コードギアス 皇国の再興   作:俺だよ俺

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第41話 黒の騎士団に関する交渉

皇歴2017年10月3日 関東州東京都千代田区 中央合同仮庁舎首相執務室

 

大高らは、扇ら黒の騎士団幹部が待つ応接室へ行く前に事前の話し合いが行われる。

大高の横に座った赤坂官房長官が、状況の説明を行う。

 

「黒の騎士団ですが、現在その方向性をめぐり組織内で分裂の傾向が見られます。その理由ですが、司令官であるゼロは私たち政府の統制を外れて国家を樹立しようとしていたとの情報を諜報部が掴んでいます。」

「内閣情報調査室、軍の諜報機関双方から同様の調査結果出ていますので、情報の確度は信頼に足るものです。」

 

赤坂の言に矢口副官房長官が補足する。その周囲では納屋・三浦ら秘書官は情報関係の書類を整理して配布している。

 

「統一レジスタンスのように皇軍に組み込めないのですか?」

 

大高としては、黒の騎士団も皇軍に組み込む予定であったため意外そうに声を上げる。

 

「閣下、統一レジスタンスの主要母体は旧軍です。付随のパルチザン系レジスタンスはカリスマ性のある指導者はいませんでしたし、彼らは追従者でした。黒の騎士団は独自の諜報軍事と言った物が完全に独立しています。財力的なものもキョウトの地盤を吸収したこともありレジスタンスとして扱うのは危険かと判断します。」

「場合によっては武装を解除させる必要があります。今のうちに部隊を動かしておくべきではないでしょか。」

 

さらに、黒の騎士団の特殊性に赤坂は言及し、片桐副官房長官が意見具申を行う。

 

「ですが、黒の騎士団にはインド軍区のラクシャータ女史がいます。その女史が今現在も黒の騎士団に在籍し続けているということは、インド軍区の意志の介在も考えられます。あまり強硬な手段を取るとインド軍区との関係悪化も懸念されますので、慎重に判断してください。」

「また、黒の騎士団を現状主導している扇副司令官は、黒の騎士団結成前からの古参です。彼は皇軍への組み込みに関して否定的ではありません。」

 

平岡・矢口の二人の副官房長官は強硬手段に関しては否定的であった。

納屋がその横から大高に騎士団幹部の情報が記された書類が渡される。

 

「なるほど・・・。皇軍に組み込んでも独自行動が起きるやもしれませんし、不協和音の原因。黒の騎士団は別枠と考えましょう。それと、他のレジスタンス組織の振り分けは順調ですか?」

 

大高は一定の結論に達し、別の案件ついて尋ねる。

 

「それに関しては問題ありません。老齢者や規定年齢に達していない若年者を除いて希望者は皇軍に組み込んでいます。技術者や特殊職能者は適宜振り分けております。」

 

「赤坂さん、希望者以外の方々は一般社会へ戻すようにお願いしますよ。」

 

大高は有事とは言え、やりすぎないようにと赤坂らに釘をさす。

赤坂は、それに対して勿論と答え、別の案件について報告を上げる。

 

「もちろん、そのように指示していますのでご安心を・・・。それと、片瀬少将推薦の彼ですが・・・。」

「どうしましたか?」

 

赤坂の表情が、硬くなるのを感じた大高は赤坂を促す。

 

「血液検査で皇族の血縁である事が確認されました。」

「男系皇族の数が少ない今、それは喜ばしいことでは?」

「えぇ、その通りなのですが少々不可解なことが・・・。」

「それは?」

「確認された血筋が、繁院宮家なんです。」

「繁院宮家ですか?確かあの家は・・・。」

 

繁院宮家、皇籍離脱した旧宮家。7年前の侵攻で宮家・旧宮家の多くが死亡したとされている。だが、本土回復後に潜伏先から生存を知らせる声明が出るなど珍しくはないのだ。

 

しかし、この繁院宮家はそれよりもずっと昔に断絶している。

故に不可解なのであった。

 

「彼についての公表は控えましょう。ですが、皇族には違いありません。慎重に対応しなければなりませんな。」

 

「閣下、そろそろお時間です。」

 

腕時計を確認した納屋が大高に知らせる。

 

「もう、そんな時間でしたか。応接室へ向かいましょう。」

 

 

大高ら一団は、黒の騎士団副指令扇要以下幹部陣を待たせている大きめの応接室と向かう。

その過程で各省庁の職員達とすれ違う。合同庁舎故に一つの建物にいくつもの省庁が入っているのだ。

雑多な感じもするが、働いているのは国家公務員、役人だ。

それなりに官の空気を醸し出してはいるが、函館程の利便性はない。

首都は函館のまま、進めていこうと心に決めた大高であった。

 

 

 

 

皇歴2017年10月3日 関東州東京都千代田区 中央合同仮庁舎第一応接室

 

「いやはや、黒の騎士団の皆様方。お待たせさせて申し訳ない。皆さんもお座りください。」

 

大高の入室と共に、先にいた政務官たちが立ち上がり頭を下げる。扇たちも立ち上がって同様にお辞儀をする。

 

「は、はい。よろしくお願いします。」

 

以前は一介の教員でしかなかった扇は、一国の首相と相対して固くなっているのが解る。

黒の騎士団と言う大組織の副司令官である時点で有能なのは間違いないだろうが、良くも悪くも一般人であることが理解できた。

他の幹部陣も大半は同様のように感じられた。

だがやはり、例外と言うのはいる。

この、ブリタニアからの転向者であるディートハルト・リートと言う男などは、政府高官と接触する機会が多いメディア業界の人間ではあったが、何か底知れぬものを感じる。むしろ、ナンバー2としての業務は彼の方が抑えているように見受けられるくらいである。

 

「では・・・、現在日本皇国は国土回復を成し遂げ、レジシタンス本来の国土回復は成し遂げられております。よって、黒の騎士団は他レジスタンス同様解体。皇軍主導で再編し軍に適切に組み込んでいくこと以上です。」

 

片桐副官房長官が政府の指示書を読み上げる。

他の二人の副官房長官も無言で様子をうかがっている。

大高らは黒の騎士団が、この黒の騎士団解体命令を受け入れるとは当然思っていない。

むしろ、強硬に解体させてはゼロの信奉者たちの反感を買うであろうと予想していた。しかしながら、最初から黒の騎士団を優遇すれば他から不満が出る可能性もあるし、当の黒の騎士団に足元を見られかねないと言う警戒からでもあった。

故に、解体期限も短く見積もっており揺さぶりをかける形であった。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。いくらなんでもこれは・・・」

 

扇が慌てて立ち上がり、抗議を口にする。

 

「何か問題でも?日本解放戦線を中心にレジシタンスは基本解体と言うのが政府の基本的なスタンスなのですが?」

 

赤坂官房長官はわざと意外そうな言い回しをする。

黒の騎士団の特殊性を理解している大高らであったが、穏便すぎる対応をして巨大な組織である黒の騎士団が皇国政府の手綱から放れる事は好ましくなく。ある程度、こちらの意志に従わせるための首輪をかける必要があることは、大高も理解していた。さらに、首輪をかけられない狂犬であるならここで解体するのも致し方無しと割り切っていた。

 

「閣下、黒の騎士団は他の雑多なレジスタンスとは、規模も組織形態も大きく異なることをご理解いただきたいのですが?」

 

次に口を開いたのはディートハルトであった。やはり、黒の騎士団のナンバー2は扇という訳でもなさそうだ。大高はもう一度、黒の騎士団の幹部たちを確認する。

情報担当つまるところ参謀であるディートハルト、技官代表ではあるが切れ者のラクシャータ、一筋縄ではいかぬ者達であった。

 

「であれば、段階を設けて解体という方向に修正しますか。」

「う~む、その方向で進めましょう。よろしいですか?」

 

赤坂官房長官が即席で代替え案を提示し、大高が納得する仕草を見せる。

赤坂ら官房集団が黒の騎士団の意見を流し気味の姿勢を見せることで、少なくてもこの場でどちらが上かを見せつける必要がある。その為の行為であった。

 

「もっと時間が欲しいところです。もう少し何とかなりませんか?」

「副指令、それは・・・!」

 

扇が黒の騎士団解体に理解を示そうとすると、ディートハルトが慌てて割り込んでくる。他の幹部たちも受け入れる感じの姿勢を見せているのは少ない。

 

「黒の騎士団の幹部の皆さん、確かに今は有事で数多くの例外事項が認められたり、黙認されてきました。ですが、本領が落ち着いたことで認められる例外が減ったことは理解してください。」

 

赤坂は、黒の騎士団幹部達に至って冷静に伝える。

赤坂の言葉を聞いた幹部たちは互いに話し合い対応を内々に決めようとしている様だが、纏まらない様だ。大高らの対応が彼らの予想に反して高圧的であったからというものが大きいだろう。

 

「失礼ですが、政府の皆さんが先ほど仰った様に騎士団の特殊性と言うものを考慮に入れていただきたい。ゼロの思想は弱者の救済、この世に枢軸に抑圧された弱者が存在する限り、終わりではないのです。なので、他レジスタンスと違いあまりに性急に事を急がれますと予想外のことが起きるやもしれません。勿論、我々は最善を尽くします。」

 

政府と黒の騎士団の話し合いは平行線が続いた。

話し合い終盤、遂に多くを語らなかった大高が口を開く。

 

「わかりました。黒の騎士団解体は段階を置きましょう。それまでは皇軍の互助組織としての活動を認める。それでよろしいでしょうか?」

 

大高が黒の騎士団に歩み寄る発言をしたことで話し合いは一定の方向性を持った。流れは実現する可能性が、最も高い大高妥協案へと流れていく。

その後も紆余曲折ではあったものの、話の大筋は変わることはなかった。

 

 

皇歴2017年10月3日 関東州東京都千代田区 中央合同仮庁舎首相執務室

 

 

「ゼロを抜いた黒の騎士団は中核以外は簡単に削り落とせそうですね。」

 

赤坂の言葉に大高は葉巻に火を付けながら、否定的に答える。

 

「赤坂君、黒の騎士団の外壁に対した意味はないのだ。中核こそが問題なのだ。中核は間違いなく軍事も謀略も精鋭、油断をしていると足元をすくわれかねんよ。そういえば、欧州の安倍川君たちはどうなったのかね。あまり良くない状況とは聞いておるのだが・・・。」

 

赤坂は伏し目がちに答えた。

 

「あまり、いえ・・・かなり悪いです。フランス・ベルギーの陥落も見えてきましたからね。ベルギーの延長マジノ線が破られて、ベルギー国内が戦火に巻き込まれた時点で、EUは詰みでした。」

 

「ふむぅ…。レイナール首相やド・ゴール将軍がいる限り最後まで戦い続けるでしょうが・・・、厳しいですな。ド・ゴール将軍と渡りをつけて、一部EU軍・・・例えば日系人部隊や日本人義勇軍の回収などは実行したいものですな。」

 

EUの滅亡は目に見えた現実として、迫っていた。

 

 

 


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