もう一人のろくでなし魔術講師   作:宗也

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第6話

「さて、グレン。早速だけど稽古を付けてやる。」

 

テロからしばらくの日が経ち、平和な日々を過ごしていた。だが俺とグレンには関係ない!

 

「なんだよハヤト、休日だからカジノでも行こうと思ってたのによぉ。」

 

「お前、それだから貯金出来ねえんだよ。俺に勝ったら行っていいぞ。」

 

今は学院の中庭にいる。グレンの奴、今日は休みなのに出勤したからな。ウーケールー。まあ、敢えて嘘を教えたんですけどね。

 

「ったく、面倒くせえことしやがって。」

 

何故突然稽古だって?テロの時に自分達の実力がかな~り下がってたからな。少しでも全盛期に戻したい。

 

「魔術、格闘、なんでもありだけど愚者の世界は使うなよ?」

 

「そっちこそ、魔技解放は使うんじゃねえぞ?」

 

「え?駄目なの?」

 

「駄目に決まってんだろ!!何で俺の固有魔術が駄目でハヤトの固有魔術がいいって事になんだよ!?」

 

ちえっ、グレンをボッコボコに出来るチャンスだったのに、まあいいや。

 

「勝敗は負けを認めるまで。じゃあ行くぞ!!」

 

「おっしゃぁぁぁ!!来いやぁぁぁぁぁ!!俺が勝ったらお前もカジノに付き合ってもらうぞ!!」

 

げっ!!それは勘弁だな。俺賭け事なんて苦手だし。

 

「まずは小手調べだ、貫け雷槍!!」

 

「いきなりライトニング・ピアスかよ!!うわっ、あぶな!!」

 

グレンの足目掛けて放ったけど、ジャンプで避けられたか。勘は鈍ってないみたいだな。

 

「おいハヤト!!俺は三節詠唱しか出来ねぇんだぞ!!少しは手加減しやがれ!!」

 

「手加減ってなんだぁ?グレン?」

 

「だーもうムカつくぜ!!」

 

グレンはそう言い、俺に格闘で挑んでくる。俺格闘は得意じゃないんだよな。

 

「くっ、この!!当たれよ!!」

 

「やーだね。誰が当たるもんか、グレンのパンチ痛いからやだ!!」

 

俺はグレンの攻撃をいなし、たまに反撃しながら様子を伺う。ふむ、近接じゃ分が悪いな。

 

「そろそろ当たれ!!カジノが俺を呼んでいる!!」

 

「いいよ、グレンのパンチ喰らってやるよ。」

 

俺がそう言うと、グレンは動きを止めて警戒する。なんだ?来ないのか?

 

「あれー?もしかしてびびったかー?ほらほらグレンちゃん、かかっておいでー!!」

 

「お前、泣かしてやる!!」

 

おしおし、突っ込んで来たな。計画通り(にやっ)

 

「かかったなアホが!!大いなる風よ!!」

 

俺は突っ込んで来たグレンを吹き飛ばそうとゲイル・ブロウを放つが、グレンは横っ跳びで避けた。ありゃ、外れた。

 

「ハッハハハ!!俺がそんな見え見えの挑発に乗るわけないだろ!!残念だったな!!」

 

「いや、想定内だし。拒み阻めよ・嵐の壁よ・その下肢に安らぎを!!ストーム・ウォール!!」

 

「ちょ!!お前、それ白猫の!!」

 

教え子が使ってるんだから、俺も使っていい筈だ!!異論は認めない。

 

「こりゃ想像以上の威力だな。けど、動けないわけじゃねえ。紅蓮の獅子よ・憤怒のままに「集え暴風・戦鎚となりて・撃ち据えよ。」待て待てって!!」

 

「あーん?聞こえないなぁ。もっと腹から声出せ!」

 

俺はストーム・ウォールを解除した後、すぐブラスト・ブロウでグレンを攻撃する。大人げない?知らんな。

 

「うぎゃぁぁぁぁ!!」

 

「ホームラン!!さて、グレンを回収しないとな。」

 

逃げられたら困るし、回収回収。

 

*******

 

「お願いしますハヤトさん、カジノに行かせてくださいこのとーり!!」

 

勝負は俺の勝ち。でもグレンは余程カジノに行きたいのか、めっちゃ綺麗な土下座をしてくる。無駄に洗礼された無駄のない無駄なスキルだな。

 

「駄目だ、そもそも賭け事に弱いグレンがカジノに行ってもぼろ負けするのが落ちだろ。」

 

「今日は、今日はいけそうな気がするんだ!!だからお願いしますカジノに行かせてください何でもしますんで!!」

 

「ん?今何でもするって言った「金と労働以外の事でオナシャス!!」こいつ~!!」

 

グレンがそこまで言うんだったら、俺は最終兵器を出すしかないな!!

 

「ということで、カジノに行ってきま~す!!」

 

「グレン、セリカを呼ぶぞ?」

 

「本当に申し訳ございませんでしたハヤト様!!だからそれだけは勘弁してください!!」

 

うわぁ、また綺麗な土下座。グレンはどんだけ土下座の練習したんだよ……、もっと違うものに力を使えよ。

 

「あれ?グレン先生にハヤト先生、ここで何をしているんですか?」

 

「おうルミア、ちょっとグレンを懲らしめていた所だ。」

 

「懲らしめてって、グレン先生が土下座してるじゃない。ハヤト先生何したんですか?」

 

ルミアとシスティーナか、しかも制服じゃなくて私服だと!?ヘソが見れないじゃないか!!

 

「聞いてくれよ白猫!!俺は単にカジノに行きたいだけなのに、ハヤトが止めてくるんだ!!しかも武力公使までしてだぞ、酷くないか!?」

 

「知りませんよそんなこと。」

 

「あはは、暴力は流石にやり過ぎだと思うなぁ。」

 

「有り金を全部ギャンブルに使う奴に慈悲はない。ギャンブル中毒者死すべし。」

 

俺がそう言うと、システィーナはグレンをジト目で見下ろし、ルミアは苦笑いをする。

 

「と言うわけでグレン、要するに暇なんだろ?だったら「カジノに行っていいって事だな!!」話を最後まで聞けアホ。」

 

「ノーノー!!アイアンクローは駄目だって、痛い痛い痛い痛い!!助けてパパー!!」

 

「誰がパパだアホグレン!!」

 

俺はグレンにアイアンクローをした後、地面に叩き付ける。母なる大地とキスでもしてろ。

 

「ハヤト先生、いくらなんでもやり過ぎですよ。」

 

「大丈夫だ、問題ない。話がそれたな、グレン、システィーナとルミアとどっか出掛けたらどうだ?」

 

「はぁ!?どどどどうしてグレン先生と出掛けなきゃならないんですか!?」

 

システィーナ、動揺し過ぎだろ、別にデートってわけじゃねえだろ。でも、この反応、面白くなりそうだ!!

 

「私はいいですけど、システィはどう?」

 

「し、仕方ないわね。グレン先生、またルミアに変なことしたら吹き飛ばしますからね!!」

 

よし、二人の了承は得られたな。あとはグレンだけだが、うっわ、行きたくねぇオーラ全快だ。

 

「ルミアはいいとして、何で白猫と出掛けなきゃなんねえんだよ。面倒くせえからい「ほれ、費用を渡してやるからさ。」よし二人とも、俺に付いてこい!!」

 

変り身はえー、二人とも困ってんぞ。

 

「ハヤト先生は来ないんですか?」

 

「超行きたい!!けど、やることがあるから行けねえんだよ。まっ、楽しんできな。」

 

「ありがとうございます。グレン先生、システィ、行こ♪」

 

「はいはい、ほら白猫。置いてくぞー。」

 

「外でその呼び方は止めてください!!私にはシスティーナっていう名前があります!!いい加減覚えてください!!」

 

「わかったよ白猫。」

 

「全然わかってないじゃないですか!?」

 

3人はワイワイ騒ぎながら歩いていった。フフフ、計算通りだぜ!!

 

「さて、バレないようにこっそり付いていきますか!!」

 

俺の楽しみはな、こっそりと付いていって、陰からクスクスと微笑んだり、ニヤニヤすることなんだよ。ん?変態だと思ったか?正解だ!!

 

「さあて、ニヤニヤする場面や、面白い場面があったらカメラやビデオに納めよっと。」

 

後で弄るネタにしよう。ちなみにカメラやビデオは俺特製だ。

 

******

 

「じゃあ何処に行こっか?」

 

「そうだなー、ちょうど昼時だし、飯でも食いに行くか。」

 

「まだ11時なんですけど?早くないですか?」

 

こちらハヤト、今スニーキングミッションの最中だ。3人は取り敢えずレストランに行くらしい。

 

「んなこと言ってもよぉ、俺朝飯食ってねえんだから。それに、白猫はもっと食べた方がいいぞ?」

 

「女子は少食なんです!!昼御飯はまだ早いです!!」

 

システィーナがそう言った瞬間、お腹の音が鳴った。システィーナから。

 

「~~~~~~~~ッ!!」

 

「ほら言わんこっちゃない。にしても、体は正直なんだな。心も正直になりゃい「馬鹿!!馬鹿馬鹿馬鹿!!」痛てぇ!!俺を殴るな!!」

 

「システィ、誰でもお腹は鳴るんだから落ち着こう。ねっ?」

 

システィーナは顔を真っ赤にして、からかってきたグレンに対してポコポコ殴ってるな。カメラに撮ってと、あとビデオで録画してと。

 

「よし、この店に入るか。今日はグレン大先生の奢りだ。こんなことは滅多にないぞぉ?たらふく食えよ二人とも。」

 

「お金はハヤト先生のでしょ!!何でグレン先生が偉そうにしてんのよ!?」

 

「まあまあシスティ、取り敢えず中に入ろ?」

 

うんうん、青春してるな~!!特にグレン、お前すげー楽しそうだな、俺感動したよ!!

 

「さて、変装して俺も中に入りますか。」

 

どれどれ店の中は、ほほう中々洒落た所じゃないか。

 

「グレン達は、もう料理が来てるのか。早いな。」

 

ルミアはパンケーキ、システィーナはスコーン3つ、グレンは、おいてめぇ、何で五品も頼んでんだよ?

 

「先生って、本当によく食べますよね。」

 

「そうか、これくらい普通だと思うんだがな。逆に白猫、お前スコーン3つとか少食過ぎんだろ。」

 

「いいんです!!私はこれくらいでいいんです!!」

 

「そうかよ、おい白猫、これなんだ?」

 

グレンはそう言い『あ』と書かれた紙をシスティーナに見せた。

 

「あ」

 

「隙あり!!」

 

システィーナの口が開いた瞬間に、グレンは一口くらいの大きさにした自分の料理をシスティーナの口の中に突っ込んだ。

 

「ったく、白猫はもっと食えよ。成長する所も成長しねえぞそんなんじゃ。」

 

「余計なお世話です!!」

 

「グレン先生、私にも一口ください。」

 

「いいぞ、ほれ。」

 

グレンは皿に一口くらいの大きさにした料理を乗せ、ルミアに渡す。

 

「あっ!美味しいですねこれ!!」

 

「だろ~?何せこのグレン先生が選んだ料理だ!!不味い訳がない!!」

 

「どちらかと言うとグレン先生が選んだ料理って、不味そうなイメージがあったんで「なんならもう一口食え、ほら。」んぐっ!!」

 

グレンは喋っているシスティーナの口に料理を突っ込む。システィーナは不貞腐れながら食べているな。

 

「つーか、イチャイチャし過ぎだろあいつら。」

 

見ていて腹が立ってきた、なんなのあれ?もはやカップルじゃん。

 

「あれ?目からミネラルウォーターが出てきたぞ?おっかしいな~?」

 

だが弄るネタは大量に取れたからよしとするか。

 

******

 

「いや~旨かったな!!」

 

「そうですね!!とても美味しかったです。」

 

「う~、食べ過ぎちゃったじゃないのよ。」

 

店から出てきたな。次は何処に行くんだ?

 

「さて、お前らは何処に行きたい?」

 

「グレン先生?」

 

「生憎と俺はあんまりこういうところに来ないからな。お前らが行きたい所に俺は付いてくよ。」

 

グレンはショッピングとかするタイプじゃねえからな。出掛けるって言ってもカジノとか、飯屋とかそこら辺しか行かねえからな。

 

「あっ!じゃあ服屋に行きましょう。ルミアもそれでいい?」

 

「うん。でもどうして服屋なのシスティ?」

 

「なな、何となくよ!!」

 

おいおいシスティーナ、何となくの癖にどうして顔が赤いんだ?気になるなぁ(ニヤニヤ)

 

「まっ、いいけどよ。」

 

「ほら、早く行くわよ!!」

 

そう言いシスティーナはずんずん進んでいく。やれやれ、初ですなぁ。

 

「あれ?今誰かに見られたような?」

 

「どうしたルミア?白猫に置いてかれるぞ?」

 

「あっ、待ってよシスティ!!」

 

あっぶねぇ!!ルミアにバレる所だった。ちょっと油断してたか。反省反省っと。

 

「さて、ここからは慎重にかつ大胆に行こう。」

 

3人は服屋に入ったな。どれ、幻の六人目みたいに空気とシンクロしますか。

 

「ねえねえシスティ、これ可愛いんじゃないかな!?」

 

「そうね、でも私はこっちの方がいいわね。」

 

システィーナとルミアは仲良く服を選んでるな。それをグレンはぼーっと眺めてんな。

 

「グレン先生、ちょっとこっちに来てください。」

 

「わかったわかった。」

 

ルミアの声は試着室から聞こえたな。試着した姿を見せるのか。俺も付いていこう。

 

「どうですかグレン先生?似合ってます?」

 

試着室からルミアが出てきた。……大天使ルミアはここにいたのか。めっちゃ似合ってんな!!服装?皆さんの想像に任せる!!

 

「似合ってるよ、センスがいいじゃねえか。」

 

「ありがとうございます!システィー、着替え終わった?」

 

「いい今出るわ!!」

 

隣の試着室からシスティーナが出てくる。ほほう、中々に可愛いじゃないか。

 

「ど、どうですか?」

 

「…………。」

 

あれ?グレンは固まってるな。なんで……あぁ、真正面から見ればグレンの大切な人にそっくりだ。

 

「グレン先生?ぼーっとしてないでシスティの服の感想を言わないと。」

 

「あ、あぁ。悪いな。まっ、白猫にしちゃ似合ってるんじゃねえの。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

システィーナはグレンに褒められて恥ずかしいのか、顔が真っ赤になってるな。カメラカメラっと。

 

「ハヤト先生、こんなところで何をしているんですか?」

 

おっと、ビデオにも納めないとな。ムフフ、顔がにやけちまいそうだ。

 

「ハヤト先生、聞こえてますか?」

 

ルミアとシスティーナは試着室に戻っていったな。グレンは、頭を掻いて上を見上げてるな。

 

「ハヤト先生?(ニコリ)」

 

「痛い痛い痛い痛い!!耳を引っ張るな!!誰だか知らねえけど、俺の邪魔をす……るな。」

 

耳を引っ張られたから振りほどこうと、手を横に降るったら、柔らかい物に触れました。えっと、これは。

 

「先生?何してるんですか?(ニッコリ)」

 

テレサかよぉぉぉぉぉ!!何でこんなところで会うんだよぉぉぉぉぉ!!しかも額に青筋を浮かべながらニコニコしてるし、これあれだよな。

 

「まあ待て、こういうお約束展開にも俺は言いたい事がある。何で間違えて女の子の胸に触った瞬間に、手を引っ込めるのだろうって。」

 

「何が言いたいんですか?(ニッコリ)」

 

「手を引っ込めるのはひよっこがすることだ。せっかく触るチャンスが貰えたんだから、俺はこの感触を忘れない為に一生懸命モミモミしまくァァァァァイ!!」

 

美しい右ストレートだテレサ、威力もスピードも申し分ない。いいセンスだ、ガクッ。


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