職場見学から数日が経ちますがあの日以降由比ヶ浜さんが部室に来なくなりました。
雪乃「……あなた、由比ヶ浜さんと何かあったの?」
流石に雪ノ下さんも気になるようで、比企谷君に訪ねました。
八幡「……何も」
雪乃「何もなかったら由比ヶ浜さんは来なくなったりしないと思うけれど。喧嘩でもしたの?」
八幡「喧嘩なんてそれなりに仲のいい奴がするもんだろ。だから喧嘩っていうよりは……」
由輝子「……すれ違いですか?」
八幡「……まぁそんな感じだ」
雪乃「……そう、なら仕方ないわね」
雪ノ下さんがそう言うとガラガラと部室の戸が開いた。
平塚「……なんだ由比ヶ浜は今日もいないのか」
雪乃「先生、ノックを……」
平塚「彼女にはそれなりに期待してたのだがなぁ……」
雪ノ下さんの言葉を無視して平塚先生は椅子に腰掛けながら言う。
八幡「……あの、先生何か用があるんじゃ」
平塚「ああそうだ比企谷。君と雪ノ下の勝負だがこれからはバトルロワイヤルでいこう」
八幡「バトルロワイヤルですか?」
由輝子「勝負ってなんですか?」
平塚「ああ、そういえば剣は知らなかったな。比企谷と雪ノ下で奉仕の勝負をして勝った方は負けた方になんでも命令できるというルールになってるんだ」
『なんでも』の範囲がどれ程のものか気になりますね。
平塚「由比ヶ浜はもう来ないみたいだし必要ならば新入部員を確保してもいい」
雪乃「由比ヶ浜さんはまだ辞めたわけでは……」
平塚「来ないなら同じだろう。やる気も意志もない奴は去るしかあるまい」
まぁ、やる気がない人にいられても迷惑ですからね。
平塚「由比ヶ浜や、剣のおかげで部員が増えると部が活発化することがわかった。そこで君達にやってもらいたいことがある」
由輝子「やってもらいたいことですか?」
平塚「君達の手でやる気と意志を持った者を確保し最低でもあと1人部員を補充したまえ」
やる気と意志を持った人ですか……。
平塚「期限は3日後の月曜日。なんなら今すぐでも構わん」
由輝子「もうすぐ下校時刻ですから実質2日後ですね」
雪乃「平塚先生、確認しますが『人員補充』をすればいいんですよね?」
平塚「その通りだよ雪ノ下。では、健闘を祈る」
そう言って平塚先生は去っていきました。
八幡「……人員補充ってどうすりゃいいんだ?」
雪乃「そうね、入ったくれそうな人に心当たりがあるわ」
八幡「誰?戸塚?戸塚か?戸塚だよな?」
由輝子「戸塚君はテニス部があるから無理でしょう」
雪乃「由比ヶ浜さんよ」
八幡「は?だってやめるんだろ?」
雪乃「だったらもう1度入り直せばいいだけでしょう。平塚先生は人員補充さえできればいいと言っていたわけだし」
八幡「けど簡単に戻ってくるか?離れていったらそのまんまってのが普通だぞ」
そもそも由比ヶ浜さんにやる気と意志があるかもわかりませんしね。
雪乃「…期限の月曜日は丁度6月18日。これがなんの日か知ってるかしら?」
6月18日、その日は確か……。
由輝子「由比ヶ浜さんの誕生日ですよね?」
雪乃「ええ、そうよ。剣さんは知っていたのかしら?」
由輝子「はい、アドレスを交換したときに聞きましたので」
雪乃「だから誕生日のお祝いをしてあげたいの。たとえ由比ヶ浜さんが奉仕部に来ないとしても、これまでの感謝はきちんと伝えたいから」
八幡「……そうか」
雪乃「ねぇ、比企谷君……」
八幡「あん?」
おや?なんだか甘酸っぱい空気が流れてきましたよ?
雪乃「そ、その……つ、付き合ってくれないかしら?」
八幡「………は?」
おそらく雪ノ下さんは次の休日に由比ヶ浜さんの誕生日のプレゼント選びに付き合ってほしいと言いたいのでしょうが言葉が足りないので比企谷君が勘違いしますよ?……まあとりあえず。
由輝子「私も行っていいですか?」
と言っておきましょう。
~土曜日~
雪乃「ごめんなさいね剣さん。わざわざ休日なのに付き合わせてしまって……」
由輝子「いえ、私も奉仕部の一員ですし気にしないでください」
雪乃「あとは比企谷君達ね」
由輝子「達?比企谷君の他に誰か来るんですか?」
???「お待たせしました~」
比企谷君と一緒に女の子が来ました。
八幡「そういえば剣は会ってなかったな。妹の小町だ」
小町「初めまして!比企谷小町です!」
由輝子「初めまして、剣由輝子です。よろしくお願いします」
小町「はい!!由輝子さんって呼んでもいいですか?」
由輝子「構いませんよ。私も小町さんと呼びますね」
性格は比企谷君と正反対ですね。
八幡「じゃあ早速行くか」
由輝子「時間も限られていますし効率重視で行きましょう。私は東側を、雪ノ下さんは西側を、女性へのプレゼントということで比企谷君は小町さんと中央付近を見ていきましょう」
雪乃「わかったわ」
八幡「ああ」
小町「ちょっといいですか?せっかくなのでみんなで回りませんか?その方がアドハイスもしあえるしお得です」
由輝子「……そうですね。では全員で中央を見て回りましょう」
~そして~
八幡「あれ?剣、小町を見なかったか?」
由輝子「見てませんよ。携帯にかけてみてはどうでしょうか?」
八幡「ああ、そうする」
比企谷君が小町さんに連絡をしてる間に私は雪ノ下さんの方をみる。
雪乃「……」プニプニ
雪ノ下さんはパンダのパンさんに夢中のようですね。
比企谷君が連絡を終えてこちらに戻ってきた。
由輝子「小町さんとは連絡がとれましたか?」
八幡「あ……いや、なんか買いたいものがあるらしい。で、あとは丸投げされた」
雪乃「そもそも休日に付き合わせてるのだし文句を言えた義理ではないわね。あとは私達でなんとかしましょう」
……本当にそうですか?小町さん自信がみんなで回りましょうと言っておきながら自分は買いたいものがあるから離脱ってどういう意図があるか知りませんが無責任にも程があるのでは?……まぁ2人は納得してるみたいですしまあいいでしょう。
~そして~
由輝子「なんとか買えましたね」
雪乃「ええ」
八幡「そうだな」
私達は買い物を終えて一息ついています。
途中雪ノ下さんは服の耐久力を確かめていましたが事務用品をあげるわけじゃありませんよ?
???「あれー?雪乃ちゃん?やっぱり雪乃ちゃんだ!」
そう言って雪ノ下さんに声をかけたのは雪ノ下さんの姉の陽乃さんでした。
陽乃「あ、デートか!デートだな!このこのっ!」
八幡「別にデートじゃないですけど……」
陽乃「お、きみもムキになっちゃってぇ。雪乃ちゃんを泣かせちゃったりしたら許さないぞっ!」
雪乃「いい加減にしてちょうだい姉さん!!」
そう言って陽乃さんは比企谷君にスキンシップをとっています。……見ていて不愉快ですし何故か雪ノ下さんも不機嫌ですのでなんとかしましょう。
由輝子「そこまでですよ、陽乃さん」
陽乃「いいじゃん由輝子ちゃん。彼が雪乃ちゃんの彼氏に相応しいか確かめてるんだから」
由輝子「……あまり度が過ぎると美咲さんに報告しますよ?」
陽乃「わ、わかったからそれだけは勘弁して~」
とやりとりをしていると雪ノ下さんも比企谷君もポカンとしてますね。
由輝子「比企谷君この人は雪ノ下陽乃さんで雪ノ下さんの姉です」
陽乃「よろしくね」
雪乃「……剣さん、あなた姉さんと知り合いなの?」
由輝子「美咲さんの後輩にあたる方です」
雪乃「美咲さんってこの間の……?」
由輝子「はい、その人で間違いありませんよ。陽乃さんこの人は私と同じクラスの比企谷君と言ってあなたの妹と同じ部活に入っています」
陽乃「比企谷……へぇ……」
比企谷という名前に意味深な反応をしていましたね。やはりあの事故が関係してるんでしょうか?
陽乃「比企谷君ね、うんよろしく」
陽乃さんはそう言って比企谷君に近付き何かを囁いた瞬間、比企谷君はバッと離れました。
陽乃「……私いま嫌がられるようなことしちゃったかな?」
八幡「その、俺耳弱いので……」
雪乃「比企谷君、初対面の女性に性癖を晒すのはやめなさい。訴えられても文句は言えないわよ」
陽乃「……あはは比企谷君すっごいおもしろーい!」
雪乃「もういいかしら?特に用がないなら私達はもう行くけれど」
陽乃「比企谷君、雪乃ちゃんの彼氏になったらお茶しようねー」
……ふぅ、相変わらず嵐のような人ですね。
八幡「……お前の姉ちゃんすげぇな」
雪乃「姉に会った人は皆そう言うわね。誰もがあの人を褒めそやす」
八幡「はぁ?そんなのお前も大して変わらんだろ」
雪乃「……え?」
由輝子「比企谷君が言いたいのは陽乃さんの強化外骨格みたいな外面のことですよね?」
わかりやすくいうと猫被りともいいます。
八幡「ああ、まさに男の理想みたいに人当たりがよくて、いつもにこにこしていてでも理想は理想だ。現実じゃない。だからどこか嘘くさい」
雪乃「腐った目でも……いえ腐った目だからこそ見抜けることがあるのね」
八幡「お前それ褒めてるのか?」
雪乃「褒めてるわよ。絶賛してるわ」
由輝子「…っと私はそろそろバイトに行く時間ですのでこれで失礼します」
八幡「ああ」
雪乃「ええ、今日はありがとう。また月曜日に」
由輝子「はい」
私はバイトに向かいました。
~月曜日~
私と比企谷君が部室前につくと、由比ヶ浜さんが何故か深呼吸をしていました。
八幡「何してんだお前?」
結衣「うひゃあ!」
そんなに驚くことでしょうか?
結衣「……ヒ、ヒッキーにユッキー。やーその何?空気がおいしかったからというか」
由輝子「意味のわからないことを言ってないで行きましょう。雪ノ下さんも待っていますよ」
ガラッ
雪ノ下「!由比ヶ浜さん…」
結衣「や、やほーゆきのん……」
やっはろーじゃないのはどこか元気がないからでしょうか?
雪乃「由比ヶ浜さん」
結衣「っ!」ビクッ
雪ノ下さんが呼ぶと由比ヶ浜さんはびくつく。
結衣「あ、あーっと……。ゆ、ゆきのんとヒッキーのことで話がある……んだよね」
おや?何故か私がハブられていますよ?
雪乃「ええ、私達の今後のことについて」
結衣「や、やーあたしのことなら全然気にしなくていいのに。そりゃ確かにびっくりしたっていうかむしろお祝いとか祝福とかそんな感じだし……」
雪乃「よ、よくわかったわね。そのお祝いをきちんとしたかったの。それにあなたには感謝しているから」
結衣「や、やだなー感謝されるようなことあたししてないよ……。何もしてない……」
雪乃「それでも私は感謝してる…それにこうしたお祝いは本人が何かをしたから行われるものではないでしょう。純粋に私がそうしたいのよ」
結衣「う、うん……」
なんでしょう……?話が微妙に噛み合ってない気がしますが。
雪乃「だから……その」
結衣「それ以上聞きたくないかも……」
八幡「由比ヶ浜……お前なんか勘違いしてないか?」
結衣「へ……?」
~そして~
結衣「じゃあ2人は別に付き合ったりとかしてないの?」
おそらく私がバイトに行った後に2人でいるところを由比ヶ浜さんは見たのでしょう。
八幡「そんなわけねーだろ……」
雪乃「由比ヶ浜さん、私でも怒ることくらいあるのよ?」
八幡「お前は年中怒ってるだろ」
確かにしょっちゅう怒っているイメージですね。
結衣「な、なんだ勘違いか~」
由比ヶ浜さんはほっと溜め息をつく。……やはり由比ヶ浜さんは比企谷君に好意を寄せているようですね。
雪乃「お祝いの時間がなくなってしまったわね。せっかくケーキを焼いてきたのに」
結衣「なんでケーキ?」
雪乃「なんでって…今日は由比ヶ浜さんの誕生日をお祝いしたくて呼んだのよ。慰労もかねて…あとはその……感謝の証しとでもいうのかしら」
結衣「プレゼントも!?」
雪乃「……別に私だけが用意しているわけではないけれど」
結衣「…え?」
由輝子「私からも用意してますよ。もちろん比企谷君からも」
結衣「あ、あはは……まさかヒッキーがプレゼント用意してるなんておもわなかったなー。こないだからちょっと微妙だったし」
八幡「悪い、誕生日だからってわけじゃねぇんだ」
結衣「え?」
八幡「なんつーか……これでチャラってことにしないか?俺がお前んちの犬を助けたのもそれでお前が俺に気を使ったのも全部なし。そもそも俺が個人を特定して恩を売ったわけじゃないんだから、お前が個人を特定して恩を返す必要がないんだよ。けど気を使ってもらった分は返しておきたい。これで差し引きゼロでチャラっていうことでもうお前は俺を気にかけなくていい。だからこれで終わりだろ」
どうやら比企谷君は由比ヶ浜さんとの関係を終わりにしようとしてたみたいですね。
結衣「なんでそんな風に思うの?同情とか気を使うとかそんな風に思ったこと1度もないよ……」
だったら会ってすぐに謝礼の1つくらいするべきだと思いますが……。
結衣「なんか難しくてわかんなくなっちゃった……。もっと簡単なことだと思ったのに……」
雪乃「別に難しいことはないでしょう。比企谷君は由比ヶ浜さんを助けた覚えはないし由比ヶ浜さんは比企谷君に同情した覚えはない。……始まりからすでに間違ってるのよ」
由輝子「そうですね。だから比企谷君の言う『終わりにする』という選択肢は正しいと思いますよ」
結衣「でもこれで終わりだなんてなんかやだよ……」
むしろお互いのためにも終わりにした方がいいと思いますが……。
由輝子「それが嫌ならまた始めればいいんですよ」
雪乃「そうね……。あなた達は悪くないんだから始めから揉める必要はないのよ。だからちゃんと始めることだって出来るわあなた達は」
この機会に雪ノ下さんも自分が事故をおこした車に乗っていたことを伝えた方がいいと思いますよ?こういうのは後々になって面倒なことになりますからね。
雪乃「私は平塚先生に人員補充完了の報告をしてこないといけないから」
由輝子「……私もバイトがありますので失礼します」
結衣「あっ、うん……。ユッキー、プレゼントありがとね」
由輝子「気にしないでください」
~道中~
由比ヶ浜さんが比企谷君に好意を寄せているとわかった時、胸部に痛みを感じました。……そういえば陽乃さんが比企谷君にスキンシップをしているときもこんなことがありましたね。
…この気持ちが恋愛感情というものでしょうか?
……私は比企谷君のことが好きなんでしょうか?
………わかりません。
はい、今回はここまでです。
次回もよろしくお願いします。
この小説の登場人物である佐野美咲がヒロインの√を現在考え中ですが……。
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見たい
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なくてもいい
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そんなことより原作キャラの√がよか!