続き書けたで候。
今回は軽く振り返りです。
ここでお礼を。
鈴神さん、内容の提供ありがとうございます。魔法科高校の劣等生は設定が複雑なので正直、助かっています。
本当にありがとうございます。m(__)m
では、内容にいかせていただきます。
少し修正しました。
どうぞ( *・ω・)ノ
真由美は放課後一人残り、九校戦の書類と同時に、生徒会の引き継ぎ書類を作成していた。
ある程度の目処が立つと、グッと腕を伸ばして身体をほぐす。
「ん~~~………はぁ。今日はここまでにしておきましょうか」
そして帰り支度を整えていると、彼女の端末に保存されている、あるデータが目につく。
「賢者の石エリクシル、
真由美は三ヶ月前の話し合いを思い出す。
────────
──────
────
ブランシュのアジトを壊滅させてから三日後のこと。
第一高校の生徒会室には、三巨頭の真由美、摩利、十文字をはじめ、達也、深雪、エド、桐原が集まっていた。
「十文字……これは本当のことなのか?」
「疑いたくなるのも分かるが……事実だ」
手元の報告書に目を通していた摩利の口から、そんな言葉が漏れた。
報告書の内容は、先日のブランシュのアジト壊滅作戦の顛末についてである。
その中には、リーダーの司一が使用した魔法についても書かれており……摩利の疑念は、そこに向いていた。
そしてそれは、真由美も同様である。
「十文字君は勿論、桐原君や達也君のことを疑っているわけじゃないけど……」
「仰りたいことは分かります。俺達も、未だにあの時の経験が事実だったとは信じられない程でしたから」
強力な催眠術で、言葉のままに人間を操る『
物質を意のままに作り出す『
いずれも現代魔法の理論を根本から覆す、空想染みた……というより、空想としか思えないものだった。
「百歩譲って、『
「現場には、その魔法が使われた痕跡も残っていなかったっていう話だしね……」
「ううむ……」
摩利と真由美の正論に、十文字は返答に窮する。
あの日、あの場所で起こったことをありのままに報告している以上、何ら後ろめたいことは無いのだが、経験した自分達ですら夢ではなかったのかと思えるような事象なのだ。
魔法師とは、事象をあるがままに、冷静に、論理的に認識できなければならない。
である以上、現場に居合わせていなかった真由美と摩利を納得させられる筈が無かった。
どうしたものかと思案し、表情を険しくする十文字が沈黙する中、達也が口を開いた。
「その『
「……本当かね、達也君?」
「あの出鱈目な魔法を研究していた奴がいたっていうのか!?」
達也の言葉に、信じられないとばかりに摩利と桐原はじめ、一同は目を見開く。
「以前、現代魔法の基礎について理解を深めるために、多方面から集めて読んでいた論文の中から、たまたま見つけたものです。尤も……あまりにも馬鹿馬鹿しい理論だったお陰で記憶に残っていたわけですが」
「ば、馬鹿馬鹿しい……」
物質を意のままに作り出す魔法なんてものが存在しないことは、誰もが知っている。
故に、その研究が失敗に終わっていたことは間違いない。
だが、達也をしてこの容赦の無い評価である。
読んだ後で、時間を無駄にしたと相当後悔したのであろうことは、この場にいる誰もが容易に想像できた。
「だが、その馬鹿げた話が現実のものになっている。構わん、話せ」
「分かりました」
そうして達也の口から、『
その研究が行われたのは、現代魔法理論草創期の頃だったという。
情報体次元『イデア』と個別情報体『エイドス』の存在が現代魔法学の中で認められたことをきっかけにある仮設が提唱された。
現代魔法により、エイドスを構築できたのならば、其処に存在しない物質を、意のままに生み出せるのではないか?
この魔法が成功すれば、当時から問題視されていた資源問題は一挙に解決することは間違いない。
そう考えた一部の研究者は、物質を創造する魔法の研究を開始した。
手始めに行ったのは、地球上の元素の中で最も軽いとされる、水素元素の創造だった。
当時の現代魔法学においては、物質の情報量は元素の重さに比例すると考えられていたことから取られた方針である。
しかし、この研究は開始早々に頓挫することとなった。
理由は単純。
創造すべき物質の情報を読み取り切れなかったのだ。
現代魔法の基礎単一工程の起動式ですら、アルファベット三万字相当の情報量があるのだ。
それを用いて改変する対象の物質が持つ情報量は、水素元素一つにしても“莫大”という言葉でも生ぬるい程の量である。
物質の情報を網羅する段階で躓いているようでは、創造など夢のまた夢。
そうして、エイドス構築によって物質を作り出そうと言う研究は、幕を閉じたのだった。
「この研究から分かったことは、地球上の物質が持つ情報量は、人類の力で明らかにできるものではないということ。そして、魔法師が自由に改変できる事象というものは、この世界の情報全体から見れば、ほんの一部でしかなく……数百年経ってもそれは変わらないだろうということでした」
「まあ、確かにその通りね……」
「……今でこそ当たり前のことだが、それを当たり前としたことでは意味はあったんだろうな」
達也が「馬鹿馬鹿しい」と評した理由がよく分かる理論に、話を聞いていた面々はげんなりとした表情だった。
真由美と摩利も、顔も知らない研究者へのフォローの言葉が見つからない。
「しかし、この論文のお陰で、『
「本当ですか、お兄様?」
荒唐無稽としか思えない理論から未知の魔法の正体を探る手掛かりを得たと言う達也の言葉に、驚きを露にする深雪。
対する達也は首肯する。
「ここから先は、俺の推測になります。恐らく、『
「エイドスを構築って……けど、それはさっき達也君が言っていた論文で不可能だってことが証明された筈じゃ……」
「しかし、それ以外にあの魔法の正体には説明がつきません。それに、反則級の魔法に聞こえますが、そこまで万能ではありませんよ」
「どういうことだよ、司波兄?」
「魔法というものは、その発動によって事象が改変された時、それを是正するための力が世界から働きます。何も無い場所に物質を生み出すという無茶苦茶な事象改変が起これば、それを是正するために消滅させようとする力が働くのは自明の理です」
「それじゃあ、現場に奴が生み出した物質が残っていなかったのは……」
「本来無い筈の物の存在を消滅させることで安定を図ろうとする、世界の是正力によるものでしょう。或いは、生み出された物質のエイドスが不安定だったためとも考えられます。そういった理由で、創造された物質は長時間維持することはできないわけです」
(成程な……錬金術でいう、“リバウンド”ってわけか)
エドが前世で見てきた賢者の石を使った錬成物も、長時間維持できたものは少なかった。
ホムンクルスの分離したパーツがすぐに霧散したのが典型例だろう。
等価交換の概念を捻じ曲げる賢者の石だが、それを是正するための世界からの力――錬金術的にはリバウンドとも言う――は確かに働いていたのだ。
達也本人は推測と言っているが、この場にいる誰もが半ば以上正論と認識していた。
エドもその一人であり、賢者の石を使った法則無視の錬成――魔法と呼ばれているが――の正体について、初見にも関わらず現代魔法学的に適確に解析している達也の見解に舌を巻いていた。
「以上が俺の個人的な見解です。それより問題なのは、『
「確か『賢者の石』……『エリクシル』と呼んでいましたね」
「あれがあったから、あんな反魔法組織の三下でも会頭や俺達を追い詰められたわけだからな……あんな物がもし出回れば、とんでもねえことになるだろうな」
現代魔法では実現不可能な事象を引き起こす触媒が、反魔法組織の……それも下級幹部としか形容できないような人間の手に渡っているのだ。
押収した分だけしか存在しないとは、まず考えられない。
桐原の言うように、万一裏社会に出回ることになれば、世界のパワーバランスは崩壊し、戦争勃発も十分にあり得る。
「その件については、我々で対応する。よって、今回、首謀者の司一が使用した魔法や、例の魔法触媒については一切の口外を禁止させてもらう。これは十師族の決定と思ってくれ」
十文字が下した決定、もとい緘口令に対し、達也、深雪、エド、桐原は黙って頷いた。
そして話は終わりかと思いきや、何を思ったのか達也がエドの方へと視線を向ける。
「そういえばエドワード、一つ確認しておきたいことがあったのを思い出した」
「確認しておきたいこと?」
達也の言葉にエドは首を傾げる。
「司一に賢者の石について聞いていただろう?何か知ってることがあるのかと思ってな」
「そういえば……聞いていましたね」
達也の言葉に深雪も同意する。
「あー……」
エドは髪をかきながら数秒考え込むと、口を開いた。
「……錬金術にはよ、賢者の石についての伝説があるんだ」
「ほう?」
エドはかつて賢者の石を精製したドクターマルコーの研究書に載っていた言葉を思い出す。
「オレの見たある研究書の始まりには、こう書かれてた。『苦難に歓喜を、戦いに勝利を、暗黒に光を、死者に生を約束する血のごとき紅き石、人はそれを敬意を持って呼ぶ。【賢者の石】と』ってな」
皆がエドの言葉に耳を傾ける。
「賢者の石は、幻の錬金術増幅器って言われててな。使えば等価交換の法則を無視してなんでも錬成できる。それこそ
「「「「「「!?」」」」」」
エドの言葉に六人は驚く。
「その証拠に奴は……オレの"二つ名"を知っていやがった」
「二つ名?」
真由美が首を傾げる。
「"鋼の錬金術師"……だったか」
「ああ」
十文字の呟くように言った言葉に頷くエド。
「オレのその二つ名を知ってる奴は、
(そう……それも
そんなエドの脳裏には、ある
その女性は、エドの出身世界のある地下都市で戦った錬金術師。
ホムンクルス達の統括者であり、エドの師であるイズミの元師匠。
そしてホーエンハイム・エルリックの元妻であった女性。
(まさか真理の言ってたイレギュラー野郎は、お前なのか?…………ダンテ!!!!)
エドは数秒目を閉じてから、また口を開いた。
「……つってもまだ推測の域を出ないけどな。正直、まだまだ情報が足りねぇ。だからオレは賢者の石について片っ端から資料を調べるつもりだ」
「そうか。なら俺も個人的なツテを使って色々調べるとしよう」
エドの言葉に十文字も返す。
「エルリック、何か進展があればその都度伝えてくれ。俺の方でも何か分かれば、すぐに伝える」
「了解っす」
十文字の言葉にエドは頷く。
「では、今日はもうこれで解散としよう」
そして、ブランシュのアジト壊滅に関しての報告会は終了、その場は解散となったのだった。
────────
──────
────
以上のことを思い返していた真由美は溜め息をつく。
「はぁ……九校戦、何も起こらなければいいのだけど……」
最近は、世間でも割りと物騒な話題が事かかない。
つい三ヶ月前では第一高校でもテロ騒ぎがあったのだから。
そして真由美が戸締まりをして帰ろうとしたとき、彼女の電話端末が鳴る。
端末には『あーちゃん』の文字が書かれていた。
真由美は電話に出る。
「もしもし、あーちゃん?どうしたの??」
『会長ー!助けて下さい!大変なんですうぅ!!』
端末の向こう側から、あずさの泣きそうな声が聞こえてくる。
真由美は苦笑いしながら、あずさからの要件を聞く。
あずさの話によれば、あの金髪の少年エドワード・エルリックがモノリス・コードのことでクラスメートと揉めているらしい。
真由美は後輩からの電話を苦笑いで聞きながら、思った。
(今年は本当に、面白い子が多いわね)
彼女はひとまず電話口の向こうで慌てている後輩と合流するために、急いで現場へと向かうのだった。
…………余談ではあるが、三ヶ月前の話し合いでエドは、皆に意図的に伝えなかった情報が幾つかある。
それは賢者の石の材料となる存在、それを核にした者達の存在について。
それらの情報については簡単に話せる内容ではなかったこと、そしてまだまだ情報不足なこともあって、これらの情報を伝えるのは時期尚早と判断したのだ。
だが彼は気付かなかった。
そんなエドの様子を達也がジッと観察していたことに。
次回は練習しつつ、いよいよ九校戦に突入しつつ。
では、また(・∀・)ノ