コードギアス 皇国の再興 作:俺だよ俺
皇歴2018年9月29~30日(婚礼当日) 中華連邦 朱禁城
前日の宴は盛大に催されてたが、天子の表情は浮かないままであった。
中華連邦と日露は一応友好国であり、ブリタニアと敵対してはいるものの政治的な理由(共産党内のロシア閥への配慮)で招待を受けていた。
「日本皇国天皇皇神楽耶様、ロシア社会主義帝国女王リュミドラ・ニコラエヴナ・ロマノフ様、ご到着!」
ブリタニア側は意外な人物の登場に驚きを見せざわついた。
神楽耶とリュミドラの登場も十分な衝撃だが、その横に控えていたゼロの存在はさらに驚かせるものだった。
蛇足だが、ロシアのラストエンペラーであるリュミドラを出したのはロシアとしては相当な覚悟だろう。現にプーシン大統領は神楽耶とリュミドラ自身の説得を受けるまで強く反対していた。
列席者の中にいたシュナイゼル皇子とゼロのチェス勝負、ニーナとカレンの邂逅などがあったが、一番の想定外の出来事はやはり黎星刻だろう。
「我は問う。天の声、地の叫び、人の心。なにを持ってこの婚姻を中華連邦の意志とするか!」
天子の側近中の側近である星刻の起こしたクーデターであった。
「すべての人民を代表し、我はこの婚姻に異議を唱える!」
大勢の衛兵相手に彼は丁々発止の剣舞の如き戦い、大太刀周りをして見せたのであった。
また、星刻の起こしたクーデターは計画的であり、洛陽の主要官庁や武装警察本部、共産党本部や議会をすみやかに占領した。
「星刻―!」
彼は、衛兵たちを薙ぎ払い。本心をあらわにした天子も彼に助けを求めた。
「我が心に迷いなし!」
天子を奪還し、クーデターも成功させるかと思った。
しかし・・・
「感謝するよ・・・星刻。君のおかげで私が動きやすくなった。」
ゼロが土壇場で天子を連れ去ってしまうのだった。
皇歴2018年9月30日? ???
蜘蛛の中のような不思議な空間に浮かぶ神殿のような場所で、V.V.はジェレミアを対面に神殿の階段に腰かけ、外の様子を少しばかり気にしてジェレミアと話す。
「ゼロの本当の目的・・・それがここなら厄介だから・・・。」
「あぁ、それで私の為に手配を・・・。」
「そうだよ。ギニアスが調整しているあれもまだ使えないからね。」
「そうでしたか。調整が済めばルルーシュもC.C.も敵ではありません。このジェレミア・ゴットバルト・・・ご期待には全力で・・・。」
皇歴2018年9月30日11:00頃 洛陽郊外
天子を攫いゼロはそのままその場を離脱し、残された星刻はシュナイゼルとラウンズが味方する大宦官らに捕らえられ洛陽のクーデターは失敗に終わってしまうのだった。
ゼロ達は神楽耶たちも連れて離脱した。
この行動は大高にとっても予想外であったが、大高は事後承認と言う形でゼロの策に乗ることを決断した。大高は直ちに高野海軍軍令部総長に日本に駐留している2つの艦隊の1つである蒼玉艦隊を東シナ海の中華連邦本国領海線ギリギリまで進出させた。
これに対し中華連邦は北海艦隊を蒼玉艦隊に差し向け、連邦加盟傘下国である朝鮮人民共和国に支援を要請。朝鮮人民共和国の艦隊が日本海にて紅玉艦隊と地方隊がこれと相対した。
日本政府としては天皇である神楽耶の身が害される可能性もあり、動かざるを得ないと言った理由もあったが日本は枢軸と対等に張り合える影響力の強い国であった。この動きは様々なところに連鎖的に大きな影響を与えるのであった。
皇歴2018年9月30日14:00頃 湖南省准河流域の渓谷 中華連邦軍陸上戦艦竜胆
「星刻、罪を許してもよい。天子様を助けられるのならな。」
「あれを貸し与えよう。」
ゼロ達、黒の騎士団の追撃に失敗した大宦官は星刻のクーデターの罪を見逃す代わりにとゼロの討伐を命じた。
一度、大宦官の大勢に異を唱えた星刻にこの様なことを言ったのは何もゼロが強すぎたり、ブリタニアへの面子という訳ではない。大宦官たちは星刻に頼ってでもゼロを早急に倒さねばならない事情があったのだ。
皇歴2018年9月30日13:30頃 台湾軍区
『朕は中華連邦の先の天子愛新覚羅溥儀である。朕は去る10年ほど前、不忠なる者たちの策に嵌りここ十年程死の淵を彷徨った。先日、目を覚ましたところである・・・。ここにいる台湾軍区行政長官であり、朕の治世の時の丞相であった馬駒辺によって・・・ここ台湾で匿われていたおかげである。そして、丞相より朕は現世の情勢を知り驚愕した。大宦官は国賊となり下がり民を苦しめ、あろうことか幼き当代天子を怨敵ブリタニアに売り渡そうとしている!これを朕は清王朝、ひいては連邦の滅亡の危機であると理解したものである!ここに朕は今上天子を逆賊より救うため!大宦官の討伐をここに宣言するものである!!!』
先々代天子、愛新覚羅溥儀による武装蜂起。
元丞相であり台湾軍区行政長官馬駒辺は台湾軍区軍を率い本土に上陸、上陸先の南京大軍区の司令官劉金星将軍は台湾軍区のクーデターに賛同しこれに合流、北上を開始したのであった。
皇歴2018年9月30日夜 湖南省准河流域の渓谷
神虎を駆る星刻によって黒の騎士団は押され、カレンをも虜囚とされた。
灌漑開拓地を利用した策によって黒の騎士団は押しに押されたが、浮遊航空艦斑鳩の拡散ハドロン砲によって反撃し天帝十字陵へと逃げ込むことに成功し籠城した。
ゼロの運命もここまでとなり、用済みと判断された星刻共々大宦官の軍勢によって殺されようとしていた。
そんな中で、斑鳩に日本政府の大高から緊急の通信が入った。
大高の知らせを聞いたゼロは自身の天命は尽きていないと嗤った。
「フハハ、大高閣下に借りが出来てしまった様だ。」
『いえ、蒼玉艦隊と紅玉艦隊が大宦官派の北海艦隊と朝鮮人民共和国を釣り上げた副産物です。私としても少々予想外でした。先々代天子が目を覚まして養生期間も無しに、事を起こすとは・・・。』
「なるほど、私も策がある。この状況を利用しない手はない。」
『もうやめて!こんな戦い!おかしいわ!こんなこと!こんなの!』
『持ってくれ!神虎!私の!私の命をくれてやる!・・・お逃げください!天子様!せっかく外に出られたのに!貴女はまだ何も見ていない!ここは私が防ぎますから!』
『でも、あなたが・・・貴方が居なきゃ!星刻―!わたしは!貴方と、あなたと・・・』
大宦官の軍勢の圧倒的な兵力に黒の騎士団も星刻たちも押し倒されようとしていた。
「わたしには救えないのか。守れないのか。
あれから6年。すべてはあなたのために準備してきたというのに。
誰か!誰でもいい!彼女を救ってくれ!!」
彼の願いは聞き届けられる。
「分かった、聞き届けよう。その願い」
ゼロは新ナイトメアで星刻の前に現れ、守った。そのナイトメアはナイトメアフレーム蜃気楼。その絶対的守護領域は世界最高峰の防御力を持つ機体。守りに関して絶大な力を発揮する機体だった。
「中華連邦ならびにブリタニアの諸君に問う。これでもまだ私と戦うつもりだろうか。」
「そのナイトメアで、この戦局を変えられると思っているのか?」
星刻は助けてもらった礼は言ったものの疑問を伝える。
「いいや、戦局を左右するのは戦術ではなく、戦略だ」
と、これからゼロの引き起こす奇跡を前にして考えを変えていくことになる。
それからゼロの作戦が発動され、先ほどのゼロと宦官のやり取りや天子の叫びをTVで見た人民たちが中華連邦全土で暴動を引きおこしていく!虫よばわりされたすべての人民が怒り、黒の騎士団に味方することに。ゼロの作戦は見事に成功した。これにゼロは、
「天子のおかげで、大宦官の悪役っぷりが際立った」
と不敵な笑みを浮かべる。これにより状況は逆転。宦官達は追い詰められる。
皇歴2018年9月30日22:00頃 湖南省准河流域の渓谷 中華連邦軍陸上戦艦竜胆
「た、大変です全国で民衆が一斉蜂起!ロシア軍が越境を開始!モンゴル軍区もこれに続いています!」
「東南アジア諸国が我らを賊軍と名指しし宣戦を布告!越境!」
「台湾反乱軍に同調した東海艦隊が日本艦隊と合流!北海艦隊と交戦開始!南海艦隊は出撃拒否!」
「台湾・南京の反乱軍が洛陽の済南軍区と交戦中!まもなく突破されます!」
「な、なんてことだ・・・なんてことだ・・・。」
皇歴2018年9月30日23:00頃 湖南省准河流域の渓谷 台湾・南京連合軍陸上戦艦竜胆
「全軍!撃ちまくれ!天子様をお救いし、救国の英雄黎星刻を助けるのだ!!!」
上座に溥儀が座り、その両サイドに馬駒辺と劉金星が控える。その前で宇羅玩があらん限りの声量で叫ぶ。
そして、大勢は決しブリタニア軍は既に離脱し大宦官は討伐された。
皇歴2018年10月01日 湖南省某所
「よろしいのですか?」
「だって、朱禁城の外をみることができたし、
それに・・・あの、おしまいってことじゃなくて・・・あっ・・・」
「これからもお守りいたします。永久に・・・」
「変なの・・嬉しいのに・・うっ・・私、嬉しいのに・・・」
一夜明け、星刻と天子は再開し喜び合う。
「ゼロ、天子の婚姻が無効になったと世界中に喧伝する必要があります。その場合、同時に日本人の誰かと結婚して頂くのが上策かと・・・。」
「そうだな・・・。」
「よろしければ、私の方で候補者のリストを・・・」
ゼロはディートハルトの提案を検討するがその場の女性陣全員に非難される。
ディートハルトと女性陣に詰め寄られて困惑するゼロであったが・・・。
「それは、出来ないと思いますよ。こちらとしても遺憾ではありますがね。」
星刻たちの間から馬駒辺が割って入る。
「先帝様の代わりにゼロと今後の調整を十持って来てみれば。随分と下世話な話をしているものだな。私とて骨董品をいじる趣味しかないが、その程度は解るぞ。」
「どういうことかな?馬駒辺丞相・・・。」
馬駒辺は眉間にしわを寄せそれに手を当てて頭が痛そうに答える。
「あんなものを全世界に流しされてはな。反対したらそれこそ大宦官並の悪役だよ。」
「まさか!」
馬駒辺の言葉を聞いたゼロはC.C.の方を振り返る。
「私は言われた通り担当者に伝えたぞ。全部流せと・・・。」
(音声も全部流したのか!?)
それを聞いた天子と星刻の顔が赤くなっていた。
「そう言う事だ。星刻殿、今後は軍務は控え王配として力を奮いたまえ。私も先帝様より丞相として再び力を振るうように言われたところだ。」
「先帝様が再度天子に戻られるか摂関に就任するわけではないのですか?」
星刻はふと疑問に思い尋ねた。
すると、馬駒辺は辛そうに答えた。
「・・・私の敬愛する先帝陛下はお二人の無事を見届けて、つい先ほど天命を使い果たされました。」
それを聞いた天子は走り出し、星刻たちは後を追った。
その場に残った馬駒辺はゼロの方を見て溥儀の言葉を伝えた。
『人の上に立つものとして覚えておくと良い・・・人の想い・・・心は・・・時にこの世の中にあるどんな武器も・・・強いのだ・・・。ゼロ・・・貴殿のおかげで国と孫娘・・・守りたいものがすべて守れた。ありがとう・・・。』
中華連邦の老帝は天へと召され、その思いは若者たちへと繋げられた。
(心・・・想いか・・・。俺は・・・っナナリー。)
「ふむ、私としたことが少々無粋な事を言ってしまった。・・・うむ、そうだな。そうだったな。我々の力の源は心にある。大宦官に対して決起した人々も、私たち黒の騎士団も、心の力で戦ってきた!」
ゼロは騎士団のメンバーの方を振り返り謝罪しつつ、うまいこと言って纏めた。
「少しは成長したか。坊や。」
C.C.は誤魔化されなかったようで、ルルーシュにとって少しばかり耳が痛い言葉だった。