コードギアス 皇国の再興   作:俺だよ俺

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第03話 日露非公式会談

平盛22年9月

 

北海道へ遷都した大高弥三郎以率いる日本皇国政府は東北州青森を境界線に絶対防衛圏を構築。北海道の雪豹師団・東北の夜豹師団・海軍海兵旅団をその防衛に当たらせた。

東北の山々と言う天然の要害で守られた上に大高派の陸軍で固められたこの防衛ラインは日本海側に東郷艦隊、太平洋側に高杉艦隊、その補完に坂本艦隊が当てられKMFを擁するブリタニア陸軍でも破ることは容易ではなかった。

こうして暫定的ながらも日本国内の勢力図が出来上がり始めた頃。

戦いは戦場だけでなく外交の場でも始まりを見せていた。

 

「我が国はサクラダイトの高度な採掘技術を提供する用意があります。」

「サクラダイトの採掘技術提供の見返りに貴国の承認をと言う事か?ミスタ大高。」

「はい、その通りです。プーシン大統領。」

「だが、我らが帝国がブリタニアと敵対してまで貴国を推し立てる利はあるのかね?」

 

大高は極東事変直後からロシアとのチャンネルの構築に勤しんだ。

その甲斐あって、大高首相とプーシン大統領による非公式ながらもナンバー2同士の会談が開かれることとなった。

 

「もちろんです。近々起こるであろう貴国とブリタニアの戦争において我が国は南方から北上するブリタニア軍に対する盾になりうる存在だからです。」

「我が国とブリタニアが戦争をすると?どうして、大高首相はそう考えるのだ?」

 

プーシン大統領は有能な人物だ。大高が言わんとすることは解っているはずである。なぜ大高に話させようとするのか。それは大高が今後の世界の流れをどこまで読み取っているかを測るためでもあった。大高の能力を量り、日本がロシアの盟友たる資格の有無を見極めようとしているのだ。

 

「今回のブリタニアの侵攻はサクラダイトを目的としたものでした。外交的見地から申し上げれば下策中の下策です。我が国は全世界のサクラダイト供給量の約70%。またその供給配分は自国配分を除いて考えても貴国に欧州諸国、中華連邦、ブリタニアに対して均等に行われておりました。経済的にも何ら問題はありませんでした。ではなぜこのような暴挙を行ったか。それは恐らく現皇帝シャルルの即位時の妄言、世界征服宣言が国威発揚の見せかけではなかったと言う事なのでしょう。かの国の世界制覇の先駆けが我が国への侵略行為…。サクラダイトの過半の掌握が目的だったのでしょう。」

「だが、まだ我が国とブリタニアが戦争をする理由にはならんぞ?」

「貴国のシベリアにおけるサクラダイト埋蔵量・・・。相当なものなのでは?それこそ我が国のサクラダイト市場における独占状態を終わらせるほどの・・・。でなければ、いくら前政権から交渉を続けていたとはいえ採掘技術だけで、ここまでの太いパイプを作ろうとはしないでしょう。」

「……その通りだ。ミスタ大高、シベリアの埋蔵量は日本の埋蔵量の約5割。鉱山の存在は8年前に公表している。まだ、情報管制で国民の知るところではないが隠し通せるものではない。埋蔵量が国民に知られれば開発しないわけにはいかない。無論、ブリタニアにくれてやるわけにもいかない。」

 

ロシアの機密を言い当てた大高に対して油断ならない印象を抱きつつ、大高と言う人物の能力の高さは評価に値すると言う印象をプーシンは抱いていた。

 

「だからこその日露相互防衛協定です。我が国と貴国が結べば、貴国のブリタニア有事の際は南からの心配はほぼなくなります。不安要素として中華連邦が居ますがあの国は腐敗が進み大宦官たちもそれぞれバラバラの動き、少々のちょっかいは掛けてくるかもしれませんが大きな動きは出来ないでしょう。貴国はベーリング海を越えてやって来るブリタニアに精力を傾ければよいわけです。」

 

「いいだろう。我が国は貴国を日本皇国として承認しよう。そして、防衛協定にもサインしてやろう。だが、ひとつだけ確認しておきたい。貴国はすでに領土の半分以上を陥落されている。持つのか?」

 

「心配ご無用です。空母を数隻失いましたが我が国の海軍の大半は未だに健在です。陸奥湾要塞の拡張に始まり北海道を要塞化することが決定されましたので。」

 

「だが、それは将来の話だ。今はどうなのだ?将来のことばかり考えすぎて目先の危機に対応できなくては話にならんぞ。場合によってはハバロフスクの極東艦隊を派遣しても構わんが?」

 

「お気遣いはご無用です。条件付きではありますがブリタニア軍に対処可能な兵器を配備中です。いずれはかの国の人型兵器と同様なものが必要と考えておりますが、それまでのつなぎとして十分なものと考えております。」

 

ブリタニアと言う差し迫った危機に対して、大高の余裕を含ませた自信はプーシンを持ってしても不気味さを感じてしまうものがあった。

 

「ミスタ大高がそこまで自信を持って言うのならその通りなのだろう。」

「近く、ブリタニアと一戦交えることになりましょう。その時に我が国の新兵器を披露することになるかと思います。」

「ほぅ、それは楽しみだな。」

「次回の交渉では、新兵器の技術提供も考えておきましょう。」

 

この新兵器はこの後起こる陸奥要塞防衛戦でその真価を発揮することになる。

 

 

大高はロシア帝国のウラジミール・プーシン大統領との電話会談を済ませると高野ら、北海道臨時政権の重鎮らと合流。その中には太陽党党首で現政権の副総理西郷南洲、青風会メンバーであり現政権外務大臣木戸孝義、商工大臣室生直毅、元総理経験者の貴族院議長九重文麿、衆議院議長中田丸栄、賢議会議長佐久間祥山、戦略空軍司令長官厳田新吾、陸軍参謀総長桂寅五郎と言った国家の重鎮を集めて、函館の仮皇宮へと向かった。

 

大高達北海道臨時政権の重鎮たちは御簾を境に上座に座る少女に臣下の礼を取っていた。

 

「姫殿下におかれましては、野蛮なブリタニアの暴虐にさらされ慣れぬ船旅でお疲れでございましょう所にこのような機会を設けていただき恐悦でございます。」

 

「大高首相、面をお上げください。わが身の危機にこうして助けていただいたことはわたくしも感謝しておりますわ。日本の再興のためにその力を貸していただけませんか。」

 

「この大高弥三郎。微力ながら全身全霊をとして皇国の為に全力を尽くす所存にございます。」

 

大高らが臣下の礼を取る少女こそ、日本皇国皇族皇神楽耶であった。

 

「わたくしは自分の役目を理解しているつもりです。大高首相、この国のために最善と思う事をしてください。」

 

「では、さっそくなのですが姫殿下には早急に国民の精神的支柱として天皇として即位して頂かなくてはなりません。ブリタニアの無差別攻撃に巻き込まれ、御隠れあそばされた両陛下の大喪の礼を執り行って頂きたく思います。大喪儀のいくつかを省略することになりますが国土が占領されると言う異常事態です故、ご理解ください。それらが済み次第急ぎ践祚の儀・即位の礼・大嘗祭を執り行い。天皇の即位を国内外に示していただきたく思います。この一連の行為には皇室儀礼や国事行為において可能な限りの省略がされており、姫殿下に対して非礼に当たることもあるかもしれません。ですが、今回は国土の半分以上が敵に占領されると言う異常事態下で執り行うための超例外的行為としてご理解のほどを頂きたくお願い申し上げます。」

 

「この国難を乗り越えるためにわたくしも力を尽くしましょう。この一命にかけて…。」

 

皇族とはいえ7歳の少女であったが、その厳粛な姿に皇族かくあるべしと言った指導者の片鱗を感じたのであった。

 

 

 

 


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