女の子だけど踏み台転生者になってもいいですか?   作:スネ夫

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第十六話 無感情の騎士

 現在、海賊船の上で相対している俺達。

 片や物見遊山で過去に来た踏み台転生者で、もう片方は凛々しい麗人だ。

 彼女は表情に乏しいのだが、それでもその魅力は失われていない。

 鎧の上からでもおっぱいが大きくて、正直触ってみたいと思う俺は変でしょうか。

 

「ふっ!」

 

「あっぶなぁ!」

 

 横薙ぎに繰り出された斬撃を、俺はバク転する事で避けた。

 直ぐに彼女の姿を視界に納め、さてどうするかと高速思考。

 

 嫁センサーが響いた事から、目の前の美人さんは原作キャラで間違いない。

 なんで四百年前の海賊船にいるのかとか、そもそも服装が騎士っぽくて浮いているとか。

 言いたい事は色々あるんだけど、まずはまいどお馴染みのあれをしなければ。

 

 一息ついてデジカメを仕舞った俺は、傲慢に見えるよう胸を張って口を開く。

 

「お前も、俺の嫁にしてやろう!」

 

「……」

 

 む、無反応だと。

 いやまぁ、今の状況的に俺の事を敵だと思ってもおかしくないけどさ。

 それでも、もう少しなにかしら反応を見せてくれても良かったと思う。

 

《あれが普通ですよ》

 

 わ、わかっているよぉ。今まで反応してくれているなのは達が特別優しいだけなのは。

 本来ならば、あのように得体の知れない人として警戒するのが正しい。

 ……あれ、これって踏み台転生者としては合っているのでは?

 むしろ、今いるのは過去なのだから、今まで以上に思う存分振る舞えるのではないか。

 

「ハーハッハッハッハ!」

 

「む?」

 

「よっしゃ!

 だったら、自重しないでお前を手篭めにしてやろう!」

 

《はぁ……結局、そうなるんですね》

 

 ドラちゃんには悪いが、俺に付き合ってもらうぞ。

 

「ドラちゃん、セットアップ!」

 

《イエス、マスター。セットアップ》

 

 俺達の掛け声を合図に、俺はバリアジャケットに身を包まれていく。

 Tシャツにジーンズというラフな格好から、白い袴に似た服装へと。

 

「それが、貴様の装備か」

 

 腰には刀を靡き、両手足には手甲と具足が身につけられている。

 バッと羽織っている陣羽織を翻し、俺は不適な笑みを浮かべて腕を組む。

 

「そうだ!

 どうだ、カッコイイだろう?」

 

 やはり、武器と言ったら刀だよな。

 元日本男児として、この武器には憧れがあるのです。

 鞘から抜いた刀の切っ先を向け、女性へと宣戦布告。

 

「お前に勝って、俺の嫁にしてやる!」

 

 同時に踏み込み、彼女目掛けて勢いよく袈裟斬り。

 しかし、振り上げられた長剣をかち合い、そのまま絡めとられるように刀が宙を舞う。

 

「隙だらけだ」

 

《マスター、訓練とかしてませんもんね。

 そりゃあ、呆気なくやられちゃうわけです》

 

「ドラちゃんは納得してないで、俺を助けてくれっ!」

 

 連続で煌めく銀線に、俺は四苦八苦しながら回避していく。

 くっ、踏み台転生者だから特訓しなかった弊害がここで来たか。

 どうせオリ主や原作主人公がなんとかしてくれる、と高を括っていたが。

 まさか、こうして俺が戦闘に巻き込まれる事になるとは。

 

「無駄が多いが、身体能力はあるようだな」

 

「分析してないで、攻撃するのをやめてくれ!」

 

「ああ、もう終わりにしよう」

 

 と、女性が告げたのだが。

 直ぐに目を細めると、俺を長剣で吹き飛ばした後、なにもない上空に視線を転じた。

 そして、剣の切っ先を向け、厳かな口調で言い放つ。

 

「そこにいるのはわかっている。

 出てこないのならば、相応の対応を取らせてもらおう」

 

 女性の言葉から数瞬後。

 不意に空間が水面のように揺れ、そこに焦った表情を浮かべたなのはが現れる。

 手には透明マントが握られており、どうやら空から俺達の戦闘を見ていたらしい。

 

「わわっ、ごめんなさい!」

 

「……また、子供か。最近の子供は、随分と芸達者のようだな」

 

 無表情でそう呟いた女性は、俺達を一瞥すると長剣を鞘に納める。

 

「俺達を倒さないのか?」

 

 戦意を消したのが気になり、思わず尋ねた。

 俺の疑問に首を振って背を向け、彼女は船内に足を進めていく。

 

「お前達には敵意がなかったからな。

 私が指示された任務は、害意を持つ存在を始末する事だけだ」

 

「……」

 

 消えていく背中を見送っていると、空からなのはが降りてきた。

 直ぐにこちらに駆け寄り、ペタペタと頻りに身体を触ってくる。

 

「だ、大丈夫静香ちゃん!? どこか痛くない!?」

 

「なのは。あいつを見てどう思った?」

 

「え、あのお姉さん?」

 

「ああ」

 

 俺の言葉になのはは暫し悩む素振りを見せ、やがてどこか腑に落ちない様子で首を傾げる。

 

「うーん。

 なんか、変だったかも?」

 

「そうか……」

 

 やっぱり、俺の勘違いじゃなかったか。

 あの時、話していて常に胸中で燻っていた違和感。

 初めは気のせいだと思ったが、徐々に無視できない物となっていた。

 

 ……あいつ、俺を見ているようで、俺を見ていなかった。

 まるで、決められた事柄を行う機械のように、指定された内容を遂行するだけのように。

 女性からは、人間味というモノが酷く薄く感じられたのだ。

 

《マスター》

 

「どうした、ドラちゃん?」

 

《先ほどの方、恐らく人間ではないと思います》

 

「人間じゃない、か……」

 

《はい。詳しくはわかりませんが、私と似たような物と思っていただければ》

 

 つまり、デバイスのような存在という事か。

 それならば、俺の抱いていた違和感も納得できる……いや、まだ納得できないな。

 ドラちゃんがこんなに人間らしいのだ。普通なら、あの女性にも人間味があってもおかしくはない。

 

 しかし、実際には違う。

 ……なーんか、臭うなぁ。この時代にいるのもそうだし、雰囲気から彼女も魔法が使えると見た。

 怪しい。怪しすぎて真っ黒だな。

 

「静香ちゃん?」

 

「なんだか、楽しくなってきたな」

 

 ようやく、それらしいイベントと邂逅できたのだ。

 転生して苦節七年。俺が活躍する時が訪れた。

 さて、そうと決まれば、まずは今日の寝床を確保しなければ。

 小首を傾げるなのはを尻目に、俺は内心でほくそ笑むのだった。

 

 

 ♦♦♦

 

 

「そういえば」

 

「ん?」

 

 海賊船から降りて、街を歩いていた俺達。

 不意になのはが声を上げ、俺の方へと不思議そうな眼差しを送る。

 

「どうして、静香ちゃんは外国語が話せるの?」

 

「うん? ああ、そういう事か」

 

 直ぐに合点がいき、ポンと手を打ってポケットから道具を取り出す。

 俺が手に持つそれを見て、なのはは微妙な表情を浮かべた。

 

 なのはの気持ちもわからないでもない。

 突然なにかを出したかと思えば、一見変哲もないこんにゃくなのだから。

 と言っても、これはいつも通り便利なドラえもんの道具だ。

 

「その名も、“ほんやくコンニャク”〜」

 

「ほんやくコンニャク?」

 

「ま、騙されたと思って食べてみな」

 

「う、うん」

 

 と、おずおずといった様子で、こんにゃくを口に運び込むなのは。

 モグモグと可愛らしく口を動かし、やがて飲み込んで目を白黒させる。

 

「どうだ?」

 

「あ、あれ?

 さっきまでわかんなかったのに、あの人達の言っている言葉がわかる!?」

 

「ふっふっふ。

 あのこんにゃくは、そういう道具なんだよ」

 

「す、すごい!」

 

 ハーハッハッハ!

 そうだろう、そうだろう。

 もっと俺の事を崇めてくれても構わないんだぞ?

 

《ああ、またマスターが調子に乗っています》

 

『そ、そんな事ないから!』

 

《そうでしょうか?

 最近、マスターの思考回路も踏み台さんのような、残念な感じになってきていますが》

 

『つまり、踏み台転生者として良い感じだって事だろう?』

 

 ドラちゃんの告げた通り、ここ最近は踏み台にも羞恥心を覚えなくなってきている。

 自然と行動に移せ、立派な踏み台転生者になれているというわけだ。

 

《……リニスさんと会議しなければ》

 

『なにか言ったか?』

 

《いえ、なにも。それより、見られていますね》

 

『まあ、だろうな』

 

 さり気なく周囲に目を光らせれば、俺達を尾行している気配を察知。

 美幼女二人組だからな。普通に誘拐のターゲットにされてもおかしくはない。

 と、あの辺が良さそうだ。

 

「嫁よ、来い!」

 

「へ?」

 

 キョロキョロと見回していたなのはの手を取り、路地裏へと飛び込む。

 直後に透明マントで姿を隠し、ジェスチャーで音を立てないよう指示を出す。

 暫くすると男達が現れるが、やがて首を傾げながら去っていった。

 

「ふぅ……これで、安心だな」

 

「し、静香ちゃん。今のって」

 

「とりあえず、詳しい話は今日の寝床を見つけてからだ」

 

 路地裏の奥の方に進み、ゴミなどが散乱していて目立ちにくい場所に見当をつける。

 うーん、少し心配だけど、カモフラージュすれば大丈夫かな。

 

 廃材が積まれた場所の物陰に来た俺は、付近の壁に“かべ紙ハウス”を貼りつけた。

 この道具はその名の通り、壁に貼ればポスターになっている家に入れるのだ。

 つまり、簡易的な隠れ家を創れる。

 

 ポスターのドアを開き、目を丸くしているなのはへと手招き。

 

「あ、えっと、おじゃましまーす」

 

 なのはに続いて俺も中に入り、ドアを閉めて安堵の息を吐く。

 とりあえず、これで一安心だろう。

 まさか、このポスターに気づいて中に入ろうとする人などいるまい。

 

 改めて観察すると、部屋の内装はごく普通のリビングといったところだ。

 原作でもあったのか、神様が気を利かせてくれたのか知らないが。

 かべ紙ハウスはそれこそ無数な種類があり、こうして俺の要求に合う物も見つけられた。

 と、思考が逸れた。

 

「なのは、まずは話の整理だ」

 

「あ、うん」

 

 互いに向かい合って椅子に座り、話をする体勢を取る。

 さて、なにから話すべきか……。

 顎に手を添えて思案してから暫し、内容をまとめてテーブル上で手を組む。

 

「そもそも、どうしてなのはもついてきたんだ?

 あの時は乗り気じゃなかったが」

 

「えっと……にゃはは」

 

 苦笑いをするなのはの言葉によると、こうだ。

 引き出しの中に消えた俺に、アリサ達は大層びっくりして中をのぞき込む。

 その際、足を滑らせたなのはが引き出しに入り、タイムマシンの上へと真っ逆さま。

 結果、俺と一緒にここへ来る事になった、と。

 

「なるほど、ドジだな」

 

「む、むー! そんなことないもん!」

 

「いや、どこからどう見てもなぁ?

 まあ、そんな可愛いところも俺は好きだぞ!」

 

 そう告げると、なのははため息をついて目線を斜め上に向けた。

 憂いに帯びた横顔を見せつけながら、ポツリと呟きを漏らす。

 

「わたし……おうち帰れるのかな」

 

「ああ、それなら心配いらない。

 しっかりと、ドラちゃんに座標を覚えてもらっているから。

 なんなら、今から送り返してもいいぞ?」

 

 流石に、事故で来たなのはを引き止めるような真似はできない。

 カッコイイところを見せたかったとか、一緒に海賊船の探検をしたかったとか。

 色々と残念な気持ちはあるが、やはりなのはの無事には変えられないだろう。

 

 そう思って提案した俺の言葉を聞き、彼女は緩やかに首を振って微笑む。

 

「ううん。

 なのはも、静香ちゃんと一緒にいる」

 

「俺としてはバッチコイなんだが、理由を聞いてもいいか?」

 

「えーっとね……船の上にいた人。

 あのお姉さんを見ていると、なんだかこのまま帰るのはダメな気がするんだ。

 わたしは、あの人とお話してみたい」

 

 真っ直ぐとこちらを見つめ、静かな口調で断言するなのは。

 その瞳に宿る輝きと目が合った俺は、惹き込まれそうになるのを耐えていた。

 

 ……これが、高町なのはか。

 並大抵の人間では持てない、鮮烈な意志が篭った力強い眼差し。

 恐らく、今は無意識だろう。

 己のおぼろげな勘に従い、俺にそう告げているように見える。

 

 しかし、こんな幼くとも秘める芯の強さ。

 今のなのはをただの子供と断じるのは、目が曇っている馬鹿だけだ。

 

「く、くくっ」

 

《マスター?》

 

 訝しげなドラちゃんの声をよそに、俺は震え立つ心を抑えるのに必死だった。

 これだよ。これを求めていたんだ。

 凡人では決して手に入れられない、人々を魅了する信念。

 ただいるだけで他人を惹き込む、その在り方。

 

 この出来事は、なのはにとってきっかけに過ぎない。

 恐らく、原作では今以上の信念を持って、俺の心を震わせてくれるのだろう。

 そして、俺が俺である限り、彼女の勇姿をこの目で拝む事ができる。

 ……あぁ、なのはと一緒にいれば──

 

「どうしたの、静香ちゃん?」

 

 俯いて笑いを堪えていると、なのはから心配げな声が掛けられた。

 手で顔を覆い隠し、気持ちを落ち着かせてから言葉を返す。

 

「すまん、流石は嫁だと思ってな」

 

「変な静香ちゃん」

 

《マスターの頭がおかしいのはいつもの事です》

 

「おい、なにしれっと俺の悪口を言ってんだよ」

 

 まったく、相変わらずドラちゃんは容赦がない。

 今更俺の事を言ったって、どうせ変えられないんだから意味ないのに。

 肩を竦めた後、俺はポケットから“グルメテーブルかけ”を取り出す。

 

「なにそれ?」

 

「ま、とりあえず飯にしようか」

 

 そのままテーブルに敷いた俺は、首を傾げるなのはに笑いかけるのだった。

 

 

 ♦♦♦

 

 

「ふぅ、食った食った」

 

 お腹を撫でながら、俺は椅子の背もたれに深く寄りかかった。

 対面にいるなのはも、満足げに息を漏らしている。

 

 まずは腹ごしらえをしようという事になり、要求した食べ物が出てくるグルメテーブルかけを使い、俺達は腹いっぱいご飯を食べたというわけだ。

 相変わらず、ドラえもんのひみつ道具は凄い物が多くて助かるな。

 

「はふぅ〜」

 

「さて、話の再開……をする前に、デザートを食べなきゃな」

 

 そう告げると、何故かなのはが肩を跳ね上げた。

 慌てた様子で前のめりになり、厳しい眼差しで俺を見つめる。

 

「し、静香ちゃん!

 また、シュークリームを沢山増やしたりしないよね!?」

 

「しないしない。

 ちゃーんと、俺も学習したんだから」

 

「ならいいんだけど」

 

 いまだに疑っているのか、ジト目で椅子に座り直したなのは。

 まあ、彼女が警戒する気持ちもわからなくはない。

 バイバイン。あれは、俺達の間で危険道具として名を馳せている。

 

 凄かったからなぁ、あの時は。

 無限に増殖するシュークリームとか、素晴ら……恐ろしい光景になっていたし。

 ドラえもんの道具も、使い方を間違えれば大変だという良い例だった。

 

「ま、安心しろって。

 これなら、食べたい分だけ食べられるから」

 

 なのはに笑みを向けた俺は、ポケットから“さきどりカプセル”という道具を取り出す。

 赤い色をしたそれを見て、なのはの顔には大きな疑問符が浮かぶ。

 

「それ、なに?」

 

「簡単に言うと、未来から物を呼び寄せる道具だな。

 まずは手のひらを当てて……よし」

 

 無事に認証が完了したので、これで未来の俺から好きな物を呼びだせる。

 つまり、食べたい分だけシュークリームを手に入れられるのだ!

 

 バイバインの時は、際限なく食べようとしたから失敗した。

 だから、今のように取り出すのを最低限にする事で、シュークリーム塗れになるのを回避する。

 

 ふっふっふ。

 俺って、天才じゃね。

 これならば、以前のようなミスは起きようがなく、安心してデザートを楽しめる。

 早速、未来からシュークリームを沢山持ってくるぞ!

 

《……未来のマスターが、シュークリームを食べられなくなりますよ》

 

 もちろん、その事に関しても織り込み済みだ。

 要は、未来にある余分なシュークリームを取り寄せればいい。

 そうすれば、未来の俺がシュークリームを食べられない悲劇はないし、今の俺が至福の時を過ごせる事にもなる。

 どうだ。一点の穴もない、完璧な作戦だろう?

 

《マスターの脳みそが穴だらけで、私は哀愁の時を過ごせそうです》

 

 おい、それはどういう意味だ。

 俺の策士ぶりを認めたくないからか、ドラちゃんが精神攻撃をしてくる。

 仕方ない。ドラちゃんには、俺のような冴え渡る頭脳がないのだから。

 ま、相棒の認識を正してやるのも、マスターである俺の務めか。

 

《いえ、いいです。

 どうぞ、お好きなようにやらかしてください》

 

 ……いまいち腑に落ちないが、ドラちゃんがそう言うのなら。

 微妙な表情を浮かべた俺は、さきどりカプセルに向けて告げる。

 

「未来の俺の家にある余った翠屋のシュークリームをさきどり!」

 

 俺の言葉から数瞬後。

 カプセルが少し膨らんだかと思えば、蓋が開いてシュークリームが顔を覗かせた。

 

 よっし、成功だ!

 ちゃんと十個ほどあるし、よくやったぞ未来の俺!

 

「ほぇー。

 シュークリームが出てきた」

 

「ほら、なのはも食べな。

 俺も一つ……うーん! やっぱり、食後は桃子さんのシュークリームに限るよな!」

 

 これを食べなければ、やっていられない。

 目を点にしていたなのはもかじり、直ぐに幸せに満ちた顔になる。

 

 うむ。

 お菓子は人を笑顔にする、素晴らしい物だ。

 みんながお菓子を食べれば、きっと世界中の戦争も収まるだろう。

 ラブアンドピース。スイーツサイコー。

 

《うわぁ。

 完全に頭がクリームに侵されていますね》

 

 ドン引きした声を上げるドラちゃんを尻目に、俺達は満面の笑みでシュークリームを平らげていく。

 

「ところで、静香ちゃん。

 シュークリームもこのテーブルかけで出せば良かったんじゃないの?」

 

 なのはの疑問を聞いた俺は、ため息をついて首を左右に振る。

 

「前に出した事があるんだけど、なんか違和感があったんだよな。

 だから、こうして直接本物を取り寄せたってわけ」

 

「ふーん、そうなんだ」

 

 相槌を打った後、なのははテーブルに広がるシュークリームに目を向けた。

 複数あるそれを見て、なんとも言えない様子で頬を掻く。

 

「お母さんのシュークリームを好きになってくれて嬉しいけど……」

 

「どうした?」

 

「正直、ちょっと複雑」

 

 よくわからないが、そういう事らしい。

 まあ、娘のなのはだと身近にありすぎて、シュークリームの有難味が実感できないか。

 

「とりあえず、デザートを楽しみながら会議をしようか」

 

「うん、そうだね」

 

 と、いうわけで。

 第一回、原作キャラと仲良くなろうの会。

 主に海賊船にいた騎士についてを話し合い、俺達は甘い香りを身に纏いながら、今後の予定を相談していくのだった。

 

 

 

 

 


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