死んだら続かない。
ごん太の閃光と轟音が天へ返っていきます。
衝撃の余波が国中を伝わり、野生の動物たちが恐慌状態に陥ってます。鼻を突くような独特の臭いがしますね。これがオゾン臭でしょうか?おれの友達連中は行儀よくおすわりできているだろうか。ふと的外れな心配事が脳裏に浮かびました。
あ、どうも。クロコダインです。なんで生きてるか知りませんが、生きてました。
「ホイみっ♪」
あ、うそうそ。ホイみんの回復呪文のおかげだよね。多分死に切る前に間に合ったんじゃないかな?
眼前のみなさんがこの世の終わり見たいな顔をしていますね。そらそうでしょ。も最終回でもいいんじゃないかな?ってくらいの盛り上がりを見せてから放ったダイくんの必殺技を受けたボスが立っているんですもの。絶望感で一杯でしょ。
「ホイみっ♪」
誰もが戦意を喪失している中ダイくんだけ、こちらを睨みつけています。もう体力も魔法力もカラでしょうにまるで瞳から力が失われていません。
「ホイみっ♪」
流石です。やっぱり彼は世界を託すに値しますね。もう勇者とか竜の騎士だとかそんなの関係なく。彼個人の資質なのでしょう。
「ホイみっ♪」
「見事な技だった。おれの負けだ」
「えっ」
「小僧、お前にもだ。ただ強き力を振うだけが闘いではないとな」
「クロコダイン…」
作戦目的は完了しましたし、あとは彼らを称えて引き揚げるだけです。ダイくんは意外そうな顔をしましたが、こっちだっていっぱいいっぱいなんだからねっ。
「ホイみっ♪」
さっきからドサマギにホイみんが手当り次第に回復呪文をバラ撒いています。いたずらはすれどキッチリ怪我人は治すあたり、にくめないやつなんです。時々度が過ぎますが…。
「グオオオオオオーーーーーーン!!」
全軍撤退の雄たけびを上げます。幸いというか、ロモスは王宮以外に被害はないし。近場の魔物たちは、王宮の復興が終わるまではこの国の人間から無体をされることはないでしょう。大魔王が倒されるまでしばらく大人しくしててもらいましょう。
さて、逃げだ…もとい引き揚げましょう、それから彼らにさらなるハッパを掛けなければ。ここはやはりあのセリフで決めましょう。
「……さらばだ、ダイ。…負けるなよ…勇者はつねに強くあれええええぇぇぇぇっ↑!!??」
良い所でがる太に鷲掴みにされて天空へ掻っ攫われました。舌噛んだよ、痛いなあ。
「クアアッ」
なになに?雄たけびを聞いて急いで飛んで来たって?うん、ありがとう。でももうちょっと待っててくれても良かったのよ。
「ホイみっ♪ホイみっ♪」
はやく帰ろうって?こらホイみん。今がる太を急かすんじゃありません。
「クアアアアッッッ!!」(キリッ!!)
あーあやる気出しちゃったよ。あんまり力を入れないでねって、痛い。痛い!!おなか捕まれちゃってるから、傷口開いちゃうから。痛いってばーー!!
「ぐわああああーーーーーッ!!」
「ホイみっ♪」
「王様!!物見の兵から報告が。地平線を埋め尽くすほどひしめいていた魔物の軍勢が一斉に姿を消しました」
「何!?本当か!!むうう…やはり、あ奴が勇猛で名高い獣王クロコダインじゃったか…」
「知っているのかですかブラス老?」
「ウム、魔王亡き後全世界の魔物に号令をかけ得ることができる者がおると聞いた。百獣を束ねる獣の王…すなわち獣王!!」
「そんなすげぇヤツだったのか…」
「わたしも噂程度しか聞いたことは無かったわ…」
「とんでもない相手だったわね…」
「ピィ~」
「おれたちよく生きてたもんだぜ」
「もしあやつがなりふり構わす攻め立てておれば、今頃我らはなすすべなく蹂躙されていたやも知れぬ。兵士諸君、よくやってくれた。復興は大変であろうが力を貸してくれい」
「「「「「「「ハイッ!!!!!」」」」」」」
「特にダイよ。このたびの勝利はまさにお前のおかげじゃ…。晴れて今日から『勇者ダイ』を名乗るがよい」
「すげえぜ、やったな、ダイ」
「おめでとう、ダイ。みんなから認められたのよ。素晴らしいことだわ」
「ピィ~~~~♪」
「王様…みんな…おれはまだ『勇者』を名乗れません」
「「「「「えええっ!!?」」」」」」
「おれ…勝ったんじゃない。みんなのおかげで、みんなで頑張ったから。クロコダインを追っ払えただけなんです。クロコダインの言うように、もっと強くならないと胸を張って勇者を名乗れません!!だからっ!!!」
「ダイよ…成長したのう…」
「あい、わかった。おぬしのさらなる活躍と成長を祈っておる。それでもこの国の誰もがおまえをこう呼ぶであろう。『小さき勇者、ダイ』と…」
それから数日後~
お、悪魔の目玉発見~。無理やりハドラー様宛てに退職届けを押し付けておきました。退職理由?勇者ダイとの決闘に余計な横槍を入れられたからとか書いておきました。ザボエラの爺さんが邪魔したのは事実だしね。責任を全部押し付けてやろう。せいぜい冷や飯を喰らうがいいわ。全部ザボエラが悪い。
先の展開はわかっていたので鬼岩城へは誰も連れて行ってません。いつでも逐電できるように用意していたのですよ。それは…ハナっから『何も持ち込まない』こと。常に身軽でいれば、身一つでいつでも抜けられますからね。鬼岩城の割り当てられた室内であんまり私物がないものだから、無趣味で面白味のない奴と思われていたようです。城内で流行ってたチェスにだって誘われたことないし、ぐすん。
次の舞台はパプニカ王国です。海を越えてホルキア大陸へ向かいましょう。
そこで、マーマンのざりおんを呼んで、お願いして連れてってもらいました。おれの巨体を乗せてもびくともしないグッドマッスルなビッグガイです。最近なんて、「お前獣王名乗ってるんだってな、じゃあ俺は海王名乗るわ」なんて事言ってました。結構ノリの良い奴です。
子供の頃ホイみんのいたずらで、3日3晩ビッグホーンに引きずられた所で綱が切れ、勢いそのまま崖下に落下。海岸で甲羅干しをしていたマーマンたちの群れに放り込まれてボッコにされました。そんでいつものマモノミュケーション(物理しかない)後、和解して友達なりました。彼ら曰くタフな奴に悪い奴はいないそうです。ホイみんの治療が間にあったとはいえ、流石にあの時は死にかけたけど。今では親友やってます。
道中何事もなく、無事パプニカに到着。ざりおん、ありがとね、今度たくさんの山の幸を送るよ。
地理にはそこまで明るくないので、高高度から目を凝らして探索します…。現地のおおがらす達にお願いして手分けして探索してもらいました。程なく神殿らしき跡地を見つけました。あ、ダイくん居ましたね。闘魔傀儡掌で動きを封じられ、今まさにとどめを刺されそうにしています。ダイくん結構強いはずなのに一方的にやられてるなーと不思議に思いましたが。考えてる余裕はなさそうです。体を張って止めるしかありませんね。やっぱりこのパターンか、痛いんだぞちくせう。ヒュンケルの必殺の刺突へ割り込みます。
「とどめだ!!ダイ!!!」
「ブラッディスクライド!!!」
なんとか、身を挺して見事ダイくんをかばうことに成功します。
「ああああっ!!」
「お前はっ!!」
「バカな…獣王…クロコダイン!!!」
ヒュンケルの剣はクロコダインを貫く…ことはなく停止しました。
その秘密は…少年ジャ○プ5冊を鎧の中に仕込んでいるのです。この世界にもあったんですよねージャ○プ。転生してからHUN○ER×HUNTERの続きが見れるとは思わなかった。○樫センセ異世界で仕事してたのね。さておき展開がわかっていれば対策も練れるというもの。2000ページ以上の紙の装甲、抜けられると思うなよ。
「何のつもりだクロコダイン!!」
おや、退職届は入れ違いになったのでしょうか?まあ、問答している時間が惜しいのでおおがらすたちにダイくん達をさらってもらいます。
「おのれ、みすみす逃すと思うか!!」
「今、ダイを殺させるわけにはいかん!」
ヒュンケルの腕をつかんで組み打ちを仕掛けます。っつーか武器の間合いで切りあったら、瞬く間にナマス切りにされてしまいます。
「放せクロコダイン!!!」
「いいや、絶対に放さん!!」
程なくおおがらすたちの姿が見えなくなりました。どうやら無事に安全圏まで逃げられたようです。おれもダイくん達を助けたので逃げるとしましょう。間違っても串刺しはゴメンです。決着はダイが付けに来るだろう。とか言って煙に巻いておこうとすると…。
「人間に付くというのであれば、貴様が一番の障害となろう!!このまま見過ごすわけにはいかん!!この場で倒してくれる!!」
ハイ、そうなりますよね~。見逃してくれないかな?それにね、過大評価ですってば。
「まともにやりあったらキミと勝負にならないでしょ」となだめようとしたら。
「フッ…我が必殺剣を止めたお前にはその言を吐く資格がある」
と、返されました。うえぇ~~盛大に勘違いしてらっしゃる。とんでもない誤解です。そんな戦闘力ありませんってばーー!!全部ジャ○プの歴史の厚みのおかげですってば!!何とかうまい言い訳を考えてこの場をしのがないと…。
「勇猛で名高いクロコダインに生半可な攻撃を仕掛ける愚を思い知った」
「俺の最大の技を喰らわしてやるわ!!」
ヒュンケルが剣を顔面に納め、全闘気を額に集中させ始めました。大地が震え、光と轟音が立ち昇ります。
あ、もう手遅れだわ。次からはうまい言い逃れを考えておこう。
…次があればの話だけどね…。
「グランドクルスーーーーーーーー!!!!!」
「ぐわああああーーーーーッ!!」
「オチがマンネリ化してきたな」
「ホイみっ♪」
続かない。