転生先は桃香の兄   作:Pasukayuri

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ワイは生きとるで(大変長らくお待たせしました)


迂回路進軍

葭萌関に到着した暁人率いる漢中軍は張任の案内の元、広間へと足を運んだ。

 

広間に入ると厳顔、法正、孟達、鄧賢の四人が既に揃っていた

 

「よくお越し下された、儂の名は厳顔と申す。横に控えるこちらが法正とこちらが孟達と鄧賢じゃ」

 

法正、孟達、鄧賢の三人は暁人に一礼する

 

「此度の帰順、誠に感謝する。現在の戦況を教えてもらいたい」

 

「では私の方から説明させて頂きます」

 

そう切り出したのは法正であった、法正はおもむろに地図を取り出し戦況解説を行い始めた

 

「敵は堅牢である剣閣に立て篭もっております、偵察を兼ねて小規模の部隊を向かわせましたが一向に出てくる気配がありませんでした」

 

法正の説明を聞きつつ俺は思案を巡らしていた

 

「ふむ……俺達を兵糧攻めにでもするつもりであろうか……」

 

ここで足止めを喰らってる様では到底天下は望めはしまい

 

「法正よ、この剣閣を進まずに行く道はあるのだろうか?」

 

俺がそう切り出すと今度は厳顔がそれに応えた

 

「それならば儂が知ってる道がありまする。ただ、この道は地元の者でも屈指の難所でありますがこの道を使えば剣閣を通らず梓潼に出る事が可能であります」

 

「なるほどな……」

 

「ですが正面からでは被害を被ります、どちらを選ばれますか?」

 

「うーむ……」

 

悪戯に兵を損なうわけにはいかないが……かと言って危険なルートも死がつきまとう可能性もある……

 

そう頭の中で思案を巡らしていると武官の一人が広間に入って来ていた

 

「申し上げます。ただ今、漢中より後より進発されていました鄧艾様と長安より鍾会様がこの葭萌関に到着なされました」

 

「お、鄧艾と鍾会が到着したか。すぐにこちらへ来るようにと伝えてくれ」

 

「はっ」

 

しばらくすると鄧艾と鍾会の二人が広間に到着した

 

「鄧艾並びに鍾会ただいま到着致しました」

 

「うむ、二人共よく来てくれた。鍾会もしばらく見ないうちに随分と成長したようだな」

 

そう俺が言うと鍾会は自信あり気に威厳を放つような振る舞いをした

 

「改めて拝謁出来て光栄です主君、この私が来たからには劉璋軍など土くれ同然……万事おまかせあれ」

 

「ふっ……頼もしい発言だな、だがお前は実戦経験がまだ浅い、鄧艾の補佐を良く行い鄧艾によく習うようにせよ。鄧艾、鍾会をよく見てやってくれ」

 

「はっ、お任せ下さい!」

 

「主命とあらば破る訳には参りませんな……承知致しました」

 

「さて、後の指示はまた改めて伝える事とする。本日はこれにて解散だ」

 

それぞれの人物が退出するなか厳顔、法正はその場に残っていた

 

「お館様、あの鍾会なる若僧からはただならぬ野心を感じまする。いつの日かお館様に反旗を翻すのでは?」

 

「恐れながら私もそう思います。彼は人の下に素直に付く人物とは見受けません」

 

ふむ……二人もそれに気付いていたか……

 

「二人の心配は最もだ、だがアイツは俺からは背く事は出来ないであろう」

 

「ほう?……予め手は打たれていると?」

 

まあ、鍾会の自信を粉々に打ち砕いただけなんだがな……

 

「先程も少し説明したが鍾会は成人を迎えて間もない、兵法通りでしか行えない用兵なぞあってないようなものだからな」

 

「なるほど、左様でございましたか」

 

「先の方針についてはまた改めて軍議を開くこととする。剣閣の動向を探らせ動きがあれば逐一知らせるようにと伝えよ」

 

「はっ!」

 

さて……どうするべきかな……

 

 

 

一方その頃、劉璋軍の剣閣では……

 

「申し上げます。葭萌関に劉騎軍の本隊が到着し兵力が増幅しましたその数およそ9万5千」

 

「ふむ……兵力の上では我らが勝っておるか……」

 

報告を聞いた呉懿はその後の展開を思案していた

 

現在行われている軍議は呉懿を初めとした劉焉時代から仕えている人物を中心に行われている。本来であればこの場にいる劉循が指示をしなければならないのだが実戦経験が乏しい為に実権を呉懿に与え自身は最終決定を下すだけとなっていた

 

「兵力の上で勝っているならばおそるるに足らず、このまま葭萌関を奪い返すべきだ」

 

そう切り出したの冷苞であった、メンバーの中でも一際の武力の持ち主であった。加えて傲慢な性格の為に自身の武勇を鼻にかける部分がよく見られていた

 

「儂も冷苞殿の意見に賛成だ、先の戦ではまんまとしてやられたがこれだけ揃えば負けはしまい」

 

それに同調したのは劉璝である、先の戦にて敗退し高沛、楊懐と共に剣閣に引き上げた人物である

 

「いや、それはならぬぞ劉璝殿に冷苞殿。あの軍には関羽や張飛などの猛将を初めとし選りすぐりが揃っておる。加えて今回は地理を把握されていた厳顔様が降られておる。迂闊に仕掛けるべきではない」

 

あくまで呉懿は慎重策を選んだ、正攻法では勝てないと思っていたからだ。しかしそれに異議を唱えたのは劉璝であった

 

「呉懿殿の意思ではまるで最初から負けを認めているようでございますな……よもや貴方も厳顔殿と同じく叛心を抱かれておられるのではないですかな?」

 

「何を馬鹿なことを申す……私は蜀の為に尽くす者だ。叛心など抱いておらぬ」

 

「ならば宜しいのですがなぁ……では儂と冷苞殿の部隊が攻撃を仕掛けまする。呉懿殿は剣閣を守られてれば良かろう。いかがでしょうか劉循様?」

 

「うむ、そなたらの申す通りに行うがいい。私は呉懿と共に剣閣に残るとする。よい報告を期待しておるぞ」

 

「ははっ!では冷苞殿、参りますかな」

 

「おう!」

 

劉璝は意気揚々と退出し冷苞、高沛、楊懐を伴い編成に取り掛かり始めた

 

残された呉懿、呉班、呉蘭、雷銅は劉循に詰め寄っていた

 

「劉循様……何故承諾されたのですか?」

 

呉懿は劉循の真意を聞き出そうと直球で尋ねた

 

「今の私に彼らを止める手立てはない、私にもっと知識があればよかったのだが……」

 

「劉循様……」

 

呉懿の族妹である呉班は悔しそうにしている劉循を見ていた、呉班もまた修行の身であり従父である呉懿やその副将である呉蘭、雷銅等に指導を受けていた

 

「呉懿将軍、この後はいかが致しますか?」

 

自身の副将である呉蘭が話を切り出した

 

「止むを得ぬ、劉循様は剣閣に残って頂き守備を指揮してもらいたい。儂と呉班、呉蘭、雷銅は劉璝殿の部隊の後陣として出陣する。兵にはその様に伝えよ」

 

「御意」

 

「(旗色が悪い時は降伏もやむ無しであろうな……)」

 

不安渦巻く思考を抑えつつ部隊編成に取り掛かるのであった……




という訳で今回は劉璋軍にもスポットを当てました。ぐぬぬ、張翼と張嶷を出したいがまだ出せない……

呉班以外は本家シミュレーションゲーに準拠、呉班も女性枠で作りましたがイメージを付けるかモブになるかまでは思案中です

次回も宜しくお願い致します

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