時間かかって申し訳ない。
やっと書けたで候。
では、どうぞ( *・ω・)ノ
『二科生はあらゆる面で一科生に劣る差別的な扱いを受けている!生徒会長はその事実を誤魔化そうとしているのではないか!』
『ただいまあらゆるというご指摘がありましたが、具体的にはどのようなことを指しているのでしょうか?』
『一科生の比率が大きな魔法競技系のクラブは二科生の比率が高い非魔法競技系のクラブより明らかに予算が手厚く配分されています!これは一科生の優遇が課外活動においてもまかり通っている
『それは各部の実績を反映した結果です。非魔法系のクラブであっても全国大会で優秀な成績を収めていれば魔法競技系クラブにも見劣りしない予算が配分されています』
現在エド達は体育館にて、生徒会と学内差別撤廃同盟の公開討論会を聞いていた。
だがその討論会はほぼ真由美の演説会になりつつあった。
「ふわあぁぁ」
「エドワードさん、はしたないですよ」
「んなこといってもよ……こんな一方的な討論会見たとこでな」
アクビをするエドをやんわりと咎める深雪。
体育館の舞台袖で討論会を聞いていたエドであったが、彼からしてみれば退屈の一言に尽きた。
具体性の伴わない意見ばかりを言う同盟に比べて、具体的な事例と曲解の余地がない数字で反論する真由美。
どちらが有利かは一目瞭然であった。
「そこまでにしといてやれ深雪君。エドワードの気持ちも分からんでもないしな。それにしても……」
ここで摩利が体育館の周りに目を向ける。
そこにはエガリテのメンバーと思われる生徒達がまばらにいた。
その手にはメンバーの印とされるリストバンドがつけられている。
「何をするつもりか分からないが、こちらから手出しはできんからな。専守防衛と言えば聞こえはいいが」
「渡辺委員長、実力行使を前提に考えないで下さい」
「分かってる。心配するなって」
「お願いしますよ」
何があっても動けるように待機している摩利達であったが、鈴音としては穏便に済むならそれで済ませたかった。
やはり不要な争い事はない方が望ましい。
『
すると真由美の発言が体育館内に静かに響く。
小声で話していた面々も真由美の方へと視線を向ける。
『学校も生徒会も風紀委員も禁止している言葉ですが、残念ながら多くの生徒がこの言葉を使用しています』
ざわつく生徒達。
『しかし一科生だけでなく、二科生の中にも自らをウィードと蔑み、諦めと共に受容する。そんな悲しむべき確かな風潮が存在します』
『なんだと!?』
『そんなことがあるもんかっ!?』
真由美の言葉に立ち上がり、声をあげる生徒がチラホラいた。
『この意識の壁こそが問題なのです!』
しかし真由美は負けじと説明を続ける。
『私は当校の生徒会長としてこの意識の壁をなんとか解消したいと考えてきました。ですが、それは新たな差別を作る解決であってはならないのです』
いつの間にか体育館は再び静寂となる。
『仮に二科生が差別されているからといって、一科生を逆差別しても解決には成りません。一時的な措置としても、許容されることではありません』
皆が耳を傾ける。
『一科生も二科生も、一人一人が当校の生徒であり、当校の生徒である期間はその生徒にとって唯一無二の三年間なのですから……』
体育館内から拍手が湧く。
その光景を真由美と同じ壇上にいた同盟の代表達が悔しそうに睨んでいた。
『丁度よい機会ですから、皆さんに私の希望を聞いてもらいたいと思います。生徒会には一科生と二科生を差別する制度が、一つ残っています。現在の制度では、生徒会長以外の役員は一科生生徒から指名しなければなりません。この規則は、生徒会長改選時に開催される生徒総会においてのみ、改定可能です』
そして真由美は一際大きな声で言った。
『私はこの規則を退任時の総会で撤廃することを生徒会長としての最後の仕事とするつもりです。人の心を力づくで変えることは出来ないし、してはならない以上、それ以外の事で出来るだけの改善策を取り組んでいくつもりです』
会場にいる生徒達ほぼ全員が拍手を送る。
それは討論会の結果を決める決定的な瞬間でもあった。
同盟のメンバーも納得せざるを得ないのか全員目を瞑り、下を向いていた。
そしてこのまま平和に終われば何事もなかったのだが、そうは問屋が卸さなかった。
突如、第一高校全体を轟音が鳴り響いた。
◆◆◆
轟音が鳴り響くのと同時に大きな爆発音と揺れが発生する。
校舎の窓ガラスは割れ、黒煙が立ちのぼる。
体育館が生徒達のどよめきに包まれる中、遂にエガリテの構成員と思わしきメンバー達が動き出した。
それに気付いた摩利が通信端末で監視していた者達に命令する。
「取り押さえろ!!」
エドと達也、他の風紀委員達もすぐに動き出した。
エドは腕をひねって拘束し、達也は床へと叩きつける。
他の風紀委員もエガリテの構成員を拘束する。
すると突如、体育館の窓が割れ、何かが投げ入れられる。それは地面に転がり煙を吹き出し始めた。
「ガス弾!?」
皆が唖然としている中、一人の男が迅速に対応して見せる。
「煙を吸い込まないように!」
服部は咄嗟に魔法を発動させてガス弾を外へ放り出す。
「よし!」
(気体の収束と移動の魔法か。あの一瞬で煙ごとガス弾を隔離するとは。流石だな)
達也は一瞬でそれらを看破し、服部へと視線を向ける。
その視線を受けた服部は照れくさいのかそっぽを向いていた。
ちなみにその後ろでは真由美が苦笑いでその様子を見ていたりする。
「やるじゃねえかはんぞー先輩!っと、あいつらは!?」
するとそこに武装した男達が侵入してきた。
男達は銃をこちらへと向ける。
エドは咄嗟に両手を合わせて錬金術を発動させる。
「させるかよ!」
地面から生えた拳が男達の銃を弾き飛ばす。
「よくやったエドワード!っは!!」
そして追撃とばかりに摩利が魔法を発動させる。
すると男達は途端に苦しみ、気絶した。
(MIDフィールド……ガスマスク内の密閉空間を窒素で満たしたのか。それにエドワードの錬金術、遠隔錬成も可能とは。汎用性の高い魔法だな)
そのとき摩利に一本の通信が入る。
「なに!?そっちにも侵入者だと!?」
他の場所にも大量の侵入者が入り込んでおり、既に教師や生徒達との攻防が始まっていた。
通信先からはロケットランチャーの爆発音も聞こえる。
「委員長。自分は爆発のあった実技棟の方へ向かいます」
「……頼んだぞ。エドワードは私と武装犯達の迎撃だ。いけるか?」
「任せとけ」
摩利は達也の案を了承する。
達也の後に深雪も付いていくようだ。
そして各自ともに自分の役割を果たすために動き出した。
◆◆◆
その頃ほのか達は入部したSSボード・バイアスロン部の活動を行っていた。
「討論会どうなったかな?」
「気になる?」
「うん……私達行かなくてよかったかな?」
「他人の愚痴になんて付き合うだけ無駄だよほのか」
(あれ雫……もしかして深雪に結構影響されてる?)
「いやでも私的には別の意味で心配事があるというか……」
「もしかしてエド?」
「うん。あのエドがなんの騒ぎを起こすこともなく討論会を終えるとはとても思えなくて」
「ほのかは心配性。さすがにエドもそれぐらいの分別はあるよ」
「そうかなあ……」
ほのかは今までのエドの奇行を思い返す。
初めて会ったときの不良達への顔面飛び膝蹴りに、森崎達とのイザコザ時の巨大な石像、深雪から聞いた生徒会副会長との模擬戦に、剣術部との乱闘騒ぎ……。
これまでの経緯を思い返したとき、ほのかは頭を抱えて叫んだ。
「やっぱり心配だよおぉぉぉ!!」
「ほのか落ち着いて」
ちなみにほのかと雫の部活内での立ち位置はお笑い担当だったりする。
エドのことが心配すぎて別の意味で奇行に走りそうになってしまうほのかと、それに淡々とツッコミを入れる雫のやり取りがどう見ても漫才にしか見えないからだ。
さらにちなみに部活内での二人のコンビ名が【ほのしず】か、【しずほの】かの二つでもめている。
「はいはーいみんな!今日は演習林が使える貴重な日だからガッツリ練習するわよー」
「「「「はーい」」」」
「ほらほのか、部活始まるよ」
「あ、うん」
そして部長の指示で練習を始めようとしたとき、突如轟音が鳴り響いた。
ドオン!!!!
「え!?」
「なんの音!?」
皆が視線を向けると煙が立ち込めていた。
「何あれ!実技棟から煙が上がってる!?」
「みんなむやみに動いちゃダメ!今端末で情報を調べるから待機!」
「「「「はい!」」」」
部長が情報端末でなにが起こっているか調べると声を震わせながら話した。
「お、おおおお落ち着いて聞いてね?当校は今武装テロリストに襲われているわ!!」
「マジですか部長!?」
「こんなこと冗談で言わないわよ!護身のために一時的に部活用CADの使用が許可されています。でもあくまで身を守るためだからね。……光井さん危ない!?」
「え?」
そのときテロリストと思われる男がナイフを持って、ほのかへと突っ込んでいた。
(ナイフ?だ、だめ……足がすくんで……)
しかし男は雫の放った魔法により吹き飛んだ。
「ほのか大丈夫?」
「雫!」
「ウチの部員に何するのよ!!」
そして追撃とばかりに部長が特大に圧縮された空気弾をテロリストの男に叩きつけた。
地面には大きなクレーターができ、男はその中心で横向きに倒れていた。
ヤムチャしやがって……。
「部長?あのやりすぎじゃ……?」
「やだぁ~。息はしてるから大丈夫よー。正・当・防・衛☆」
部長の様子を見た部員達はこのとき思った。
((((部長には絶対逆らわないでおこう))))
部員の中でOGと同じくらい恐ろしい存在として部長が君臨した瞬間であった。
「…………」
ほのかはそんな光景を一人離れたところで見ていた。
(……私、何もできなかったな。雫も部長も咄嗟の判断でうごけたのに……。自分が情けないよ…!)
ほのかは先程動けなかった自分を恥じていた。
だがそれも無理はない。
いきなり部活中にナイフを持った男が現れたのだ。
反応できなくて当然である。
しかし彼女はそんな自分に腹を立てていた。
ほのかは責任感の強い少女である。
彼女自身の真面目な性格もあって、必要以上に自分を追い詰めていた。
「ほのか」
「雫?」
だがそんな彼女の悩みも親友が吹き飛ばす。
「大丈夫、私も怖かった。ほのかが狙われてなかったらきっと動けなかった。だから……」
(慰めてくれてる?)
雫は話すことが苦手な少女である。
だが雫はほのかの心情を知って必死に言葉を探していた。
ほのかは雫のそんな気持ちに救われた。
「ありがと雫」
「ん」
(落ち込んでるだけじゃダメだな。次はきっと私が……!)
「みんな!とりあえずここから中庭に移動するわよ!十文字会頭が指揮を取ってるらしいから合流したら指示に従って!!」
「「「「はい!!」」」」
そしてほのか達は移動を開始した。
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一方、エドはというと摩利と共にテロリスト達の迎撃に移っていた。
「おおらぁぁ!」
エドがテロリストに跳び蹴りを放つ。
そして両手を合わせて地面をつくと、テロリストの足下の地面が
「はっ!」
摩利もMIDフィールドを使い、テロリスト達を気絶させていく。
「エドワード後ろだ!」
「大丈夫ですよっ……と!」
エドの後ろにいたテロリストがサブマシンガンを放とうとしたが、エドの錬金術による水の圧縮弾により吹き飛ばされた。
「指輪だ!指輪を使え!!」
するとある一人のテロリストが指輪をエド達へと向ける。
指輪は光り、そこから超音波のようなものが発せられる。
摩利がその正体をすぐに看破する。
「これはキャストジャミング!?奴らアンティナイトまで持っているのか!?」
「ふはははは!これでお前達は魔法を使えまい!!」
「今だ!こいつらを撃ち殺せ!!」
エドと摩利の二人はテロリスト達に囲まれ銃を向けられるが、エドは焦ることなく不敵に笑う。
「残念だけどよ……オレの錬金術に、そんなチンケな魔法は効かねえんだよ!!」
そして再び両手を合わせて錬金術を使用する。
地面から現れた複数の拳がテロリスト達を吹き飛ばした。
「そ、そんなバカな……なぜ……魔法が使え……るんだ……」
テロリストはそんなことを呟きながら気絶した。
それを見た摩利が呆れながら話しかける。
「……お前の錬金術は本当に万能だな。CADいらずときて、キャストジャミングの影響もまるで受けないとは。両手を合わせるだけで魔法を発動させ、そのうえ
「まあ、そっちは秘密ってことで」
エドは錬金術で牢屋を錬成するとテロリスト達を放り投げていく。
勿論、硬化魔法で強化することも忘れずに。
そのとき摩利の通信端末に再び連絡が入る。
「どうした?なに、増援?分かった。今すぐ向かう」
「どうしたんすか?」
「新たにテロリスト共がやってきたらしい。今は真由美や服部が迎撃に移っているが、持ちこたえるのにも限界がある。すぐに校門前に向かうぞ」
「了解」
そして二人は自己加速術式を使用してすぐに校門前へと向かった。
校門前に行くと、生徒会とテロリスト達の乱戦状態となっていた。
鈴音とあずさがバリケードのようなもので学校を守り、服部が真由美を守るように防御魔法を使い、その後ろから真由美がドライ・ブリザードやドライミーティアを使用してテロリスト達を倒していた。
ちなみにドライミーティアは収束、凝結、加速、昇華の4工程からなる系統魔法であり、 ドライアイスを撃ち出し、対象に当たる直前に二酸化炭素へ気化させることで気化膨張による衝撃波と高濃度の二酸化炭素中毒で、敵を行動不能にする魔法である。
しかし物量の差か、徐々に押さえ込まれつつあった。
真由美達の元へとエドと摩利がすぐに向かう。
「真由美!服部!」
「摩利、エドワード君も無事で良かったわ」
「状況は?」
「一般生徒は校舎の中に避難済み。他のところも既に沈静化しつつあるわ。あとはここのテロリスト達を倒すだけなのだけど」
「兵力の差で攻められている……という訳か」
こちらの人数が六人に対して、テロリスト達の数は少なく見積もっても三十人はいた。
そこでエドが話す。
「生徒会長、ここはオレに任せてくれないか?」
「エドワード君?」
「考えがある」
そしてエドは硬化魔法で身体を強化してから真由美達の前へと躍り出る。
エドの突然の行動に真由美達は焦る。
「「「「「エドワード(君)!?」」」」」
エドに一斉に銃口が向けられる。
だがエドは焦ることなく両手を合わせて錬金術を発動させる。
すると地面が隆起し、テロリスト達の後方に巨大な壁が出現した。
まるで
「テメェらが横一列に並んでくれたおかげで対処が楽だぜ」
そしてエドは再び両手を合わせた。
その直後、彼の前の地面が巨大な津波のようにテロリスト達に襲いかかった。
「「「「「う、うわああぁぁぁ!!」」」」」
テロリスト達は土砂の波に飲み込まれ、あっという間に沈静化したのだった。
「終わったぜ」
エドは笑顔で真由美達の方へと向く。
真由美達はしばらくの間、口を開けてポカーンとするのだった。
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テロリスト達の沈静化になんなく成功したエドであったが、待っていたのは女性陣による説教であった。
曰く、「なんであんな無茶をしたの!?」「以前から思っていましたが、貴方は突拍子のない行動が多すぎます」「ケガしたらどうするつもりだったんですか!?」「相も変わらず無茶苦茶だなお前は」と言われていた。
ちなみに言った順番は真由美、鈴音、あずさ、摩利の順である。
エドとしては手っ取り早く終わらせたかったため、あの行動を取ったのだが、女性は怒らせたらめんどくさいと前世の経験で嫌というほど分かっている男、エドワード・エルリック。
素直に謝罪した。
すぐ隣にいる服部に愚痴をこぼしながら。
服部も面倒だと思いながらも後輩であるエドの愚痴を聞いていた。
元々彼自身、面倒見の良い性格であるため、多少しかめっ面をしながらもしっかりと後輩の世話を焼いている。
そんな彼らのやり取りを女性陣は温かげに見守っていたのだが、真由美が声をあげる。
「……どうやら全て終わったみたいね」
「達也君達か?」
「ええ」
真由美は遠隔視系知覚魔法『マルチスコープ』を先天的な特殊能力、いわゆる超能力として自由に行使できる持ち主である。
その能力を駆使して達也達の動向を伺っていたのだ。
真由美達はひとまず達也達のいる保健室へと向かうこととなった。
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剣道部主将である司甲は下校のために校門へと向かっていた。
しかし校門前である人物に呼び止められた。
「よお、司」
「何か用か、辰巳」
その声の主は風紀委員の辰巳鋼太郎であった。
辰巳は木陰から姿を現すと司の前に立ちはだかるようにして言う。
「おめぇさんに聞きたいことがある」
「ぼ、僕に?」
「あぁ、うちの委員長はちょっと感心しない特技を持っててな。複数の香料を気流を操作して掛け合わせる事で違法な薬物を使わずに自白剤を作っちまうんだよ」
司の顔に徐々に焦りと恐怖が見えてくる。
その様子を見た辰巳は確信する。
「ネタは上がってんだよ!あの連中はお前が手引したってネタが!」
その直後、司は自己加速術式を用いて一目散に辰巳の前から逃げ出す。
だが校門から逃げ出そうとする司の前に門の影から沢木が現れる。
「司先輩!大人しくご同行願います!」
「チィ……っ、クソっ!!」
逃げ道を塞ぐ沢木に対し、司は腕を突き出し指輪からキャスト・ジャミングを発動させる。
しかし沢木は魔法を使わずに強烈な肘打ちを司へと決める。
鳩尾にめり込んだ一撃は、司の意識を飛ばすのに十分な威力であった。
◆◆◆
時刻は夕刻となり、校内に侵入していたテロリストは鎮圧され、エガリテに加担していた生徒共に一箇所で捕えられていた。
校門前にいる警察やマスコミで騒々しい事を除けば、第一高校にようやく平穏が訪れた。
保健室にはエド、司波兄妹、エリカにレオ、三巨頭といった面々が壬生に事情を聞くため集結していた。
テロリスト達の真の狙いは特別閲覧室にある魔法科大学の秘匿資料であった。
壬生もその中のメンバーの一人として活動していた。
だが、彼女はブランシュによって口車に乗せられ騙されていたのだ。
結局司波兄妹、エリカによって阻止されたのだが。
「一年以上前から、司先輩は剣道部員達に魔法による差別の撤廃を目指すよう訴えかけていました。主将に連れられブランシュの支部に行った事もあります。お兄様が、日本支部の代表を務めているらしくて……」
その言葉に司波兄妹は顔を見合わせ頷く。
壬生はその後、今までの経緯を説明する中で、自分の受けた差別が摩利からのものだと告白する。
その言葉にエリカがつい目を細めるが、摩利は誤解だと説明する。
壬生が言うには稽古を頼んだ際に、
しかし本当は摩利は、『
そして壬生は摩利の発言が事実である事を
「じゃあ……私の誤解、だったんですか……?なんだ……私、バカみたい……勝手に先輩のこと誤解して……自分のこと貶めて……逆恨みで
そう言って涙を流す壬生を見ていた面々であったが一人の生徒が呟いた。
「くっだらねぇ」
その発言に全員が敵意の目を一人の生徒へと向ける。
「エドワードさん!」
深雪がエドにどういうつもりなのか咎めようとしたとき、エドは自分の右腕の制服部分を破った。
ビリィッ!といった音が保健室内に響く。
するとエドの鋼の腕が
その腕を見た面々は驚く。
予め聞いていた司波兄妹、エリカとレオも目を見開いていた。
「錬金術にはよ、二つの禁忌がある。オレはその内の一つの禁忌を犯して……かつて全てを失った」
「エド……ワード君?」
「右腕と左足を失って……大事なモンも全部失った」
エドの言葉に全員が耳を向ける。
「だけどよ……こんなオレでも立ち上がることができた。全てを失ったあの日から、全てを取り戻すと誓ったあの日から、再び立ち上がることができた」
エドの脳裏にあの日のことが蘇る。
母を蘇らせようと人体錬成を試み、失敗して左足を失い、弟は全身を向こう側へと
それから右腕を代価に弟の魂を鎧へと定着させ、"全てを取り戻す"と誓った。
兄弟で再び立ち上がると決めた。
色々な人が兄弟を支えてくれた。
幼なじみには鋼の右腕と左足を与えられ、憎たらしい焔の大佐には"軍の狗"としてのきっかけを与えてもらった。
兄弟の帰る家として祖母がわりの女性とそのペットがいつでも待ってくれていたし、時には友として、息子のような存在として接してくれた存在の人々が軍にいた。
彼も己の人生を後悔することは何度もあった。
だがだからといって彼は……
無駄だと思ってしまえば、自分を支えてくれた人達の事も裏切ることになってしまうからだ。
「壬生先輩……あんたが後悔する気持ちも分からなくもない。だけどな、あんたはオレと違って
「あんたには立派な腕や足がついてるじゃないか」
エドの言葉に壬生は目を見開く。
「エドワード君……貴方は……一体?」
エドは錬金術で破いた袖部分を元に戻すと扉へと向かう。
「ちょっとトイレ行ってくるわ」
それを全員呆然と見送るのだった。
次はいよいよブランシュのアジトへと攻めいる。
しかし、そこにいた黒幕の手には赤い石のあの指輪があった。
では、また(・∀・)ノ