では、5話目になります。
今日のバイトは夕方からなので私は部室に顔を出す。
由輝子「おや、雪ノ下さんだけですか?」
雪乃「こんにちは剣さん。ええ、先程由比ヶ浜さんがまだ来ていない比企谷君を呼びに行ったわ」
由輝子「比企谷君なら平塚先生に呼ばれていました。もうすぐ来ると思うのですが……」
八幡「お疲れさん」
由輝子「おはようございます、比企谷君」
雪乃「会わなかったの?」
八幡「誰とだ?」
結衣「あーーっ!いたーーーっ!!」
八幡「な、なんだよ……」
雪乃「あなたがいつまで経っても部室に来ないから捜しに行ってたのよ、由比ヶ浜さんが」
八幡「その倒置法で自分は違うアピールいらないから」
まぁ誰もいなくなるのは問題ですからね。
結衣「わざわざ聞いて歩いたんだからね。そしたらみんな『比企谷?誰?』って言うし超大変だった」
八幡「その追加情報いらねぇ……」
結衣「超大変だったんだからね!」
大事なことなので2回言いましたね由比ヶ浜さん。
八幡「わ、悪かったよ……」
結衣「べ、別にいいんだけどさ、そ、その……だから」
モゴモゴしながら由比ヶ浜さんが言う。
結衣「け、携帯教えて?ほ、ほら!いちいち捜し回るのもおかしいし、どんな関係か聞かれるとかありえないし……」
どんな関係か聞かれるのがあり得ないって比企谷君に失礼な気がしますが……。
八幡「ほれ」
結衣「あたしが打つんだ…っていうか迷わず人に携帯渡せるのがすごいね……」
由比ヶ浜さんはさっさと速い速度で携帯を打ち込みます。
八幡「打つの速いな……」
結衣「普通じゃん?っていうかヒッキーの場合はメールする相手がいないから指が退化してるんじゃないの?」
八幡「失礼な……。俺だって女子とメールくらいするぞ」
結衣「え………」
由比ヶ浜さんが携帯を落とす。最近の携帯は結構脆いから壊れてないといいのですが……。
八幡「おい、それ俺の俺の……」
結衣「あ、ごめん。や、ヒッキーが女子とっていうのが想像できなくて……」
由輝子「私とメールしてますよね?」
結衣「えっ?ユッキー、ヒッキーのアドレス知ってるの?」
由輝子「はい。入部した日に交換しました」
結衣「そうなんだ……。あ、ヒッキーありがと。……はぁ」
由輝子「どうかしましたか?」
結衣「あ、うん……ちょっと変なメールがきてうわってなっただけ」
雪乃「比企谷君、裁判沙汰になりたくなかったら今後そういうメールを送るのはやめなさい」
八幡「内容がセクハラ前提で犯人扱いって……。証拠を出せ、証拠を」
由輝子「そもそも今由比ヶ浜さんとアドレスを交換したばかりですから比企谷君が犯人ではないでしょう」
コンコン
葉山「お邪魔します」
入ってきたのは葉山君でした。
葉山「ちょっとお願いがあってさ。奉仕部ってここでいいんだよね?」
そう言って葉山君は笑う。……どこか薄っぺらいですね。私の苦手なタイプの人間ですね。……そういえば初めて美咲さんと会ったときもこんな感じでしたね。今となっては懐かしい話です。
葉山「こんな時間に悪い。平塚先生に悩み相談するならここって言われたんだけど……。なかなか部活を抜けさせてもらえなくてさ」
雪乃「能書きはいいわ。用があるからここへ来たのでしょう?葉山隼人君」
葉山「…ああ、実はこれのことなんだ」
結衣「あっ……」
由輝子「チェーンメールですね。私のところにもきました」
内容は葉山君のグループの男子3人の名前は戸部君、大和君、大岡君でしたね。それで……。
戸部君はヤンキーでゲームセンターで西高の生徒に暴力を振るい、問題を起こしているというもの。
大和君は3股をしていて最低の人間だというもの。
大岡君はラフプレーで相手のエースに怪我を負わせる卑怯者だというもの。
……なんと言いますか。
葉山「これが出回ってからクラスの雰囲気が悪くてさ、それに友達のことを悪く書かれてたら腹立つし、でも犯人捜ししたいんじゃないんだ。丸く収める方々を知りたい。頼めるかな?」
雪乃「……つまり事態の収拾を図ればいいのね?」
葉山「そうだね」
雪乃「では、犯人を捜すしかないわね」
葉山「え、なんでそうなるんだい?」
由輝子「むしろなんでそうならないんですか?」
雪乃「チェーンメール、あれは人の尊厳を踏みにじる最低の行為よ」
由輝子「こういうのは大元を根絶やしにしないと延々と続くことになりますからね」
雪乃「私は犯人を捜すわ。1言いうだけで止むと思うから。その後どうするかはあなたの裁量に任せる……。それで構わないかしら?」
葉山「……ああ、それでいいよ」
由輝子「っていうかこれ、犯人はこの3人の内の誰かですよね?」
葉山「ちょっと待ってくれ!これはあいつらのことを悪く言うメールなんだぜ?なのに3人が犯人ってのはおかしくないか?」
由輝子「甘いですよ。そんなの自分に疑いがかからないために決まっているじゃないですか」
八幡「だな。もし俺なら誰か1人だけいいことを書いてそいつを犯人に仕立てあげる」
結衣「ヒッキーすこぶる最低だ……」
八幡「知能犯と呼べ」
由輝子「まぁ、丸く収めるのが依頼ならなんとかなりますよ」
葉山「ほ、本当かい?」
由輝子「はい、まずは原因ですが職場見学のグループ分けが3人1組です。この3人はみんな葉山君と組みたくてでも葉山君を入れたら4人になります。だから誰かを蹴落とすためにこのチェーンメールを送った。こんなところでしょう。解決方法ですがこの3人が1つのグループになれば解決するでしょう。グループ分けの時に『俺はお前達と組まない』と言えばそれで終わりです」
由輝子(まぁもしかしたら必要ないかも知れませんが)
葉山「そうしてみるよ。ありがとう、剣さん」
葉山君は去っていきました。
雪乃「……あれでよかったの?こういうのは大元を根絶やしにしないと……」
由輝子「まぁ依頼人が丸く収めてほしいといっていたのでこれでよかったのでしょう。……そろそろバイトの時間ですので私はこれで失礼します」
そう言って私はバイトに向かいました。
職場見学のグループについてはみんなが葉山君のところに行きたいと言っていましたのでそこに決まりました。……やはり必要ありませんでしたね。
~数日後~
時刻は夜の10時。バイトの時間が終わり帰ろうとしたときに美咲さんに声をかけられました。
美咲「ねぇ由輝子ちゃん、このあと飲みに行かない?」
由輝子「……未成年に言う台詞じゃないでしょう」
美咲「まぁまぁ私がリードするから!」
由輝子「デートみたいに言いますね……。それでどこに行くんですか?」
こう言うあたり私は美咲さんに甘いですね……。いつもお世話になっていますからなんでしょうね。
美咲「ここだよ!」
由輝子「『エンジェル・ラダー~天使の階~』?」
確かBARの名前でしたね。
由輝子「ここってドレスコードがいるんじゃないですか?ドレスとか持ってませんよ」
美咲「ふっふっふっ…そんな由輝子ちゃんにはこれ!」
由輝子「これはスーツですね……。なんでこんなの持っているんですか?」
美咲「由輝子ちゃんに着せるためだよ!」
由輝子「………深くは聞かないようにします」
美咲「うんうん、それがいいよ!」
由輝子「明日も学校がありますし長時間は居ませんよ?」
美咲「ありがとー!由輝子ちゃん!!」ダキッ
そう言って美咲さんは私に抱きつく。
由輝子「はやく行きますよ。なるべく早く帰りたいですし」
美咲「じゃ、レッツゴー!!」
~エンジェル・ラダー~
美咲「私はカルーアミルク!」
美咲さんはもう決めていたみたいです。私はどうしましょうか?
美咲「由輝子ちゃん、ここマッカンあるよ!」
由輝子「私はMAXコーヒーでお願いします」
マッカンがあるなら最初から決まってますよね。
私はBARで飲むMAXコーヒーに舌鼓を打っていると……。
ガシャン
とカウンター席の方から聞こえてきたので……。
由輝子「少し様子を見に行ってきます」
美咲「いってらっしゃい!」
美咲さんに断りをいれてカウンター席の方に向かう。
結衣「ちょっと!ゆきのんの家のことなんて今関係ないじゃん!」
音の方向に着くと由比ヶ浜さんが激怒していました。
由輝子「なにやってるんですか?」
結衣「ユッキーなの?」
由比ヶ浜さんは本当に私なのかと聞いてきた。
由輝子「ああ、いつもは髪を結んで眼鏡をかけていますからね。ちゃんと私は剣由輝子ですよ」
雪乃「あなた、どうしてここに?」
由輝子「バイトの先輩に誘われてここに来たんです。それよりこの騒ぎは何があったんですか?あとそこで働いてるのは同じクラスの川崎(かわさき)さんですよね?どうしてこうなったのかを話してもらえませんか?」
私が捲し立てて川崎に説明を求めようとします。
美咲「まぁまぁ由輝子ちゃん落ち着いて。冷静にならないと何も始まらないよ~」
美咲さんが私を宥めてくれました。……於保ついていますが何杯飲んだのでしょうか?
由輝子「………すみません、取り乱しました。……改めてこの騒動の原因を聞いてもいいですか?」
私はどうして川崎さんがここにいるのか、比企谷君の妹さんと川崎さんの弟君から奉仕部に依頼で川崎さんのバイト先をつきとめたことなどを聞きました。
由輝子「……川崎さん」
沙希「確かあんたは剣だったね、あんたもバイトを辞めろと言いたいわけ?」
由輝子「いえ、違います」
結衣「ちょっ……ユッキー!?」
由輝子「由比ヶ浜さんは落ち着いてください。……川崎さん、幾つか質問させてください。川崎さんの弟君は確か中学3年から塾に行き始めたんですよね?」
沙希「……うん」
由輝子「川崎さんは予備校に通ってましたよね?」
沙希「そうだけど……」
由輝子「……最後の質問です。家族を心配させたくないですか?」
沙希「当たり前じゃん!私だって……」
由輝子「わかりました。比企谷君は予備校に通っていますか?」
八幡「あ、ああスカラシップを狙うために……っ!そういうことか……」
由輝子「比企谷君は気付いたようですね………川崎さん、予備校のパンフレットをもう1度よく目を通してください。キーワードは『スカラシップ』ですよ」
沙希「え……う、うん」
由輝子「美咲さん、帰りますよ」
美咲「あ~由輝子ちゃん待って~。あ、これお会計ね」
結衣「ゆ、ユッキー待ってよ!」
由輝子「聞きたいことがあるかもしれませんが解決方々については比企谷君が説明してくれます」
八幡「え、俺が!?」
由輝子「はい、比企谷君は私の言ったことの意味がわかりましたよね?ならあとは説明をお願いします。私は美咲さんを送って帰りますので」
美咲「ありがと~由輝子ちゃん。ごめんね~自己紹介はまたの機会ということで~」
由輝子「美咲さん、飲みすぎです。ほら、自分で歩けそうですか?」
美咲「うう~ん……まだちょっとキツいかも……」
由輝子「わかりました。肩を借りますよ」
美咲「ごめんね~」
由輝子「いつもお世話になっていますしこれくらい問題ないですよ」
私達はBARを出ました。
~職場見学当日~
職場見学が終わり帰ろうかなと思っていると川崎さんが声をかけてきた。
沙希「剣、ちょっといい?」
由輝子「はい、大丈夫ですよ」
沙希「その……ありがと。あんたのおかげで家族に迷惑をかけずにすんだ」
由輝子「私は質問をしただけです。解決まで導いたのは比企谷君ですから、彼にお礼を言ってください」
沙希「うん、それでもあたしを冷静にさせてくれたからそのお礼を」
由輝子「……そうですか、では受け取っておきます」
沙希「うん、じゃ」
そう言って川崎さんは去っていきました。
~そして~
おや、あれは比企谷君と由比ヶ浜さんですね。声をかけましょうか。
八幡「気にして優しくしてんのなら、そんなのはやめろ」
………この言葉から察するに事故の事が比企谷君に伝わったのでしょう。……どう伝わったのか知りませんが。
結衣「や、やー……別にそういうんじゃないんだけどなー。なんてーの?……や、ほんとそんなんじゃなくて」
由比ヶ浜さんはなんというかなんて言ったらいいかわからない、そんな感じでしょうね。
八幡「まぁ、なんだ……ほら」
比企谷君が吃りながらも何かを伝えようとすると。
結衣「……バカ」
由比ヶ浜さんはそう言って涙目で走ってその場を離れて行きました。
由比ヶ浜さんはもしかしたら奉仕部を辞めるかもしれませんね……。
……まぁ考えても仕方がありません。これは比企谷君と由比ヶ浜さんの問題ですから私がとやかく言うことはないですね。
私は彼らの会話を聞かなかったことにして帰路につきました。
はい、ここまでになります。
今回はチェーンメール、川崎編、奉仕部崩壊?まで1辺に書きました。
由輝子の容姿は普段は髪をポニテにして眼鏡をかけています。今回みたいな時は髪をおろし、眼鏡を外しています。
なお、オリキャラの佐野 美咲は陽乃の先輩という設定に変えました。
では、次回もよろしくお願いします。
この小説の登場人物である佐野美咲がヒロインの√を現在考え中ですが……。
-
見たい
-
なくてもいい
-
そんなことより原作キャラの√がよか!