続きかけたで候。
アイス•ピラーズ•ブレイク予選2回戦どうぇす。
では、どうぞ( ゚∀゚)o彡°
九校戦は五日目、新人戦二日目の早朝。
時刻は6時数分前、一色愛梨は第三高校のテント前である人物を待っていた。
すると、6時丁度にその人物がやって来た。
「遅かったわね」
やって来た人物、十七夜栞は微笑む。
「心配かけてごめんなさいね。もう大丈夫よ」
その顔にもう迷いはなかった。
「貴女なら、必ず来ると思ってたわ」
「ありがとう信じてくれて。恥ずかしい話だけど私はずっと『家』に囚われてたの」
栞は話す。
「家のことなんて忘れたと思っていたのに『私は両親とは違う』『あんなダメな人間じゃない』……どこかそれを証明するために頑張ってたみたい。でも先の試合で敗北を喫したとき、心の底にしまいこんでいた劣等感が抑えられなくなってしまった。私はやっぱりあの家の人間なんだ……そう痛感させられて一歩も動けなくなったわ」
栞の独白に、愛梨は耳を傾ける。
「そんなとき、あなたが来て教えてくれた。私にはもっと信頼できる大切なものがあるということを。ようやく気付けたの。だから私はもう
栞は気付いた。
自分は一人ではないと。
自分にはこんなにも頼もしい仲間がいるんだと。
だから誓いに来た。
信頼できる仲間と一緒に……共に前に向かっていこうと。
そしてその誓いを聞いた愛梨は……
「ええ、その誓い……確かに受け取ったわ」
満足げな表情で頷くのだった。
◆◆◆
達也達はエドが出場する男子アイス・ピラーズ・ブレイクの予選のために、朝早くから会場に足を運んでいた。
達也、深雪、ほのかに雫、エリカと美月、レオと幹比古といったいつものメンバーにエイミィ、スバル、菜々美の三人を加えた合計11人で観戦するのである。
だが落ち着かないメンバーが1人だけいた。
「し、雫!いよいよエドが出場するよ!!」
「ほのか落ち着いて」
なぜかほのかがガチガチに緊張していたのだ。
その様子を見ていたエリカが呆れた表情でツッコむ。
「なんでほのかがそんなに緊張してるのよ……」
するとほのかはエリカの方に首をグワンッと向けて言った。
「だって……あのエドだよ!?」
その一言でなぜか納得してしまったエリカであった。
そうこうしている内に実況の声が聞こえてきた。
『大会5日目、新人戦2日目午前の試合、まもなくスタートです!』
会場中から歓声が聞こえてくる。
アイス・ピラーズ・ブレイクは、九校戦の中でも人気競技の一つである。
多種多様な魔法が見れるため、一般人からしてみれば映画を見ているような迫力があるのだ。
『アイス・ピラーズ・ブレイク1回戦第1試合、両選手入場です!!』』
そして遂にエドが入場してきた。
エドの格好は黒い上下の服装と黒いブーツ、赤いコートといった少し派手目な格好であった。
エドの格好を見たエリカと美月は感心する。
「へぇ。結構、様になってるじゃない」
「うん。なんだかとても着慣れてるって感じがします」
他の面子も頷く。
すると達也がポツリと呟く。
彼の視線はエドの背中に固定されていた。
「フラメルの十字架か」
「知ってるのか達也?」
レオの質問に達也は答える。
「昔、簡単な資料で読んだ程度だがな。『フラメルの十字架』は、錬金術の象徴的なシンボルとして有名な物だ。十字架にかけられた王冠と、羽を掲げた一匹の蛇は、
「錬金術……まさに錬金術師であるエドワードさんにピッタリのマークということですね」
達也の解説に深雪が納得する。
「皆、そろそろ始まるみたい」
すると、雫が指を差しながら言う。
「エドワード君はどう攻めるんだろ?」
「少し楽しみだね」
「きっと予想外なことをしてくれるよ」
エイミィ、スバル、菜々美もワクワクしながら見ていた。
そして実況が告げる。
『男子アイス・ピラーズ・ブレイク1回戦第1試合、激戦の火蓋が切って落とされました!!』
遂に試合が始まった。
さっそくエドは両手を合わせて、錬金術を発動させる。
すると前4列の氷の柱が形状を変えて、大砲へと変わると、それらから勢いよく砲撃が放たれた。
相手選手の氷柱が一気に4本破壊された。
観客と実況者は突然のことに驚く。
『な、なんと第一高校のエドワード選手!自陣の氷柱を大砲に変えて、そのまま攻撃したあぁぁ!?なんという選手だあぁぁぁ!?』
その間にも氷柱は次々と破壊されていく。
「ほう。エドワードの奴考えたな。確かにあれなら相手の意表をつくことができる」
「問題は予想外すぎて……皆が戸惑ってることだね」
達也は感心しながら、幹比古は苦笑いしながら言う。
そしてエドは再度両手を合わせて、最後の錬金術を発動させる。
すると氷の大砲が水を吸ってさらに強化され、悪魔的なデザインの大砲へと変わった。
それを見た深雪達は、表情をギョッとさせる。
「あー……やっちゃった」
「さすがにあのデザインはない……」
ほのかが額に手を当て呆れ、雫はやれやれと首を振る。
「なんというか、エドワードさんのセンスって凄く独特ですよね……」
美月の呟きに思わず全員頷いた。
そしてエドは、相手の残りの氷柱4本をまとめて吹き飛ばした。
『試合終了〜!第一高校エドワード選手、相手に何もさせずに完封勝利です!!』
試合時間は三十秒もかからずに終了した。
問題があるとすれば、この九校戦が全国放送だということであろうか。
つまり、エドの悪魔を模した秀逸なデザイン?の大砲が現在進行形でお茶の間に流れているのだ。
余談ではあるが、ある芸術家がエドの錬成した氷の大砲を見てインスピレーションを刺激され、世界的に有名な作品を作ることになる。
その影響で、後にエドの独特なデザインは、ピカソ並に評価されることを、この時の彼らはまだ知る由もない。
◆◆◆
新人戦2日目は、アイス・ピラーズ・ブレイクの他にクラウド・ボールも並行して行われる。
クラウド・ボールは、通称『クラウド』と呼ばれ、圧縮空気を用いたシューターから射出された低反発ボールを相手コートに打ち込む競技である。
相手コートに一回バウンドする毎に1点、転がっているボールや止まっているボールは0.5秒につき1点が加算されていく。
コート全体は透明な壁に覆われており、二十秒毎にボールが追加射出され、合計九個のボールを1セット三分間休みなく追い続けなければならない。
もっと究極的に簡単に言えば、九個のボールを同時に使ってするテニスのような物だ。
エドが勝ち上がった後、スバルと菜々美は自分の試合をするためにクラウド・ボールの会場へと向かっていった。
そして二人は1回戦を無事に勝ち抜き、2回戦へと駒を進めた。
このまま勝ち抜けば、決勝リーグへといくことができる。
アイス・ピラーズ・ブレイクは氷柱の準備にどうしても時間がかかるため、必然的にクラウド・ボールの方が早くなるのだ。
その関係か、クラウド・ボールは一日通して予選から決勝トーナメントが行われるのである。
そんなとき、実況が一高の二人の活躍を報じていた。
『熱戦が続く新人戦クラウド・ボールは早くも2回戦に突入!第一高校、春日菜々美選手、壁に天井にボールをバウンドさせて相手選手を翻弄します!』
『これは幻術か!?いないはずの場所から打ってくる第一高校、里見スバル選手、予測不能な動きでペースを握らせません!』
勿論、エドも一高テントにて二人の活躍を見ていた。
「へぇ。やるじゃねえか、あいつら」
二人は無事2回戦も勝利し、準決勝へと駒を進めた。
そのとき三高の愛梨の活躍も報じられる。
『「
エドの顔がこれでもかと言わんばかりに歪む。
具体的には某大佐に会ったときの表情にそっくりであった。
するとエドの隣で様子を見ていた深雪が宥める。
「エドワードさん、凄い顔をしていますよ?」
それにエドはぶっきらぼうに答える。
「あんの金髪女、生意気にもパーフェクトゲームなんぞ取りやがった!!」
「予想通り三高の一色選手が勝ち上がってきましたね。確か次は……菜々美と当たりますね」
「なにっ!?だったら今すぐ見に行くぞ深雪!!」
「待ってください。エドワードさんは次の試合が近いではないですか。クラウドの応援に行っていては時間に間に合わなくなります」
「ぐぬう……ってそういや、あまりに自然に側にいたから今気付いたが、なんでお前がここにいるんだ深雪?」
「まあ、付き添いというやつですよ」
エドの疑問に深雪はお茶目に答える。
実を言うと、深雪がここにいるのは、エドのストッパーとしてのためである。
一人にしておくと、この利かん坊は常に暴走しがちになるために抑え役が必要なのだ。
「愛しのお兄様はどうしたんだよ?」
「お兄様は多忙ですからね。他のエンジニアの方のフォローに回っておられます」
「ああー……そういやエイミィと雫の試合はもう終わってたな」
女子アイス・ピラーズ・ブレイクの方も順調に試合が消化されている。
エイミィと雫も無事1回戦を突破し、2回戦へと駒を進めている。
ちなみに二人の格好は雫は振り袖、エイミィは乗馬服である。
「お前の試合は午後からだったか?」
「はい。12試合目になるのでまだまだ先です」
「さいで」
エドはあまり深く聞かないことにした。
こう見えてもこの氷の女王様、意外と頑固であるため、エドの付き添いに来たということは滅多なことがない限り、動かないことを意味する。
一高に入学してから深雪の人となりをそれなりに理解してきたエドは、それが分かっているため何も言わないのである。
そのときエドを呼びにあずさがやってきた。
「エドワード君、もうすぐ試合の時間なのでそろそろ移動の方お願いします」
「へーい」
エドはあずさに呼ばれ、会場へと向かうことに。
「エドワードさん!ご武運を!!」
「おう」
エドは片手を上げて深雪の激励に答える。
そして彼は会場へと向かった。
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『男子アイス・ピラーズ・ブレイク2回戦第1試合選手の入場です!』
エドと対戦相手の選手が入場する。
エドの対戦相手は二高の選手であった。
陸上選手なのか、ランニングシャツとランニングパンツをはいており、ガタイも良さそうな選手だ。
すると実況が選手紹介に移る。
『登場したのは1回戦を見事な完封勝利を収めた一高のエドワード・エルリック選手!資料によると、エドワード選手は古式魔法『錬金術』の使い手だそうです!この試合でも錬金術がどう使われるのか注目です!!』
エドの選手紹介がされると、観客が盛り上がる。
小さな子供に至っては、エドの真似をして両手を合わせる子までいる。
先の試合でエドの名は全国的に広まったらしい。
当然、エド自身悪い気は全くしていない。
そして二高の選手の紹介が終わると、試合開始の合図がなされた。
『それでは、試合が始まりました!』
「いくぜ!!」
さっそくエドは両手を合わせて錬金術を発動させる。
するとエドの氷柱8本が変化すると、巨大な大蛇へと姿を変えた。
そしてその大蛇達は一斉に相手の氷柱へと攻撃を仕掛ける。
『なんとエドワード選手!今度は氷柱8本を巨大な大蛇へと変えたあぁ!言うなれば氷のヤマタノオロチといった所でしょうか!これが古式魔法「錬金術」の力かあああぁぁぁ!?』
「くっ!?」
それを見た相手はすぐに自陣の氷柱に情報強化で物理耐性を上げる。
が、氷のヤマタノオロチはそれらを容易く打ち破る。
『エドワード選手の攻撃が山本選手の氷柱8本を壊しました!情報強化された柱も真上からの攻撃には勝てず!!』
「これで決めさせてもらうぜ!!」
エドは再度両手を合わせると、水を吸ったヤマタノオロチがさらに巨大になる。
そして残りの氷柱をまとめてなぎ払った。
『試合終了〜〜!!第一高校エドワード選手、1回戦に続いて2回戦も圧倒的な強さを見せつけて完封勝利です!!!!』
2回戦も特に苦戦することなく、無事勝利したエドであった。
そしてその様子を、三高のアルフォンス•ロクベルと、ウィンリィ•ロクベルは複雑な表情で見ていた。
「見れば見るほどあの人、
「
二人は懐から写真を取り出す。
そこには幼い三人の少年少女が映っていた。
撮った場所は病室であろうか?
入院している
「そういえば、さっきばっちゃんが電話で気になること言ってたんだ」
「ばっちゃんが?」
「うん。エドに似た子が随分前から喫茶店に来るようになったんだって。それたぶん、あの子のことだと思う」
「そうなんだ……」
「ばっちゃん驚きすぎて、つい声かけちゃったんだって。そこからよく話すようになって、世話焼いて、毎日大変だよって嬉しそうに言ってた」
「そっか……」
「うん……」
二人は静かに手を繋ぎ合う。
「僕達もいい加減前に進まないとね……」
「そうだね……」
二人の視線の先には、笑顔で応援席に手を振る金髪の三つ編みの少年の姿があった。
このアルフォンスとウィンリィはエドの子孫です。
ピナコばっちゃんはエドの
そしてこのアルフォンスとウィンリィは恋人同士です。
いとこ同士なんで付き合えますはい。
では、また( `・∀・´)ノ