「大丈夫かテレサ?」
「は、はい。」
俺はゲス男を火葬した後、テレサの傷の治療をしていた。シャインフィールドは応急処置みたいもんだし、綺麗な肌が傷付いてるのは見たくねえからな。
「すまなかった、もっと早く来ていれば!!」
「大丈夫ですよ先生、先生は助けに来てくれたじゃないですか。」
そう言いテレサは頬笑む。いや、微笑んでるがそれは強がりだな。体は震えているし、目は涙目になってる。
「そんなに強がるなよ、泣いてもいいんだぞ?」
「こ、子供じゃないんですから。な、泣きま……うぅ。ぐすっ。」
「俺からしてみれば子供だ。辛かったな、感情を思う存分ぶつけていいぞ。」
俺がそう言うとテレサは静かに泣き始める。やっぱり、あの時の子だな。
「頑張ったな、偉いぞ。」
俺は泣いているテレサの頭を撫でる。まるで兄になった気分だ。
「おーいハヤト、終わった……か?」
「ちょっと!!立ち止まらないでくれ……る?」
ん?グレンとシスティーナが俺の方を向いた時、固まったな。なんでだ?
「あんた!!テレサを泣かしたのね!!しかも乱暴までして!!ろくでもない奴だと思っていたけど、本当にろくでもない奴ね!!」
「違うぞシスティーナ!!これは俺がやった訳ではなくてだな!!」
「うるさい!!大いなる風よ!!」
「ちょ!!ギャアァァァ!!」
酷くね?俺テレサを助けたのに、なんでこんな仕打ち受けてんの?
「システィーナ、ハヤト先生は私を助けてくれたんです。」
「そうなの?なら早く言いなさいよ!!」
「システィーナが聞く耳持たなかったからだろ!!」
こんの、生意気娘め!!
「どうどう、落ち着けお前ら。「私は馬か!?」言い争っても時間の無駄だ。」
「グレンの言う通りだな、とりあえずテレサ、これを着とけ。」
俺はテレサにスーツの上着を渡す。まあ、今のテレサの格好がちょっと乱れすぎてるからな。にしてもテレサはスタイルいいな!!ご馳走です!!
「どうしてですかハヤト先生?」
「服が乱れてるからだ。」
俺がそう指摘するとテレサは顔を真っ赤にしながら、俺の上着を来た。まあ、これで大丈夫だろう。
「さてグレン、1つ聞きたいんだがいいか?」
「奇遇だな、俺も1つ聞きたい事があった。」
「「骸骨召喚したのお前か?」」
何か俺の目の前に骸骨がうじゃうじゃいるんだよね。何でかな?
「さっきの男が召喚してました。」
「あのゲス男がか!!要らねえ土産を残しやがって。」
俺は骸骨に右ストレートを放つが、骸骨の頭は砕けなかった。こいつ硬すぎ!!
「ハヤト、お前まだまだだな。」
「グレン、多分お前でも「痛って!!」やっぱり。」
「この骸骨ミルク飲み過ぎだろ!!」
「いや、煮干しの食べ過ぎだな。手がジンジンしてやらぁ。」
マナを温存しておきたいんだよな、どうすっかな。
「「その剣に光あれ!!」」
むっ、エンチャントか、助かる!!
「すまん白猫!!テレサ!!」
「えっ!?俺にはないの!?」
そう言いグレンがもう1回骸骨に右ストレートを放つ。すると骸骨の骨は砕けて粉々になった。
「よし、今の内に逃げるぞ!!」
「あらほいさっさ!!」
俺はテレサとシスティーナを両脇に抱えて実験室から出る。グレン?置いてきた!!
「ちょっと!!グレンを置いてくの!?」
「大丈夫、ちゃんとあいつなら追い付くから。」
「ハヤト!!待ちやがれ!!」
しばらく走っていたが、グレンの息が切れ始めたから止まる。体力ないなぁグレン。
「はぁ、はぁ、これで骸骨は撒けたか?」
グレンよそれはフラグだ、っとシスティーナとテレサを降ろさないとな。
「残念グレン、お前の後ろにうじゃうじゃいるぞ。」
しかもさっきより数増えてね?どっから出て来たんだよーーー!!
「おい白猫、俺とハヤトが骸骨を食い止めてる間に、お前は得意のゲイル・ブロウを改変しろ。」
「そ、そんなの無理です!!」
「大丈夫だ、お前は生意気だが才能はある。きっと出来るさ、生意気だからな。な・ま・い・きだからな!!」
「生意気強調しないでください!!」
おいおい、いきなり実戦で改変かよ。無茶な提案をするなぁグレン。
「テレサ、お前はシスティーナのサポートだ。」
「で、でも!!私はシスティーナみたいに才能はないですし、私がサポート出来るんでしょうか?」
「大丈夫だって、もっと自分に自信を持てよテレサ。テレサは優秀な生徒なんだからさ。まあ、生意気の差でシスティーナに負けるけどな。」
「だから!!私は生意気ではないです!!」
「「どの口が言うんだが。」」
さて、俺もなんか魔法を考えておくか。範囲魔法はあるんだけど、直線上に放つ魔法はあんまねえんだよな。
「よし、行くぞ!!」
そう言いグレンは骸骨の群れに突撃する。俺も突撃しないとな。
「ウラーーーーー!!」
「どけどけーーー!!骨っこ供!!慰謝料は降りねぇからなぁ!!」
こいつら死んでるからなグレン。
「だぁぁぁぁぁ!!無理!!もう無理だ!!」
早っ!!さっきまでの勢いはどうしたんだよ!?
「グレン!!まだ二行しか持ちこたえてねえぞ!!」
「きついもん!!こっちは素手なのに相手は武器持ってんだぞ!!」
「持ちこたえねえと白猫にまたブーブー言われるぞ!!」
「おっしゃぁぁぁぁ!!かかってこいやぁぁぁぁ!!」
よし、グレンがピンチになった時はシスティーナの話をしよう。
「先生!!出来ました!!」
「白猫!!何節だ!?」
「三節です!!今から唱えます!!テレサ、行くわよ!!」
システィーナとテレサが魔術を唱えると同時に俺とグレンはシスティーナとテレサの隣に移動する。
「「拒み阻めよ・嵐の壁よ・その下肢に安らぎを!!」」
「成功したか!!しかもこれは!!」
あいつが良く使っていたストーム・ウォール!!まさかまた見られるとはな!!
「でも、完全には足止め出来ない。ごめんなさい先生!!」
「いいや、充分だよ白猫、テレサ。」
「でも!!このままじゃ!!」
「大丈夫だテレサ、グレンを信じろ。」
グレンはポケットから赤色の宝石、魔術触媒を取り出し構える。
「我は神を斬獲せし者・我は始原の祖と終を知る者・其は摂理の円環へと帰還せよ・五素より成りし物は五素に・象と理を紡ぐ縁は乖離すべし・いざ森羅の万象は須く此処に散滅せよ・遥かな虚無の果てに。」
おいおいマジかよ!!これってセリカが使っていたあの魔術じゃねえか!!
「ええい!!ぶっ飛べ有象無象!!黒魔改『イクスティンクション・レイ!!』」
グレンの前方に出現した魔法陣から虚数エネルギーを放つ、前方の空間を消滅させた。
「「す、すごい。」」
「でも、これを使ったあとはマナ欠乏症になるんだけどな。」
「先生!!」
グレンは倒れこんで血を吐いた。それを見たシスティーナとテレサはグレンに駆け寄る。無茶しやがって。
「大丈夫だ、これで骸骨も全滅……何だと!?」
「骸骨はまだ全滅してないな。さっきの倍の数になってるぞ。」
「そ、そんな。」
グレンはマナ欠乏症、システィーナとテレサじゃ、骸骨は倒せない。仕方ねえな。
「グレン、骸骨はこいつらで最後か?」
「恐らくはそうだ、だがハヤト。さっきの倍、イクスティンクション・レイみたいな魔術とかあるのか?」
「あるから聞いてるんだよ。システィーナ、テレサ、グレンを少しでも回復させとけ。」
さあて、久しぶりに使いますか!!
「大地の咆吼、其は恐れる地龍の爪牙、その身を贄にして、敵を砕かん、グランドダッシャー!!」
俺は骸骨がいる床に魔法陣を展開させ、そこから骸骨を岩で串刺にする。
「ふぅ、殲滅完了っと。」
「先生!!大丈夫ですか!?」
「だいじょばない、マナ切れ寸前だ。」
しばらく魔法を使ってなかったからな、大技を使いすぎたか。
「グレン、立てるか?」
「なんとかな。それに、立ってないと敵を倒せないしな。」
そう言いグレンは血を拭って立ち上がる。顔色悪いな。
「ほう、あの骸骨を殲滅したか。」
何だ?なんか黒ローブの男が来たぞ?しかも剣を浮遊させてるし。
「あー、もう、浮いてる剣ってだけで嫌な予感するよなぁ。あれって絶対、術者の意思で自由に動かせるとか、手練の剣士の技を記憶していて自動で動くとか、そういうやつじゃん。」
「しかも魔術は起動済みか。本当に厄介だな。」
「「先生……。」」
俺とグレンがブーブー文句を言ってると、システィーナとテレサがこっちを不安そうに見てくる。
「グレン=レーダス。前調査では第三階梯にしか過ぎない三流魔術師と聞いていたが、誤算だな。それとハヤト、調査ではグレン=レーダスと同じ第三階梯と聞いていたんだがな。」
「俺の事まで調べたのか。ご苦労なこって。レイクさんよ。」
「私の名前を知っていたか。」
いや、あのチャラ男に聞いただけなんだけど。
「一人を完全に殺したのはお前だろうが。人のせいにすんな。」
「命令違反だ。任務を放棄し、勝手なことをした報いだ。聞き分けのない犬に慈悲を掛けてやるほど、私は聖人じゃない。」
「ああ、そうかい。そりゃ厳しいことで。で、なんだ?その露骨な剣の魔導器は俺対策か?それともハヤト対策か?」
「知れたこと。貴様は魔術の起動を封殺できる。そんな術があるのだろう?それともう片方は今魔術の出力が下がっているのだろう?ディスペル・フォースは使えまい。」
こいつ、俺の固有魔術のデメリットも知ってやがるのか。
「おい白猫、ディスペル・フォースを使えるマナは残っているか?」
「はい、でも私だけじゃ足りません。」
「テレサ、お前は?」
「は、はい。残っています。ですけど、それを相手が許してくれるのでしょうか?」
んー、許してくれないだろうな。仕方ない。
「そうか、おいグレン。」
「あぁ、わかった。」
「「先生?」」
「「んじゃま、とりあえず落とすわ。」」
グレンはシスティーナを、俺はテレサを押して外に出す。
「「ええええええぇぇぇぇぇぇ!?」」
「…………。」
レイクって奴、お前ら何してんの?って顔になってるな。
「さてと、やりますか。」
「貴様らは逃げないのか?」
「えっ?見逃してくれ「そんなわけないだろう。」ですよねー。」
「おいハヤト!!来るぞ!!」
レイクは浮遊している剣を俺達に向けて放ってくる。
「くっ!!ちぃ!!」
「あーうぜー!!ちょこまかちょこまか鬱陶しい!!」
俺は二本、グレンは三本の剣の攻撃を弾いたり、回避する。
「あぐっ!!」
「グレン!!」
グレンはちとヤバイな。マナ欠乏症に加えて素手と剣、相性は最悪だ。
「どうした?その程度か?」
「んなわけねえだろ!!切り裂け烈風、烈風刃!!」
俺は刀を抜刀して、レイクの操ってる剣を風の刃で全て打ち落とす。
「グレン今だ!!」
「サンキュー!!猛き雷帝よ・極光の閃槍以て・刺し穿て!!」
「ちぃ!!」
グレンはライトニング・ピアスをレイクに放つが、レイクは俺が弾いた剣を自分の前に持ってきてライトニング・ピアスを防いだ。
「貴様ら、何者だ?」
「「ただの講師だよ。非常勤だけどな。」」
「そうか、なら貴様ら敬意を称して、死ね!!」
そう言いレイクは浮遊している剣5本をグレンに突き刺した。
「俺を忘れ「忘れてはいない。」な、に。」
俺にも五本の剣が刺さってる?あいつ!!
「五本しかないと思ったか?」
「あぁ、思ってないぜ!!」
「原初の力よ・正負均衡保ちて・零に帰せ。」
グレンはディスペル・フォースを唱えたが、魔力を少々削っただけだった。
「悪足掻きか、だがそれもし「「力よ無に帰せ!!」」何だと!?」
ようやく来たか、でもシスティーナとテレサのありったけのマナを使っても五本が限界か。って全部グレンの剣かよ。
「だが残りの五本で仕留めれば!!」
「させっかよ!!陵、其は崩壊の序曲を刻みし者、 重圧、エアプレッシャー!!」
俺は自分のの周りの重圧を上げて、剣を抜けなくする。くそっ、思った以上にキツい!!
「「グレン先生!!」」
「自分ごとだと!?目覚めよやい「おっせぇ!!」がはっ!!」
グレンはレイクが操っていた剣でレイクの急所を刺した。ふぅ、エアプレッシャー解除と。
「そうか、思い出したぞ。つい最近まで帝国宮廷魔導師団に一人、凄腕の魔術師殺しがいたそうだ。いかなる術理を用いたのか預かり知らぬが、魔術を封殺する魔術を持って、反社会的な外道魔術師達を一方的に殺して廻った帝国子飼いの暗殺者。」
「それも、知っていやがったのか。」
「活動期間はおよそ三年。その間に始末した達人級の外道魔術師の数は明らかになっているだけでも二十四人。その誰もが敗れる姿など想像もつかなかった凄腕ばかり。裏の魔術師達の誰もが恐れた魔術師殺し、コードネームは。『愚者』」
そう言いレイクは血を吐く、さて、剣を抜くか。うわっ!!痛てぇ!!
「それと、半年前まで帝国宮廷魔導師団に所属し、『愚者』と同じように反社会的な外道魔術師達を、魔術ではなく魔法と剣技で殺していった化物がいたと。」
「……。」
「『愚者』がいなくなっても、その代わりとして活動していた。始末した魔術師は少なくても30人以上、しかも全員達人以上の実力者。さらにセリカ・アルフォネアと互角の戦いをしたという伝説を残した。コードネームは、『未知』」
そう言いレイクは動かなくなった。ってか、何でこのタイミングで解説すんの?要らなくね?
「「胸糞悪い事させやがって。」」
「「先生!!大丈夫ですか!?」」
「大丈夫、よく俺の意図が分かったな?」
グレンがそう言った時、システィーナは涙目になっていた。
「グレン先生は、何の意味もなく、行動するとは思えませんでしたから。」
「多分、7割くらい駄目だと思ってた。」
それな、本当にそれな!!
「ハヤト先生。」
「ん?どしたテレサ?」
何故驚いた表情をしているんだ?何か俺に付いているのか?
「その出血量、大丈夫ですか!?」
足元を見たら、血だまりが出来ていた。まあ、15分以内に治せば大丈夫。
「……俺よりもグレンを診てやってくれ。」
グレンは、倒れたな。まあ、マナ欠乏症に大量出血、そりゃ倒れるわ。
「慈愛の天使よ・彼の者に安らぎを・救いの御手を。」
システィーナとテレサはグレンにライフ・アップを掛けたな。
「やっぱ、駄目だったか。」
「「えっ?」」
「正義の魔術使いになりたかった。」
そう言ってグレンは意識を失った。思い出さないようにしていた過去を思い出したのか。
「さて、俺は座って休むか。その前にシスティーナ、テレサ。」
俺はシスティーナとテレサがこっち向いた瞬間に水色のグミを口に向かって放り投げる。
「「あむっ、なんですかこれ?」」
「マナと体力の回復を早めるグミだ。」
そう言い俺も水色のグミを食べる。うん、ミラクルな味だな。
「システィーナ、テレサ、俺は少し寝る。」
「ハヤト先生!!」
「そんな顔すんなよ。少し寝るだけだ。」
おやすみー、いい夢を見よう。
******
「ん?ふあぁ。よく寝たな。」
何時間寝たかわかんねえな。システィーナとテレサは寝ているのか。
「起きたのかハヤト。」
「グレン、目が覚めたんだな。」
グレンは立ってストレッチをしていたが、傷が傷むのかしかめっ面になる。
「俺はルミアを助けに行く。ハヤトは白猫とテレサを見ていてくれ。」
「わかった、これを持っていってくれ。」
俺はグレンに腕時計を渡す。まあ、ただの腕時計じゃねえけどな。
「それは俺と通信出来る腕時計だ。何かあったら呼べよ?」
「分かった、にしてもハヤト。テレサはあいつに似てるよな。あいつと重ねているのか?」
「ッ!!早く行けグレン!!お前だってシスティーナをあいつと重ねているだろ!!」
重ねちゃいけないのは分かってる。けど!!
「……悪い、じゃあ行ってくる。」
そう言いグレンはルミアが捕らえられている所に向かって走っていった。
「あら、寝ていないのですね。」
「誰だ!?」
後ろから声が聞こえたから振り替えったら、メイド服を来た女性がいた。
「そう身構えなくても、私はただのメイドですわ。」
「んじゃあ、その殺気をしまえよ。二人が起きちまうだろうが、天の智慧研究会の者。」
「隠していたつもりなんですが、気付くとは流石コードネーム『未知』ですわね。」
そう言いメイドは笑う。何の用なんだ?胡散臭いオーラが匂うぜ全く。
「王女はあの愚者に助けられるから、そこの二人を人質に捕ろうと思ったのですが、貴方がいたのでは無理ですね。」
「無理ならここに来ないだろ、何かしたな?エレノア=シャーレット。」
「まあ、私の名前を知っているなんて光栄ですわ。ええ、私の可愛い子供達を呼びましたのよ?」
エレノアがそう言うと後ろの廊下から大量のゾンビが出現した。多すぎだろ!!
「テメェ、何人生みやがった!?」
「それは秘密ですわ。さて、どうします?そこの二人を私にくれるなら見逃してあげますわよ?」
「ほざけゾンビ女、教え子を危ない奴に渡すかよ。」
「そうですか、なら私の子達と優雅な一時をお過ごしくださいませ。」
「逃がすか!!」
俺はゾンビ女に刀を投げ付けるが、その前にゾンビ女はスカートを捲し上げて礼をし、消えていった。
「逃がしたか、それよりもゾンビをなんとかしねえとな!!」
マナは、全快じゃねえけどそれなりにある。ったくバイオ○ザードじゃねえんだからよぉ。
「さてゾンビ供、お前らの姿は女の子には見せられねぇ。だから駆逐してやんよぉ!!」
1対100?200?上等、1匹残らず倒してやらぁ!!