情報好きな少女の青春はまちがっている   作:銅英雄

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9話目になります。どーぞ。


私と話し合い

結衣「大丈夫かなぁ……」

 

平塚「何か心配事かね?」

 

葉山「ちょっと孤立しちゃってる子がいたので……」

 

三浦「可哀想だよねー」

 

由輝子「別に孤立していること自体は悪いことじゃないでしょう。問題なのは悪意によって孤立させられていることです」

 

平塚「それで君達はどうしたい?」

 

葉山「俺は……出来れば可能な範囲でなんとかしてあげたいと思います」

 

この問題は私達の手に負える範囲ではないと思いますが……。

 

雪乃「可能な範囲で………ね、あなたには無理よ。そうだったでしょう?」

 

雪ノ下さんがそう言うと葉山君は顔を俯かせます。……過去にやった過ちのことを雪ノ下さんは言っているのでしょう。

 

平塚「それで雪ノ下、君はどうしたい?」

 

雪乃「これは奉仕部の合宿も兼ねているとおっしゃっていましたが彼女の案件も活動内容に含まれますか?」

 

平塚「林間学校のサポートボランティアを部活動の一環としたわけだ。原則原理から言えばその範疇に入れてもよかろう」

 

雪乃「……そうですか。では彼女が求めるならあらゆる手段を持って解決に努めます」

 

奉仕部の活動としては妥当ですね。彼女自信はもしかしたらこのままでもいいと思っているかもしれませんが。

 

平塚「それで助けは求められているのかね?」

 

雪乃「それはわかりません」

 

結衣「ゆきのん、あの子言いたくても言えないんじゃないかな?留美ちゃんも自分も同じことしてたって言ってたし……だから自分だけ助けてもらうのは許せないんじゃないかな。みんな多分そう……。仲良くしたくても話しかけたくても、それができない環境なんだよ……」

 

平塚「雪ノ下の意見に反対の者はいるかね?」

 

平塚先生が他に意見がないか確認する。

 

平塚「よろしい、あとは君達でなんとかしたまえ。私は寝る」

 

由輝子「平塚先生、今回の問題はかなり深刻です。監督である先生がこの場にいなくては駄目でしょう」

 

平塚「わ、私は生徒の自主性に重んじようと……」

 

由輝子「イジメの可能性が高いこの問題で自主性を重んじたなんて、なんの免罪符にもなりませんよ?」

 

平塚「なら剣、君はどんな考えかね?」

 

由輝子「この問題を林間学校の先生に報告をして私達は手を出さないことです。私達が手を出していい問題じゃありませんので」

 

平塚「……君はイジメられている生徒を放っておくのかね?私は君達なら解決できると思って任せようと考えてるのだが……」

 

由輝子「仮にこの林間学校の期間に手を出したとしましょう。その後に何か問題が起きたら平塚先生達は責任をとれるんですか?」

 

平塚「それは……」

 

由輝子「……彼女が本当に助けを求めている場合私達奉仕部を中心に解決を努めて無理そうならば林間学校の先生に報告をするというのでどうですか?」

 

平塚「ああ……。それでいい」

 

平塚先生は力なくそう発言すると話し合いが始まりました。

 

三浦「あの子結構可愛いし、他の子とつるめば良くない?試しに話しかけてみんじゃん、仲良くなるじゃん、余裕じゃん?」

 

戸部「それだわー。優美子冴えてるわー」

 

結衣「そ、それは優美子だから出来るんだよ……」

 

それは強者の理論ですね。由比ヶ浜さんの言う通り三浦さんみたいな人は出来るかもしれませんが鶴見さんは内気そうですから可能性は低いでしょうね。足がかりを作るという意味では正しいですが現状では少しハードルが高いかもしれません。

 

???「はい」

 

次に挙手したのは海老名さん。

 

葉山「姫菜、言ってみて」

 

海老名「大丈夫、趣味に生きればいいんだよ。趣味に打ち込んでいるとイベントとかに行くようになって色々交友が広がるしきっと自分の本当の居場所が見つかると思うんだよね。だから学校だけが全てじゃないって気付くよ」

 

いい意見ですね。確かに学校だけが全てじゃないですし趣味を生き甲斐にすれば、それに没頭出来て嫌なことを忘れることができます。小学生の頃の私がまさしくそうでした。学外の交流で美咲さんと出会ったのがとてもいい思い出です。だからこの意見を採用するのはありだと思います。……まぁ海老名さんの趣味や性格を考えるとオチが見えますが。

 

海老名「私はBLで友達が出来ました!」

 

八幡「……は?」

 

海老名「ホモが嫌いな女子はいません!だから雪ノ下さんと剣さんも」

 

雪乃「えっ?」

 

由輝子「お断りします」

 

葉山「……優美子、姫奈と一緒にお茶取ってきて」

 

三浦「おっけー……」

 

海老名「ああっまだ布教の途中なのにっ!」

 

三浦「ほら海老名行くよ」

 

雪乃「あの人は私に何を勧めようとしたのかしら?」

 

結衣「ゆきのんは知らなくていいよ……」

 

由比ヶ浜さんも被害者のようですね…あの人は見境なく女子に布教しようとしてませんか?

 

葉山「やっぱりみんなで仲良くできる方法を考えないと解決にならないか……」

 

八幡「ふっ、みんなねぇ……」

 

比企谷君が呆れるように言う。葉山君はこの問題を本当にわかってるんですか……?

 

雪乃「そんなことは不可能よ。ひとかけらの可能性もありはしないわ」

 

三浦「ちょっと、雪ノ下さんあんた何?」

 

雪乃「何か?」

 

三浦「折角みんなで仲良くやろうってしてんのになんで空気壊すようなこと言うわけ?別にあーしあんたのこと全然好きじゃないのに旅行だから我慢してんじゃん」

 

結衣「まぁまぁ優美子……」

 

雪乃「あら、意外に好印象だったのね。私はあなたのこと嫌いだけれど」

 

結衣「ゆきのんも抑えて抑えて……」

 

三浦「ちょっと結衣ー?」

 

雪乃「あなたはどっちの味方なのかしら?」

 

結衣「ひいっ!」

 

雪乃「それに私は事実を淡々と述べただけよ。それに激昂して空気を壊しているのはあなたじゃないかしら?」

 

三浦「あんたさぁ!そういう上から目線をやめろって言ってんの!」

 

雪乃「あら、自分が劣っている自覚があるから上から見られているように感じるのではなくて?」

 

三浦「このっ!」

 

由輝子「はぁ、くだらないですね」

 

八幡「剣?」

 

由輝子「あなた達は鶴見さんを救う気があるんですか?葉山君はその場しのぎの案しか出さずその後のことを考えない、雪ノ下さんは反対意見しか出さない、三浦さんは雪ノ下さんとくだらない口論をする、やる気がないなら出ていってください。そもそも雪ノ下さん、あなた部長ですよね?なのに案の1つも出さないで何が『解決に努める』ですか?今あなた達がやっていることは時間の無駄でしかありません。……私は先に部屋に戻ります。あなた達は延々となんの役にも立たない口論を繰り返せばいいですよ」

 

私はそう言って部屋に戻ることにしました。

 

 

 

 

 

~翌日~

 

今日の予定は夜に肝試しとキャンプファイヤーをする予定で、昼間小学生は自由時間のためその間に私達が準備をすることになります。肝試しは私達が小学生を脅かす役のようですが。……あと雪ノ下さんに謝罪されました。あなたのおかげで目が覚めたと言われました。私は当たり前のことを言っただけです。

 

準備が終わりみなさんは川で遊んでいますが、私は木陰で休んでいます。……比企谷君はどうやら水着を持ってきてないようで私と同じく休んでいます。

 

八幡「剣は川で遊ばないのか?」

 

由輝子「はい、どうも遊ぶ気にはなれませんので」

 

八幡「それにしても昨日は大変だったな」

 

由輝子「あれから比企谷君はどうしたんですか?」

 

八幡「俺は流れで部屋に戻った。雪ノ下になんか言われたが、剣の言う通り時間の無駄でしかなかったからな」

 

私と比企谷君が話していると鶴見さんがこちらにやって来てそのまま隣に座りました。

 

八幡「よっ」

 

由輝子「こんにちは」

 

留美「……」ペコッ

 

鶴見さんはこちらに軽く会釈しました。やはり元気がないみたいですね。

 

留美「……2人は川で遊ばないの?」

 

八幡「俺は水着持ってきてないんだよ……」

 

由輝子「私はそういう気分じゃありませんでしたから」

 

八幡「……お前は?」

 

留美「……今日は自由行動なんだって。朝ごはん部屋に戻ったら誰もいなかった」

 

八幡「……えげつねぇな」

 

結衣「留美ちゃん」

 

由比ヶ浜さんと雪ノ下さんもこちらに来ました。

 

結衣「留美ちゃんも一緒に遊ばない?」

 

由比ヶ浜さんの誘いに鶴見さんは首を横に振ります。

 

留美「ね、八幡」

 

八幡「呼び捨てかよ……」

 

留美「八幡、小学校の友達っている?」

 

八幡「……いない。多分だいたいみんなそうだから放っておいていいぞ。あいつら卒業したら1人も会わないぞ」

 

結衣「そ、それはヒッキーだけでしょ!」

 

雪乃「私もいないわ」

 

由輝子「私もいませんね。その当時親しい人は美咲さんくらいですから」

 

結衣「留美ちゃん、この人達が特殊なだけだからね」

 

八幡「特殊で何が悪い。英語で言えばスペシャルだ。何か優れてるっぽいだろ」

 

雪乃「言葉の妙よね……」

 

日本語って不思議ですよね。

 

八幡「由比ヶ浜、お前小学校の同級生で今でも会う奴何人いる?」

 

結衣「え?えーと……1人か2人かなぁ……?」

 

八幡「お前の学年何人いた?」

 

結衣「30人3クラスだけど」

 

由輝子「つまり卒業から5年後も友達やってる確率は3%から6%くらい。由比ヶ浜さんみたいにかなりコミュ力が高い人でこの確率ですから常人はもっと低いでしょう。……まぁ1%くらいとみていいと思います」

 

結衣「でも1%でいいって考えると少しは気が楽かもね。みんなと仲良くってやっぱりしんどい時あるし」

 

由比ヶ浜さんでもそう感じるものですね。それくらい大変なんですよね。『みんな仲良く』ってことは……。それができれば戦争なんておきませんし鶴見さんはこんな状況になっていません。

 

留美「……それだとお母さんが納得しない。いつも友達と仲良くしてるかって聞かれるし、林間学校もたくさん写真撮って来なさいってデジカメ……」

 

彼女のお母さんはなんとなく察してはいると思いますよ?自分自身が本当のことを言ってくれるのを待っているだけで……親ってそういうものですから。

 

留美「それに、シカトされるってちょっと嫌だな。惨めっぽいし、でも……もうどうしようもないし」

 

雪乃「何故?」

 

留美「私……ハブられてる子見捨てちゃったし、もう仲良くできない……。仲良くしてもいつかまたこうなるかわからないし……。なら、このままでもいいかなって……」

 

鶴見さんは自分とその周囲を見限ったのですね。『自分が変われば世界は変わる』なんてことは実際ありませんし、悪目立ちすればそれを材料に攻撃の標的になります。……それが世の中のどうしようもないルールというものでしょう。

 

八幡「……惨めなのは嫌か?」

 

留美「……うん」

 

八幡「……肝試し、楽しいといいな」

 

結衣「ヒッキー?どうしたのヒッキー」

 

雪乃「………」

 

比企谷君は鶴見さんを救う方法が何か浮かんだようですね。……彼の案ならもしかしたら彼女を救済出来るかもしれません。時間的にもこの案が失敗したら林間学校の先生に報告した方がいいですね。

 

……もう比企谷君だけが頼りですね。

 




はい、今回はここまでです。次回で千葉村編は完結します。

この小説の登場人物である佐野美咲がヒロインの√を現在考え中ですが……。

  • 見たい
  • なくてもいい
  • そんなことより原作キャラの√がよか!

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