コードギアス 皇国の再興   作:俺だよ俺

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第55話 台湾の老龍

 

皇歴2018年9月24日 エリア25ゴールドコースト 太平洋大総督府

 

「おじい様、申し訳ありません。」

「閣下に恥をかかせることになってしまい申し訳ありません。」

 

パラックスとバスクはジャミトフに謝罪する。

 

「次に生かせばよい。黒の騎士団や不穏分子たちが、ゼロと一緒にこのエリア25から居なくなったことは良い事だ。黒の騎士団が居なくなれば、残りの雑多なレジスタンスなどは物の数ではない。太平洋大総督府軍を編成し北上する準備ができるであろう。場合によっては本国も第三帝国とインドに侵攻する名分になる故に一概に悪いとは言えんのだよ。」

 

ジャミトフはキャスタール、パラックス。そしてサザーランド大将とバスク中将に命を下す。

 

「キャスタール、大総督として軍の編成をせよ。パラックス、そしてサザーランド大将、バスク中将、キャスタールを補佐し北伐軍を組織せよ。」

 

「「お任せください。おじい様。」」

「「お任せください。ジャミトフ閣下。」」

 

 

 

 

 

皇歴2018年9月24日 中華連邦蓬莱島黒の騎士団租借地

 

中華連邦は世界最大の人口を誇る連邦国家。しかし、その実態は瀕死の老人と言っていい。国家の象徴たる天子、その天子を陰で操る支配層が専横を極めており加盟国の多くとの関係を悪化させ、人民は貧困と停滞によってその活量を日に日に減退させていった。

オセアニアを脱出した黒の騎士団が向かったのは中華連邦蓬莱島。途中、日本皇国海軍東郷艦隊に捕捉され、日本への帰国や同盟国及び亡命政府の保護下に入ることを望むもの達たちのみを引き渡した。

 

黒の騎士団はゼロについていくことを望んだ多くの者たちと共に新天地へと目指したのだ。

 

蓬莱島は江蘇省黄海に浮かぶ潮力発電用の人工島であり、中華連邦はそこを貸し与えた。

事前に話がついていたとはいえ、これが政治的にいかなる意味を持ち、どのようなことを引き起こすのか。それは順々に解ってくることだ。

 

「インドから新しい機体が届いたぞ。」

「インドも独立したがっているから協力的だしな。」

 

 

インド軍区からはラクシャータの伝手で、暁と呼ばれる新型の量産機が送られて来ており日本皇国からも在庫処分とでも言わんばかりに無頼が送られてきた。また、研究用やら何やらで少数配備されていた月下も東南アジア諸国を経由して送られてきた。そして送られていた人材の中には日本皇国の天皇皇神楽耶の姿もあったのだ。

 

「ゼロ様ぁ!」

 

神楽耶の心情等は後述するとして、日本のKMF等の兵器事情を説明しよう。

皇国内でも嶺花や震電と言った第五世代機に更新が完了し、それらのマイナーチェンジで第六世代相当機としての更新も始まっている。第七世代機の開発が遅れているが飛行能力を擁する機体になる予定である。そして、現在皇国海軍の主力である水雷電もポートマンⅡ並には戦える機体であり、武装によってはナチス第三帝国のズワイとも渡り合える。旧式化してきた雷電も度重なる改修によって第五世代相当の性能を維持している。この雷電は総じて雷電改と呼ばれる。長い言い方をすると雷電改改・改修型と言いづらくなってしまう。

とは言え、黒の騎士団に送られたのは皇国に取り込まれたレジスタンスの無頼や月下、そしてグラスゴーやナイトポリスの鹵獲機であった。

 

では、神楽耶の方に戻そう。

彼女は、ゼロの嫁を自称しているが大高や宮内省は認めていないので非公式だ。

そんな彼女だがゼロと親しくなろうとしているのは、大高あたりの付き合いが長い人物なら察せるだろう。そして、皇国本国には軍属の桃園宮は別として今まで皇室外交をしていた駒条宮が本国に残っている。

 

神楽耶はゼロに天子の結婚について知らせに来ていた。日本皇国と黒の騎士団は距離を取りつつも協力関係にあり、皇国の諜報組織ともつながりのある神楽耶ならゼロの所在も大凡掴めると言うものだ。詳細を詰めるために諜報部に強権をちらつかせたり、黒の騎士団末端に問いただしたりもしたようだが・・・。

 

天子の婚約相手は帝国第皇子オデュッセウスであり、彼本人の考えは別としても中華連邦が親ブリタニアに傾く可能性が高い。ただし、ブリタニアと敵対している日露にも招待状を出すあたり、中華連邦としては当分八方美人を続けるつもりだろう。

大高は万が一の際に東南アジア諸国に神楽耶の保護を依頼していたし、皇国軍も動けるようにしていた。ロシアも同様だ。

 

ゼロもすぐに知ることだが、中華連邦との交渉はグリンダ騎士団を用いたシュナイゼルの高圧的な外交もあった。マリーベル・メル・ブリタニア率いるグリンダ騎士団が紅巾党を壊滅させたことも大きい。ただ、そのグリンダ騎士団はスペインのスランシスコ・フランコ総統の招きでスペインに渡っていた。

 

神楽耶との面会を終えたルルーシュは席を立ち、カレンとC.C.を連れて蓬莱島を出る船に乗り込む。

 

「どこへ行くの?」

「台湾軍区だ。」

 

 

質問するカレンに対して台湾軍区へ行くと告げる。

 

「では、行政長官の馬駒辺か。奴は先帝時代の丞相だった男だ。」

 

C.C.の言葉にルルーシュは違うと答え、目的の人物の名を告げる。

 

「昨日、台湾の病院で数年ぶりに目を覚ましたらしい。中華連邦本国、清王朝先代天子溥儀だ。」

 

皇歴2018年9月25日 中華連邦台湾軍区

 

ゼロの面会希望は以外にもすんなり通った。

先帝溥儀は、もはや死を待つばかりの老人。生命維持装置なしには生きていけないくらいの老い先短い老人であった。それ故に、ゼロの面会書類は大宦官たちの強引なルートを用いたものであったが大宦官自身はさほど気にするものではなかった。

また、大宦官の伝手を通った申請書は台湾行政長官馬駒辺の目を通る前にゼロ達が台湾に上陸してしまう程の速さで通してしまっていた。

 

「ルルーシュ、こんな死を待つ老人に会う意味があるのか?ギアスを掛けるにしても使い道があるとは思えないが・・・。」

 

ルルーシュは軽く口角を上げて応えた。

 

「かの老人には申し訳ないが最後の大仕事をしてもらう。」

 

ルルーシュの行動は彼の計画の予想を超える事態を引き起こす。

そして、先帝溥儀の人生において最も苛烈な時を過ごさせることとなる。

 

 

 


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