コードギアス 皇国の再興 作:俺だよ俺
ライラ・ラ・ブリタニア。この娘は戦禍を計る天秤。天秤は力を持つ方に傾く。
皇歴2017年4月21日
枢軸連合加盟国イラク領ヨルダン ペトラ遺跡
ペトラ遺跡の周辺にはイラク軍の兵士とイラク軍の陸上戦艦バミテスが守りについていた。
遺跡の中ではたくさんの装置とコードとチューブが取り付けられた状態になっており何人もの白衣を着た学者たちがいた。
それの様子を椅子に座って見ている若干やせ型の線の細そうな金髪碧眼の少女がそれを見ている。その少女がただの少女ではないと言うのは彼女の着ているナチス親衛隊の制服を見ればすぐわかった。彼女の周りにはナチス親衛隊の兵とブリタニアの特殊部隊プルートーンの兵達が控えており、その隣の席に座る彼女と同じ金髪碧眼の冷たい美貌の男性はナチス親衛隊大将ラインハルト・ハインドリッツ国家保安本部長官である。
そしてマリア・ヴィグリート親衛隊中佐はナチス親衛隊神秘局通称アーネンルベの局長であった。
そんな彼女は自分と大して変わらない歳であろう装置に繋がれた少女ライラ・ラ・ブリタニアを直視しても何の表情一つ変えることはなかった。
「始めなさい。」
マリアの命令で実験が開始される。ライラに繋がれた装置が彼女を精神世界に無理やりつなげて苦痛を伴いながらも続けられ。遺跡内では彼女の悲鳴が響き渡る。
「止めるな!このまま天秤をこちらへ!!!」
狂気的な表情で顔をニヤけさせ歓喜の声を上げるマリア。
しかし、それは崩れてきた天井とそこから現れたピースマークのKMFによって遮られることとなる。
「何事!?」
「襲撃です!反体制派の襲撃です!」
ピースマークのKMFがライラを繋ぐ装置のチューブを千切りその手の中にライラを回収する。
「いけません!天秤を!天秤を取り返してください!!」
マリアの叫びにナチス親衛隊のMAとプルートーンのKMFがピースマークのKMFの前に立つ。
しかし、ピースマークの操縦者もエース級だったようでライラを奪取されてしまう。
「プルートーン、敵を追うぞ!!」
プルートーンのヴァール・ライオット大尉がそのまま部隊を率いて、ピースマークを追って遺跡を飛び出していく。
マリアもこれに同調するように指示を出そうとするが上司のラインハルトに止められてしまう。
「武装親衛隊も追跡に加わせなさい!」
「いや、もういい。あの状況では撒かれるだろうから不要だ。それに同盟国と言えど武装した大部隊の移動は手続きが必要になる。恐らく、連中は中華連邦へ逃げ込むであろう。我々はインドでの不正規戦の支度を始めた方が良いだろうし、このことは総統閣下にも報告せねばなるまい。総統閣下も早いうちに手を打ってくださるだろう。」
皇歴2017年4月23日
ラインハルトは部下に遺跡に隣接している仮設の通信施設の無事を確認して本国へ報告を上げるように命じていた。本国への報告を終えたラインハルトは併設する指揮施設に用意している執務席に腰掛け、対面している将校に話しかける。
「メレンゲ大尉。君から見てあれはどう思う?」
「さて、わたしもオカルト分野は専門外です故。あまり確たることは言えませんが、ライラ姫の体内に何らかの装置が埋め込まれているのかもしれませんな。アーネンエルベの連中のやることです。科学分野の私めには解りかねます。」
「ふむ、メレンゲの言う通りではあるか。総統閣下やヒムラー長官のオカルト崇拝には困ったものだ。」
「あら、ラインハルト大将お言葉ですわね。私は確たるものを持ってやっているのに。」
ラインハルトがメレンゲと愚痴混ざりの意見交換をしていると本国からの新たな命令書を持ったマリアが現れる。メレンゲは入れ替わるように退出し、ラインハルトはマリアから受け取った命令書に目を通す。
「さすがに総統も中華連邦には手を出さんか。だが、公海上では話は別……これは君が総統に?」
「まさか一介の中佐が総統閣下に意見などできませんわ。これは総統閣下のお考えですわよ。」
ラインハルトはマリアを視線から外して命令書に再度目を通す。
「さすがに中華連邦には手を出さないか。」
「プルートーンはインド軍区にも進出するようですが?」
「あの国の横柄さは特別だ。我が総統は国際常識を理解されている。ブリタニアの蛮族の真似をする必要はない。我々はプルートーンがインド軍区からライラ姫を守るピースマークどもをたたき出すのを待てばよい。」
「現地の工作員の報告では、ピースマークが日本皇国と接触したようです。」
「なるほど、だからか。インド洋に大艦隊を向かわせたのは…」
武独伊艦隊が日本艦隊とインド洋で激突しようとしていた。
ユーロ・ブリタニア海軍地中海艦隊とドイツ海軍の紅海艦隊とイタリア海軍の紅海艦隊を中心とした枢軸艦隊。
日本艦隊は紅玉艦隊を派遣し、さらに公海上で洋上訓練を行っていた旭日艦隊と練習艦隊もインド洋へと向かっていた。
皇歴2017年5月16日ナチス・ドイツ ベルリン 総統府
「間違いないのだね。ヨッヘンバッハ君。」
ヨッヘンバッハと飛ばれたこの男はヒトラーの秘書。総統府直属の諜報機関「アガルタ」の指揮官でもある。
ピースマークに天秤(ライラ)を奪われて以後ヒトラーは消息を追っていた。中華連邦のインド軍区に逃げ込んだことを知ってからは工作員やブリタニアのプルートーンの協力を得てインド軍区ではテロまがいの不正規戦を繰り返していた。
「はい。諜報部ではインド軍区が脱出を手配したことは間違いありません。彼らはインド洋洋上で日本艦隊の保護を受ける様です。」
「テロリストどもめ…極東の黄色い猿どもとつるむとはやってくれるではないか。だが、日本艦隊をここで葬れるのならばブリタニアに貸しを作れる。」
ヒトラーの考えに恐る恐る反対意見を述べるこの男は独海軍元帥ヴィルヘルム・フォン・リッペ海軍長官である。彼はヒトラーの勘気に触れぬように極力穏やかにそれでいて従順そうな言葉を選びながら反対の意見を述べる。
「大変申し上げにくいのですが紅海艦隊だけでは手に余るかと…。インド洋に向かっている敵艦隊は約3個艦隊。地中海艦隊は現在第2・第3機動部隊はアフリカ大陸大西洋側海域の制圧のために派遣しております。第1機動部隊は地中海の守りに外せません。地中海沿岸でも残党勢力やテロリストの姿を確認しておりますので…。パタゴニア艦隊も余裕は…」
「リッペ君。北海艦隊を使いたまえ。フランスは沿岸砲撃などなくても滅ぼせる。北海艦隊を向かわせたまえ…、北海のその後は本国防衛艦隊で対処可能だ。それとも我が第三帝国の艦隊は極東の猿どもに劣るとでも?」
「そ、そのようなことはございません!必ずや総統閣下の期待に応えます!」
「ふはは。その意気だよリッペ君。愚かなテロリストと極東の猿どもに後れを取ってはならんのだよ。しかし、我らと近しい優等種のブリタニアが苦戦したのは考慮に入れるべきか。ゲーリング君、空軍からも手を貸してやりたまえ。」
ヒトラー声を掛けられたこの男性はエアハルト・ゲーリング空軍長官である。
「敵の海軍戦力は充実しておりますが対処は可能でしょう。我が空軍にお任せください。」
「しかし、極東の猿どもの艦隊は3個艦隊それもうち一つは半個艦隊規模。ゲーリング君が言うように海軍戦力は充実しておるな。うむ、イタリアのムッソリーニに連絡を取れ。紅海艦隊を動かしてもらおう。あの男にもたまには役立ってもらわんとな。それにブリタニアもだ。元をただせば奴らの失態でもあるのだからな。これで4個艦隊と空軍の支援だ。リッペ君これで問題はあるまい?」
「はい!必ずや総統には向かう愚か者どもを撃滅することが出来るでしょう!!ハイル・ヒトラー!!」「「ハイル・ヒトラー!!」」