コードギアス 皇国の再興   作:俺だよ俺

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第10話 亡命計画

 

皇歴2016年5月10日

外務省庁舎ビルの一室

 

「千畝大使。これは間違いない事、確実な情報なのですね。」

「間違いないものと確信しております。」

「我が国も情報の精度は保証します。」

 

木戸孝義外務大臣は東方エルサレム共和国駐在大使杉山千畝を直接呼び出して確認を取る。杉山大使の隣には極秘来日した東方エルサレム共和国外務大臣ゾラフ・バルバラフィクが座って杉山大使の言葉に相槌を打っていた。

 

外交大使を召還し、関係国の外務大臣が証人として極秘来日してまでもたらされた情報はあまりにも予想外過ぎたのだ。

 

「もうすぐ、大高首相も来られますので改めて説明願います。」

 

3月初めに日本の占領地、ブリタニア呼称エリア11の総督に就任したクロヴィス・ラ・ブリタニアから亡命の打診。これが東方エルサレム共和国を介して日本皇国に打診された。

 

しばらくして大高首相が外務省庁舎ビルへ到着し、通用口より彼らのいる一室へ案内される。

 

「お話を伺いましょう。」

 

杉山大使とバルバラフィク東エ外相は木戸外相に話した同じ内容を大高に伝えた。

 

「少し失礼します。」

 

内容を聞いた大高は即答を控え悩みこむ。部屋の隅の方へ移動してめったに吸わない葉巻を取り出して火を点ける。葉巻を吸いながら窓の向こうを見て自分の頭の中を整理し、気持ちを落ち着けてから彼らに向かい合うソファーに座り口を開く。

 

「神聖ブリタニア帝国第3皇子の他国への亡命。これは我が国だけで判断する案件ではありません。ロシア政府とも協議する必要があります。」

 

 

「ロシアと協議ですか?クロヴィス殿下は早期の亡命を望んでおります。ロシアと協議して調整しているほどの時間はありませんぞ。」

 

バルバラフィク東エ外相は大高の発言に驚いたように反応し、再考を促す。

 

「敵国の重鎮を迎え入れるのです。一報を入れねばかの国との関係が悪化します。ブリタニアは我が国だけで戦えるほど容易い相手ではありません。それにかの第3皇子を迎え入れればその奪還なり何らかの形で大規模な軍事行動が予想されます。ことは外交の枠に収まるものではないのです。」

 

「ですが、クロヴィス皇子の所有する情報はブリタニアの内情を多く握っているでしょう。亡命を望むほどなのです。彼が暗殺される可能性を考えて多少の過程を省いてでも受け入れる必要があるのではないでしょうか?」

 

「わかりました。私としてもブリタニアの内情や極秘情報が入手できることは我が国にとっても誠に有益であることは間違いありません。亡命受け入れを前提として調整していきましょう。東方エルサレム共和国側もそのように調整してください。」

 

「はい。我が国でもそのように手配します。」

 

「よろしく頼みます。」

 

 

数日後

首相官邸

 

「我がロシアとしては異存はない。しかし、亡命ユダヤ人達はブリタニアにもパイプを持っていたのか。」

 

ロシアとのホットラインでは意外にもブリタニア第3皇子の亡命よりもこの話を持ってきた東方エルサレム共和国の方が話題に上がった。

 

「彼らのネットワークは侮れませんな。」

「金だけではないと言うことだな。」

 

東方エルサレム共和国へ流れ込んだユダヤ人達は欧州やブリタニアマネーを撤収させてロシア帝国や北海道政権日本皇国へそのユダヤ人マネーを流し込み始めた。小国でありながらも存在感を示していた。

 

「ミスタ大高、貴国の諜報機関でもつかんでいるだろうが、連中…中華連邦のシュ・シンフォンに金を流し込んでいる。彼が決起すれば中華連邦は大荒れだろうな。」

 

話題は中華連邦の情勢にも及び、東方エルサレム共和国の富裕層に対する警戒感も話題に上がる。

 

「我が国の誘いに対してはタイ王国のプミポン国王が乗り気でした。あの国は東南アジアにおいての発言力が強いです。それにベトナム社会主義共和国も貴国の誘いに応じる構えを見せておりますな。」

 

「中華連邦で内紛亜発生した場合中華連邦の連邦の形は崩壊するかもしれんな。中華連邦の力が削がれることは構わんが万が一にも崩壊などされた場合に難民が押し寄せてこられても困る。やり過ぎないようにユダヤ人達に釘は差す必要があるな。」

 

「彼等とてその程度は解っているでしょう。ブリタニアもナチスドイツも自分達を滅ぼす存在。その対抗となる貴国や我が国の足を引っ張る真似はしないでしょう。」

 

「まぁ、その通りだがある程度手綱を握っておくことは必要だろう。」

 

「そうですな。うちの外務省にそれとなく対応してもらいましょう。」

 

「わかった。我が国の外務省にも貴国と協調するように言っておく。」

 

「ありがとうございます。プーシン大統領、では今回はここまでで。」

「ん、もうそんな時間か。では次回。」

 

 

 

そしてさらに日数が立ち皇歴2017年5月21日

首相官邸

官邸では大高を中心に木戸外相、桂陸軍参謀総長、高野海軍軍令部総長がテーブルを囲んでいた。

「クロヴィス皇子側もある程度情報を流してきました。新型機サザーランド、占領地の占領政策など…注目したいのはこれです。」

 

大高の秘書が資料を配る。資料には赤く極秘の印が押されており、重要な機密事項であることはすぐに察することが出来た。

 

「人体実験…」

資料を見た桂と高野は嫌悪感を露に大高と木戸に視線を向ける。

 

大高に促された木戸は資料のページをめくりながら知り得た情報を伝える。

「不老不死、世界の根源、超常の力と正直に言えば眉唾で何とも言えない物なのです。」

 

「偽情報ではないのかね。正直疑わしいぞ?それにこの資料の情報がすべてなのか?だとしたら情報が少なすぎます。」

「この程度の精度の情報なら、我々に話す段階ではないのでは?この程度なら外務省なり担当諜報機関で確度の高い情報を得てから上げるべきではないのかね?」

 

高野と桂はかなり怪訝な表情で不満を述べる。内容もナチスドイツのオカルトな組織が好き好んでやっていそうな常識外の内容であった。超大国と言った存在になるとなぜこのようなものに手を出すのかと言う少々くだらない内容の疑問が頭に浮かぶ。

 

「クロヴィス皇子としてはこれがこの手の内容では自分が握る内容の全てだそうです。」

木戸の言葉を聞いて高野と桂はさらに困惑した表情になる。

 

「大高閣下。申し訳ないのですが、この程度の確度の情報をなぜ重要視したのです?」

 

自分には図りかねぬと言う思いを胸に高野は大高の言葉を待った。

 

「そうですな。この程度の世田話であれば民間の都市伝説に毛が生えた程度ですからな。ですが、クロヴィス皇子の妹君がその人体実験の被験者だったと言えば。それがクロヴィス皇子の許可なく行われたものであり、それを自身の伝手で隠蔽されたものを掘り起こした形で知ったとすればどうでしょうか?」

 

それを聞いた高野と桂は合点がいったと言う感じで言葉を紡ぐ。

 

「なるほど、それなら第3皇子の亡命打診も理解できる。」

「しかしブリタニア皇帝もとんでもない鬼畜外道ですな。我が子を実験に使うなど…。」

 

憤っている二人に大高は本題を告げる。

 

「高野総長、桂総長。事情はある程度理解できたでしょう。クロヴィス第3皇子の亡命の準備段階として彼より妹君ライラ・ラ・ブリタニアの亡命…いえ、救助が要請されました。現在は中東地域で東機関の本郷少佐の部隊が保護しています。ただ、ブリタニアの暗殺部隊が動いているとの情報がありますので、早めに軍で保護してしまいたいのです。」

 

「自力でインドまで移動して頂く必要がありますがインド洋で洋上保護としたいです。それ以上は枢軸国の海軍が幅を利かせていますので…」

 

「わかりました。では海軍主導で保護作戦を展開して頂きましょう。」

 

高野が立ち上がり、遅れて桂も立ち上がる。

 

「了解したしました。軍は直ちに行動を開始します。」

 

ライラ・ラ・ブリタニア救出作戦は海軍主導で陸海空軍の参謀府で立案検討される。

陸路輸送における作戦全体は東機関が担当し、インドでは光機関と南機関がそれを支援することとなる。

 

 

 

 

皇歴2017年5月21日

旭日艦隊旗艦日本武尊

日本海沖で洋上補給を受けている時のことであった。

原元辰参謀長が命令書を大石に手渡す。

 

「大石長官。本国から特命です。」

「どれどれ…。参謀長、予定を変更する。洋上補給が済み次第お客様をお迎えするためにインド洋へ向かう。どうもお客人は質の悪い連中に追われているらしい。喜べ、お客人はお姫様だぞ。我々の仕事はお姫様に付きまとう無粋な輩におかえり願うナイト役だ。」

 

大石の言葉に原は疑問を口にする。

「では、練習艦隊はここで帰還させますか?」

「いや、連れて行く。練習艦隊の学生たちも練度としては十分なところに来た実戦を経験させてもいいだろう。それに他国の姫君の迎役に自国の姫君を充てるのはおかしくはないでしょう。」

 

「確かに悪くはありませんな。では練習艦隊にもそのように伝達します。」

 

 

練習艦隊旗艦月読

練習艦隊の参謀長兼艦長となった知名もえかは旭日艦隊から送られてきた命令書を事務部員から受け取ってから、艦橋へ向かう。

もえかは艦橋の司令官席に腰を落ち着けてながら2段の純銀製ケーキスタンドとティーカップとポットを乗せた円形のティーテーブルを横において侍従を横に配して紅茶を嗜んでいる桃園宮那子練習艦隊司令長官がいた。

最初の頃は戸惑ったが今となっては慣れたもので、自分も含めて艦橋要員の誰もが気にしなくなっている。

 

「司令。軍令部より旭日艦隊司令部を介して新たな命令が下りました。命令書です。ご確認ください。」

 

那子はもえかから命令書を受け取り目を通す。

 

「練習航海は終了してインド洋ねぇ…。皇族同士だから外交的には妥当かしらね。もえかも見るかしら?」

 

那子の様子を伺うに意外な命令なのだろうか。上官の許可も出たので那子から命令書を見せて貰うもえか。

 

「ぶ、ブリタニア皇族の亡命ですか?」

 

「そのようね。正直、世界的に見て優位にあるブリタニアからの亡命なんて絶対何か訳アリよね。」

「そうですよね。」

 

嫌な予感と言うか。ただならぬものを感じる内容であった。

 

「艦隊転進!これより我が白銀艦隊はインド洋へ向かう。」

 

「白銀艦隊?」

 

「この艦隊の名前よ。練習艦隊は解体されずそのまま実戦へ投入。いつまでも練習艦隊っていうのも格好がつかないでしょう?ね?」

 

「白銀艦隊…いい名前だと思います。」

 

練習航海終了後の初任務が旭日艦隊との共同作戦。白銀の名を冠するこの艦隊の初任務は輝かしいものになると思う。まぁ、難易度もかなりのものだと思うが…

 

 

 

 

 

 

皇歴2017年5月??日

豪和インスツルメンツ札幌支社ビル

 

陸軍参謀府に潜り込ませている自身の息のかかった陸軍将校よりもたらされた。クロヴィス皇子とライラ皇女の亡命計画。リーク者にとってはこちらを主体に伝えたかったはずだが、豪和インスツルメンツ総代豪和一清の目に止まったのはクロヴィスの部下バトレー・アスプリウス将軍が行っている研究の項目についてだった。「CODE-R」と言う生体実験の項目。彼らが行っている実験は我々が行っていたガサラキの召喚実験に近いものを感じた。

 

奴らの求めているものと我らの求める物はかなり近いように感じる。ガサラキの秘密に迫るには連中との対立は必須であるか。

 

「憂四郎亡き後、凍結してしまったガサラキ召喚実験。再開できるかもしれん…。」

 

一清は電話の内線ボタンを押して秘書へ命じる。

 

「清継と清春をここへ…。陸軍の牟田口中将と義猛叔父にも連絡を取ってくれ。」

「わかりました。」

内線を切った一清は執務机の上で手を組み口元を隠して思考に入る。

ライラ皇女は嵬の可能性が高い。うまくいけば実験の再開も可能だ。

 


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