ピンクのおっさんとホイみっ♪   作:せーや lv71

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何とか最終回まで書き上げたので投稿します


神の標

 

 「……ハッ!!?」

 どうやらいつの間にか気絶していたようだ。

 触手の拘束が解けている。得体の知れない肉の繭から這い出すと魔力炉は跡形もなくなっていて、わずかな肉片だけが散らばっている。見上げると空へ大穴が開いていた。おそらくダイの竜闘気砲呪文(ドルオーラ)だろう。

 「くそう、油断した」

 触手を引きちぎり抜け出す。ホイみんは無事のようだ。

 「ホイみっ♪」

 天魔の塔の方ですさまじい力のぶつかり合いを感じる。もう決戦は始まったか、急いで救援に行かなければ。

 

 天魔の塔内部へ到達し、そこには傷ついたダイくんとポップくんそしてレオナ姫が既に真・バーンと対峙していた。

 後続のみんなに追い抜かれたあたり、随分長い間眠っていたようである。周りには鈍く光る珠がいつくか転がっている。あれがバーンの珠か。

 

 「どうやら間に合ったようだな」

 「クロコダイン!!」

 「おっさん!!」

 「来てくれたの!?」

 「ピィ~~」

 

 とはいえまともに戦える相手ではない。おれが出来る事と言えば…。

 「ダイの回復の時間稼ぎくらいはしてやるさ」

 体を張る事だけだッ!

 

 「相手が獣王クロコダインならば余も奥義を尽くさねばなるまい」

 大魔王が上下に腕を構える。

 天地魔闘か?だがおれはこの攻撃を知っているぞ。距離を取って見に回れば…。

 「だめだ!!クロコダイン!!その技は!!!」

 ダイが警告を発するやいなや…。

 「天地魔王撃!!!」

 「なにっ!!!」

 肉迫したバーンの顔が迫り、おれの体は炎に包まれ宙に打ち上げられていた。

 

 「ぐはあっ……こ…これは!??」

 「なに、大したことでは無い。フェニックスウイングで防御を跳ね退け、カラミティエンドとカイザーフェニックスを無防備な所に撃ち込んだけだ。ただの三弾攻撃に過ぎぬよ」

 「何が大したことでは無いだっ。大魔王の三弾攻撃だなんて、それだけで十分脅威じゃねぇかっ!!」

 「天地魔闘が『静』ならこちらは『動』の奥義ね。まったく隙がないわ」

 驚愕するおれにポップとレオナ姫の解説が聞こえる。分かっていたが防げぬ攻撃とは…だがしかし!!

 「昔っから、タフさだけが取り柄でね」

 体に鞭打って上体を起こす。

 「おれには攻撃を受けて受けて、受けまくって!!それでも立ち上がるだけだッ!!どうした大魔王!!!おれはまだ生きているぞオッ!!!」

 

 「た…起った!!」

 「すげえ…」

 「有りえぬ、いかな獣王とて余の技をまともに喰らって立ち上がるなどと」

 わずかな逡巡の後大魔王は答えを見い出した。

 「ホイみっ」

 「そうか、そういうことか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そんなものを持っていたのかっ!!!」

 

 クロコダインを殴り飛ばし、地に叩き伏せる。

 その手にはホイミスライムが握られていた。

 「ホイみん!!」

 「ピェーーーイ!!」

 「ゴメちゃん!!」

 ゴメちゃんがホイみんを助けようと手に噛り付く。

 

 「こやつもか、おのれ神々め!!よもやここまでして余の大望を阻むとは!!よほどなりふり構わぬと見えるな」

 大魔王は血相を変えてゴメちゃんを捕えた。

 「やめろバーン!!」

 「たかだかスライム二匹にムキになるなんて大人気ねえぜ!」

 「何も知らぬのか、こやつらはスライムではない。いや生き物ですらないのだ。これは道具(アイテム)だ!!」

 (どういうことだ…??ゴメちゃんの事は知っている。だがホイみんは只のホイミスライムのハズだ)

 バーンの語った『神の涙』は原作道理の話だった。

 そして、バーンはホイみんについて驚愕の真実を語りだした。

 

 

 

 

 「かつて世を乱す巨悪があらわれし時、神の加護を授かりし者が運命に導かれこれを討つ…。おとぎ話のような話だ。人間の世界にも似た話があるだろう。神々に魅入られた者は様々な恩恵を受けたという。

 

 曰く…加速的に成長し大きくレベルアップする。

 曰く…他の民家の財産を漁っても咎めを受けない。

 曰く…小さなメダルのようなものと引き換えに伝説の武具を与えられる。そういえば『覇者の剣』にもそのような言われがあったな。

 他にも例え死しても財産の半分をを引き換えに完璧に蘇生されるなどとな。

 神々によって都合の良い加護を受け世を乱すものを討つための神の先兵、すなわち『導かれし者』となるのだ…」

 

 (なんだそれは??聞いたこともない…おれの知らないことだぞ)

 

 「そして『導かれし者』の傍らには常にそれが在ったという。

  神の加護を下す(しるべ)すなわち『神の標(かみのしるべ)』」

 

 「!!!」

 大魔王がホイみんを掲げ指す。

 

 「だが、それは欠陥を秘めたシステムだった。役目を終えた『神の標(かみのしるべ)』は神によって回収されるが、その後力を付けてしまった『導かれし者』が第二の世を乱すものと成り果ててしまうからだ…。当然の結果だな。そこで三柱の神々は作り上げたわけだ、より完璧なシステム…『竜の騎士(ドラゴンのきし)』を…。

 よもやとうの昔に処分されていたと思えば…。『竜の騎士(ドラゴンのきし)』、『神の涙』、『神の標』、余を討つために神々の遺産をつぎ込んでいたわけだ。クロコダイン…お前が…いや、お前たちが『導かれし者たち』だったとはな…。

 「なんだって!?」

 神の目標の加護は『導かれし者』に近い者達へも伝播する。お前たちがこの短期間の間に急激に力を増したのはその恩恵に依るという訳だ。心当たりがあろう?

 「う…」

 「むぅ…」

 

 「確かに何度も不思議な力に助けられたわ。でも私たちは決して奇跡を起こしてきたけれども、奇跡に頼りはしなかった」

 レオナ姫はおれの言いたかったことを代弁してくれた。そうだ、おれは打算でホイみんと共にいた訳じゃない!!

 「神の涙だろうと神の標だろうとゴメちゃんとホイみんは友達だわ!!お願い!!ゴメちゃんとホイみんを殺さないでっ!!!」

 

 しかし、クロコダインの体中に悪寒が走る。

 (おれは…この先を知っている!!)

 「確かに、その程度なら並のアイテムでも出来る事」

 (よせ、やめろ)

 「だが、それはうぬらが真の使い方を知らなかっただけの話!!!」

 (嫌な予感が止まらないッ…)

 

 「忌まわしき神の遺産など、野放しにしておけぬわっ!!」

 

 クロコダインはこの先の展開を知っていた。これから起こるであろう現実を認めたくなかった。故に彼は満身の力を込めて抗った。

 「よせっ、やめろっ!!」

 「ゴメちゃん!!ホイみんっ!!!」

 「ゴメーーーー!!ホイみんーーー!!!」」

 

 仲間が口ぐちに叫ぶ中、血を流すほどに歯を食いしばりホイみんへ駆け寄るクロコダイン、しかし…。

 

 「消えて無くなれっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大魔王の手の中でゴメちゃんとホイみんは

 

     光の粒となって崩れ去った。

 

 

 

 

 

 

 その事を理解するよりも先に、おれは拳を大魔王の顔面にブチ込んでいた。

 

 

 

 「ぐああああーーーーーッ!!!」





次話明日0:00時頃投稿予定

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