コードギアス 皇国の再興   作:俺だよ俺

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第27話 バグラチオン作戦 序戦

皇歴2017年9月8日ロシアソビエト社会主義帝国 チュトコ 東部戦線

コルマイ丘陵東部及びコリャーク丘陵に構築された防衛線では、ロシアの防衛陣地を突破しようするブリタニア軍と、それを阻むロシア軍が日々鬩ぎ合っている。

 

枢軸侵攻前のロシア帝国陸軍は大きく分けて、6つの軍に分けられていた。西部・南部・中央軍・東部軍のロシアソビエト四大管区軍。そして、近衛軍・コサック軍の女王直轄軍。管区軍は赤衛軍、直轄軍は白衛軍と呼ばれていた。

 

現在、ナチス第三帝国を中心とする枢軸軍の攻勢で西部軍と南部軍は壊滅。この2つの軍は一時中央軍に吸収されて、新西部軍として再編成される。その後、旧ワルシャワ条約機構軍の残存部隊共にウラル戦線に投入されている。

東部戦線は当然ながらチュコトのブリタニア軍に、その大半が充てられている。

この戦いでは、中央軍に大規模な動員が掛けられていた。この中央軍であるが今現在、この一時において数の上では最大の軍であった。従来の基地駐屯部隊と中華連邦本国及び連邦加盟勢力モンゴル人民共和国及び蒙古連合自治政府国境の守備隊以外に、徴兵軍が編成及び訓練のために多数集結していた為であった。

 

 

 

バグラチオン作戦の発動によって中央より東部戦線への鉄道網を駆使した大規模な兵員輸送が行われた。軍用列車以外に民間列車もが動員された輸送計画は、ブリタニアにも当然ながら察知されていた。とは言え、ブリタニアは特殊部隊をロシア中央に展開するようなことは出来ず。

ロシアを横断するシベリア鉄道とバム鉄道は多くの兵器を輸送した。チュコトの前線に近いサハ・マガダン・カムチャッカの各基地に大量の兵器が運び込まれることとなった。

 

東部チュコト軍団は20からなる師団で軍集団として機能している。

バグラチオン作戦ではチュトコ以外の地域の東部軍や中央軍から抽出され30もの師団が動員されている。

この兵力を見て、察することが出来るかもしれないが、ロシア軍は徴兵部隊を含む非常に大規模な動員であった。

 

海軍も対独戦用の北方艦隊を除く、増強された太平洋艦隊(旧名称・極東艦隊)がオホーツク及びベーリング海に展開進出し、旧カスピ・黒海・バルトの残存戦力を統合再編した新生バルト艦隊が北極圏の海を渡り東シベリア海に進出していた。

 

対する神聖ブリタニア帝国軍の戦力は以下のとおりである。

元来のロシア侵攻軍としては10個師団おり、アラスカの待機師団5個師団も存在していたが、ロシア軍の東部戦線に対する部分的な動員とは言え3倍以上の戦力が投入されることとなり、ブリタニアも新たに15師団の派兵が行われ、さらなる増援が計画されることとなった。

 

このロシアチュトコ戦線はブリタニア本国軍が抱える最大の戦域となる。

 

皇歴2017年9月9日ロシアソビエト社会主義帝国

サハ自治州 ヤクーツク バグラチオン作戦司令部

 

ゲオルグ・ジューコフ陸軍元帥主導の下、バグラチオン作戦は開始された。

 

中央赤衛軍及び東部赤衛軍の軍集団がコルマイ丘陵及びコリャーク丘陵の山岳地帯を越えて、襲い掛かる。

 

数の利を生かした力押しで、ロシア軍はブリタニアの3倍近い砲火とミサイルにて東部の針葉樹林も積雪もまとめて、ブリタニア軍を焼き払わんと降り注がせた。実際、ロシア軍の砲撃、ミサイル攻撃、爆撃はすさまじく、吹き飛んだ森や出来たクレーターの数は数えきれない程であった。ただ、制空戦はブリタニア軍でも数の少ない飛行型KMFの集中投入という反撃もあり膠着する。

 

「ジューコフ閣下、我が軍優勢です。」

「うむ、兵の質は向こうが上だが、この数はどうしようもないはずだ。」

 

 

序戦におけるミサイルなどの砲射撃戦ではブリタニア軍を圧倒した。

兵の質から言ってKMF戦であるならばブリタニア軍はロシア軍に対して有利と言えた。

しかし、KMFを倒すのが必ずしもKMFである必要はないのである。ミサイル車両による遠距離からの攻撃。大量投入された野戦砲や戦車の砲撃も数で攻めれば十分脅威であった。

なかでも、対KMF誘導弾を用いた特技兵の存在はブリタニア軍をおおいに苦しめた。歩兵と言う小さい目標はありとあらゆる場所に潜みゲリラ的ともいえる奇襲戦術でブリタニア軍を攻撃する。そもそも、KMFや戦闘車両と違い歩兵の延長であるこの特技兵は数を揃えることは容易であった。

不確かな状態であったが、制空権は奪えてもいないが、奪われてはいないのだ。

 

単純戦力比はブリタニア1:ロシア3。KMF戦力比はブリタニア1:ロシア2であり、2倍。ロシア軍の内実としては、KMF部隊の内の半数は新兵であり、練度においてはブリタニア軍の方が圧倒的に有利でもあった。ロシア製KMFサベージは生産性以外にも優れた点がある。それは、その寸胴型の見た目が持つ分厚い装甲からくる搭乗者の生存性の高さでもあった。

ブリタニア軍とロシア軍の機体損壊率は圧倒的にロシア軍が多かったが、パイロットの生存比率は大差なかったりする。さらにロシア軍はKMF以外の戦車なども装甲が厚くなっており、物的損害こそ多いものの、ブリタニア人の命を確実に奪って行った。

 

 

恐るべし、ロシアの人海戦術。精強であるブリタニア軍と言えどもロシアの人の波を防ぐには至らず。徐々に、戦線を後退させることになるのである。

 

皇歴2017年9月9日  ベーリング海及びアリューシャン諸島

 

バグラチオン作戦における戦いは海でもあった。

ブリタニアの侵攻軍の補給線を寸断せんと、バルト艦隊がベーリング海へ進出しブリタニア軍の基地航空隊他・小艦隊と衝突していた。

 

一方で、アリューシャンへ進出したロシア太平洋艦隊は日本皇国より派遣された東郷艦隊と合流しブリタニア艦隊と衝突。

この戦いには、日本皇国海軍水中要塞鳴門が投入され、これに搭載されていた小型戦闘潜航艇海龍Ⅱが実戦に投入された。なぜⅡなのかと言うと、先の戦争において同名の小型潜水艦が存在した為である。航空機的な操縦系を持ち、艇先端のプロペラ、もしくは水流ジェット推進で推進する。この兵器は、格闘戦能力こそないものの水中戦闘機と呼べる代物であり、世界初のポートマンに対抗できる、正式に量産された兵器であった。

 

「副官、あれがロシアの水中仕様機か。ブリタニアのポートマンとはだいぶ違うのだな。」

「はい。ロシアは生存性を上げるために寸胴型のKMFが採用されましたので…。」

「そうか。(水中型機は我が国も寸胴型にするべきかもしれんな。)」

 

艦隊の艦載機が発艦するのをしり目に、ロシア軍の水中仕様の先行量産機を東郷たちは興味深げに見ていた。

 

その後、複数回に渡り両艦隊の艦載機が空戦を、水中機が水中戦を繰り広げ、艦隊そのものも、何度かのミサイル戦及び砲射撃戦を繰り広げた。しかしながら、両軍ともに損害は補助艦艇ばかりで、空母や戦艦は轟沈することはなかった。

この海戦は不完全燃焼であった。その後も分艦隊や戦隊規模の海戦が複数回発生したが大勢には影響することはなかった。

 

皇歴2017年9月9日ロシアソビエト社会主義帝国 暫定首都イルクーツク 大統領官邸

 

「東部戦線の戦況ですが、当初の計画通りブリタニアの戦線は後退しております。バルト艦隊がベーリング海の敵補給線を寸断しつつあります。制空権の奪取も時間の問題かと…。」

 

秘書官の報告を聞きながら、各種書類に判やサインを入れていく。その視線は秘書官の方を見ていない。

 

「そうか。バルト艦隊はそのままベーリング海を越えさせて、太平洋艦隊に合流させろ。枢軸との戦い…東部、いや、アジアの戦線の天秤はこちらに傾きつつあるか。」

 

プーシンは執務机のコーヒーを口にして一息つく。その後、再び書類に目を通し判を押していく。

 

「あとは、大高の出方次第。…そして、ゼロか。」

 

プーシンは書類のひとつに視線を向ける。諜報部からのゼロの騎士団に対する報告書であった。

 

 

 


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