ネタ回はいいね書きやすい
「なるほどな...噂では聞いてたが、クソ面倒な事に巻き込んでくれたな」
「是が非でも勝たなくちゃな」
ジンより今回のギフトゲームの本意を聞かされた。
優勝者が次の階層支配者を決める事となり、サラ達はノーネームに全ての期待を込めたと。
軽い噂で聞いていてある程度覚悟をしていたが、余計にめんどくさい事になったようだ。
「もう、一言ぐらい言って欲しかったわ」
「サラに美味しいものを奢ってもらうしかない」
耀は何を奢ってもらおうかと思考を巡らせる。そこに、万が一【二翼】に負けるなんて考えはない。
だな、概ね賛成を表した十六夜は女性陣の衣服に視線を移す。
「にしても、白夜叉のやつ本当に水着を貸し出してたんだな。珍しくまともなことをすんじゃねえか」
「どこがよ十六夜くん」
少し恥ずかしさがあるのか顔を赤らめ、大きく膨らんだ胸を両腕で押しつぶして忌々しそうに言い返す。
パレオによって大体は隠せているものも時々見え隠れする、白い太ももやふくらはぎは視線を釘付けにする。ワンピースなどの長いスカートでいつも隠しているので新鮮味がある。
変態的思考になってしまうが羞恥に歪んだ顔と服装は見事にマッチしていて、一時間見たとしても飽きることは無いだろう。
それに対して耀は腹を括っているのか特に隠すことをしていない。
これ以上発達が見込めないと思っていた胸も微かに成長していてよく目を凝ら──しても成長しているようには見えない。
それでこそ耀だと頭を縦に振る褌変態は防御力皆無の鳩尾に拳が突き刺さる。
胸はビキニではなくセパレートタイプだが、年相応で似合っている。万人に受ける容姿と合わさり、飛鳥とは違った魅力がある。
なのだが今の行動を見ると淑女とは程遠いように思える。
「ジロジロ見ないでよ」
「おいおい何言ってんだよ、水着なんて見られてナンボだろ。なぁ一誠」
「全くその通り、こんな機会あまりないから嬉しいよ。それと俺の名前今回限りで変態仮面な、正体バレないようにしたいんだから」
今更名を変えた所で兵藤一誠だとバレないと思われるはずもないのだが、その事を伝えるのは面白くないと三人は結託している。
「おう分かったぜ変態仮面(笑)」
「了解よ変態仮面(恥)」
「うん変態仮面(悲)」
「よしお前ら表出ろ...ボコボコにしてやる!」
本番前だと言うのに彼らに緊張の色は見えずいつも通り和気あいあいとしている。
そして、恥ずかしさから皆の前に姿を表せない黒ウサギが意を決して出るのはもう少しあとである。
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ラプラスの小悪魔達が映し出しているスクリーンには後々″ヒッポカンプの騎手″の映像が流れるので、何も映っていない今でも一度たりとも逃さないと宴のようの騒ぎながら視線が集中している。
ラプラスの小悪魔とは未来を見通すラプラスの悪魔の端末で群体悪魔である。
本日の醍醐味のギフトゲームに皆興味津々のようで、どんちゃん騒ぎをしながら各々の席についている。
そんな彼らに声をかける幼女の集団がいる。
「斑梨のジュースはどう?斑模様だけど黒死病にはならないわよ」
「やめぇい!お前が言うと紛らわしい」
麦わら帽子を深く被り姿を隠しながら、ペストは梨のジュースや切られた物を首から下げた籠に入れながら販売している。
後には弱い力でツッコミを入れる会計担当のレティシアもいる。
「なんで私がこんなことを」
涼しい小部屋で惰眠を貪るはずだったペストは悪態をつく。
そんな彼女に仕方が無いだろうと頭を横に振るう。
「こういう時に財を稼ぐのも大事だろう...と言ってきた本人がいないがな」
二人に販売をお願いしてきたリリはこの場にいない。理由は深く聞いていないが、白夜叉に直談判してくると尻尾を高速で振りながら走っていった。
面倒事を押し付けやがって─そう思いながらも販売を二人は続けていく。
ちなみに原因のリリは、別の部屋でせっせととある漫画を書き販売していた。売上はかなり上々で″サウザンドアイズ″に仲介を頼み大々的な販売を視野に考えている。
と、販売を進めているとスクリーンに映像が映し出される。
そこにいるのは和服の白夜叉とお目付け役のいつもの店員に黒ウサギだ。
『大変長らくおまた─』
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!」
「黒ウサギちゃんの水着最高っっっううう!!」
「フォーー!!待ってました!!」
始まりの声をかき消したのは男達の野太い大歓声である。
美女達の水着姿に男達のボルテージは鰻登り、この時を忘れまいと目をガン開き脳に焼き付けている者もいる。
「白夜叉様万歳!白夜叉様万歳!」
「もう死んでもいいや」
「俺は人間をやめるぞォォォォォォ!!」
興奮は最高潮に達し血を吐きながら気絶するものも出始める。
そんな彼らにペストは汚物を見るような冷徹な視線を送る。中にはそれで興奮した者もいたとかいないとか。
呆れるようなため息を吐きながらその場をあとにしていく。
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ヒッポカンプの実況席では白夜叉がドヤ顔を決めながらマイクを握っている。
『うむ大変元気がよろしい!!諸君らの声はこちらに届いておるぞォォォォォ!!!』
『いい加減にしてください白夜叉様』
いつもは割烹着を着ている店員さんだったが、上司の命令を無下にする事はできざ水着を着らされたようだ。
それでもそこら辺の女子たちより圧倒的に整った顔にプロポーションは、男達の視線を集めるには十分だ。
だが相手が悪かった。隣にいる箱庭の貴族(恥)の方に視線は多く集まる。
ビックバン見たく大きく育った胸を押さえつけるビキニタイプの水着もいささかサイズが小さいのか、胸に端が沈み込み少し動くだけで胸が大きく縦に揺れる。
うぅぅ。恥ずかしそうにウサ耳の先まで赤く染めながら、もじもじしている姿は男達を悩殺していく。
『さて、随分と場が温まって来たようなので一言......相変わらず黒ウサギはエロいな』
『さっさと始めくださいこのお馬鹿様!』
どこからともなく取り出されたハリセンが白夜叉を襲う。
強打された後頭部を抑えながら立ち上がり
『黒ウサギはエロ』
無言で二度目の強打を喰らう。
もう一度変な事を喋ったら叩き潰すとハリセンを右手に小さく叩きつけながら、殺意の篭った視線で睨む。
これ以上弄ると不味いと悟った白夜叉は一度喉を鳴らし声を上げる。
『これ以上痛いのは勘弁なので真面目な話をしよう。この度の収穫祭は我々か″サウザンドアイズ″も多く出店しているが、残念な事にゲームの開催まで期間があまり無かった。
なので、″ヒッポカンプの騎手″を勝ち抜いた参加者には我々から望みの物を贈呈しようと思う』
その言葉にさらなる歓声が上がる。
観客席では参加すればよかったと悔やむ者が続出し、参加者も途端に燃えがる野心に空気がピリつく。
手網を握る飛鳥は深呼吸を何度も繰り返して心を落ち着かせ、大河の両岸にいる三人に視線を配る。
一誠が親指を上にあげ頑張れと口を動かし伝える。
(そうね。そうよね、サラのためにも誰にも負けるわけにいかないの)
美しいヒッポカンプに乗り轡を握る仮面の騎士フェイス・レスを尻目に覚悟を決める。