ピンクのおっさんとホイみっ♪   作:せーや lv71

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難産だった…









いのちだいじに ぐわああああーーーーーッ!!!

 

 ダイくん達と共にバルジの塔で無事に合流できました。ヒュンケルが残ったそうですが、不死騎団の皆さんが向かったようですし何とかなるでしょ。

 

 「あの時のカリを返すぜクロコダイン!!」

 

 フレイザードにバルジの塔の上部から見下ろされています。憎々しい目でガン付けられていますがはて…?本当に心当たりがないのですが…何かしたかなー?

 

 「こいつを忘れたとは言わせねぇッ!!」

 フレイザードが胸のメダルを指さします。

 あ、思い出した…あの時だ。鬼岩城完成の日。六大団長へ大魔王(バーン)が褒美としてあの『暴魔のメダル』を授与した日だったね。

 

 

 大魔王が火柱を上げ、その中にメダルを置いて「褒美を取らせる」と言った時のこと。

 いやさパワハラも良い所だよ。こんな猛火の中に手を突っ込めとか正気かよ。しかも取ろうとしなきゃ忠誠を疑われるとかいうペナルティ付き、まいっちんぐ。とりあえずポーズだけでも手を伸ばしとこ。

 「あぢぃ…氷でもあればな…」

 ぼそり、とつぶやいたのをホイみんが聞いていたようです。

 「ホイみっ♪」

 ホイみんがフレイザードの体からつららを折って首筋に突っ込みました。

 「あふん、つめたっ」

 不意打ちをくらって前方につんのめってしまい…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぐああああーーーーーッ!!!」

 死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!消火器ーーー!!消火器!!BBQにされちゃうーーーーー!!!!

 

 「バ…バカなっ!!」

 「なんとっ!」

 「なんの迷いもなく業火に身を投じるとは…」

 「流石は勇猛で名高い獣王クロコダインよ…」

 

 ちがう!!!みんななんか勘違いしてる!!!ああ、言ってる場合じゃない!速く助けて止めてーーーーーー!!!!

 

 「あのヤロウっ、寄越せコラァ!!!」

 フレイザードがメダルをむしり取ります。

 

 (……ッッッツ、メダルにキズが……)

 暴れたクロコダインの爪が当たったのでしょう、メダルの表面にざっくりとキズが付いてしまっています。

 

「見事なり、フレイザード!!そしてクロコダインよ得ることはかなわぬまでも、お前の忠誠心はしかと見届けた。流石は勇猛で名高き獣王クロコダインよ!」

 

 こうして暴魔のメダルにはキズが付き、フレイザードには苦い思い出になったようです。おれは死なない程度に上手に焼けました。

 「ホイみっ♪」

 生焼け肉になりましたね。速く生肉にして。

 

 

 

 

 

 

「思い出したようだな!!オレの生まれて初めての栄光にキズを付けやがって…絶対に許せねえぇ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全部ホイみんのせいかああああああああっっ!!

 「ホイみっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「形だけの栄光にすがるなど小さい男だ」

 頭を抱えているとヒュンケルが参戦しました。やったぜこれで勝つる。

 「チッ結局全員そろいやがったか…ハドラー様も存外だらしねぇな。ヒャハハァ!こうなったら見せてやるぜ、おれの奥の手をな…」

 あ、次の流れ知ってる。確か『ボンバー○ン』の無敵自爆アタックを仕掛けてくるんだっけ?でももう、ダイくんが空の技を使えるしもう怖くないんじゃ……。

 

 

 

 

 

 

 

 「氷炎・六星結界呪法ォッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 バルジの塔を中心に3つの炎魔塔と氷魔塔が新たに出現しました。

 …え?なにコレ聞いてない。

 「ハァ…ハァ…クックック六芒星で増幅した禁呪法さ。効果範囲も狭えし寿命もべらぼうに削られちまうがそんなの関係ねえ。なにせ氷炎結界呪法の10倍以上は効果があるんだからよ…。ゼィ…ゼィ…この中じゃお前らの力は虫けら同然になっちまうんだぜえっ!!!」

 上空から見ると六芒星を描くように塔が配置されています。その中のおれたちはものすごい圧力がかかっています。

 「ヒュンケルが助っ人に来るのはわかってたからな…万一のために保険をかけておいて良かったぜぇ…。クロコダイン!手前ぇが来るのは誤算だったが、残らず罠にかかってくれたんなら結果オーライだぜ」

 ええー!!?おれのせいでみんなピンチーー!!!?ヒュンケルを助けたから警戒されたってことーー!!?予測できるか、こんな事態!

 何とかしたいがみんな走るのがやっとという有様です。更にみんなを取り囲むように地面を隆起させフィールドを精製するフレイザード。四方を壁で囲まれ抜け出られそうにありません。大きな柱も数本出現しました。本格的に『ボンバー○ン』のフィールドじゃねーか!

 更に、フレイムとブリザードが現れておれ達を追いつめます。

 

 「いかん閉じ込められた上に囲まれたぞ」

 「じょじょじょ冗談じゃねーぞ。呪文も使えなくなってるぜ!」

 

 上から影が降ってきます。その影はフレイムに直撃しました。

 

 「いかん、みんな柱の陰に隠れるんだ!!」

 「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 

 逃げ遅れたおれは直撃を喰らいましたが、その代わりに視ることができました。間違いありません、飛び込んできたあれはばくだん岩です。

 

 「フレイザード様!なぜこのような仕打ちをっ…」

 「ハッ!!いかにヤツらが雑魚同前に弱体化しようったってお前ぇらにとどめを刺せるとは思っちゃいねえさ。だ・か・ら・ぁ、俺がだめ押しをしてやってんじゃねーか、ギャアハハハハハハッ!!」

 

 フレイザードは上からばくだん岩を投げ込み、それに当たったフレイムやブリザードが誘爆に巻き込まれています。

 「あぶねえっ!」

 「完全に見境をなくしているわ…」

 「ピィ~~~!」

 「ヒャアァーーーーーーーハッハッハァ!!!サイッコーォだぜえ!!何もできねぇゴミをいたぶるのはよォ、今度は人間どもをとっ捕まえて遊んでみるかぁ…『ボンバー○ン』とでも名付けるかねぇ…、ヒャーーーーーハハハハハ!!!。

 

 あのやろおれの頭の中を読んだんじゃあるまいな。

 

 「フレイザード様、なぜですか??なぜこのようなことを…??」

 「勝つための作戦よォ、手前らも氷炎魔団なら命令に従いなァ。オレの栄光の礎になれッ」

 「そ…そんな…」

 

 くそ、あったまキた。部下を使い潰すのがお前のやり方か!?

 

 「おぉらよっ!!」

 「ひえええっっ!」

 「むんっっ!!!」

 飛来するばくだん岩をキャッチします。近場のブリザードが腰を抜かしていますね。あー接触しないでよかった。

 

 「おっさん!!」

 「クロコダイン!!!」

 「お…お前なんで…」

 「死ぬってのは嫌なものだろう…たとえ与えられた命でも、そう思う心は同じさ」

 おれだって死にたかねーよ。こちとらその一心で今まで生きとったんじゃい!!

 「命を大事にしなよ、そして自分以外の命も大切にしてやってほしい。勝手な願いだがな」

 ホント(おれの)命を大事にしてください。人生がウルトラハードすぎて辛いんです。「いのちだいじに」!!「いのちだいじにイイィィ」!!!!!

 「ほら、もう逃げな」

 ばくだん岩を解放してあげました。そんでひっそりと暮らしてください。戦争ダメ、絶対。ラブ&ピースですよ。

 あ、氷炎魔団の面々は逃げだしましたね。ばくだん岩も「ようすをうかがって」いましたがすぐに逃げ出して行きました。

 「チッ、うすのろどもめ。どうせ死ぬなら勇者どもと相打ちになってから死ねってんだ」

 あらカッチーン!生命を粗末にするあいつには相応の報いを受けてもいましょうか。

 

 「グアオオオオオーーーーーーーーン!!!」

 「うるせえな、吠えりゃ何とかなると思ってんのかよ」

 「ああ、もうなった」

 「あン?」

 「おれが誰とここに来たと思っている」

 

 外の柱を指さします。すると六芒星を描いていた柱が次々に倒壊していきます。

 

 

 

 「まったく、ただ塔を崩すだけとは…簡単すぎてつまらんな」

 「やってることはいつもの工事だしな」

 「ぼやくな、オヤカタにどやされるぞ」

 「アイアイ」

 

 氷魔塔が工兵部隊によって根元からなぎ倒されます。

 その一方で

 「グオォーーーーーーン」

 突如ようがんまじんが現れ、その巨大な炎の腕が炎魔塔を押し倒します。

 「一体あいつらは…うちの軍団のようがんまじんじゃねぇな?」

 「彼らはおれの友達さ」

 

 その昔子供のころパパンから「よいかクロコダインよ、獅子は我が子を千尋の谷に突き落とし、そこから這い上がってくる息子をさらに蹴り落とし、息も絶え絶えで這い上がってくる息子に止めを刺すという。かくあれかし」

 と言ってパプニカの火山の火口に叩き落されたことがありました。かくあれかし、じゃないよパパン。ママンも「おゆはんまでには帰ってくるのよ~」とかズレたこと言ってたしあんまりだよ。

 

 んで火口で死にかけているおれを助けてくれたのがあの溶岩魔人の皆さんでした。話をしたらめっちゃ同情されて地上まで親切に送ってくれました。

 道中パパンと鉢合わせするのが怖くて大回りをして帰ったら「おゆはんまでには帰ってくるようにって言ったでしょ、めっ!」とママンに怒られました。あんまりだよママン。

 そんなわけで彼らは命の恩人だったのです。別れるときに違うねぐらを探す、と言っていましたがまさか地底魔城の地下で寝ていたとは…。そんでフレイザードに住処をぶっ壊されて仕返ししに来たという訳です。

 いやホント助かりましたよ。溶岩に飲まれたおれをいち早く助けてくれたのも彼等だし、彼らが溶岩流を体を張って食い止めてくれなかったら不死騎団やオヤブン達も間に合わなかったかもしれない。彼らは二度目の命の恩人ですよ。

 

 「おれ達ばかりにかまっているからだ。足元の小さい者たちを虫けらとあなどるからこうなるのだ」

 

 程なく結界はすべて崩れ去りました…。

 みんなありがとう。おれ今回ほとんど働いてないけど。いやー楽でよかったわ。

 

 「て…て…手前ぇらあああああぁぁ!!」

 「これがおれとお前の人望の差だな」

 「ホイみっ♪」

 ホントそう思います。こっちは味方いっぱい、向こうは一人。最早かわいそうになってくるレベルですがなぜかこいつには仏心が湧いてきません。

 

 「そのスカしたええかっこしいのトコロがぁ!!いいぃちばん気にいらねえんだよおおおおぉぉ!!!!」

 ぶちキレて魔法力を五本の指に収束させるフレイザード。五つの冷気が右手に凝縮されていきます。

 ……ん?冷気?

 

 

 「とっておきだ!!地形ごとまとめて氷地獄にしてやるぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「五指・氷永凍結獄!!!(エターナルフォースブリザード!!)

 

 ファッ!!!?なにそれ五指爆炎弾(フィンガーフレア・ボムズ)でなくて???マヒャド五発とかおかしいですよフレイザードさん!!!

 

 シン…と周囲は静まりかえります。

 「ふっ不発だと!!?バカなっ!!!」

 「ならこっちでどうだ! 五指爆炎弾(フィンガーフレア・ボムズ)!!!」

 またしても不思議なちからでかき消されました。

 

 「散々呪法でひでぇ目に合わせやがって。同じことを仕返しされないとでも思ったのかよっ!」

 いつの間にかポップくんが『マホカトール』を発動させていました。

 「グッ…グムム」

 

 たすかったああああああ。ありがとうポップくん。後でどんぐりあげるね。やっぱり「ぐああああーーーーーッ!!!」ってなるのかと思ったよ。

 チッ

 あれホイみん?舌打ちが聞こえませんでした?

 「ホイみっ♪」

 …そうか、気のせいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なんじゃああああ!??こりゃああああ???」

 いきなりフレイザードの体が崩れ始めました。

 

 「か…体が維持できねえ、つなぎ合わせている部分から消滅しちまうっ…なぜだっ!!!?」

 

 「そうか…寿命か」

 むぅっ、知っているのかヒュンケル!!…茶化さずに聞いておきましょう。

 「あの手の呪法は術者の生命を削るとマトリフさんに聞いたな」

 「そうか、フレイザードは間をおかずに大規模な呪法を連発したから」

 「生命に限界が来たんだわ」

 「作られた生命ゆえに、危機感が足りなかったようだな」

 

 「ありえねぇ、ありえねぇありえねぇありえねぇありえねぇありえねぇ。こんな終わりかた…みとめねぇぞオオオォッ!!」

 やがてフレイザードはその身を塵と化しこの世から消えていった。

 

 「生命を省みなかった者の末路だ。なにより自分自身の…な」

 「自業自得だな」

 

 猛威を振るったフレイザードのあっけなさすぎる最後だった。地位と名声とは生命よりも優先するべきものだろうか。あいつとおれとでは生まれて来た背景がまるで違う。

 方や生まれながらに滅亡を予見しそれを回避するために生命をかけている者。

 方や生まれた証を立てるために生命を踏みにじり身の証を起てようとした者。

 

 おれはこいつとだけは絶対に分かり合えなかっただろう。ただ哀れだと、そう思った。

 大地には『暴魔のメダル』が妖しく光っていた。

 

 

 

 

 

 「ホイみっ♪」

 「ピ~ピピィピ~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 やーなんか拍子抜けする終わり方だったな。

 「ホイみっ♪」

 あとはお風呂に入ってぐっすり寝たい。

 「ピィ~ピ~!」

 

 

 なにやらスライムズが騒いでますね。おや、空中からミストバーンが見下ろしています。

 今更出てきて何の用だろう?フレイザードは消滅したしあの鎧は使えないはず。

 

 「よくぞ我が魔王軍の総攻撃をはねのけたものだ。もはやお前たちをこのまま見過ごすわけにはゆかぬ…我が魔影軍団最強の鎧が相手をしてやろう…」

 

 あ、結局出てくるのね。でもダイくんがもう空裂斬も魔法剣も使えるから今更感があるなあ。

 

 あれ?空から銀色のメタリックな鎧?いやロボットが出てきましたよ。なんか見たことあるような……はて?

 

 「出でよ、魔界最強にして最狂の兵器……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        キラーマジンガよ」

 

 

 

 

 

 オイィ!!コラ!!!!

 いくらなんでも今回はシャレにならんぞ!!!!

 

 「キラーマシンに似ている…」

 「ダイ、知ってんのか?」

 「うん、デルムリン島にパプニカの悪い賢者が持ち込んだんだ。魔王の作った兵器だよ。攻撃呪文がてんで効かないんだ」

 「げぇっ!!で…でもアバン先生に合う前のお前で何とかなったってことは…大したことはないんじゃないか?」

 

 キラーマシン程度と一緒にすんなよ!!おれの知っているマジンガ様なら、攻撃力は大魔王にも匹敵するハズだぞ。

 

 曰く、戦闘開始から2ターンの間に3人が死亡した。

 曰く、「そんな危険なわけがない」といって挑んだ冒険者が5分後血まみれで教会に戻ってきた。

 曰く、「ヘルクラウドに楽勝した我々が負けるわけがない」と自信満々で挑んだ男が武器と防具を奪われ全裸で戻ってきた。

 曰く、海底宝物庫におけるプレイヤーの全滅率は平均150%。全滅してまた挑んで返り討ちに遭う確率が50%の意味。

 曰く、ドラクエⅥにおける全滅第1位が真ムドー。第2位が海底宝物庫。

 など等数々の伝説と悪夢を築き上げたトラウマメーカーだぞ。

 ポップくん、その手の楽観視を専門用語で『死亡フラグ』というのですよ。今すぐやめなさい。

 くそっ、初見殺しにみんなを巻き込むわけにはいかないっ。

 

 おれはマジンガ様に「におう立ち」で立ちはだかります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「センジュツ・オーダー『二回攻撃』セレクト」

 「ウェポン・セレクト『はやぶさの剣』ミギウデ ニ セット」

 「ウェポン・セレクト『はやぶさの剣』ヒダリウデ ニ セット」

 「スキル・オーダー『はやぶさ切り』ジッコウ シマス」

 

 

 は?

 

 

 「キラーマジンガのこうげき」

 「キラーマジンガのこうげき」

 「キラーマジンガのこうげき」

 「キラーマジンガのこうげき」

 「キラーマジンガのこうげき」

 「キラーマジンガのこうげき」

 「キラーマジンガのこうげき」

 「キラーマジンガのこうげき」

 

 「ぐああああーーーーーッ!!!」×8

 「ク・クロコダイーーーーン!!!」

 

1ターンに8回攻撃だってぇ!!?どこのヒッテンミツルギスタイルだよっ!!攻撃回数だけなら大魔王(バーン)より上じゃないか!!!

 

 「ク…クロコダインが…」

 「一瞬でズタズタに…」

 「バカな…海波斬以上の速度だとっ…」

 

 アカン、一瞬で戦闘不能にされた。もう指一本動かんわ。ギャグ補正仕事しろよ。

 みんなもマジンガ様に蹴散らされています。なにこの逆無双ゲーは。速い、強い、硬いの三拍子。呪文も効かないっと、どないせーちゅうねん。

 ダイくんとヒュンケルの挟み撃ちを片手で捌いてる。アームの動きが精密かつ早すぎるわ。スタプラが二刀流してるようなモンじゃねーか。あ、ポップくんふっ飛ばされた。ライデインが跳ね返されて、ヒュンケルがマァムちゃんを庇って負傷しましたね。

 眼が霞んできた。このままだと間違いなく全滅する…ぞ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 純粋な「力」の暴力。誰しもが傷つき打ちひしがれ、全滅を覚悟したその時。

 髑髏の旗印にした黒色の御旗と共に人影がマジンガの前に降り立った。

 「むぅっ、何奴!??」

 

 

 

 「我ら、命《メイ》無き死者の兵!!」

 

 「人に合っては人を切り、鬼と合っては鬼を切る」

 

 「引かず、迷わず、朽ちず、恐れず、此の身一つが一振りの刃」

 

 「我ら!!不死身の不死騎団!!」

 

 「義無く、情無く、仁も無し!!!ただ忠によりてここに有りッッ!!!!」

 

 

 

 「お待たせいたしました。ヒュンケル様!!」

 「敵と戦うならば弾除けは多い方が良いでしょう」

 「危なかったわね。でももう大丈夫」

 「私達の願いは、全ての敵を消し去ること!」

 「残党の掃討は終えました。いざ大将首を討ち捕りましょう!」

 

 不死をかたどった髑髏の紋章が天高く掲げられました。

 

 「お前たち、なぜここに来た!?」

 

 「「「「「「無論!!ヒュンケル様に仇なす敵を討たんが為!!」」」」」

 

 彼等は一斉にキラーマジンガへと飛び掛かりました。

 体が砕け腕がヘシ折れ、頭が吹き飛ばされても彼らはマジンガに喰らい付きます。

 

 「皆の者、骨のあるところを見せてやれ!」

 「臆するなっ!!例え死しても誇りを持って御楯となるのだあっ!!」

 「魂の一辺をもって壁と成せ!一歩たりとて下がるでない!!!!」

 「命を惜しむな!名を惜しむな!背を見せるを恥と知れ!!」

 

 「我ら無敵の不死騎団!!総ては!!ヒュンケル様のために!!!」

 

 

 『闘魔滅砕陣』

 

 情勢を窺っていたいたミストバーンが技を繰り出す。

 蜘蛛の巣を模った暗黒闘気が地を這うように不死騎団を拘束した。

 

 「ぬおおぉぉ、体が動かぬ」

 「おのれ…我らを縛るつもりか!」

 「前を見よ!!例え自由を奪われようとも魂をもってで楯となれぃ!!」

 

 マジンガが身動きの取れない兵を叩き潰して行く。

 彼等は下を向かず、眼前の機兵を呪い殺さんばかりの眼で睨めつけて散って逝った。

 

 「邪魔をするな…亡者ども」

 ミストバーンが淡々とした口調で舞い降りる。

 

 (地底魔城でお前たちを見殺しにした…ふがいない俺のためにそこまでして…)

 (許しは乞わぬ、この一刀をもってお前たちの忠義に答えるっ!!)

 ヒュンケルの気迫に呼応するように全身から闘気が吹き上がる。

 

 「うおおおおおっっ!!!!」

 「こ…これは闘気!!しかも暗黒闘気じゃない、この眩しい闘気はっ!」

 

 「おれの前で…二度と誰も失わせはしない!!!」

 ヒュンケルの剣閃が闇の糸を断ち切りました。

 

 「ヒュ…ヒュンケルが空の技をっ」

 「バ…バカなッ」

 

 「ヘっ世の中そうそう旨くいかねえってことよ…師匠から一日で教わったとっておきを見せてやる!!重圧呪文(ベタン)!!」

  ポップの放つ重力場がミストバーンを押しつぶす。

 

 「お前の技は腕が上がらなきゃ使えねえんだろ!!!ほれほれバンザーイしてみなっ!!」

 「ぬうう…」

 

 「今が好機だ!!かかれーーーぃ!!」

 「我らが隙を見出せば、あとはヒュンケル様が成してくれるっ!!」

 「されば!!いかに最凶の機兵と言えども死中に活を持ってすれば!!」

 「おうさ皆の衆!ここが死に時と心得よっ!!!」

 

 不死騎団はマジンガに取りつきその巨体を数に物を言わせて押し倒した。

 

 

 「みんなっヒャドが行くわ!!足元を空けて!!」

 マァムが魔弾銃でマジンガの脚部を狙い撃つ。見事に地面ごと凍結させ動きを封じた。

 

 「行くぞヒュンケル!!合わせてっ!!!」

 「応!!!ダイっ!!!」

 

 「3倍!!!ライデインストラーーーーーッシュ!!!」

 「ギガスラーーーーーーーッシュ!!!」

 

 「おおっモルグ殿、あの技は!!」

 「バルトス様、視ておられますか…。貴方の遺志はしかと受け継がれておりますぞ…」

 

 二つの剣撃がマジンガの両腕をもぎ取りました。

 

 

 「センジュツ…ジジ…スキル…センタク…ジジ…ジッコウ…」

 

 

 「まだ抵抗するかあっ!!」

 「ポップ!!一緒にっ!!」

 次弾を装填したマァムが銃を構えます。

 

 「「イオラーーーー!!!」」

 

 ポップとマァムの合体呪文が直撃し今度こそキラーマジンガは爆散しました。

 

 「「「「「いやったあああああーーーーーー!!」」」」」

 

 「おおっ我らの勝利だ!!」

 「勝鬨をあげぇいっ!!!」

 「「「「「「「「「ウオオオオオオオォォォーーーーーーーーーーー!!!」」」」」」」」」

 「ピィ~~~~♪」

 

 「……………………」

 すべてを見届けたミストバーンは誰にも悟られぬまま戦場を後にした。

 

 

 「お…終わった~」

 「信じられない強敵だったわね」

 「万歳というムードではないな」

 「そうだね。でもこの中の誰一人でも欠けていたら勝つことはできなかった。さあ行こう、一番大事なことが残っているんだ。みんなでレオナを迎えに行こう」

 「「「「「おお~~~~~~~っ」」」」」

 「ピィ~~」

 

 「誰か忘れているような…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ずっとここで倒れてるんですけど。おれいらない子…??」

 「ホイみっ♪」

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「バ…バカなっ」

 

 おれたちがバルジの塔の最上階で見たモノは部屋の大部分を覆い尽くす呪氷だった。

 

 「一体なぜこんなことに?」

 「フレイザードを倒したから氷は解けているはずでは…」

 「そうか…六星結界呪法か!!」

 「ポップ?」

 「アバン先生に聞いたことがある。六芒星は邪悪な呪文の威力を倍増させるって…それで!!」

 「姫の氷も威力が増したということか…」

 

 ポップが残りの全魔力を注いでも溶かしきれません。

 おれも焼け付く息(ヒートブレス)で手伝いますが焼け石に水です。

 なんてこった、フレイザードのやつ…死んだあとに一番厄介な問題を残して逝きやがって…。

 

 マァムの魔弾銃を犠牲にした『二重ベギラマ弾』でさえ、部屋の半分の氷を溶かすほどの効果しかありませんでした。

 

 不死騎団や、動けるメンバーは力づくで氷を壊していますが日没まで到底間に合いません。

 

 「万策…尽きた…か!?」

 「そんな…ウソだろ…」

 

 「いやだ、そんなのいやだよ!!せっかくここまで来たのに。何か方法があるはずだよ。そうでしょ!?ポップ、マァム…ヒュンケル、クロコダイン!…助けてよ…誰かレオナを助けてよっ……!!」

 

 ダイくんの悲痛な叫びが響きます。正義の力の無力さを味わったことはないでしょう。

 おれは…おれたちは、どうすればいいんだ…?

 間もなく日が沈みます。時間が……ないっ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「その姫さんを助ければいいんだな」

 

 

 「お…お前は……フレイムA!!!」

 声の主は炎氷魔団のフレイムでした。額にアルファベットがありますね。後ろから続々と彼等の仲間が氷に取りついて行きます。

 呪氷は見る見る溶けだし水となって流れて行きます。

 

 「勘違いするなよ。命を助けてもらったからカリを返してやるだけだ」

 「もう俺たちは魔王軍から抜ける」

 「だが、その前に受けた恩だけは返しておいてやる、これであとくされなしさ」

 

 炎氷魔団の手によって氷はみるみる融けて行きます。

 ブリザード達も砕けた氷を外に出しています。

 

 窓際から塔を這い上がってきたようがんまじん達も氷を解かす手伝いをしてくれます。

 「みんな…みんなありがとう。本当にありがとう」

 「不思議なもんだ、ちょっと前までは争い合ってたってのにさ」

 「誰かさんのおかげかもしれんのう」

 「ん?何か言ったか?バダックさん??」

 

 程なくレオナ姫は救出されました。

 

 「よかったわい…姫様…。」

 「よかった…無事でよかったよ。レオナ」

 バダックさんもダイくんも感激でむせび泣いていますね。

 レオナ姫は無事か。ふー助かった。

 

 「きゃあああああ!魔王軍!!」

 

 「え?フレイム達が居るけど彼らは命の恩人…」

 見渡すと、骸骨の兵士達に土まみれのモグラ達にフレイムとブリザードといった魔物の群れがぐるりと取り囲んでいます。…モンスターハウス??

 

 「今度は配下を率いてやって来たのね獣王クロコダイン!!下がりなさい!」

 へっ?なんでおれを見ますか?そこで。あ、呪文はやめ…

 

 

 

 

 「イ オ ナ ズ ン !!」

 

 「ぐああああーーーーーッ!!!」

 

 「「「「「「「「「「ク、クロコダイーーーーーーン!!!」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後開かれた勝利の宴では、包帯でぐるぐる巻きにされて寝かされたピンクのおっさんの姿があったとさ。

 「ホイみっ♪」




次回はいよいよ「あの男」が登場しますね

 死んだな(確信)






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