それではどうぞ
先の進軍途上にて陳到を加えた暁人達の部隊は無事に新野に入城を果たした、ラストに来ていた桃香達の部隊も特に問題無かった様だった
新野の近くには襄陽が有り、そこを治めるは同族に当たる劉表だ。現世にて覚えていた範囲としては前漢の景帝第4子魯恭王劉余の子の郁桹侯劉驕の子孫とある、まあこれは范曄の「後漢書」に記されているようであり陳寿の「三国志」には記載は何も無いのである。まあ陳寿は劉表と袁紹を同じように評価してた様だから贔屓か何かはあるかもしれんがそこまでは俺も知らん
とまあ、劉表に関してはざっとこんなもので襄陽の他には江夏(「えなつ」やなくて「こうか」な )も治めている。嫡男の劉琦でもいるのかな?
それで一部の臣下から劉表の庇護を受けてみてはと提案をされたのだが……
「だが断る」
と、スッパリ切っておいた。正直絡んで蔡瑁から殺されかけたり馬乗って段渓とかは願い下げだ、あ、でも伊籍には会いたいかな(迫真)
とまあ演義の展開を予想しつつ新野に潜んでいた訳だが生憎この乱世、そんなゆとりは無いようです
「報告のあった賊の出現場所はここで間違い無いな?」
俺は近所の住民から報告があったとある森まで来ていた、軍の長足る者が軽々しく動いていいものなのか言われたら何も言えん……しゃあないやろじっとしとるよりはええんじゃい
確認を取った俺は討伐隊を率いて森の中へと進む、報告によれば何でも二人の女の子が村に迫る賊を追い返していたとか、そして賊のアジトを突き止めたからそこへ襲撃を掛けると言い残し2人だけで向かったとの事
「フラグのような展開は勘弁だぞ……」
なんて思いつつ周囲を警戒しながら進むのであった
「やっと見つけた、奴等の根城」
賊の根城を眼前に捉えられる範囲にまで来ていた1人の女の子がそう呟いた
「ちょっと馮平、あまり出過ぎないでよ。敵の数多かったら私ら2人じゃ捌ききれないんだから」
そこへもう1人の女の子が現れる、後から現れたその子に対し馮平と呼ばれた女の子はこう答える
「分かってるわよ寇封、援軍が来たらでしょ?」
「村の人が最近来た軍の人に頼んでるみたい、確か名前は劉騎って人だったかな」
「劉騎……確か最近よく聞くようになったね、劉表の一族なのかしら……?」
「さすがにそればかりはねぇ……」
そう話し込んでいると賊の根城の方から銅鑼の音が響き渡っていた
「敵の襲撃ー!敵の襲撃ー!」
根城から続々と賊兵が打って出てきている
「うっそ!?私達の存在に気付いたの!?」
瞬時の出来事で寇封は驚いていたのだが……
「いや、違うみたい寇封……アレを見て」
馮平の示した方向には討伐隊を率いる暁人の姿があったのだ
「もしかして例の討伐の援軍かな?」
「かも知れないね。寇封、私達もそのまま敵の側面に回るわよ」
「了解」
視点は変わって、暁人も賊の根城を見つけた。報告の女の子は見当たらない様だが……
「今は眼前の賊をぶっ倒すだけだ、者共かかれ!!」
兵を鼓舞してそのまま切り込むことにした、脳筋理論だがまあいけるだろ
「1人!2人!ええい、まとめてぶっ飛ばす!!」
群がる賊兵共をぶっ飛ばし賊の大将を探していた。
「ん?あれは……」
敵地奥深くに来たところ、二人の女の子と二人の男が戦っている場面に出くわした。きっとアレが報告にあった女の子なのかも知れん
「敵将覚悟ー!」
「じゃかあしい、思考中に邪魔をするんじゃないわ!」
飛びかかって来た敵を蹴り飛ばし、俺は2対2の状況を見守っていた
「さあ大人しく罪を自白しなさい!」
眼前の賊の大将に向けて寇封はそう言い放った
「それとも私達に倒される?」
挑発の意味を込める馮平
「フン……貴様らような小娘に倒される陳生ではないわ!」
「言葉は不要、この張虎も右に同じだ」
「そう……なら仕方ないわね。寇封行くよ!」
「あいよ!」
馮平は張虎の相手を、寇封は陳生の相手をした
「あの二人……まだまだ動きが荒削りだがセンスはあるみたいだな」
遠目ではあるが動き方を見てそう判断した、大方我流で稽古でもしてたのだろう
「ふむ……決着は付いたようだな」
馮平は張虎を、寇封は陳生を討ち取った
大将2人を討たれた敵は瓦解し殆どがコチラに降伏した
「やったね、寇封」
「うん、終わったね馮平」
互いに敵将を討ち取り満足気なとこではあるが、俺は討伐の礼も兼ねて2人に話し掛けた
「この度の討伐の助力に感謝する」
声がした方に一緒に振り返る馮平と寇封
「貴方が最近新野に来られた方ですか?」
「いかにも、俺が劉騎である。二人の助力もありこの度の討伐も楽に進んだ事のお礼も言いたくてな」
そう話していたのだがマジマジと俺を見つめる馮平と寇封、うーん……返り血とかあるから正直グロテスクな格好だと思うのですが……
「い、いえいえこちらこそ援軍ありがとうございました。あ、私は寇封って言います、それでこっちが馮平です」
「私が馮平です、こちらからもお礼を言わせてください」
「いやこちらも当然の事をしたまでだ。さて、2人に折行って相談があるのだが…… 」
「相談ですか……?何でしょう?」
「その武勇を是非我が軍にて活かしてもらいたい、どうだろうか?」
「まさかの勧誘でしたか……」
「もちろん強制ではない、先約があればそちらを優先しても構わない」
そして沈黙、それを突き破ったのは寇封であった
「馮平、私はこの人の元へ行く」
「寇封?」
寇封はすぐに勧誘を承諾してくれたようだ
「この人の元ならきっと楽しい、そんな予感がしただけなんだけどね」
テヘッっと笑う寇封
「なら私も行かないとね、寇封の世話を見る人がいないだろうし」
「ちょっと馮平!!それどういう意味!?」
おーい……俺を忘れないでくれー……
「えーと……二人共大丈夫なのかな?」
「はい、馮平共々お世話になります!」
「ふぅ……」
馮平はため息を付いてるようだが寇封はめっちゃ乗り気である
こうして馮平と寇封を仲間に加え討伐を終えた俺達は新野へと引き返すのであった
察しの言い方は名前でわかるかも知れませんね
作中の張虎は張遼の子である張虎と名前が被ってるだけの賊武将です
的盧はどこかだって?……君のような勘のいい人は嫌いだよ……
読んで頂きありがとうございます。