構成力がないので続かない。
いまおれたちは妖魔師団と魔影軍団に囲まれている。
バダックさんのおかげでバルジの塔でレオナ達と合流で来たんだけど、レオナがフレイザードに捕らわれて氷漬けにされてしまった。フレイザードの体を半分吹き飛ばしたのに、呪法で結界を張られて撤退したんだ。氷炎結界呪法…炎と氷二つの塔を建て、その間にいる敵を弱体化させてしまう恐ろしい呪法だ。
おれたちはマトリフさんのもとで体制を立て直して、結界を壊すために二手に分かれてバルジ島へ乗り込んだんだけど、そこには残る軍団とその軍団長が罠を張って待ち構えて居たんだ。
おれはここで負けるわけにはいかないっ…。おれ達にこの世界を託して逝ったクロコダインの為にも…。
その包囲網はあっさりと瓦解していた。
「な…なんじゃあ!こりゃあああああ!!」
驚愕するザボエラ。妖魔師団、魔影軍団はほぼ全滅しかけていた。多勢に無勢だったのでバダックさんが大量に量産した爆弾で爆☆殺し、ダイがライデインを連発して焼き払ったのである。
「こ…こやつらは今までの戦いを経て急激にレベルアップしておる…。こうなれば更なる援軍を…」
ザボエラの号令のもと、まほうつかい、ドルイド、カメレオンマンら妖魔師団の増援部隊があらわれた。包囲をじりじりと狭めてくる。
「くっキリがない…、ゴメン。バダックさん、ゴメちゃん。おれ一人じゃ守りきれないかもしれない」
「なぁに、死ぬときは一緒じゃよ。」
「ピィッ、ピィッ!!」
その時、陶器が割れたような高い音がしたと思うと包囲の一角が轟音と共に消えうせた。否、消えたのではなく突如大穴が魔王軍の足元に出現し、敵の大部分を飲み込んだ。
「こ…これは一体…」
「おれたちさ!!」
「ホイみっ♪」
「この声は…!」
「獣王クロコダイン!!!」
おっす実は生きてました。クロコダインです。何回目だよこのパターン。つくづく命冥加な因果ですね。ここに居るのはおれだけではないので、皆さんにも出てきてもらいましょう。
号令のもとキラースコップのオヤカタを筆頭に、ドロヌーバ、ぐんたいアリ、せみもぐら、の大群が魔王軍を取り囲む。
「こ…これは、うわさに聞く獣王の軍勢…『大獣王団』!!」
「まさか…やつめついに私兵を投入してきたというのか!!?」
いや、違いますよ。私兵なんて持った覚えはありません。パパンじゃあるまいし。彼らは地底魔城の整備部隊なのです。地下にある地底魔城には、水はけや壁の補強等のインフラを整備する工事専門の工兵部隊が存在します。
折しもヒュンケルとの決戦時、ポップくんが大量の雨を降らせたり、おれが壁をぶっ壊し続けたせいで、彼らに
おれは彼等の活躍で地下から助け出されたという訳です。そう…彼等と一緒に、ね。
フレイザードが地底魔城を沈めた、と本当のことを伝えると。みな喜んで力を貸してくれました。特にオヤカタと彼等は、リベンジする気マンマンです。
彼等も今頃助っ人に向かっているんじゃないかな?
バルジ島、氷魔塔跡地
「氷魔塔を砕いてポップとマァムを先行させるために殿を買って出たのだが…ここがおれの死に場所となるかも知れん。」
ヒュンケルは一人窮地に立たされていた。バドラーの親衛隊を蹴散らして氷魔塔を破壊した瞬間にハドラーが現れ、ヒュンケルの体を貫いたのだ。
「さらばだ、あの世でアバンに合いに行けいっ!!」
いまとどめを刺さんとする処へ剣が投擲されハドラーを阻む。
「な、何者だ!!」
「お…お前たちは、」
「我ら、命《メイ》無き死者の兵!!」
「人に合っては人を切り、鬼と合っては鬼を切る」
「引かず、迷わず、朽ちず、恐れず、此の身一つが一振りの刃」
「我ら!!不死身の不死騎団!!」
「義無く、情無く、仁も無し!!!ただ忠によりてここに有りッッ!!!!」
「ご無事ですかな、ヒュンケル様」
「モルグ…なぜお前たちが…」
「クロコダイン様達とともに地下より逃げおおせましてな、マグマに埋まった者も獣王殿に掘り起こされて無事でしたわい。我らは生き埋めになった程度では死にませぬからな」
「皆、あなた様を一騎士として、敬愛しております。」
「バルトス殿の騎士道精神を受け継ぐ者と思えばこそ。もはや、不死騎団は魔王軍ではありません。」
「おのれ、かつての亡霊どもが!」
「敗残兵どもがいくら束になろうと…」
「だまれいっ!!」
「我らには、血よりも熱い魂があるんだああああっ!!!」
「魔王に尻尾を振るう犬どもめが!!我らの鉄の忠義を知れいッ!!」
「皆の者!!!骨のあるところを見せてやれえっ!!」
「今こそ戦え!!皆の衆!!彼奴らの生命を刈ってやれいッッ!!!」
「ティロ・フィナーレ!!!」(物理)
躯の兵がアークデーモンやガーゴイルを押し返してゆく。
死を恐れぬ魔の行軍が津波となって魔王軍を追い散らした。
乱戦の中、一人のがいこつ剣士(♀)がマントを翻して魔王の前に立ちはだかる。
「私はただ、もう一度あなたの隣へ立ちたかった。たとえこの身が呪われようとも」
「お…お前は!!?」
「おのれ、使い古しの出来損ないどもめが!!」
ハドラーの地獄の爪《ヘルズクロー》が彼女を貫く。
「ぐぅうっ、こ・の瞬間を待っていたんだあああああ!!!」
彼女はハドラーを自らの足ごと地面に縫い付け固定した。
「その気になれば痛みなんて…完全に消しちゃえるんだ!ヒュンケル様、本懐を果たし下さい!!」
「おのれぃッ!!」
ハドラーが振り払うかの如く、破壊呪文《イオラ》を叩きつけようとする。
ヒュンケルの脳裏に幼いころの光景がよみがえる。
考えるより早く彼は動いていた。そして破壊の爆炎が巻き起こる。
「ヒュ…ヒュンケル様…、なぜ!!なぜ!私を庇ったのです!!??」
「た…例え魔物でも、仲間を見殺しにして勝利したのではあの世でアバンに合わせる顔がない…それに父も喜ぶまい」
「ヒュンケル様…私は部下ですッ!そのような恐れ多いことを…」
「フハハハッ、笑わせてくれる、まるで茶番劇だな。アバンも、バルトスも、その低次元な『優しさ』とやらにほだされて死んだのだ。戦場でお涙頂戴など片腹痛いわ!!!」
「そうか…俺はアバンと同じことをしたのか…」
「親子共々俺に逆らったことを後悔してくたばれいッ!!」
走馬灯のように浮かぶかつての思いで…。バルトスの名にヒュンケルの脳裏に閃光が走る。それは剣技を見せてくれとせがむ自分にバルトスがただ一度だけ見せてくれた技だった。
(この技はワシをもってしても終ぞ完成できなんだ…。ヒュンケルや、お前の名前の由来は教えたな。その名にふさわしい剣の使い手となった時この技を伝授しよう。そして、いつの日にか魅せてくれ。かつて不死身の魔界の剣豪があみ出したという究極の技をワシの息子が振るう雄姿をな…。)
あの見事な一撃を…今、この瞬間にッ!!
ヒュンケルは彼女の剣を取り水平に構えて振りぬいた。
「ギガ……スラアアァァッーーーーーーシュッ!!!!!!」
その剣は見事、ハドラーの爪ごと左腕と左胸部の心臓を切り裂いた。しかし。
「ま…まだオレには右腕と右の心臓が残っておるわ!!」
執念かハドラーはなおも立ち上がり、その凶腕を振るわんとする。
ヒュンケルは微動だにしない。
「闘気を使い果たしたか…今度こそくたばれッ!!!」
「ヒュンケルさまああッッ!!!」
その時ヒュンケルの手が剣を逆手に持ち替えた。
「ゲェッ!!!」
ハドラーの腕がヒュンケルを捉える前に、彼の横なぎの一撃がハドラーの右胸部を切り裂き胴切りにした。
「ア…アバンストラッシュ…だと!???先ほどのギガスラッシュでヤツ自身は意識を失っていたハズ…闘志のみで戦ったというのか…見事だ…ヒュンケル…まさに貴様は…真の…戦士……」
ハドラーは倒れ伏し、ヒュンケルの目に光が戻った。
「う……今の一撃は全くの無意識だった…。…師よあなたはいつも俺を見守ってくれているのですね…」
「ヒュンケル様ご無事で」
「ああ、ありがとうサヤカ」
「っ……ヒュンケル様、わたしの名前を…」
「覚えているさ。みな俺の仲間だからな」
「もったいないお言葉です…ヒュンケル様…」
(父よありがとう、貴方は死して大いなる遺産を俺に残してくれた。彼等とダイ達を守るために、この生命果てるまでこの剣を振るうと誓おう)
かくして氷魔塔の激戦は決着を迎えたのである。
パチイイィィィン……
おれのフィンガースナップの音が響きます。
それを合図に炎魔塔が崩れ落ちました。おーおーうろたえてるうろたえてる。特にザボエラの爺さんが。
タネと仕掛けのある手品です、魔法じゃありません。決戦の場がここバルジ島であることは原作知識で知っていましたので地底魔城が崩壊してからの三日間であらかじめ罠を張っておいたのです。塔ができたら地下から地盤を崩してすぐにでも倒せるようにしておくように、と彼等にお願いしただけですがね。しかし、塔だけでなく魔王軍の増援まで罠に落とすとか良い仕事をし過ぎですね。地底魔城のインフラ部隊マジパネェ。
あ、ダイくん達はとっくに先行させましたよ。
さすがにみんなを鉄火場に放り込むわけにはいきませんので一計を案じます。ミストバーンに塔が崩れた今防衛線の戦略目的が無くなったぞ、と凄むとフッと消えて行きました。多分ハドラーの蘇生に向かったんじゃないかな?
よっしゃあ一番厄介なのが居なくなった。あとは何とかなるか。ザボエラ相手にもこの戦力差でまだ抗うか?とか脅したらすぐに逃げていきました。うん、分かっていたけどチョロいわ。不利になったら逃げだすから扱いやすいよね。
さて…あとは残党をどうするか…あ、みんな落とし穴に落として石投げてる。うわードロヌーバが足を引っ張って抜け出られないようにしてる、鬼畜コンボすぎるわ。ミストバーンが居なくなったのでさまよう鎧は動かなくなってるし、魔法使いたちは泥まみれコブだらけで助けを求めています。もうそのへんでいいんじゃないかな?
かくして炎魔塔の激戦は決着を迎えたのである。
「…激戦?ヒュンケルの時と扱い違いませんか??」
「ホイみっ♪」
ダイ大ワールドは数の暴力を質の暴力がなぎ倒す世界です
おっさんは生き残れるか?
死ぬだろうから続かない。