申し訳ないが、惨劇はNG   作:よしなしごと

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羽入と梨花ちゃん視点なんて書けるかわからないけど書かねぇと多分整合性取れねンだわ。

口調が違ったら許し亭許して…




有り得ざるカケラ(昭和58年4月)

 鷹野が黒幕だということにようやく気付けたボクと梨花だったけれど、運命を打ち壊すための最後の一歩が足りず、結局梨花と圭一たちはみんな鷹野に殺されてしまって……。

 

 

「奇跡は誰か一人でも欠けたらダメなんだぜ?」

「アナタもレナ達と一緒に戦おう?」

「ボクは非力な存在なのです…。ボクが何をしても運命には勝てないのです……」

 

「まぁたそんなこと言って!まったく、お姉ちゃんが力を貸してあげるから俯いてないで前見て胸張んなさい羽入!」

 

「えっ?」

 

 次のカケラに行く前にどうしてかとても懐かしい声が聞こえた気がしたのです。それはとても暖かくて……。

 

 

 

◇◇◇

 

 

「……ッ!羽入?いるんでしょ?今は何月なの?」

「……羽入?」

 

「ん~?うるさいですわよ、梨花。今何時だと思ってるんですの?」

「変な夢を見たのです。ごめんなさいです沙都子」

「幸人さんのせいで疲れてるんですからぁ。おやすみなさいですわ」

「おやすみなさいなのです」

 

 梨花は沙都子の口から出た「幸人」という名前に何の馴染みも無かったが、沙都子の言い方ではかなり親しいのではないかと思わせられた。また、自分が今まで眠っていた部屋には全く見覚えがなく、今までとの違いを感じずにはいられなかった。何よりも羽入が自分の隣にいないこと、それだけでこんなにも不安になってしまうことに100年を生きた魔女は知らず苦笑を漏らした。

 とりあえずは事態を棚上げし、翌朝からまた考えることにして梨花は瞳を閉じた。

 そして今夜のことが混乱の序章に過ぎないことは如何に100年を生きた魔女と言えど気付くことは出来なかった。

 

 

 

「おはよう、沙都子、梨花ちゃん。…どうしたの梨花ちゃん?まるで死人が歩いてるのを目撃したような顔しちゃって」

「……なんでもないのです。悟史おはようなのですよ、にぱ~☆」

 

 目が覚めてから、一番の衝撃は悟史とこうして話をしていることかもしれない。悟史が雛見沢症候群を発症しないセカイなどなく、どんなに賽の目の6が出続けていても例外なく悟史は入江診療所で集中治療を受ける運命は決まり切っていた、はずだった。

 

「お待たせしました!朝ごはんですよ~!」

 

 先ほどからのいい匂いの正体は魅音の作る朝ごはんの匂いだったらしく、慣れた手つきで配膳する魅音と悟史をぼんやりと眺める。起きてからの短時間で理解できる許容量をオーバーした現実を趣味の悪い悪夢だと思うことにした梨花は、いったん思考することを諦めて受け入れることにした。

 ふと、自分たちの分よりも余計な数のグラスが置かれていることに気づく。

 

「みぃ?ボクたち以外にも誰か住んでいるのですか?」

 

 そう冗談めかして言ってみれば、沙都子が心配したような顔でこちらの顔色を窺ってくる。

 

「梨花、夜からどこか悪いんじゃありませんこと?寝てるときも魘されてたみたいですし」

「そうなんですか?梨花ちゃま、お姉さんと一緒に夕方ぐらいまで寝ます?」

「そう言って学校サボろうとしないの。梨花ちゃん気持ち悪かったら言うんだよ?」

 

 今のこの状況が一番気持ち悪いと心の中で毒づいてみるが、それで今の状況が変わるわけでもなく、曖昧に笑って誤魔化した。と言うか魅音が魅音のままであることまでもが判明し、いよいよもってどういうことなのかと頭を抱えたいところだった。

 

 梨花の状況を作り出した神が居るのならば、頭を抱える梨花を嘲笑うかのように新たな頭痛の種が送り込まれてくる。

 

 

「おーっす、迎えに来たぞー」

「おはようございます、梨花ちゃん?どうかしましたか?」

 

 もう何が起きても驚かない自信が梨花にはあった。それでも全く知らない男と園崎詩音が親しげに腕を組んでいる光景はそんな梨花の自信を容易く打ち破った。

 

「詩音さんだけじゃなくて幸人さんが来るから梨花も呆れているんですわ」

「みぃ~☆詩ぃ離れが出来ないのです」

「……?梨花ちゃん調子悪いのか?いつにも増して切れが悪いけど」

 

 どうやらこの幸人という男に自分はもっと強い当たり方をしていたらしい。死んでやり直しが出来るのは良い事だが、そのカケラの自分の記憶が引き継げないというのはこういう時にどうにも不便に感じてしまう。

 

「気のせいなのですよ?」

「気のせいじゃありませんわ!梨花、やっぱり今日はお休みしませんこと?ちょうど学校も何もない暇なプー太郎さんがいらっしゃってますし」

「それがいいね。梨花ちゃん、無理して余計体調悪くなったらそっちの方が大変だよ?……ってことで先輩、よろしくお願いします」

「プー太郎じゃないんだけどなぁ。悟史もイイ性格になりやがって。良かろう、皆のお兄ちゃん幸人様が梨花ちゃま看病任務を無事遂行して見せようじゃないか!」

 

 

 こうして、梨花を置いて話は進んでいき、知恵への欠席連絡なども済んでしまい、これから沙都子たちが帰ってくるまで自分はこの得体の知れない男と過ごす羽目になってしまった。

 

「さて、梨花ちゃん。君はあの夜何があったか覚えているかい?」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 私が目を覚ました時、腕の中には愛しの妹の姿があった。どうやらきちんと決心はついたらしい。

 

「おーう、おはよう弥白。それが噂の妹さんか?」

「そうよ~可愛いでしょ~」

「お前、顔緩みすぎだからな。色々台無しだぞ」

 

 私の顔について幸人が何か言ってるけど、妹が可愛すぎるのがいけない。というか幸人は詩音ちゃんとよろしくやっていればいいのに。フられた私は愛しの妹と数世代越しのコミュニケーションをとらないとなんだから。

 

「それで?今まで実態を持たなかった妹ちゃんが俺にも見えてるってことは、やっと相手方の正体でも掴めたか?」

「そうね。やっとと言うか、この子達殺されすぎなんだけどね。梨花ちゃんが途中から諦めモードになっちゃったのが痛かったわね」

 

 そこまで言うと、続きを促すように幸人が見てくる。隠してても気付くんだろうけど、今回は羽入の命もかかってるし意地悪せずに教えてあげることにする。どうせ大して驚きもしないでしょうけど。

 

「黒幕だったのはね──」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 正直、その名前を聞いたときに信じたくない気持ちがあったことは否定できない。それでも入江診療所で研究していることについて知っている私は、彼女が病的なまでにこの研究に入れ込んでいることを知っており否定はできなかった。それでも、彼が言う事を鵜呑みにするほどの純粋さは残念ながら失われて久しい。

 

「で?それが真実だという保証はあるのかしら?このセカイにしかいない私の知らないゆきと?」

「えっ、何そのノリは……。新しい遊びだとしてもちょっと滑ってるから止めた方がいいと思うぞ、うん。つーか記憶の継承とかはないの?じゃあ俺が頑張ってオヤシロ様の祟りを隔年ぐらいに収めたのも知らないのか……」

 

 最初のセリフに関して少し文句を言いたいけれど、それよりもその後の羽入しか知らないはずの私の秘密を知っていることや、オヤシロ様の祟りを一部止めているような発言の方が気になり知らず口から出る声は大きくなっていく。

 

「残念ながら最後の記憶はないの。だからまだ信じてあげられない。それよりも悟史が沙都子と住んでて魅音も魅音のままの状況は何なのかしら?」

 

 そう聞くと、さも当然だろうという風な顔と声で説明を始める。これは確かに毒づきたくなる貌ね。

 

「悟史がこうしてるのはただ雛見沢症候群の発症を抑えて児童相談所との戦いに勝っただけだしなぁ。魅音に関しては詩音を嫁に貰って入れ替わるのを防いだだけだし」

 

 自分はさも大したことをやっていないという体で話を続ける男は何者なのだろう。魅音と詩音の入れ替わりを防ぐなんてことは不可能だし、悟史の発症を抑え込むなんてことは当時の詩音が仮にもっと早く悟史と出会っていても不可能だっただろう。それに北条家の家庭環境も変えてしまっている。

 

 それらを『だけ』だと宣う男に梨花は知らず恐れを抱いた。自分が何度も繰り返して仲間達の力を合わせてようやく防げた惨劇、その芽をいとも容易く摘んだように聞こえたためでもあった。実際には様々な大人たちの力を借りて成し遂げたことではあるのだが、幸人という人物を知らない梨花の瞳には途方もない存在に映ってしまった。

 

「あっ、自己紹介がまだだったね。俺は鬼淵幸人。しがない神主だよ、これからもよろしくね梨花ちゃん」




いつもの梨花ちゃま「みぃ~☆ゆきとは詩ぃ離れができない可哀想なプーさんなのです。かぁいそかぁいそなのです。詩ぃ以外にも目を向けるといいのです。例えば沙都子とかどうですか☆(飛び火)(燃えるシスコン北条悟史)」

最後の梨花ちゃんは赤坂に心の中でSOSを送っています。なお知り合いの模様。……これもう分かんねぇな。

次回は鬼淵の家についてとか止めたオヤシロ様の祟りとかについて書けたら褒めて欲しいところさん。
次々回…祭囃しと澪尽しのちゃんぽん回まで行けたらいいなぁ


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