続き書けたで候。
モノリス・コード決勝戦、決着です。
では、どうぞ∠( ゚д゚)/
第一高校と第三高校によるモノリス・コード新人戦決勝……
その戦いの火蓋は、砲撃戦から始まった。
両陣営の互いの距離は六百メートル。
見晴らしの良い草原ステージであるため、地の利が有利に働くのは『爆裂』を得意とする一条の方だった。
しかし、達也も負けてはいない。
『
右の拳銃型CADで魔法を撃ち抜き、左の拳銃型CADで攻撃魔法を放つ。
しかし、段々と距離が縮むに連れて、達也の魔法力の弱点が露呈し始める。
達也の使用する攻撃魔法は、一条が無意識の情報防壁で防げる程度のものであり、攻撃は牽制にもならない。
対して、攻撃に集中できる一条は一方的に攻めたてていた。
どちらが有利かは一目で分かった。
「……ダメだわ」
「ああ。一条が攻撃に専念出来ているのに対し、司波は防御しながらの攻撃。一歩近付く毎に司波の攻撃の手数が落ちてしまっているな」
真由美の呟きに十文字が続く。
達也には肝心の攻撃力が不足していた。
だが一高にはその攻撃力不足を補うために鋼の錬金術師、エドワード・エルリックがいる。
エドは両手を合わせて地面に手をつくと、錬金術を発動させる。
すると彼の左右の方向から幾つもの大砲が錬成される。
その数およそ十門。
そしてそれらが一気に三高陣営に放たれた。
「……エドワード君って大砲好きよね。そう思わない?十文字君」
「……まさに大胆不敵なエルリックらしいと言えるんじゃないか?」
しかし、三高陣営もそう簡単にやられはしない。
ディフェンダー、アルフォンス・ロクベルが土で出来た大量のゴーレムを出現させ、迫りくる砲弾をガードしたのだ。
「あれはゴーレム!?」
「どうやら三高のディフェンダーは古式魔法師のようだな」
達也と一条が互いに歩きながら距離を詰め続け、遂に試合が動いたのは五十メートルを切ったところであった。
達也vs一条、幹比古vs吉祥寺、エドvsアルフォンスといったそれぞれの戦いが始まった。
◆◆◆
達也は吉祥寺が動き出すのを視界の端で確認していた。
(吉祥寺が動いた)
直後、達也は一条に向かって一直線に走り出す。
吉祥寺は迂回するように動いており、そちらは幹比古が対処する。
対してこちらもエドが迂回するように三高へと攻めていく。
エドの相手は三高のディフェンダー、アルフォンスだ。
(エドワードの相手は古式使いか)
達也はというと、実質一条との一騎打ちとなる。
(一条まではあと五十メートル程……この距離になると攻撃の精度が上がってくるな。空中から的確に連続で放たれる攻撃魔法……そろそろ五感だけで発動を察知するのは厳しい)
一条の使う圧縮空気弾は四方八方から達也に襲いかかる。
これほどにまで近づけば、座標指定も目視で楽にできるので、攻撃も激しくなるのは必至である。
それ故に、ついに達也は隠し札の一枚を切った。
(……やむを得ん。『
達也は情報世界であるイデアを観測できる『
これであれば、魔法発動の兆候すら知覚することが可能となる。
つまり、通常より一段階早く魔法を察知することが出来るのだ。
それを使って一条の使う魔法を察知し、その全てを『
ひとまず試合は停滞する。
その間に、もう一つの戦いが始まっていた。
吉祥寺は幹比古へと照準を合わせる。
吉祥寺の使う魔法は『
加重プラスコードの基本コードによって、直接荷重を加え、ダメージにする。
事象改変ではないので、情報強化では防ぐことが出来ない。
(吉田幹比古!君を倒せば終わりだ!!)
だが、それは相手が並の魔法師であった場合だ。
(来たか……けど、そう簡単にやられたりはしないよ!)
幹比古はこの瞬間、古式魔法による幻術を発動させる。
吉祥寺の前には、何人もの幹比古が現れる。
(幻術!?これでは照準がつけられない!!)
視覚を狂わされ、狙いがつけられないのだ。
(『
しかし、吉祥寺の魔法はそれだけではない。
(幻術に妨害されて『
「ぐあっ!?」
(これは加重魔法!?)
吉祥寺は強力な加重魔法を発動させ、幹比古を押さえつける。
幹比古は強い荷重で地面に縫い付けられ、動ける状態ではなかった。
「幻術で僕の目は誤魔化せても
その様子を達也はしっかりと確認していた。
(幹比古は倒れたか……)
「これで三対二だな。司波達……!?」
ここで試合が動く。
一条が先の一撃でよそ見した瞬間に、達也は縮地を思わせる速さで一気に距離を縮めていたのだ。
(速い!!それに……)
忍術使い・九重八雲の下で体術を学んでいる達也は、人の意識の隙間を突くことが得意であった。
(なんだ!?この
「っこのォッ!!!」
油断していた一条は驚き、反射的に魔法を発動してしまう。
しかもレギュレーション違反になるほどの強力な魔法を十六発も。
(しまった!?出力オーバーだ!!しかもあんな数を……ッ!!このままでは……殺してしまう!?)
人体に直撃すれば大怪我、下手をすれば死に至るような攻撃。
一条は魔法を発動させた瞬間、自分が大きなミスをしてしまったことに気付いた。
だが達也は冷静だった。
(これほど高レベルの魔法を十六連発とは……恐らく間に合わないが出来るだけ落とすしかない)
達也は『
つまり、
だが、
「させるかよっ!!」
エドがいたからだ。
エドは即座に両手を合わせると、遠隔錬成で達也を守るように土壁を錬成する。
一条の攻撃は土壁に阻まれた。
「ナイスフォローだ、エドワード」
「なっ!?エドワード・エルリック!?アルフォンスはやられたのか!?」
そして達也は茫然として隙だらけだった一条に瞬時に近付く。
直後、右手を一条の左耳の側へ突き出すと、指を鳴らし、フラッシュキャストで極限まで音波を増幅させる。
「……!!」
それを至近距離で聞いた一条は脳を揺さぶられて倒れる。
同じく轟音を側で聞いた達也も、その場で膝をついた。
耳からは血が少し出ていた。
「将輝が……負けた……?アルフォンスまで……?」
吉祥寺は一条とアルフォンスの二人がやられていると知り、一瞬茫然となる。
(圧がなくなってる?……一条選手が倒れてる!エドの相手も!やったんだね二人とも!)
一条が倒れたことで吉祥寺は幹比古から目を離してしまい、加重魔法の効果が切れてしまう。
(骨にヒビが入ったのか、息をする度に胸が痛い……。長時間圧迫されていたせいで軽い酸欠状態……最悪だ。でもせめて、お前だけでも倒して見せる!カーディナル・ジョージ!!)
そして、その隙を見逃す幹比古ではなかった。
「はっ!?」
雷魔法で攻撃するが、吉祥寺は間一髪でかわす。
「……まだ動けたとはね、吉田幹比古」
幹比古は懐からパネル型CADを取り出すと、魔法を発動させる。
(今こうして戦っていられるのは達也のおかげだ。このCADも達也特製のオリジナル……だが何もかもが達也のおかげなんて僕のプライドが許さない。だからこの魔法で決着をつけてやる!)
そして幹比古はそのまま地面を叩く。
直後、
(地面を叩いて揺らした!?いや……振動系魔法か?)
吉祥寺は警戒する。
(まずは地面の表層を振動させる『地鳴り』)
続けて
(さらに地面に圧力を掛けて押し広げる『地割れ』)
「なにっ!?」
(こんなもの空中に退避すればっ……っつ!)
吉祥寺は空中へ逃れようとするが、
(足に草が!?この魔法は一体!?)
まるで操られているように。
(気流を操り、草木を絡ませる『乱れ髪』)
そのまま吉祥寺は
(そして地面に引き寄せる『蟻地獄』)
「くっ!?」
咄嗟に吉祥寺は跳躍魔法を使い、空へと流れる。
だが、それこそが幹比古の仕掛けた罠だった。
(地鳴り、地割れ、乱れ髪、蟻地獄、ここまで四連続の発動。そしてとどめの……『
「うああっ!?」
吉祥寺に
(しまった!?僕の飛ぶ方向に雷を……ここまでが仕掛けか!!)
吉祥寺は堪らずダウンする。
(これが五つの魔法の連続発動!!)
「勝った……!!」
ここに勝敗が決した。
三高の一条将輝、吉祥寺真紅郎、アルフォンス・ロクベルの三名が倒れ、一高の司波達也、吉田幹比古、エドワード・エルリックが最後まで立っていた。
決着です。
ここからはトントン拍子で話進めていこうかなと思ってます。
次回はエドと閣下が二人で話します。