフィンを探し当てる前に、ユミナに誘われた。クラスごとに整列しておったし、まぁ、それも道理か。

 

「楓ちゃん、私たちと行かない? ほら、昨日みたいに!」

 

「うむ。妾も、お主たちを誘おうか、と思っておったところじゃ」

 

そうしている間に、アフィンとアーノルドも、こちらへ来た。様子を見るに、この二人も、話を持ち掛け合ったようじゃな。

 

「そちらも、話は付いたようだな」

 

「相棒、一緒に行こうぜー!」

 

「思いは、同じか。よし、では、参るとしようかの!」

 

「おーっ! 楓ちゃんに、続けーっ!」

 

妾を先頭とし、ショップエリアを突き進む。ふふん。この四人であれば、負ける気がせぬわ!

 

 

 

 意味の分からん回転オブジェを横目に、ゲートエリア直通のポータルへ入ろうとした、その時。

 

「……む?」

 

視界全体に、軽い乱れが、走った。聴覚は、ざざ、と、小さくも不快な音を拾っている。

 

「あれ? 楓ちゃん、どうしたの?」

 

「……いや、何でも、ない……」

 

目を擦る。しかし、乱れは、消えない。

 

耳を覆う。しかし、雑音は、消えない。

 

センサー類の故障を疑いつつ、辺りを、見回した。どこを見ても、視界の乱れも、雑音も、消えてくれない――否。ある一点。そこに視線をやると、嘘のように、乱れも、雑音も、消えた。

 

  "誰か"が、いる。

 

オブジェの足元。誰もいないはずのそこに、確かに。妾の内の何かが、そう告げた。

 

「お、――、あ―――? ど――た?」

 

「具―――悪い――? ――――んで――――か?」

 

「かえ――ゃん? ――でちゃ―!?」

 

乱れも、雑音も、なくなった。しかし、誘われるように、そこへ進むうちに、他の全てが、遠くなった。そして、"誰か"の前に立ったと、直感で理解した途端、全てが、白に覆われた。

 

 

 

 全てが、色を取り戻した。広がるのは、ショップエリアの風景。だが、

 

「相棒? ユミナ? アーノルド?」

 

誰も、いなかった。後ろを歩いていたアフィンたちも、他の訓練生も、先輩方も、ショップ店員も。妾以外の、誰もが、いなくなった。

 

「……みな、どこに行ってしもうたのじゃ?」

 

不安に駆られ、きょろきょろと、あちこちに視線を移す。しかし、変わらず。ショップエリアには、妾一人しか、いない。

 

「じょ、冗談なら、止めよ! これから、任務じゃろう!? このような戯れに興じる暇は――」

 

にわかに襲い掛かって来た孤独感を、振り払うように声を荒らげると、

 

「――待っていた」

 

背後から、声がした。そんな、馬鹿な。十も数えぬ前に、背後は見たぞ? 誰も、いなかったぞ?

 

「……否。この表現は、認識の相違がある。待たせてしまった、だろうか」

 

妾の動揺など知らぬ、とばかりに、背後の誰かは、言葉を続ける。やはり、いる。先程感じた、"誰か"じゃろうか? ……いや、間違いない。この感じは、そうじゃ。

 振り返らねば、ならぬ。顔を見なければ、ならぬ。言葉を交わさねば、ならぬ。追い立てられるように、振り返った。

 

 そこにいたのは、黒髪の美女であった。青いふちの眼鏡を掛け、白衣を羽織り、一見すれば、研究員のよう。しかし、

 

「……お主、何者じゃ?」

 

その希薄さ――触れられそうで、触れられない。そこにいるように見えて、その実、そこにはいない。そんな、得体の知れなさが、妾の警戒心を、刺激した。

 

「わたしの名は……シオン」

 

「シオン、か。素直に名乗るとは、殊勝な心がけじゃな。覚えておいてやろう」

 

僅かに、評価を見直す。じゃが、警戒を解くには、至らぬ。このような、人の気配すら感じられぬ場に、連れ込まれたのじゃ。害意がない、などと、それだけで気楽に判断するわけには、行かぬ。

 

「それで、シオンとやら。認識の相違、と言うたな? 妾は、お主など知らぬ。よって、待たせてしまった、などと言われても、余計に食い違うのじゃがな」

 

「わたしの言葉が、貴女の信用を得る為に、幾許かの時間を要する事は理解している。それでもどうか、聞き届けて欲しい。無限にも等しい思考の末、わたしが見出した事象を」

 

「身勝手を抜かしよる……。つまりお主は、今は信じなくて良いから、己の考えを聞いてくれ、と言いたいのか」

 

そう問うと、シオンは、頷いた。実に、回りくどい喋り方をしよる。妾も、言葉遊びは嫌いではないが、これは、違う。人の喋り方では、ない。

 

「ふん。お主がその結論とやらを出すまで、待っておった覚えは、ないんじゃがな。まぁ、良い。話してみよ。どうせ、お主の話を聞くまで、離れられんのじゃろう?」

 

「……わたしは謝罪する。わたしは観測するだけの存在。貴女への干渉は行わない、行えない」

 

「……ほんに、喋り方を知らぬやつじゃな。謝りたければ、ごめんなさい、で良かろうに。つまり、あれか。こんな手段でも使わねば、妾と話せない、と?」

 

「わたしは肯定する。だが――動かなければ、道は潰える」

 

道が潰える、と来たか。どのような道かは知らぬが、こやつにとっては、余程の事らしい。こうして、幻術紛いの手段を弄してまで、妾の所へ来たのじゃからな。

 知らぬ、勝手にせよ、と、突っ撥ねてやろうか、とも考えた。まずもって、こやつが、妾を選んだ理由からして、分からぬからな。狸に化かされた、と言われたとて、納得が行く。もしそうなら、少々、痛い目を見せてやらねば、気が収まりそうにないが。

 

「なるほど、な。して、どのような結論を出した?」

 

 しかし。不思議な事に、こやつの言葉には、嘘が感じられぬ。どのような道かは知らぬが、それが潰えるのは事実であり、妾に助力を求めておる、と言うのは、やけに強く、感じられる。そして、その道が潰えるのは、妾にとっても、極めて不都合が生じる事態である、と、なぜか、確信した。

 

「あらゆる偶然を演算し、計算し、ここに残す」

 

そう言いながら、シオンの手が、妾に向けられた。その指先から、青く輝く何かが放たれ、ゆっくりと、妾に近付く。

 

「偶事を拾い集め、必然と為す。その物を、『マターボード』という。わたしは観測するだけの存在。貴女を導く役割を持たない。だが、マターボードは貴女を導くだろう」

 

そっと触れると、その輝く何かは、形を変えた。並んだ光点と、それらを結ぶ線が描かれた、透き通る、青い板。この世の物とは思えぬ、儚く、美しい輝きを湛える、青い板。

 

「……わたしの後悔が示した道が、指針なき時の、標となる事を願う」

 

一際強く光る点に触れると、情報が、頭に流れ込んで来た。なるほど、な。この光点が、こやつの言う『偶事』か。

 

「未だ信用も信頼も得られず、と推測する。貴女のその思考は、正しく正常である。わたしもそれを、妥当と判断する。しかし、わたしはそれでも、貴女を信じている」

 

「ふん。軽々しく言うてくれるものよ。……道が潰えては不味い、と言うのは、概ね理解した。お主にとっても、妾にとっても、な。良かろう、とりあえず、口車に、乗せられてやる。じゃが、もしも妾を謀っているのならば、その時は、覚悟しておけ」

 

恐らくは、従っても良かろう。先程見た『偶事』とやらも、一先ずは、害はなさそうじゃしな。しかし、真意が見えぬ以上は、用心に越した事はない。釘を刺すと、先と寸分違わぬ角度で、頷いた。

 

「わたしは、貴女の空虚なる友。どこにでもいるし、どこにもいない。質問は、いつでも受け入れよう」

 

「勝手に、友などと言うでないわ。それと、一つ、忠告しておこう。信用を、信頼を得たくば、喋り方を改めよ。お主とは、会話をしている気が、まるでせぬわ」

 

「……理解した。否。これも、人との会話で使う言葉ではないな」

 

えぇい、まどろっこしい! こんな玩具(板切れ)を作る前に、円滑に『こみゅにけぇしょん』を取る手段を学べ!

 

「そう言う時は、分かった、で良いのじゃ! 分かったか、この阿呆が!」

 

「……分かった」

 

「それで良い。で? お主の要件は、終わったのじゃろう? さっさと、帰してもらおうか」

 

「焦る事はない。ここは、貴女の在るべき場所。その場所に、わたしが干渉したに過ぎない。……楓。また、会おう」

 

別れの言葉を口にしたシオンから、白が、溢れた。その白が、シオンを、妾を、全てを塗り潰し――

 

 

 

「――えでちゃん!? 楓ちゃんってば!?」

 

「……む?」

 

 妾を呼ぶ声で、我に返った。目の前に立つのは、シオン……ではなく、妾の両肩を揺さぶる、ユミナ。周囲は、静寂から一転し、喧騒に包まれている。視界の乱れも、耳に入る雑音も、ない。

 

「ここは……?」

 

「良かったぁ……! 楓ちゃんったら、ふらふらここまて歩いたと思ったら、それきり、ボーっと立ったままだったんだよぉ!」

 

「そう、か……。妾は、どれくらい、そうしておった?」

 

「5分程度、と言ったところだな」

 

5分、か。体感でしかないが、シオンと話していた時間と、一致するな。

 

「相棒、今日は止めとくか? 体調が悪いってんなら、明日以降でも……」

 

「そうだよぉ。別に、今日中に済ませなさい、とか、言われてないから……」

 

みなの表情から、これでもかと言う程、伝わる。純粋に、妾の身体を心配してくれておる。負の思いなど、微塵も感じられない。

 だから、

 

「いや、問題ない。ちと、考え事を、しておってな」

 

自分でも呆れる程、雑な返事で、誤魔化した。

 

「それにしては、尋常な様子ではなかったが……。本当に、行けるか?」

 

「うむ。昨日のように、華麗に舞って見せようぞ」

 

「少しでもおかしいと思ったら、テレパイプ使うからね? それで、すぐに戻って、休むんだよ?」

 

「相棒として、ちゃんと見とくからな」

 

「そうなったら、素直に従うわぃ。相棒は、妾の尻に、夢中になるらしいからの。頼んだぞ、ユミナよ」

 

「えーっ、アフィン君、サイテー」「アフィン、お前と言う奴は……」

 

「ちっ、ちげーよ!? 見るのは、お前の動きとか、体調であってだな!?」

 

「かかか。良い良い、分かっておるよ。もしもの時は、頼むぞ?」

 

「やっぱり、調子狂わされる……。ったく、無理だけは、すんじゃねーぞ!」

 

その念押しへの返答は、右の拳を差し出し、代わりとした。アフィンも、頭を掻きながら、それに応じる。

 心配するでない、アフィン。本当に、何も、問題はないのじゃ。ただ、奇妙な自称友人が出来て、奇妙な頼み事をされた。今は、ただそれだけの事なのじゃ。

 

 

 

 整備班に、出撃時のユニット装着を申請し、アサインカウンターへ。

 

「ふむ。妾たちが登録可能なのは、この、『ザウーダン討伐』だけか」

 

「最初は、ね。この任務を達成したら、次の任務に登録出来るようになるよ。」

 

レベッカ殿の言葉を聞きながら、任務内容に、目を通す。ナベリウスで、ダーカーに侵食された"ザウーダン"が暴れており、他の原生種に危害を加える前に、討伐せよ、との事。

 ザウーダンとは、言わばウーダンの頭。ウーダンよりも身体能力、知能共に高く、厄介な相手と認識されておる。しかもこやつら、己の上半身程もある岩を持ち上げ、それを武器として使うのだから、始末に負えぬ。下手に食らえば、重傷を負う危険もある。ヒルダ殿の仰った通り、油断は、出来ぬな。

 しかし、ザウーダンの討伐……。ザウーダンは、ウーダン共の頭。ふむ。これも、あやつの言う、偶事なのかのぅ?

 

「パーティは、楓ちゃん、アフィン君、ユミナちゃん、アーノルド君の四人だね。良し、登録完了っと。それじゃ、よろしくね」

 

「はい。それでは、行って参ります!」

 

アフィンたちの心配を払拭するように、大きな声で、レベッカ殿へ挨拶した。これが、整式にアークスになってからの、最初の任務。気合いを入れて、臨まねばな。

 

 船に搭乗し、戦闘用ボディの調子と、ユニットの稼働状況を確認。……うむ。いずれも、問題ないようじゃな。

 帰還後、キャストのボディを含めた各種装備品は、全て、整備班に転送され、修理や整備が行われる。そして、特に申請がなければそのまま、変更登録と合わせて新しい装備品を送ればそちらが、次回出撃時、乗船の際に各自に転送される。今回は、贈られたユニットの装備登録をしておいたので、武器はそのまま、ユニットが追加されておる。

 

「みな、頼みがあるのじゃが、聞いてくれるかえ?」

 

各々、装備品の確認が終わった頃に、話を切り出した。

 

「ん? そんなに改まって、どうしたよ?」

 

「いや、大した事ではなくての。この任務で、最初に遭遇するウーダンは、妾に任せてもらえぬか?」

 

「何だ、そんな事か。俺は、別に構わんぞ。昨日の任務では、お前の動きを見る暇が、なかったからな。良い機会だ」

 

「私も大丈夫だよぉ。あ、もしかして楓ちゃん、さっきは一番槍を狙ってて、ウズウズしてたのかなっ?」

 

「む、バレてしもうたか。やはり初陣は、華々しく飾らねば、の」

 

丁度良い口実だ。そのまま、乗らせてもらおう。おどけた風を装うと、「そうなんだぁ! あー、ちょっと羨ましいかも!」と、盛り上がってくれた。少しばかり、心が痛む。しかし妾自身、どう説明したものか、考えあぐねておるしのぅ……。

 

 

 

 『わぁぷ』を終え、衛星軌道に入った船から、降下。昨日振りの、ナベリウス。その青と緑は、何一つ変わらず、雄大で、優しい。

 

「まぁ、昨日の今日じゃしな」

 

「ん? 何か言ったか?」「いんや、戯言じゃよ」

 

これが一日で様変わりするなど、そうなってもらっても、困るしの。では、行くか。

 

 パルチザンを背負った妾を先頭に据え、その少し後方に、同じくパルチザン装備のユミナ。左右に、ライフルを携えたアフィンとアーノルドが就く。この陣形で、崖に挟まれた道を走る事、しばし。縄張りへの侵入者を排除するべく、ウーダン共が、崖上から、樹上から降り立った。その数、五匹。

 

「先頭のやつを、先に潰すッ!」

 

「分かった、行って来いッ!」「私は、隣に就くよぉ!」「周りは気にするな、その為の後衛だ!」

 

弾丸が地面を叩き、取り巻き共が怯む。その隙に、パルチザンを構えつつ、群れを率いていると思われる先頭の一匹に、接近。その心臓を、貫いた。隣のユミナは、いつでも得物を振り抜けるよう、構えたまま群れを睨め付け、アフィンとアーノルドは、牽制射撃を加えつつ、さらに左右広く展開している。

 刃を引き抜くと同時、ウーダンの死骸が、青い輪に囲まれる。研究部への転送が、始まったか。しかし、今更、じっくりと見るような現象でもない。パルチザンを構え直し、戦列に加わろうとして――視界の端。二つのログに……普段なら見もしないログに、目を奪われた。

 

――ウーダン、転送完了。査定完了。報酬品『ガンスレイヤー』、転送完了。

 

――第一の偶事、『ウーダンの撃破によるガンスレイヤー入手』を達成。次の偶事を提示する。




ゲーム中でのクエストの括りを、変更しています。

『アークスクエスト』を、『任務』
『フリー探索』を、『クエスト』

としております。また、この変更に伴い、

『クエストカウンター』を、『アサインカウンター』

としております。ややこしいかと思いますが、ご了承下さい。惑星探索となると、やはり調査も必要だろう、という妄想が理由です。

シオンとの会話が、想像以上に難しいですね。

書き溜めが尽きつつありますので、投稿間隔を、少し空けます。

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