転生先は桃香の兄   作:Pasukayuri

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反董卓連合編最終回です


郿城燃ゆる

郿城の奥深くにある未房宮……

 

そう呼ばれる空間に一人の男がいた

 

「とうとうここまで来たか……」

 

誰に知らされた訳でもないのにそう予想した男の名は董擢……董卓達の兄であり自身の妹の董卓の名を騙った人物である

 

「地位や名誉……そんなものより望むはただ一つ」

 

圧倒的な絶望

 

怒り、憎しみ、怨嗟の声……民の負の感情を見るのが最高にたまらない

 

希望のない絶望感を与え人が狂う有様は最高だ……

 

「クククッ……」

 

不気味な笑みを浮かべ董擢はこれから出会う敵に多大なる絶望を与えてやろうとしていた

 

「董擢様、出陣の用意が出来ました」

 

「李儒か……分かった」

 

李儒と呼ばれた少女が董擢の元を訪れそう報告を行った

 

「(くっ……やはり隙が見当たらないか……)」

 

隙があれば董擢を殺害しようと計画したが断念した、何故董擢に気に入られているかは分からないが利用しない手はないと思ったからだ

 

出陣の用意に取り掛かる董擢の後を追いながら迫り来る軍勢が自身の計画を成し遂げてくれることを願っていた

 

「(私のお膳立てはここまでのようね……あとはお願いね……兄さん)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先の戦いにて長安を制圧した暁人達は次なる目標である郿の攻略に向けての準備をしていた

 

「此度の長安の制圧戦ご苦労であった」

 

長安にいる全将兵が一同に集まり平伏していた

 

「呂布、先鋒の任ご苦労であった。おかけで攻略もだいぶ楽であったぞ」

 

「ん……役に立てたのなら嬉しい……」

 

「高順もよく補佐してくれた、ありがとう」

 

「主君の期待に応えたまでだ……だが、有難く賛美を受け取っておこう」

 

「李蒙、薛蘭、李封もご苦労であった。三人はこの後それぞれの任地に戻ってもらいそちらの守備を任せる」

 

はっ!と三人の声が重なり合った

 

「そのほかの者も皆ご苦労であった、引き続き郿の攻略に当たるため数日の休息を行い向かう事になる、各自怠りなくするように」

 

本日の軍議はこれにて解散となった

 

後程、李傕と郭汜の軍勢も長安に到着。予想通り伏勢がおり退路を絶とうとしていたようであった

 

戻ってきた二人を慰労しようと頭でも撫でてやろうかと思いつきとってつけて行ってみたが……

 

「ちょ……!?私達はそんな子供じゃないんだぞ!?……ったくもう……」

 

「私は……ちょっと嬉しいかな……えへへ」

 

李傕は否定しながらも受け入れ郭汜は満更でもないようだ……意外と楽しいかもしれん

 

李傕と郭汜と別れると今度は牛輔と李粛に出会った、二人には郿を攻める際の長安の守備を任せるつもりだ

 

「劉騎様、お疲れ様です」

 

「おつかれっぽーい」

 

丁寧な牛輔に対し李粛は砕けた感じだ、後に俺も呂布から紹介してもらい公の場ではない限り砕けてもらっても構わないと言ってある

 

「牛輔と李粛もお疲れ、牛輔は長安の守備についてもあるから鄧艾と陳宮の元を訪ねるように」

 

「承りました、では直ちに……」

 

牛輔は一礼してその場を去り鄧艾と陳宮の元へ向かっていった

 

「暁人さーん、夕立はどうしたらいいっぽいー?」

 

牛輔がいなくなり李粛だけになるとより一層甘えだしてきた

 

「夕立は引き続き牛輔の補佐をお願いするよ、今はゆっくりしてくれていいんだよ」

 

「夕立も李傕さんや郭汜さんみたいにナデナデしてもらいたいっぽい」

 

ワンコやワンコがおるで!犬耳と尻尾が見える様な気がするんだが気のせいですかね?

 

先程行ったように行うと夕立はとても満足し牛輔の話を聞くためにその場を離れていった

 

さながら行為を行った俺が言うのもあれだがはたから見たらエロ同人と変わらんような光景だったような感じもするが時代が幸いである

 

「ジャスラッ〇もこの時代にはないんやで! 」

 

まあ、そういう事です(どういうこったい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日の休息を挟むとは言ってはあるが内政は怠ってはいけない

 

その間、俺は制圧したばかりである長安の巡察を行っていた

 

制圧した側ではあるが董擢の暴政から解放された民の歓迎は凄いものであり例えて言うなら劉邦が咸陽(後の長安)を制圧した時のようである

 

長安の民は肉、野菜、酒等を持ち寄り皆様に食べてくださいとの事であった。俺は喜んで受け取りそれらを従軍していた兵士達へと分配した

 

「頑張れば持ち寄られた材料で何か作れるかもしれんな、現代だとまだまだ足りないやつがいっぱいあるが……いっそ品種改良でも行うか?」

 

確か北の民族である匈奴では乳製品があるとも聞いたことがある、俺自身は料理人ではないのだが現世でも度々料理を作っていたのもある為に少々こだわりがあるのだ

 

「今後の内政のテーマの一つとするか、今は董擢をぶっ倒すだけだ」

 

などを考えつつこれからの決戦に備え英気を養うのであった

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、隴西にて

 

隴西の一角にある屋敷の前に一人の少女と男性が一人いた

 

「ボクが門番を引きつけるわ、胡車児はその間に月をお願い」

 

「任されよ……」

 

そう言うと胡車児はその場をジャンプすると目的地の屋根まで移動していた

 

「長くは持たないわよ……」

 

そう思いながらも賈詡は絶対にやり遂げると決めていた。賈詡自身には胡車児みたいな身体能力は持ち合わせていない……それでも出来ることはあるはずだと……

 

皆が寝静まった夜にそれは行われていたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「騎馬隊、用意はいいな?合図と共に突入!眼前の守兵を射抜きつつ「走射」して走り抜けよ!」

 

「暁人様に遅れるな!我が隊も「走射」の準備をせよ!」

 

「遅れを取るわけにはいかぬ、我らも続くぞ!」

 

「我等を止めれるなら止めてみろ!」

 

長安にて休息をした後、俺達は郿城攻略に取り掛かった。俺の部隊は美優、高覧、鄧艾の弓騎を中心とした編成だ

 

「今こそ弓馬の神髄を見せる時よ!「飛射」で守兵を残らず射倒せ!」

 

「呂布に遅れを取るな!我が隊も「飛射」を仕掛ける!」

 

同じ弓騎編成である呂布の部隊だが彼女の部隊は一際慣れているようであった

 

「これも部下にはいい訓練になるであろう、俺も体得するには訓練が足りないしな」

 

「呂布様だけに手を煩わせるな、俺達も撃ち込むぞ!騎馬隊止まれ!敵守兵に向けて「騎射」を仕掛けるぞ!」

 

「なーに一人で抜け駆けしてんのー?この魏続を前にさ」

 

「ゴチャゴチャうっさいぞ魏続!さっさと準備しやがれってんだ!」

 

今回は三馬鹿こと侯成、魏続、宋憲もこちらに呼んでおいた。翔子が言うには戦いたいと言い張って訓練の加減も出来ないからいらないとの事だ

 

「まあ素行はともかく腕が立つからなぁ……一応踏まえて最前線に配置していたのだが……」

 

今度から曹性もきちんと配置しておこう……そう決めた暁人であった

 

 

 

 

 

郿城からの反撃もあり部隊の兵は削られてはいる。だが……

 

「(統率がまるで取れていないな……)」

 

数はいるものの組織的な反抗ではない、元々命を賭けるには相応しくない主君なのもあるかは知らないが……

 

「劉騎様ー!城門を打ち破りましたー!」

 

部下の兵は周囲に聞こえるように声を張り上げていた

 

「よし!美優、俺は鄧艾と共に城内に突入する呂布の部隊にも伝令せよ、城外の指揮を一任する」

 

「はっ!お任せ下さい」

 

「行くぞ鄧艾、俺に続け!」

 

「御意!」

 

俺と鄧艾は打ち破られた城門に向けて馬を走らせた

 

城内に突入した俺達は目的である董擢を探し回っていた

 

「降伏する者は受け入れよ、手向かうならば切り捨てて構わない!我が命を破る者は厳罰には処す!」

 

城内を走り回ること暫く

 

「劉騎様ー!」

 

聞き覚えのある声に釣られその方向を見ると一人の男とどこか見覚えのある様な出で立ちの少女がいた

 

「董旻ではないか、無事だったのだな」

 

「へいおかげさまで、これもこちらに控える李儒の策があってこそです」

 

そう言うと董旻の傍に控えていた彼女が前に現れた

 

「……なっ!?」

 

李儒の姿を見た俺は受け入れることが出来なかった。間違うものか!だって彼女は……

 

「「初めまして」、董擢様の軍師の李儒よ、宜しくお願いするわ「劉騎様」……」

 

「な、何故……お前がここにレn……」

 

そこまで言うと李儒は俺の前で手を上げて制し、現状の説明を始める

 

「董擢様はこの奥にいるわ、あとはあなた達にお願いする。恋、今度はいけるわね?」

 

「ん、今度は失敗しない」

 

「私からもお願いします、どうか兄上を……兄上の野望を討ち果たしてください」

 

董旻も同じようにお願いしてきた、今は李儒の事より眼前の董擢だ

 

「分かった、各自突入する。鄧艾は退路を確保するように」

 

「御意」

 

「行くぞ、恋」

 

「わかった……」

 

この長き戦いに終止符を打つ為に……

 

 

 

 

 

 

 

馬は使えない為に降りて向かう、走りながら周囲を見渡したが幾多の金銀財宝を目の当たりした、一体どれほど民から巻き上げたのだろうか……

 

走り抜けた先にいくと未房宮と書かれた場所に辿り着いた

 

扉には細工もなく難なく開けることは出来た、その扉を開くと一人の男性が座って待っていた。見た感じはまるで現代の高校生ようである

 

「やっと来てくれたね……待ちくたびれたよ呂布……それと劉騎……で間違いないかな?」

 

「恋……コイツが董擢なのか……?」

 

「うん……忘れるわけがない!」

 

しかし出会ったばかりなのにこの漂う殺気はなんなのだ……

 

「さて……ここに来たのは僕を倒すためなのかい?」

 

「それ以外何がある?俺達はお前を殺す、ただそれだけだ」

 

「世界に希望なんて何もない、あるのは絶望のみ……いつの時も……いかなる時も……」

 

「確かに時代は栄枯盛衰……この国もそれを歩んできた……だが!……」

 

剣の力を感じる……この感じならば……

 

「俺がこの国を変える!希望に満ち溢れる国となる様に!」

 

「ほざけ!そうやって何度に渡って国は乱れたと思っている?徳を持って統一したと言われる劉邦でさえ晩年には失脚したのだぞ!」

 

「確かに劉邦の例もある、だが俺はそれを含めお前達よりも何より知っている「知識」があるからな!」

 

「……これ以上の問答は不要、希望を繋ぎたくば僕を倒してみな!」

 

「言われなくとも!いくぞ董擢!」

 

「「うおおぉぉぉぉーーーー!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァハァ……」

 

なんて強さだ……こちらに呂布がいても互角の強さだなんて……

 

「フフッ……僕も久々に熱くなりすぎたようだ……」

 

だが連携攻撃は確実に董擢の体力も削っていた

 

「恋……大丈夫か?」

 

「だいぶキツイ……あまり長くは持たない」

 

となれば一撃で決めるしかないか……

 

「恋、董擢をうまく引き付けてくれ。俺が奴にトドメをさす」

 

「わかった……行ってくる……」

 

愛用の方天画戟を持って呂布は再び董擢に切りかかった

 

「パクリ技になるだろうが窮地を抜けるためなら手段は選ばない!」

 

恋は董擢を引き付けてこちらから視界を外してくれていた

 

「剣に意識を集中……この一撃を持って終わりとする!」

 

ここだ!

 

「恋!離れろ!」

 

「っ!」

 

「行くぞ……我が魂魄を込めた一撃……受けてみよ!」

 

これが東城家代々三奥義壱ノ太刀

 

「虚空一閃!!」

 

剣を二回振りかざし飛んでいったのは真空の刃、ちなみにホーミング付きで追跡も可能である

 

「真空の刃だと!?ぐわあああ!!……」

 

追跡機能もあり董擢はズタズタに切り裂かれていった

 

「……やったか?」

 

大抵このセリフはフラグになるのだが……どうやらそのようで……

 

「ククッ……この国にこんな力を持つ人物がいるだなんてね……」

 

あれだけの技を受けておきながらも董擢はまだ息をしていたのだ

 

チッ……ならばもう一度……ん?この匂いは?………

 

「生かしておくものか……全員まとめて道連れにしてくれる!」

 

そう言い放つと周囲からあちこち火の手が上がり始めたのだ

 

「これは……!?俺たちを巻き添えにするためか!?」

 

それと同時に退路を任せていた鄧艾が暁人達の元へやってきた

 

「劉騎様!城のあちこちに火の手が上がり始めました!この場は撤退を!」

 

「暁人……急ぐ……」

 

「ああ、分かった……」

 

董擢にトドメをさすことが出来ないのが悔やまれるが今は仕方あるまい

 

外に安置していた自身の愛馬に跨り城外の部隊に伝令を飛ばし包囲を解いて長安に引き上げるように通達した

 

かくして郿城はやがて真っ赤に燃え上がり三日三晩燃え続けていた。長安からは距離も近いため燃える郿城は夜の時間を昼のような明るさへと仕立てあげていた

 

やがて鎮火した郿城を探索したが董擢の死体は見当たらなかった。まあ、あれだけ負傷していたのであれば逃げるのも出来ないであろう

 

こうして探索を切り上げよとしたのだが、ふと目の前の瓦礫の山から何が光ったような感じがした

 

「気のせい……ではないな、お前達ちょっと手伝ってくれ」

 

そう言って近くにいた兵を呼び集め俺はその瓦礫の山を押し上げた

 

するとそこには龍のイメージを象った赤い壷が埋まっていた、本体には傷は付いておらず新品同様である

 

「これはもしかして……「龍の方壷」か?」

 

思わぬ収穫である、俺はこの逸品を持ち帰る事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして董擢はこの世から姿を消していった、さながら董擢は絶望と言う物を具現化した存在であったのであろう

 

反董卓連合を組んでいた盟主の袁紹は事態の急変に驚いていたが郭図の進言もあり恰も連合軍が董卓を討ち取ったアピールを大いに行った、これを聞いていた曹操や孫策、英人や明菜もため息を付いていた

 

英人は明菜にコッソリ接近し周囲に聞こえないように話し始めた

 

「(明菜、話は聞いているか?)」

 

「(確か長安の劉騎だったけ?これが英人の言う暁人君なんでしょ?)」

 

「(ああそうだ、俺の推測が正しければやり遂げたのは暁人に違いない)」

 

「(私も早く暁人君に会いたいなー……英人は先に会ってるんでしょ?)」

 

「(仕方ないだろ、アイツのいた場所から近いのは俺だったのだからな)」

 

「(それで英人……この先私達はどうしたらいいの?)」

 

「(俺達が何故この世界に呼ばれたかは未だに検討がつかん。だが外史と言う概念は俺達にもしっかりあるし暁人にも残っている)」

 

「(管理者の介入がない限りは問題ないって事なのかしら?)」

 

「(あくまで予想だが……主要のキャラが死んだらいけないとかな、これらのカテゴリーは恐らく歴代の君主と俺達も含むと思われる)」

 

「(暁人君のとこなら暁人君と劉備達の三姉妹、英人のとこなら曹操、私のとこは孫策や孫権ってところかしら?)」

 

「(挙げるならそんな感じだ、まだ予想だがな)」

 

「(とりあえず今は自国に引き上げて内政を進言しておくかな)」

 

「(俺もそのつもりだ、恐らく暁人も俺達の国には仕掛けてこないだろうしな)」

 

やがて話してる光景は曹操と孫策に気付かれる事となる

 

「英人?何を話しているのかしら?」

 

「明菜?どうかした?」

 

「「な、なんでもないぞ(ないわよ)」」

 

二人の言葉はほぼハモっており乾いた笑いで誤魔化そうとしていた

 

こうして反董卓連合を組んでいた諸侯は解散し自身の国へと引き上げるのであった

 

やがて共通の敵がいなくなった事により時代は群雄割拠へと移り変わり始めていた……




はい、これにて反董卓連合編終了となります

次回より群雄割拠編をお送りいたします

最終回だけあっていつもの2倍以上の文字数ですがお許しくださいませ……

次回の開幕は論功行賞からとなります、その際に新たに登場する人物も増えますがその都度後書きにて記載する内容を参照してくたさい

万が一記入漏れや質問等ありましたら感想なりTwitterなりに下さいませ

長くなりましたがここまで読んでいただきありがとうございました

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