コードギアス 皇国の再興 作:俺だよ俺
枢木ゲンブ総理の自殺によって大本営は機能不全に陥る。
陸軍参謀本部は本土決戦を決意。陸軍を第一総軍と第二総軍と北方方面軍の3つに分けてブリタニア軍上陸に備えた。
そして、海軍軍令部は大本営の統制下を外れ独自行動をし始める。
海軍軍令部総長高野五十六大将は東京湾に係留していた旭日艦隊に要人たちを非難させ日本よりの脱出を画策した。
高野は忙しく関係各所に連絡をし、忙しく指示を飛ばしていた。
「閣下、西海造船所中岡原太郎総帥、泰山航空工業東野原一郎会長、成重航空発動機工業成重竜一郎社長及び各社の技術者の身柄を保護しました。」
「うむ。」
日本の敗戦を予感した高野は枢木政権を欺き、元内閣総理大臣兼元陸軍参謀総長大高弥三郎と協力して技術者達の脱出を強行した。
国内では大本営の指揮を離れた海軍陸戦隊と青風会派の陸軍部隊が国内要人保護に動き回った。
「大高元首相閣下がおいでになられました。」
「すぐにお通ししてくれ。」
「っは」
執務室の深みのある重厚な扉が開かれる。
高野に椅子を進められた大高は堰を切ったように口を開く。
「まさか、枢木君が売国奴だったとは痛感の極みです。澤崎君ではこの難局を乗り越えることは無理でしょうな。先ほど片瀬君とも話しましたが彼の本土での抗戦の意思は固く。協力は得られませんでした。我々の邪魔しないとのことでしたので、それが救いと言った所でしょう。」
「ですが、国内の主要企業の技術者たちの保護は幸い順調です。今日中には海軍の輸送艦で北海道へ退避させられます。」
「それは不幸中の幸いですな。彼らも国元を離れるのはつらい事でしょうが、今は耐えてもらいましょう。」
扉をノックする音が聞こえる。
「入れ。」
「総長閣下、お車の用意が出来ました。」
「そうか。・・・・・・大高閣下、そろそろ我々も」
「もうその様な時間でしたか。」
大高は総長執務室の窓から東京の街を眺める。
「ブリタニア軍の侵攻を受けた地域は徹底的に破壊され、民間人にも大きな被害が出ていると聞きます。我々が次にこの東京の美しい街並みを見れるのはいつのことになるのでしょう。」
「大高閣下・・・。だからこそ我々は日本の未来のためにもこの計画を完遂しなければならないのです。」
小笠原沖より撤退してきた第一連合航空機動艦は旭日艦隊と合流するために相模湾沖で待機する。奄美沖で敗北した西太平洋艦隊も日本海を経由し北海道を目指す。
東京湾の海軍基地より要人や技術者たちが輸送船に乗り込んでいく。
大高と高野は海軍基地司令部より避難誘導を指揮していた。
「間もなく全員乗り込みます。」
「よし、では我々も・・・。大高閣下。」
「そうですね。では、我々も行くとしましょうか。」
海軍基地の司令管制室の固定電話が鳴る。
電話に出た海軍士官が大高と高野の方を見る。
「どうした?」
高野が仕官に尋ねる。
「外線です。大高閣下と話がしたいと・・・」
大高は少し驚いた表情になる。
「わたしですか?いったい誰が?」
「先方はキョウトを名乗っております。」
それを聞いた大高と高野は表情を固くする。
「ついに彼らからコンタクトが・・・・・」
「山王会でも接触を試みていたのですが、今に至るまで接触が出来ませんでした。今になってなぜとは思いますが・・・。とにかく話してみましょう。」
「はい、大高です。そちらはキョウトの・・・・・・・その声は・・・もしや・・・桐原財閥の」
高野は大高と電話向こうの桐原の会話を見守る。その間に管制室の人員を護衛の最低限を残して退室させる。
「でしたら、キョウトのお歴々も我々と共に・・・・・・・っ残念です。」
電話口では大高が桐原らキョウトの重鎮の保護を申し出たようだが断られてしまった様だ。
「っ!?わかりました。直ちに東郷君の西太平洋艦隊より艦を向かわせます。参謀総長の高野君が私のすぐ横にいますので大丈夫です!はい、はい!必ず。」
電話を切った大高が高野の方に向き直る。
「キョウトより非常に重要な要請がありました。」
「それはいったい・・・・。」
「キョウトは我々にこの国で最もやんごとなき方の保護を依頼してきました。」
最もやんごとなき方、つまりは皇族の保護であった。意図を理解した高野は大高に答える。
「キョウトは我々に最も重要なカードを託してくれたようですな。直ちに西太平洋艦隊の東郷君に連絡を取ります。」
「高野総長、事は一刻を争います。迅速かつ確実に対処してください。」
旭日艦隊旗艦日本武尊。
旭日艦隊司令長官大石蔵良中将は輸送艦に要人及び技術者たちが乗り込んだのを確認する。
高野と大高は日本武尊の艦橋に案内される。
「大高閣下、高野閣下。ようこそ日本武尊へ、本艦隊は皆さまを北海道までお守りします。」
「うむ、よろしくたのむ。」
「よろしくおねがいします。」
「超戦艦日本武尊発進せよ!」
日本の要人を保護した日本軍の一部が北海道へ避難していることを察知したブリタニア軍は北海道制圧のために艦隊を派遣する。その中には新兵器KMFの姿もあった。
そして、アリューシャンより出撃したブリアタニア北方侵攻軍の迎撃のために函館湾より川崎弘中将率いる紅玉艦隊が出撃した。
函館港を出港し津軽海峡を出た紅玉艦隊旗艦戦艦伊勢では気を引き締めて双眼鏡を握ったまま艦橋に立つ川崎の姿があった。
「川崎閣下、第一連合航空機動艦に続き西太平洋艦隊も敗れました。予備艦隊に位置付けられている我々は勝てるのでしょうか?」
川崎は不安げな主席参謀を励ます。
「確かに、我々だけでは負けるだろう。だが、大泊の紺碧艦隊がこれに加わってくれるそうだ。勝機は十分にある。」
そして、樺太の大泊秘密地中港より海軍の秘匿潜水艦隊紺碧艦隊が出撃したのである。
北緯43°東経154°のあたりで日本皇国海軍紅玉艦隊と紺碧艦隊はブリタニア北方侵攻軍の艦隊と接敵することになる。
前原一征少将が率いる紺碧艦隊は旗艦潜水艦須佐乃男と共に海底深くで、ブリタニア艦隊が罠にかかるのを今か今かと待ち構えていた。
「ブリタニア艦隊ポイント1を通過。」
「敵さん、順調に網の中に入ってくれているようだな。ブリタニア艦隊が紅玉艦隊と交戦する前に奇襲攻撃を掛ける。」
「敵、ポイント3へ侵入。網にかかりました!」
「よし!全艦魚雷戦用意!」
「魚雷戦用意!」
「魚雷発射管全て注水完了!」
「魚雷、一斉発射!撃て!」
紅玉艦隊を囮にし、四方に配置した潜水艦群から無数の改六二式水素魚雷が放たれる。
航跡を描かない無数の魚雷がブリタニア艦隊に殺到する。躱す事も出来ずに魚雷が次々と命中して中央から真っ二つに割れる航空母艦や戦艦。爆発四散する駆逐艦。
沈んでいくブリタニア艦を見て歓声を上げる紅玉艦隊の面々。
「やってくれたか!前原長官!おいしいところは全部持っていかれてしまったな。・・・・全艦残存艦の掃討を開始しろ!」
「っは!」
かくして、ブリタニアの日本侵攻による日本の完全占領に歯止めがかかるのであった。