お外暑いンゴ……
妹が徳なら兄は武勇
「ん……ここは何処だ……?」
意識が戻ったかと思えば、何かに揺らされてる感覚であった
「声が聞こえる……」
暁人は声の主に意識を集中した
「フフッ……この子、良い眼をしてるわね」
「ああ、きっとコイツは大物になる」
「貴方の眼にそっくりだもの、きっとそうに違いないわ」
「ハッハッハ、すくすく育ってくれよ俺の息子よ」
この会話……おそらくこの世界での俺の父と母か
「貴方、この子の名前は……」
「もう決めてある、名前は劉騎、字は玄武、真名は暁人だ」
「暁人……いい名前ね」
「コイツには地平の彼方までの人を統べるべく大望を持たせた意味での名前だ」
「貴方の子ですもの、必ず成し遂げるわ」
「ああ、きっとな」
家族の団欒か……久しく忘れていたな……
それから翌年に妹の劉備こと桃香が産まれた、俺達兄妹はすくすく育っていく……はずだった……
「お父さんが……戦死?」
「ええ……さっき兵の方が来て知らせてくれたの」
俺が物心付いた頃、父が戦場にて戦死したとの訃報を受けた、涙を流す俺と母を見て桃香は不思議そうに訊ねてきた
「お母さん、お兄ちゃん。どうして泣いているの……?」
まだ幼かった桃香には俺と母が涙を流す理由が分からなかった
それからしばらく経過し、俺や桃香も仕事が出来るくらいになった頃である
「おう桃香、筵は売れたか?」
「うん、何とか売れたよ暁兄」
物心付いた桃香は俺を暁兄と呼んで一緒にいる事が多かった
「暁兄はどうだった?」
「俺の方もまあまあって言った所だな」
小さい頃から筵を織るのが上手だった桃香は一通り織り終えると町に売り出していた、逆に俺は不器用なのか分からないが上手くできなかった。そのため持ち前の腕っ節を活かし狩りや用心棒等をこなし日銀を稼いでいた
「暁兄は凄いよね、色々な武芸をこなせるなんて」
「身体を動かすのは小さい頃から好きだったからな、そういう桃香こそ器用だよな」
互いの苦手な部分は埋め合えばいい、俺達兄妹はそう思って育って来たのだ
それからしばらくして世の中が騒がしくなった、どうやら黄巾族のお出ましのようらしい
被害は各地に広がりつつあり、黄巾族は尚も勢力を伸ばしつつあるのだとか……そしてここ、幽州にも侵攻をしつつある
近くの町に売り出しに来ていた桃香はとある立て札に目がいった、その立て札には
「各地にて被害を出している黄巾族を止めるべく義兵を募集している、我こそはと思うものは是非に…… 幽州刺史、劉焉」
「……はぁ……」
立て札を見た桃香は思わずため息を付いた
(今の私には何の力もない、兄のように優れた武勇がある訳でもない……)
非力を恨みつつのため息だった
「そんな所で突っ立っててどうしたのだお姉ちゃん?」
声がした方へ振り向くとそこには小さな赤髪に虎の髪飾りをした女の子がいた、手元には身体よりも大きな物を持っている
「あ、アハハ……何でもないよ」
「それは嘘なのだ!!」
とても大きな声を聞いて桃香は身体が一瞬ピクッとした
「お姉ちゃんはあの立て札を見てため息をしていたのだ、これはきっと自分にもっと力があれば何か出来たって思ってる筈なのだ!」
名も知らぬ少女に自分の心中を言い当てられた……それ程までに顔に出ていたのだ
「大きな声がすると思ったらやっぱりお前か……」
そこへ美しい黒髪を靡かせた少女が現れた、彼女もまた小さな女の子のような武器を持っている
「義妹が失礼致した、私の名は関羽、字を雲長と言う、こちらが私の義妹の張飛、字は翼徳」
「私の名は劉備、字を玄徳と言います」
「劉備……もしや中山靖王の……」
「はい、そうですが……?」
「ふむ……」
そう言ってしばらく関羽は考え出す
(噂通りの方ならばきっと立って下さる……この方ならきっと……)
「劉備殿、詳しくお話を伺いたい。どこか落ち着ける場所はあるだろうか?」
「それなら私の家にどうぞ、母と兄の3人暮らしですので」
これが劉備、関羽、張飛の出会いであった
やっべえおもっきり演義流れだわ……
ええい、切り出したものは仕方が無い。突き進むのみ
主人公の影が薄い?気のせいやで