【完結】ナナカン ~国防海軍 第七近海監視所~   作:山の漁り火

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第二十一話 勲章・後悔・反省会

――第三十六演習海域遭遇戦――

 

 44年11月、五十鈴率いる対潜哨戒部隊の追跡から逃れた敵潜水艦部隊――以下「群狼部隊A」と呼称――が潜伏していた“第三十六演習海域”にて発生した偶発的戦闘。

 

 群狼部隊Aは同年8月の「西方泊地攻略作戦」終了後、南方航路にて輸送船団を待ち伏せし多くの輸送船を沈め、艦娘に痛撃を与えてきた深海棲艦潜水部隊の一つと推測される。

 対潜哨戒部隊との戦闘によりカ級Flagship一隻を失った同部隊は、警戒線を潜り抜け本土と南方の中間地点に当たる“第三十六演習海域”に潜伏。

 そこに巡回を兼ねた対潜戦闘訓練の為、同海域を訪れた「第七近海監視所」艦隊(駆逐艦2・海防艦2の混成部隊)が群狼部隊Aを発見したことにより戦闘となった。

 

<戦果>

撃沈:潜水ソ級Flagship一隻、潜水カ級Flagship一隻

鹵獲:潜水カ級Flagship一隻(鹵獲後に活動停止を確認。船体及び艤装は研究の為本土工廠へ移送)

 

<被害>

小破:海防艦「国後」(艤装小破)、支援哨戒艇「らいちょう」(船体一部中破)

負傷:萩野宗一海軍少佐(左腕部骨折)

 

<備考>

 対潜哨戒部隊が事前に交戦していた事で敵戦力が削られていた事を考慮した上で、それでも第七近海監視所艦隊が輸送船団を苦しめた敵潜水部隊を仕留めた事実には変わりなく、その果たした役割は大きい。

 

 なお、司令官である萩野少佐には後日“国防海軍勲章”の授与を執り行う予定である。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

「………」

 

 漁火島の一角にある崖の上。そこに座る少女――海防艦国後は無言で海を眺めていた。

 顔には何枚かの絆創膏が貼られているが、先の海戦で負った怪我は入渠によりほぼ完治している。

 ……あくまでそれは船体(からだ)がであり、()はまだ癒されていないのであるが。

 

(迷惑かけちゃったな、私……)

 

 艦娘としての初めての実戦、初めての対潜戦闘。それが一週間前の戦いだった。

 模擬爆雷とは言えここ1ヶ月余り真面目に訓練を重ねていたのだ。自負ではあるが、訓練途中で“先制爆雷攻撃”に目移りしていた姉よりも実力は上ではないかと思っていた。

 

 ――その結果はどうだ。

 

 敵の奇襲に戸惑っていたせいで敵部隊の発見は遅れ、まんまと先制雷撃を受けてしまった。魚雷の信管が早めに起動したおかげで国後が直撃を避けられたのは不幸中の幸いで、運悪く直撃を食らっていれば、轟沈だって有り得たのだ。

 そして、敵の罠に掛かり大岩へと迂闊に接近してしまった事実。

 

(憲兵隊にいた頃は、あんなに『海に出て戦いたい』って思っていたのに……)

 

 今思い出しても国後はぶるりと震えてしまう。あの深海棲艦――大岩の上で此方をずっと待ち構えていた“カ級Flagshipの眼”。妖しく光るそれはまるでこの世の全てを恨んでいるかのようで――あの時、それにまるで囚われたかの様に動けなくなってしまったのだ。

 

 国後は“前世”の経験から失敗をする事を恐れていた。

 

 北方のとある島の救出作戦の折、霧に紛れて迷子になってしまい、挙句の果てに僚艦と衝突し多くの船に被害を与えた事。

 戦後は漁船の漁火を岬の灯台の灯りと見間違え座礁。救助にやってきた神風を巻き込んでしまったこと。

 救出作戦ではその事故のおかげで逆に敵艦隊の不意を付く事ができ作戦は成功に終わったし、最期の事故も神風は気にしていないと言っていた。

 それでも……いやそれだからこそ国後は悔しいし、悲しいのだ。自分の実力を発揮できずに結果が決まってしまう事が、それが成功に終わったとしてもだ。

 

「こんなので、よく『神風さんを守る』なんて偉そうな事を言えたよね、あたし……」

 

 そんな国後の溜め息が混じった呟きは、今はまだ誰にも聞かれる事も無い。

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

「――ぶっちゃけ()()()()()()っすよね、今回の戦闘って」

 

 時は14時(イチヨンマルマル)の執務室。

 春風が萩野宛てのお見舞いとして届けられた林檎をシャリシャリと剥いていく。それを遠慮せずぱくぱくと頬張りながら占守は呟いた。

 ちなみに送ってきたのは第六近海監視所(ロッカン)司令官と、占守たちの元上司であるところの若宮憲兵大尉である。

 

「“先制爆雷攻撃”と言いつつ、敵の攻撃を受けてから爆雷攻撃したんじゃ、先制攻撃でも何でもないっしゅ」

 

 占守がカ級を撃沈した時の事を振り返る。“先制爆雷攻撃”。本来であれば攻撃を受ける前に敵に一撃を加えるのがそれであるが、今回は完全に後手に回っていた。

 それでも撃沈できたのだから良かったのであるが、それも占守は「運が良かっただけっす」と満足は言っていないようだ。

 

「とは言え占守さんは今回の戦いで二隻撃破ですよ。もう少し自信を持たれては?」

 

 と、林檎を剥き終えた春風は、続いて梨を手に取りながら占守に尋ねる。

 今回の戦闘における戦果の内訳はソ級が神風と春風の共同戦果、残る二隻のカ級は占守がどちらも撃破した事になっている。“第三十六演習海域遭遇戦”公式記録でのMVPは占守である事実は変わらないのだ。

 

「んー……納得いかないっしゅ」

 

 萩野の為に剥かれた筈の、ほぼ全ての果物をその腹に納めた占守は、近くの椅子にひょいと座り床に届かない足をぷらぷらと振りながら不満げな顔をした。

 

「……占守が心配なのはクナのことっす」

「クナか……初めての実戦だったもんな」

「クナが人一倍努力してたのは、占守がよーく知ってるっす。そんなクナが『実力を出せなかった』って落ち込んでるのは見てて辛いっす……」

「………」

 

 落ち込む占守に萩野は何も言えなかった。

 

 国後が訓練を重ねていたのは、日々の報告で萩野も良く知っている。

 訓練無しのぶっつけ本番で深海棲艦と渡り合えるわけが無い、占守の爆雷でのカ級撃沈もそれなりの訓練を積んでいたからの結果であり、単なる(ビギナーズラック)では無いのだ。

 

 だがいくら努力したからと言って、訓練を重ねたからと言ってそれが生かされるとは限らないのが実戦だ。どんなに猛特訓を重ねた航空隊だろうと、出撃前に空母や基地を攻撃を受ければ何も出来ぬままお陀仏である。鳴り物入りで登場したものの実力を発揮する機会が無いままに呆気なく沈んだ艦だってある。

 

 如何なるルールも引っくり返される、理不尽ではあるがそれが戦争というものなのだ。

 

「……まあ、何を置いても一番悪いのは俺だけどな」

「そうっすね、司令が悪いのは当たり前っす」

「占守さん……」

「いや。俺の判断が間違っていたのは確かさ、春風」

 

 最後の戦闘の切っ掛けとなった「難破船を探るため大岩へ向かう」決断を下したのは萩野である。あの時点で一旦撤退していれば、罠を張っているカ級の目論見は何の意味も無かったのだ。 いくらその決断の切っ掛けが国後の一言だとしても、責任をとるべきは萩野なのだ。

 

 ――結局あの“難破船”には生存者はいなかった。

 

 負傷した左腕――全治一か月の骨折の為、腕は固くギプスに覆われ肩に吊られている――を何気なく(さす)りながら、当時の事を萩野は振り返る。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 占守と国後に大岩周囲の警戒を任せた萩野は、難破船に巡視艇“らいちょう”を横付けさせると、自衛用に予め艇に積んでいた小銃を抱え、ただ一人その船に乗り込んだ。

 

 乗り込んですぐに萩野は気付く。元々“らいちょう”より一回り小さな船であり、探索に掛かったのはほんの数分。

 ――船内には、船長らしき初老の男性が倒れており、()()()()()()()()()()()()()()()

 後の調査で見つかった“航海日誌”には、遭難した事実が克明に書かれていたそうだ。遠洋航海中にエンジンが損傷し無線機も故障。六人いた船員は次々に倒れ水葬にしたこと。最後の一人を船長が見送った所で力尽きたのだろう、日誌はその日の一週間前で途絶えていたらしい。

 

 他に人の気配は無く、萩野はこの船に生存者が居ないことを悟った。……では大岩の上で生き残りが救助を待っている? 嫌な予感がした萩野は甲板に急いで出るとそこで目撃したのは――大岩の上で待ち構えるカ級Flagshipと、その下でカ級を見上げ怯える国後だった。

 

「くらえっ!!」

 

 萩野が“らいちょう”の甲板に駆け上がり、小銃をカ級に向けて発砲したのは咄嗟の判断だった。もし対処が数秒遅れれば、カ級の手にあった魚雷は国後に投擲されていただろう。

 そして、国後を救うべくこちらに向かってきた占守に萩野は告げる。

 

「今だ、占守! 撃てっ!!――」

 

 ――そこから先はよく覚えていない。

 

 数時間後に連絡を受けてやってきた対潜哨戒部隊――長良型軽巡洋艦「五十鈴」が率いる、朝霜や朝潮改二丁といった対潜戦闘に長けた艦娘の精鋭である――と泣いていた神風の話によれば、カ級が占守の砲撃を受けて海に落ちる直前に、“らいちょう”に向けて魚雷を投擲したらしい。

 とは言え苦し紛れに放った魚雷である。魚雷は船に直撃することなくぎりぎり海面へと逸れ、そこで大爆発を起こした。その爆発の衝撃で船体に(したた)かに体を打付けられた萩野は、そのまま勢い余って海の中へ――

 

「……いやあ、よく助かったよねえ司令官っ」

 

 とは対潜哨戒部隊の一員であり、かつて第六近海監視所(ロッカン)に所属し萩野とも顔見知りだった「皐月」の言葉であった。第二改装を受けた彼女は南方へと異動となり、今回対潜能力を抜擢されて哨戒部隊に編成されていたのだった。

 

 対潜哨戒部隊と合流した萩野と第七近海監視所(ナナカン)艦隊一行は一通りの調査の後、皐月と共にそのまま本土――第六近海監視所(ロッカン)へと向かい、萩野は骨折の治療を受ける。しばしの安静の後、第七近海監視所(ナナカン)へと戻ってきたのはつい昨日のことである。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

「ところで、司令官様に“国防海軍勲章”が授与されるそうですが」

「あー、それな……」

 

 ふいに春風から出た()()を聞き、ふと萩野は天井を仰ぎ見た。

 

 萩野に授与される勲章は、正確には“国防海軍提督功勲章”と呼ばれるもので、提督が特別な戦果を挙げた際に授与されるものらしい――らしいなどと言うのは、萩野が今までそういった勲章授与に一切関わっていなかったからであり、この「提督の墓場」に勤めるようになってから、それに最も縁遠い存在になってしまったからなのだが。

 

 ……正直なところ萩野は今回の勲章授与にそれ程乗り気では無かった。

 

「占守、お前が代わりに貰ったらどうだ?」

「いやっす、大人しく貰っておくっす」

「即答かい」

 

 何気なく振った一言を呆気なく占守に却下され、萩野は再び天井を見上げた。

 

 正直なところ、今回の戦いで自分は何が出来ただろうか。判断を間違えたのは事実であるし誰も沈まなかったのは運が良かっただけだ。

 あの時ソ級との戦いを終えて駆けつけた神風は、彼の腕にすがり付いて泣いていた。春風も涙は見せなかったが心配そうな顔でこちらを見つめていた。以前海上護衛任務に送り出す際に「無事に帰ってこい」と言った自分がこんな目に遭うとは恥ずかしい限りだ。

 

 ――迷った末に判断を間違える。()()()から結局何も変わっちゃいない。

 

 溜め息をつく萩野の心は一向に晴れなかった。

 

 それから数時間後、萩野はある決断をする事になる。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

「こんな所にいたのね、クナ」

「神風さん……」

 

 時刻は19時(イチキュウマルマル)を過ぎ、辺りはすっかり暗くなっていた。今日は晴天であり、彼女たちの真上には秋の星空が広がっている。

 

「横、座っても良いかしら?」

「あ、はい……。どうぞ」

 

 国後に断りを入れた神風は、しゅんと落ち込む国後の横へと座る。

 しばしの沈黙の後、

 

「……まだ、落ち込んでる?」

 

 と、神風が国後に優しく話しかける。

 

「えと……その」

 

 しどろもどろで返答に困った様子を見せる国後。そんな彼女に神風は微笑んで会話を続ける。

 

「いいじゃない。反省したなら次に生かせば」

「で、でも……敵の不意打ち受けたのは私のせいだし」

「それは初めての実戦でのあなた達のフォローが出来なかった第一小隊(私たち)の責任でもあるわ。私の初めての時も、由良さんに助けて貰ったしね」

「そうなんですね……。でも、大岩に向かって司令と姉さんを危険な目に遭わせてしまったのは」

「うーん、最終的な判断を下したのは司令だしね、あなただけが悪い訳じゃない。落ち込んでたら司令も立場が無いわ」

 

 神風はそう言って国後を抱き寄せてよしよしと頭を撫でる。彼女が頭を撫でるのは占守と国後の第七近海監視所(ナナカン)着任の時以来であった。

 撫でられてむず痒いような恥ずかしいような表情を見せる国後に、神風は優しく語る。

 

「あの時、大岩へ向かう提案をしたのも『生きてる人がいたら救いたい』って思いがあったからでしょ? 結果的にはああなっちゃったけど、その考えは悪い事じゃないし」

「うう……そうなんでしょうか」

「そうよ。……それに、海に落ちた司令官を真っ先に助けたのは、あなたよね」

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 ――カ級の投げた魚雷の爆発、その衝撃で船体に(したた)かに体を打付けられた萩野は、そのまま勢い余って海の中へ落ちていった。

 

「し、司令官っ!!」

 

 大岩周辺の水深は珊瑚礁とは言え、それなりに深い。衝撃で気を失った萩野が海底へと沈んでいく中で、それを救助したのは占守ではなく国後であった。

 

(助けなきゃ……っ!!)

 

 カ級に怯んで動かなかった身体は動くようになった。艦娘は潜水艦娘以外は艤装を付けたまま海に潜る事は出来ない。急いで艤装を外し、海へと潜る国後。

 

(助けなきゃ、助けなきゃ……)

 

 国後も余程必死だったのだろうか、当時のことはよく覚えていない。気づけば“らいちょう”の甲板上。水浸しで寝かされている萩野と横で心配する占守。それを放心して見守るずぶ濡れの自分自身であった。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

「――あの時司令官を助けてくれてありがとう」

 

 国後がいち早く溺れた萩野を助けた事に、神風は心から感謝していた。国後自身はよく覚えていないと言うが、その後の処置も適切だったし右腕一本折れただけで今はもうここに帰還しているのが何よりである。

 

「あ、いえ。でも」

「出来ることからやれば良いのよ。無理はしちゃダメ」

 

 神風はそう言って国後の腕を引っ張ってひょいと立たせる。

 

「さあ、帰りましょ。もう遅いし司令官もあなたの姉さんも心配してるわ」

「……はい」

 

 こうして二隻は連れ添って第七近海監視所(ナナカン)への帰路に着いた。

 第七近海監視所(ナナカン)への帰宅後に、一向に妹が戻ってこないのを心配する占守との一悶着があったが、それはまた別の機会に語ろう。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 それから数日後、第七近海監視所(ナナカン)に一隻の哨戒艇がやってきた。

 哨戒艇が配送してきた物は、厳重な封印が施された幾つかの木箱。そのまますぐに船は立ち去ってしまった。

 

「……なに、これ?」

 

 てっきり萩野の勲章授与にやってきたかと思っていたが、置いていったのは謎の木箱のみ。萩野に促されてその木箱を開けた神風は、思わず拍子抜けした声を上げた。

 

「ネジ……でしょうか?」

「ネジっす」

「ネジね」

 

 それは一見すると“ネジの形状”をした特殊な資材――“改修資材”の詰め合わせである。

 改修資材は妖精さんと熟練の工員のみが扱える貴重な資材の一つであり、主に前線や本土に回されるため、僻地である漁火島には本来回ってこない資材だ。

 特殊な加工をする事で、艦娘が装備できるあらゆる武装――艦砲や魚雷発射管、艦載機までも――の性能を、飛躍的に向上させることが出来る。

 その改修資材が、関連する資材を含めて詰め込まれていたのだ。改修資材の扱いは難しいらしいが、源次郎と妖精さんに任せれば何とかしてくれるだろう。

 

 しばし物珍しいその資材を眺めた後、神風は萩野に疑問を投げかける。

 

「ところで……勲章はどうしたの?」

 

 本来であればそろそろ勲章の授与が行われる予定日であったのだ。しかし届いたのは改修資材。

 そんな神風の疑問に対し、萩野は爽やかな顔で答えた。

 

「ああ、こないだ本土(総司令部)に願い出てね……。勲章の代わりに『改修資材(ネジ)』にして貰った」

「はああ??」

 

 

 

 ――あれから熟考の末、萩野は勲章を辞退することにした。代わりに手に入り辛い“改修資材”を入手できるように願い出たのだ。

 

「一応、勲章の代わりに何か貰うって例は昔にもあったらしいんだ。艦娘がいない頃の海軍の話だけど、功を上げたある大佐が勲章を辞退して、代わりに部下に特別報酬を渡すように進言したって話がね」

 

 まあ、こんな僻地の下っ端提督が申し出た例は無いらしいけどな、と苦笑いしながら萩野は続けた。

 

「でも、何で改修資材なんて……」

「いや、ほら。やっぱ装備の強化は大切だろ?」

「強化っすか」

「ああ、これで皆のソナーや爆雷を強化できる。性能も上がるからこれで深海棲艦に遅れを取る事は無いはずだ」

 

 勲章を貰うよりも次に繋げる。

 それが最終的に萩野の下した決断だった。“三式爆雷投射機”等の新型装備も別口で入手できるように手配を進めている。

 

「今回の作戦は成功したが、失敗も多かった。俺も判断を間違えた。みんな無事にこの場にいるのも単に運が良かっただけかもしれない」

 

 萩野はそこまで話した後、四隻の元に向き直り告げる。

 

「――今回入手した資材で装備の改修をして、新装備も手に入れる。錬度も今より上げて、次の戦いでは自信を持って『実力で勝とう』。皆もよろしく頼む」

 

 

 

 

「――ええ、当然よ」と笑顔で答えるのは神風。

 

「お任せください、司令官様」と微笑むのは春風。

 

「ふひひ、しょーがないっすねー。任せるっす司令官!」と元気良く答えたのは占守。

 

 

 

 三隻が続けて声をあげる中、残された一隻は。

 

「――うん、分かったわ。これからも頑張るね」

 

 そう言って国後は久々の笑顔を萩野に見せたのだった。

 

 

 

 

 

 これが第七近海監視所(ナナカン)の波乱の日々の終わり。

 

 ――次に訪れるのは、“嵐の日々”である。

 

 




 後半の展開は勲章と引き換えに改装設計図や改修資材が手に入る仕組みからの発想。
 本来は勲章1個で改修資材4個と交換ですが、本作ではもう少し多めに手に入った事になっています。
 そもそも資材と交換される勲章とは一体うごご……となったので、辞退した代わりという事にしましたが。


 さて、ここまで第七近海監視所(ナナカン)の物語にお付き合い頂きましてありがとうございます。
 次の章は「嵐の日々」。初めての対潜戦から暫く経った後の四隻の成長、そして萩野少佐の過去にぼちぼち触れていく予定。
 それでは次章もよろしくお願いします。


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