コードギアス 皇国の再興   作:俺だよ俺

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題名ってつけるのに悩みますね。


第13話 オレンジ事件

皇歴2017年5月25日

 

テレビの画面には報道陣のフラッシュにさらされながらジェレミア・ゴットバルト卿がクロヴィスの死を公表する映像が流れ、女性キャスターが報道を続ける。

『クロヴィス殿下は崩御された。イレブンとの戦いの中、殉死されたのだ。我々は悲しみを推してその遺志を継がなくてはならない。』

 

北海道函館の首相官邸ではこの一連の事態に対応すべく。大高首相を中心に桜坂国相、木戸外相、高野海軍軍令部総長、桂陸軍参謀長、源田戦略空軍長官らが呼び集められ協議が開かれていた。また、ほとんど発言はしなかったが今上天皇の神楽耶の姿もあった。

 

『また、暗殺の実行犯は名誉ブリタニア人のイレブン枢木スザク一等兵であることは間違いないようです。』

 

「ブリタニア皇族の暗殺。本来ならよくやったと言ってやりたいところだが……。亡命予定の皇族では……。」

 

「本当のところはスケープゴートなのでは?強硬タカ派の純血主義者であるジェレミア・ゴッドバルト…日本人の弾圧を強化したいのが丸わかりだ。」

 

「弾圧の強化と言うよりも、名誉ブリタニア人の保護制度撤廃もあり得ますな。仮に彼が犯人ならばいろんな意味で余計なことをしてくれたのもですな。」

 

軍部の人間は青風会・紺碧会の古参会員であり、枢木ゲンブが売国奴であったことを知る者も多く。枢木の名が出ただけでも顔をしかめるものもいた。

 

「軍部の皆さん。とりあえず討論はここまでにしましょう。大高閣下、今回の件では我が国とクロヴィス殿下の関係が表ざたにされていないところ見るに、彼らは気づいていないようです。我々皇国としてもごく普通に形式的には声明を出すべきかもしれません。ですが、下手に枢木を持ち上げると事情を知る軍関係者の反発は必至かと思われます。声明はそのあたりのことを加味して頂きたく思います。」

 

「そうですな。形式的な物だけで良いでしょう。枢木スザクに関してはふれない事にするとします。何も知らない者達にとっては英雄かもしれませんが軍関係者や長いレジスタンスは枢木親子の裏切り者と見ています。露骨なまでに形式的な内容で木戸外相の方で行ってください。それと皇室からの声明は出さなくても大丈夫かと思います。」

 

「はい。では外務省には文書を作らせます。」

 

神楽耶は「よしなに。」と短く答え、木戸外相の問いに大高はそう結論付け、話題を変える。

 

「そうしてください。ところでクロヴィス・ラ・ブリタニアの後任は誰が濃厚なのでしょうか?」

 

「ブリタニアは日本に手痛い反撃を受けたわけですので、少なくても強硬派。それも軍人系の武断派が来るのではないでしょうか?」

 

「順当に行けばコーネリア・リ・ブリタニアあたりが妥当ですかな。」

 

「我々と言う存在もある事です。ラウンズの誰かが来る可能性もありえるかと。」

 

「いや、シュナイゼル・エル・ブリタニアもありえる。彼は現在も一部の手勢をクロヴィス皇子統治下の日本に展開させていた。乗り込んでくる可能性もあり得ます。」

 

高野、源田、桂が口々に意見を述べる。大高は軍関係者の話を聞いて今後ブリタニアの日本占領地での締め付けがかなり厳しくなるであろうことを想像し胸を痛め、一刻も早い全領土奪回を誓った。

 

「敵が強力になることは予想できたことです。富士山重工と共同開発中した新型戦闘攻撃機の量産体制を早めに整えておいてください。それと我々の自在戦闘装甲騎雷電の数を揃えたいところですが、雷電は敵のグラスゴーに劣っていますので今しばらくは15式砲戦車(15式自走砲重戦車)と各種ロケット砲車と空爆で対応していきましょう。」

 

「大高閣下。確かキョウトの方では無頼とか言うコピー機体があるそうではないですか?それを融通して数を揃えるわけにはいかないのですか?」

「大蔵省としても開発費がかさんでいますのでキョウトのコピー機が安く上がるのならばそちらでもよいかと。それに海軍の艦艇建造や改修費用もかなり値が張っているのだが。」

 

内務大臣犬養清と大蔵大臣高橋其清の言に高野が反論する。

 

「犬養大臣、高橋大臣、それはダメです。それをしてしまうと今後の軍事軍需の主導権だけでなく政治にすらキョウトに口を挟まれかねません。軍としては新型機の開発をしばらく待っていただきたい。新型機の開発は最終段階で性能もサザーランド並です。それに日本が今を維持できたのは海軍強国の名声の影響もあるし、それ以上に結果は出している。それは陸も空も言える事です。」

 

高野の言葉に源田と桂も相槌を打って賛意を示す。

その後も閣僚たちも交えて3時間ほど議論を重ねた。彼らの背後ではスタジオの映像で司会者と解説者がクロヴィス追悼と枢木スザクについての議論している映像が流れていた。

画面の右下には小さな枠で移送されるスザクの様子が流れている。

 

「日本解放戦線を中心とする抵抗勢力の長とも協議をして………ん。」

 

 

 

一方、成田連山日本解放戦線本拠地。

 

会議室と言うよりは鍛錬に使う道場を意識した内装の室内。ブリタニアに壊されかけた日本のアイデンティティを前面に押し出したかのような意向である。ブリタニアのある種の浄化政策によって弾圧された日本文化を前面に出すのはレジスタンス勢力には多く見られる。北海道政権日本皇国はブリタニアを押し返したためにブリタニアに文化を破壊されるようなこともなく維持できていたが彼らは長い弾圧の反動としてこの様な日本文化を全面的に出す様な無意識的な物があった。

 

「ブリタニアの皇子を仕留めた!枢木スザクを英雄として扱わねば!」

「しかし、名誉ブリタニア人だぞ!枢木総理の忘れ形見ではないか!」

「日本を捨てた男!民衆はその存在さえ知らなかった!」

 

解放戦線の幹部達が枢木スザクの扱いに議論を重ねていた。

 

「新宿の事件は紅月達のグループだったな。」

「今は扇と言う男が継いでおります。」

 

片瀬と藤堂含め座布団も敷かずに皆、床に座るか立って議論している。

片瀬は状況確認を兼ねて情報を確認している。

 

「うぅむ、枢木の本家は何か言ってきているか?」

「いいえ、特に何も言っておりません。」

 

片瀬に意見を求められた藤堂はきっぱりと答える。

 

「どう思う。藤堂?」

「公開処刑に付き合ってやる義理はないでしょう。」

 

それを聞いた別の幹部は藤堂に対して意外そうに尋ね、藤堂はこれに対してもきつい口調で言い返す。藤堂自身、奇跡のと言う自分の二つ名に対して思うところがあるようであった。

 

「奇跡の藤堂が随分弱気ではないか。」

「奇跡と無謀をはき違える気はない。」

 

「北海道政権も静観を決め込んでおる。ここはわしらも静観で良いだろう。」

 

片瀬は北海道政権の動きに倣い静観を決め込みテレビに視線を移す。

 

 

テレビの向こうでアクシデントが発生している様だ。枢木スザクを乗せた車両が動きを止める。

 

『現場で動きがあったようです。』

スタジオの映像から現場の映像に切り替わり。そして、クロヴィス専用の御料車が護送車両の前に止まる。

 

『私はゼロ。』

 

御料車から黒いマスクと黒いマントの全身黒で統一された服装の人物が現れる。そして、ゼロが指を打ち鳴らすと中から何かの装置が現れる。そして…

 

『クロヴィスを殺したのはこの私だ。』

 

 

「何かの兵器のようだな。これはとんでもない展開になったぞ。」

テレビを見て驚きの声を上げる桜坂国務大臣。

 

『あいつは狂っている。殿下の御料車を偽装し愚弄した罪、万死に値する!この罪贖うがいい!』

ジェレミア卿が指揮車から身を乗り出しゼロを殺すように命じる。

 

『いいのか。公表するぞ…オレンジを…』

 

それを聞いたジェレミア卿は素直にゼロに従い。スザクとゼロを解放しようとする。

ジェレミアと他のブリタニア士官の間でもめている様だ。音声では拾い切れていないが口論している様子が映る。しばらくして、スザクが解放される。

 

さらに、装置が作動してガスが装置から噴き出してくる。

「毒ガスとは少々野蛮ですな。」

「民間人に被害が出ると大義名分が立たなくなる。」

 

高野と桂はこれを見て眉を顰める。

テレビの向こうでは大混乱する様子が見受けられる。さらに時間がたち事態が一応収拾され、これが毒ガスでなくただの煙であったことが報道される。

 

「敵将校が諦めるほどの内部事情を入手する情報集積能力。そして、大勢の群衆の目の前で演説をするだけの胆力。彼は相当な人物の様です大高閣下。」

桜坂の言葉に大高は「そうですね」と短く返した。

 

それ以上に大高の隣には僅かに頬を桃色に染めた神楽耶の姿が気になっていた。

(姫様も思春期の少女と言う事だったのを忘れていました。ゼロ…確かに若者のこと戦に触れるような恰好をしている。それ以上に桜坂君が言うように大人物であるようですな。)

 

 

 

 

 

成田連山日本解放戦線本拠地では今こそ決起の時と逸る草壁中佐の言葉を片瀬に「北海道政権から動くなと達しがあった。」として一蹴され、藤堂の賛意を得ようとしたが…

 

「焦るな。キョウトが紅蓮二式をゼロに与えると言うのは確定情報ではないゼロにこだわり過ぎると足元を掬われるぞ!」

「っく」

 

草壁は不満をあらわにしてその場を後にした。

 

 

皇歴2017年5月28日

コーネリア・リ・ブリタニア第2皇女。エリア11総督に着任。

輸送機より降り立ち、先んじてエリア11入りしていた妹ユーフェミアと再会を喜んだあとコーネリアにエリア11の執政官が歓迎式典に参加するように促すとコーネリアは不快感と憤りをあらわにする。

 

「抜けている…惚けている…堕落している。ゼロはどうした!なぜ捕まえぬ!北部の残党相手に7年も掛けて何をしている!早々に皇国臣民の敵を討て!私が着任したからにはこの様な無様は晒させん!」

 

エリア11の情勢不安のため治安対策を優先するものとし、総督就任式典は最大限に略式化され即座に治安対策、不穏分子の粛清を実施するものであった。

着任数日後には中国地方最大の抵抗勢力サムライの血を壊滅する超強硬手腕であった。

 

 

 

皇歴2017年5月29日

最近ではオスマン・トルコの抵抗が完全に止み中東各地の国々が次々と降伏している。アフリカでも枢軸連合の南下をEU軍は止められず。ついに欧州に拠点を残していた数少ない国々の一角であったオランダの陥落。スカンディナヴィア連合王国は中立化したうえでの孤立、フランスもオランダ陥落を受け対独のマジノ線・対スペインのピレーネー線の維持が難しくなってきていた。

さらに前日にはエリア11の総督にコーネリアが着任し、さっそく不穏分子のひとつを殲滅した。さらにはその翌日にはインド洋で枢軸連合艦隊と日本艦隊の戦いが控えている中での演説であった。

 

「神聖ブリタニア帝国第98代唯一皇帝陛下よりお言葉」

 

大聖堂のような巨大なホールには多くの出席者であふれ演壇側にはブリタニア皇族らが座り、客席には多くの貴族と軍政の高官が、来賓席にはナチス第三帝国のリッペントッロプ外相を中心とした枢軸国の外務大臣たちの姿が確認できた。司会者の声が響き、大英帝国を継承した中世風に多少の現代の趣向を織り交ぜた荘厳な衣装と威厳ある姿を見せつけるかのようにブリタニア皇帝はゆっくりと演壇を歩む。その一歩一歩がその力強さと威厳を見せつける物であり、クロヴィスの国葬と言うよりはある種のプロパガンダ的な側面すら感じさせた。

 

「人は平等ではない。生まれつき足の速い者、美しい者、親が貧しい者、病弱な身体を持つ者。生まれも育ちも才能も、人間はみな違っておるのだ。そう、人は差別されるためにある。だからこそ人は争い、競い合い、そこに進歩が生まれる。不平等は悪ではない。平等こそが悪なのだ。権利を平等にしたEUはどうだ?人気取りの衆愚政治に堕しておる。富を平等にした国はどうだ?ロシア帝国は怠け者ばかりだ。均等な計算すらできない中華連邦は腐りきっておる。だが、我がブリタニアはそうではない。争い競い、常に進化を続けておる。

強者だけが前へ、未来へと進んでいるのだ。我が息子クロヴィスの死も、我らが進化を続けているという証。戦うのだ!競い、奪い、獲得し、支配しろ。その果てに未来がある!!

オール・ハイル・ブリタニア!!!!」

 

 

「「「「「オール・ハイル・ブリタニア!!!!」」」」」

 

 

 




次回は戦闘回の予定。あらかじめ予防線を張っておくと下手ですので大目に見てください。

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