魔法科高校の鋼の錬金術師   作:Gussan0

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どうも|д゚)チラッ

続きかけたで候。

今回はほのかのバトル·ボード予選編。

では、どうぞ( ゚∀゚)o彡°


第四十ニ話 新人戦 バトル・ボード 予選

第三高校の会議室ではミーティングが行われている。

 

しかしその雰囲気は暗かった。

 

 

「ここまでの結果だが……予想以上に一高が得点を伸ばしている」

 

 

「さすがにスピード・シューティング女子の1位〜3位独占は予想もできなかった」

 

 

「優勝確実なはずの十七夜(かのう)が4位で敗退したのは痛かったな」

 

 

三高の男子選手達が呟く。

 

現在のトップは一高、その次が三高であり、本戦では一高との得点差を縮めることに成功していた。

 

しかし、スピード・シューティングでは優勝候補と言われていた(しおり)が負けてしまい、新人戦だけに限れば三高は一高に大きく引き離されていた。

 

そんななか、愛梨は一人浮かない顔をしていた。

 

 

(栞……)

 

 

栞のことを心配していたのだ。

 

栞は次の試合のアイス・ピラーズ・ブレイクに向けて身体を休めているのでミーティングには参加していない。

 

しかし雫との試合に敗れてから不調をきたしていた。

 

 

(北山選手相手の敗退でまるで精神の糸が切れたように次の3位決定戦ではありえないミスを連発して負けてしまった。相手の滝川選手はとても北山選手に及ばない普段の栞なら苦にもせず勝てる相手なのに……)

 

 

栞自身、精神的に参っているのか、部屋から一向に出てくる気配もないのだ。

 

 

「そこまで実力差があるようには見えなかったが……」

 

 

「その通り」

 

 

一人の生徒の疑問を上げる声に答えたのは、三高の参謀役である吉祥寺真紅郎である。

 

 

「僕と将輝はあの試合を見てひとつの結論に行き着いた」

 

 

「ああ」

 

 

そして真紅郎の隣に座っている一条将輝が話を切り出した。

 

 

「一高の勝利はまぐれじゃない。CADの性能を2〜3世代引き上げる化け物のような技術者がついている。今後も奴が担当する試合では相当な苦戦が予想されるだろう」

 

 

将輝の言葉に三高メンバーはざわつく。

 

愛梨はその様子を苦い表情で見守っていた。

 

そして何点かの軽い確認を行った後、重苦しい雰囲気のミーティングは終了した。

 

 

 

________

______

____

 

 

 

「栞、いるでしょ?開けて?」

 

 

ミーティング終了後、愛梨は親友の一人である四十九院沓子(つくしいんとうこ)を連れて栞の部屋を訪ねていた。

 

ドアをノックして声をかけると、返事が返ってきた。

 

 

「ごめんなさい。ちょっと一人にしてほしいの」

 

 

ただし拒絶の、ではあるが。

 

 

「栞……」

 

 

「私は多分もうダメ。悪いけど代役を立ててもらえないかしら?」

 

 

ドア越しに聞こえる弱々しい返答に、愛梨は喝を入れる。

 

 

「情けないことを言わないで!貴女は私が認めたの!貴女自身のその輝きを!貴女自身がそれを信じないでどうするの!?」

 

 

しかしそれっきり返事は返ってこなかった。

 

愛梨達は一旦出直すことにした。

 

 

「やれやれ……あれではわしのお祓いも効きそうにないの」

 

 

「あんな栞、見たことないわ。このままの状態が続くなら……栞の言う通り代役を立てる必要があるのかしら……」

 

 

「ふむ……」

 

 

悩む愛梨の様子を見ていた沓子は励ますように声をかけた。

 

 

「いや、それは大丈夫じゃろう。根拠はわしの直感じゃ!」

 

 

愛梨は一瞬キョトンとするも、同じく笑みを浮かべて言う。

 

 

「そうね。()()()()()()()きっとその通りね」

 

 

「うむ!」

 

 

沓子は愛梨の答えに満足すると元気よく頷く。

 

四十九院沓子は愛梨達三人のムードメーカー的存在である。

 

また彼女自身、()()()()()()()()()()()()()であり、そして()()()()()()()()()()()()()()()()()もそれに関係している。

 

 

「それじゃ、私は今の報告も兼ねて作戦テントの方に行ってくるわ」

 

 

「では、わしは先に会場へ向かっておくの」

 

 

そして愛梨と別れた沓子はトトトッと、廊下を小走りしながら会場へと向かう。

 

 

「ん?あれは……」

 

 

するとその先に何やら見覚えのある女子生徒が廊下で一人うろうろとしていた。

 

 

(あやつは確か……一高の金髪に跳び蹴りしてたオナゴじゃの!)

 

 

四十九院沓子という少女は人懐っこい。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それは彼女本来の人の良さが現れていた。

 

何が言いたいかというと、彼女の視線の先にいる一高の生徒、光井ほのかに勢いよく突撃していったのである。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ほのかはガチガチに緊張していた。

 

 

「……午前は雫の試合に集中してたから考えないでいられたけど……今になって急に緊張してきちゃった……」

 

 

試合時間が段々と迫ってきたせいか、唸りながら一人緊張と戦っていた。

 

手のひらに何度も人と書いて飲み込んでいた。

 

効果はまるで効いていなかったが。

 

 

「おぬし」

 

 

「ひょわ!?」

 

 

そのとき突然背後から声が聞こえ、ほのかはビクリと身体を震わせる。

 

そのまま視線を後ろへ向けると、見覚えのある少女の姿があった。

 

 

「何をそんなに緊張しておるのじゃ?」

 

 

(あれっ?この子……確か三高の……えっと四十九院沓子さん?だったかな……でもなんでこんなところに……偵察?まさか妨害工作?そういえば渡辺先輩の事故の問題も分かってないのに……)

 

 

ほのかは内心ビクビクしながら三高の少女の様子を伺う。

 

対して少女はというと、まるでほのかの内心が分かっているかのように助言する。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「え?」

 

 

「さほど緊張することはない。おぬしの実力を出せばこの予選など余裕じゃろうて」

 

 

「どうして……?」

 

 

(私、声に出してたっけ?)

 

 

「ちょっと人の子を元気づけたい気分だったのじゃ。ではの〜」

 

 

「あれっ?」

 

 

そして三高の少女はそのまま立ち去ってしまった。

 

 

「なんだったんだろう?でも……」

 

 

(ちょっと気が楽になっちゃった。第一印象と違っていい子なのかも……?)

 

 

前回の懇親会の影響であまり良いイメージを持っていなかったのだが、先程のやり取りで緊張が少しほぐれたほのかであった。

 

 

 

________

______

____

 

 

 

「体調は大丈夫ですか?」

 

 

「はい、問題ありません」

 

 

そして試合開始時間約一時間前になった頃、ほのかはあずさと最終打ち合わせを行っていた。

 

そのとき時間が空いた達也がやって来る。

 

 

「ほのか」

 

 

「達也さん、来てくれたんですね」

 

 

「ああ、ちょっと時間ができて」

 

 

するとあずさが二人に話しかける。

 

 

「ごめんなさい。ちょっと他の子の様子を見てきたいので、しばらく二人でお願いしますね」

 

 

「あ、はい。分かりました」

 

 

「了解です」

 

 

ほのかと達也は了承する。

 

 

「すぐ戻りますから〜」

 

 

「はい」

 

 

そしてあずさは他のメンバーの所へと向かった。

 

 

「試合までにはまだずいぶん時間があるんだな」

 

 

「そうなんです。まだ一時間以上……」

 

 

「そうか。じゃあ他の選手の出番も見てみようか」

 

 

と、時間が空いた二人は他の選手の偵察へ行くことになった。

 

 

「決勝は明後日だが、決勝で当たるかもしれない相手を見ておくにこしたことはない」

 

 

「ですね」

 

 

そしてバトル·ボード予選の会場へと到着する二人。

 

空いてる席に座り、観戦する。

 

 

「なかでもマークすべき選手はやはり第三高校の四十九院沓子」

 

 

二人の視線の先にはバトル·ボードの予選に出ている沓子の姿があった。

 

 

(さっきの……)

 

 

「あ、あの子……」

 

 

「知ってるのか?」

 

 

「懇親会のときにチラッとだけ。さっきも少ししゃべっただけなんですけど、そんなに手ごわいんですか?」

 

 

「……ちょっと気になることがあってな。俺の師匠筋からの伝手で聞いた話だが、四十九院家は神道系古式魔法を受け継ぐ由緒正しい家系でそのルーツを辿ると、かつての神道の大家『白川家』に行きつくそうだ。『白川』の血筋はその名の通り、水に関する魔法を得意としている。そう……()()()()()のような」

 

 

するとバトル・ボード出場選手達が急に足を取られ姿勢を崩し、プールへと落ちる。

 

()()()()()()()()()()

 

どうやら彼女が水面に干渉する魔法で他の選手のバランスを崩し、一気に突破したらしい。

 

他の選手もなんとか体勢を立て直すも水面に干渉された影響か、波の逆流を生み出し、前に進ませないようにしていた。

 

そして圧倒的な強さで1位をもぎ取り、予選を通過した。

 

それを見たほのかは萎縮してしまう。

 

 

(こ、こんな魔法って……)

 

 

その様子を側で見ていた達也は咄嗟に声をかけた。

 

 

「ほのか」

 

 

「達也さん」

 

 

「大丈夫だ。ほのかなら恐れることはない。確かに強力な選手だったが、ほのかだって決して引けを取っていない。特訓したことを思い出してまずは予選通過に集中しよう」

 

 

「……はい!」

 

 

そしていよいよほのかの順番が回ってきた。

 

 

 

________

______

____

 

 

 

『予選第三レース出場者は第一高校光井ほのか、第七高校……』

 

 

選手達がスタート前に各自並び、選手紹介がされていく。

 

ほのかの名前が呼ばれると一高サイドが盛り上がる。

 

 

「ほのか!がんばれえぇー!!」

 

 

「ファイトだよー!」

 

 

「やってやりなさーい!」

 

 

その応援はほのかの耳にしっかり届いていた。

 

ほのかの脳裏では、達也との特訓前のミーティングが思い出されていた。

 

 

『最初に光魔法……?』

 

 

『スタートと同時に波を起こしたり、光を使ったりバトル・ボードでは様々な戦法が試されてきた。最初にリードを奪った方が大幅に利点がある競技だからな』

 

 

『でも光の魔法で妨害に成功した選手はいないと雫が……』

 

 

『確かに妨害に使えるほど出力の大きな魔法だと移動用の魔法に移行しにくく本末転倒だ。かといって低出力の魔法にすると妨害としては到底機能しない』

 

 

そこで達也はノートパソコンを見せる。

 

そこには、ほのか専用にチューンした起動式があった。

 

 

『だがこの式は最初の魔法と次の魔法をシームレスに組み込むことによってスタートダッシュに支障がないようにした』

 

 

『そんなことができるなんて……達也さんはやっぱりすごいです!』

 

 

『いや、すごいのは俺じゃない。ほのかでなければこの魔法で大出力の閃光を生み出せない。この魔法はほのかの光魔法に対する特性から生まれたほのかだけの魔法だ。誇っていい』

 

 

『私……頑張ります!』

 

 

『あとは特訓あるのみだな』

 

 

『はい!』

 

 

(達也さんが私だけのために作ってくれた魔法……!)

 

 

ほのかは精神統一を澄ませると目をパチリと開く。

 

 

(よし大丈夫!特訓した内容を今は出し切るだけ!!)

 

 

彼女の精神状態はこの日一番安定していた。

 

 

『オンユアマークセット』

 

 

そしてレースが……始まった。

 

 

 

 

 

 

(今っっっ!!!!!!)

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

直後、ほのかは加速魔法を発動させてボードを発進させた。

 

 

『大きな閃光が会場を包みました!光井選手の魔法です!!』

 

 

実況がテンションを上げながら話す。

 

 

『その光井選手!猛スピードのスタートダッシュ!!他の選手はまだスタートが切れていません!!!出遅れました!!!!』

 

 

他選手は閃光に目を取られた影響で動けない者がほとんどであった。

 

 

『前評判と違い、なかなかトリッキーな戦い方ですね』

 

 

解説者もほのかの戦法に興味を持ったようだ。

 

一方のほのかは落ち着いていた。

 

 

(フラッシュ成功した!移動への切り替えも上手くいってる!!)

 

 

達也の用意した策とはスタート開始直後のフラッシュの閃光であった。

 

ほのかは光魔法に対する感受性が非常に強い。

 

その感受性が強いほのかだからこそ、会場全体を照らすことができたのだ。

 

ほのかは後方にチラリと視線を向ける。

 

 

(後続との距離は十分。このままスピードを落とさず逃げ切る!)

 

 

そのとき、急に前方の波が大きくなる。

 

どうやら体勢を立て直した後方選手の一人が妨害として大きな波を放ったらしい。

 

 

「くっ……」

 

 

(すごい波……!ここで転覆したら追いつかれてしまう!なら……)

 

 

するとほのかは、その大きな波に乗り始めた。

 

 

(バランスを取って逆に波に乗る!このための訓練はたくさん積んできた!!)

 

 

一方の妨害した選手は自分の放った波に飲み込まれていた。

 

 

『おおっと!妨害しようと放った波に飲み込まれ転覆!やはり競技中の妨害は諸刃の剣ですね。一方の光井選手、他の選手をスロープ1周以上引き離して独走中……!!』

 

 

ほのかは安定した波乗りでゴールへと向かっていき……

 

 

『ゴール!言葉を失う圧倒劇でした!!』

 

 

(やった!!!!!!)

 

 

1位で予選を突破した。

 

そして、そのレースを見ていた四十九院沓子は楽しそうに笑う。

 

 

「あやつなかなか面白い技を使いおるの。()()()()()()()()()()()()

 

 

沓子の視線の先には嬉しそうに応援席に手を振るほのかの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、我らが鋼の錬金術師はと言うと……

 

 

「ぐぉおおお……目があぁぁ……目があぁぁぁ……」

 

 

目を抑えながら悶絶していた。

 

 

「だから応援席の前の方には行かないほうがいいとあれほど言ったのに……」

 

 

その側では呆れながらやれやれと首を振る雫の姿があった。




次回はいよいよエドのアイス·ピラーズ·ブレイクの予選どうぇす。

勿論衣装は、赤いコートに黒い上下の服装でしょう。

鋼の錬金術師……いよいよ九校戦に出陣。

では、また( ´∀`)bグッ!

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