情報好きな少女の青春はまちがっている   作:銅英雄

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4話目になります。どーぞ。


私とテニス

昼休みになると私は2日に1度の割合で特別棟の1階保健室の横でご飯を食べます。

 

今日もご飯が美味しいと舌鼓をうっていると、比企谷君が隣に座ってパンを食べ始めました。……私に気付いてないようですね。

 

由輝子「こんにちは、比企谷君」

 

八幡「うおっ!剣か……。いつの間にここにいたんだよ……?」

 

由輝子「比企谷君より先にここにいましたよ?2日に1度はここで食べています」

 

八幡「俺が気付かないほどとは存在感薄すぎだろ……」

 

由輝子「最高の褒め言葉ですね。それにしてもここは言い場所ですよね」

 

八幡「剣はいつからここの存在を知ったんだ?」

 

由輝子「入学式の日に校内散策をしていたらここを見つけました。そしてここは穴場スポットになると私の勘がそう告げたので誰にも教えずにひっそりとここでご飯を食べることにしました。ここで吹く風は気持ちがいいんです」

 

八幡「そ、そうか……」

 

比企谷君が何故か引き気味ですがまあ気にしないでおきましょう。

 

結衣「あれー?ヒッキーにユッキーじゃん。なんでこんなとこにいんの?」

 

八幡「普段俺はここで飯食ってんだよ」

 

由輝子「私は2日に1度ここで食べています」

 

結衣「なんで?教室で食べればよくない?」

 

由比ヶ浜さんは他人のご飯事情に土足で入り込んできますね……。余り踏み込まれたくない人だっているんですよ?

 

由輝子「それより由比ヶ浜さんはどうしてここにいるんですか?」

 

質問で返しましたが関係ありません。

 

結衣「あたし?あたしはゆきのんとジャン負けでここにいるの。罰ゲームって奴?」

 

八幡「罰ゲーム?俺と話すことが?」

 

うわぁ……陰湿ですね。早く帰ってください。

 

結衣「ち、違うよ!ジュース買いにいくだけだよ!」

 

まぁそんなところでしょうね。……言葉足らずで様々な問題が発生することを由比ヶ浜さんは覚えた方がいいですね。

 

結衣「ゆきのん最初は『自分の糧くらい自分で手に入れるわ。そんな行為でささやかな征服欲を満たして何が嬉しいの?』とか言って渋ってたんだけど」

 

八幡「あいつらしいな……」

 

結衣「うん、けど自信ないんだ?って言ったら乗ってきた」

 

由輝子「彼女らしいですね」

 

結衣「勝った瞬間無言で小さくガッツポーズしてて…もうすっごい可愛かった」

 

些細な勝利でも喜べるのは良いことですけどね。

 

結衣「なんか今までもこの罰ゲームやってたけど初めてこれが楽しいって思えた」

 

八幡「そんな罰ゲームで内輪で盛り上がってたわけだ」

 

結衣「なによ、感じ悪!そういうの嫌いなわけ?」

 

八幡「内輪ノリとか内輪ウケとか嫌いに決まってんだろ。何故なら俺は内輪にいないからなっ!!」

 

結衣「悲しい理由だ!?」

 

理由はともかく私も内輪ノリと内輪ウケが嫌いですね。

 

結衣「……ところでヒッキーは入学式のことって覚えてる?」

 

ふむ?

 

八幡「え?いや俺当日は事故にあってるからな……」

 

結衣「事故……」

 

遂に由比ヶ浜さんは伝えるのでしょうか?自分が事故の関係者であることを……。

 

八幡「ああ、その日は1時間位家を早く出たんだがな」

 

楽しみにしてたんてすかね?因みに私は2時間前には学校について周りを散策してました。そしてここでギリギリまでのんびりとしてました。

 

八幡「途中自転車漕いでたらアホな奴が犬のリードを放してな」

 

情報によるとそのアホな奴が由比ヶ浜さんなわけですが……。

 

八幡「それで犬が車道に飛び出しちまって車にはねられそうになったんだよ」

 

飼い犬の管理はしっかりとしましょう。剣さんとの約束です。

 

八幡「それを俺がもう颯爽とヒーロー的に超カッコよく身を挺して庇ったんだよ」

 

HERO……。エアーマン、シャドーミストが3積みの時代が帰って来ないでしょうか?

 

八幡「アホな奴のおかげで入学早々3週間の連休貰えたが入学ボッチも確定した」

 

由輝子「3週間も経っていたら学校に行くのも気まずいでしょうね」

 

八幡「ああ、いざ登校するとなると自己紹介とかキョドって大変だったぜ……」

 

由輝子「それはお疲れ様です」

 

結衣「あ、アホな奴って……。ひ、ヒッキーはその子のことを覚えてたりしないの?」

 

八幡「痛くてそれどころじゃなかったしな」

 

まぁそうでしょうね。ですが家族の方が教えていても可笑しくはないと思いますが……。

 

八幡「まぁ印象に残ってないから多分地味な子だったんだろ」

 

結衣「地味……。それは確かにあの時スッピンだったし、髪も染めてなかったし、パジャマも超適当だったけど……。あっ、でもパジャマの柄クマさんだったからちょっとアホっぽいかも……」

 

由比ヶ浜さんがぶつぶつと言っていますが心の中に留めておいた方がいいと思います。私に聞こえてますよ?

 

それにしても外に出るときはちゃんと着替えた方がいいと思いますが。

 

???「あれ?由比ヶ浜さんと比企谷君に剣さん?」

 

私達に声をかけてきたのは戸塚彩加(とつかさいか)君。見た目女子ですが立派な男子生徒です。いわゆる1つの男の娘という奴ですね。

 

結衣「あっ彩ちゃんだ。よっす!」

 

そこはやっはろーではないんですね。

 

彩加「よっす。3人はここで何を?」

 

結衣「やー、別に何も?」

 

いやいや、あなたはジュースを買いに行くんじゃなかったのですか?

 

結衣「彩ちゃんは練習?」

 

彩加「うん、うちの部すっごく弱いからお昼も練習しないと……」

 

控えめな戸塚君が弱いとはっきりと言うくらいの弱小チームのテニス部ですか……。

 

結衣「彩ちゃん授業でもテニスやってるのに昼練もしてるんだ。大変だねー」

 

彩加「ううん、好きでやってることだし。あ、授業のテニスといえば……」

 

八幡「ん?」

 

彩加「比企谷君ってテニス上手いよね」

 

八幡「えっ?」

 

結衣「そーなん?」

 

彩加「うん、フォームがすごく綺麗なんだよ」

 

八幡「いやーてれるなー!」

 

はっはっはっと笑う比企谷君。

 

八幡「で、こいつ誰?」

 

由輝子「私達と同じ2年F組の戸塚彩加君です。見た目女子ですが立派な男子です」

 

八幡「えっ?男?マジで!?」

 

彩加「すごいや剣さん。僕のこと一目で男の子ってわかったの?」

 

由輝子「はい、見た目こそ勘違いしがちで名前も女子の名前みたいですが女子にしては体ががっちりとしていますので男子だとわかりました」

 

彩加「そんなこと言われたの初めてだよ!ありがとう剣さん!」

 

由輝子「気にしないでください。それより由比ヶ浜さんは雪ノ下さんのジュースはいいんですか?」

 

結衣「えっ?あーーっ!忘れてた!」

 

由比ヶ浜さんはバタバタと慌ただしく走って行きました。

 

彩加「あのね……比企谷君と剣さんに相談があるんだ」

 

八幡「相談?」

 

由輝子「何でしょうか?」

 

彩加「うん、うちのテニス部のことなんだけどすっごく弱いんだ。人数も少ないし3年が引退したらもっと弱くなると思う」

 

成程、大変ですね……。

 

彩加「それで……比企谷君と剣さんにテニス部に入ってもらえないかな?」

 

確かにテニスは得意な方ですが……。

 

由輝子「私はバイトがありますし、運動部に入る余裕はないですね。比企谷君はどうですか?」

 

八幡「入ってやりたいのは山々だが……」

 

由輝子「まぁ雪ノ下さんが許可をくれるとは思いませんよね」

 

部活の時間になったら雪ノ下さんに聞いてみましょうか。望み薄ですが……。

 

 

 

~そして~

 

それで雪ノ下さんに聞いてみたのですが……。

 

雪乃「無理ね」

 

……という即答をもらいました。

 

八幡「いや、無理ってお前さ……」

 

雪乃「無理なものは無理よ」

 

八幡「要は俺がカンフル剤としてだな……」

 

まぁ考えは悪くありませんが……。

 

雪乃「最もあなたを排除するために部員が一致団結することはあるかもしれないわ。けれどそれが彼らの能力向上に向けられることはないわ。ソースは私」

 

八幡「成程……。え?ソース?」

 

雪乃「私は帰国子女なの。中学の頃に編入したのだけれど学校中の女子は私を排除しようと躍起になったわ。でも誰1人として私に負けないように自分を高めるものはいなかった」

 

その人達は雪ノ下さんに嫉妬してたんでしょうね。

 

雪乃「……あの低能ども」

 

この話は地雷のようですね。これ以上はしない方向でいきましょう。

 

結衣「やっはろー!今日は依頼人を連れて来たよ!!」

 

彩加「あ、比企谷君に剣さん」

 

八幡「よ、よう……」

 

由輝子「こんにちは、戸塚君」

 

結衣「テニス部の彩ちゃん」

 

彩加「2人はどうしてここに?」

 

八幡「どうしてって俺は部活中だけど……」

 

由輝子「今日はバイトがない日ですので私もここで部活をしています。戸塚君はどうしてここに?」

 

結衣「なんてーの?あたしも奉仕部の一員じゃん?だからちょっとは働こうと思ってさ。そしたら彩ちゃんが困ってる風だったから連れてきたの!」

 

ふふんと胸を張る由比ヶ浜さん。

 

結衣「部員として当然のことをしただけだからゆきのんは気にしなくて大丈夫だよ!」

 

由比ヶ浜さんは当たり前のようなことだと言わんばかりに言っていますが……。

 

由輝子「雪ノ下さん、由比ヶ浜さんはいつから部員になったのですか?私の知る限りだと入部届けを出していないような気がするのですが……」

 

雪乃「由比ヶ浜さん、あなたは部員ではないのだけれど」

 

結衣「違うんだっ!?」

 

雪乃「ええ、剣さんの言う通り入部届けをもらってないし、顧問の承認もないから部員ではないわね」

 

結衣「書くよ!入部届けくらい何枚も!仲間に入れてよ!!」

 

そう言って由比ヶ浜さんは『にゅうぶとどけ』とルーズリーフに書きました。……由比ヶ浜さん、入部届けくらい漢字でちゃんとした用紙で書きましょうよ。

 

雪乃「それで、テニス部を強くしてほしいのよね?」

 

彩加「うん、強くしてくれるんだよね……?」

 

雪乃「由比ヶ浜さんがどんな説明をしたのか知らないけれど奉仕部は便利屋ではないわ。あなたの手伝いをして自立を促すだけで強くなるかはあなた次第よ」

 

彩加「そうなんだ……」

 

雪乃「由比ヶ浜さんも無責任なことを言いふらさないでほしいわ」

 

結衣「えっ?でもさ、ゆきのんとヒッキーとユッキーなら何とかできるでしょ?」

 

聞きようによっては挑発に捉えられる発言ですね……。しかも自分は何もしないんですか?

 

雪乃「……あなたも言うようになったわね。由比ヶ浜さん」

 

まぁ無自覚でしょうけど……。

 

雪乃「いいでしょう。依頼を受けるわ。あなたの技術向上を助ければいいのよね?」

 

彩加「は、はい。僕が上手くなればみんな一緒に頑張ってくれると思う」

 

やる気なのはいいことですが戸塚君だけが強くなっても戸塚君を排除しようとする人がでてきては本末転倒であることに気付いているでしょうか?……まぁ気にしていても仕方ありませんね。

 

八幡「具体的にどうやるんだよ?」

 

雪乃「そうね、放課後は部活があるから、昼休みに死ぬまで走って、死ぬまで素振り、死ぬまで練習かしら?」

 

いい笑顔で雪ノ下さんはそう言います。

 

由輝子「戸塚君は昼休みまでに世界樹の葉を3枚持ってくるかザオリクを3回は唱えられる僧侶を連れてきてください」

 

彩加「え、僕死んじゃうの?」

 

八幡「大丈夫だ!戸塚は俺が守る!!」

 

比企谷君と戸塚君の間に何故か赤い薔薇が見えます。同じクラスの海老名さんが大喜びしそうな展開ですね。

 

 

~そして~

 

私達はジャージに着替えて生徒会に許可をとりテニスコートに集合しています。

 

雪乃「では始めましょう」

 

戸塚「はい!」

 

雪乃「まずは筋力の強化ね。筋力を上げれば基礎代謝も上がり、より運動に適した身体となってカロリーも消費しやすくなるの」

 

結衣「あたしも付き合う!」

 

カロリーという言葉に過剰に反応した由比ヶ浜さんが食い気味にトレーニングに参加しました。……私もやりますかね。

 

 

~そして~

 

雪乃「……剣さん、あなた意外と体力があるのね。驚いたわ」

 

私が全く息を切らしていない様子に雪ノ下さんが驚愕の目で見て話しかけてきました。

 

由輝子「バイトで自然と体力がつくんですよね。それに毎朝5㎞走ってますから」

 

雪乃「あなた、なんのバイトをしているの?」

 

由輝子「……禁則事項です☆」

 

雪ノ下さんがバイトについて聞いてきたのでネタに走り誤魔化しました。……雪ノ下さんが引いていますね。

 

由輝子「……とは言っても違法してるわけではありませんので気にするだけ無駄ですよ」

 

雪乃「…そう」

 

そんな会話をしながら私達は練習を続けました。

 

 

~そして~

 

彩加「うわっ!」

 

ズザザと戸塚君が転びました。

 

結衣「彩ちゃん!大丈夫!?」

 

彩加「う、うん大丈夫だから続けて…!」

 

由輝子「オーバーワークは禁物です。やる気はあっても身体を壊しては元も子もありません。休憩にしましょう。……こんなこともあろうかと救急箱を持ってきています」

 

八幡「……準備いいな」

 

由輝子「スポーツに怪我はつきものですから。比企谷君は戸塚君を運んでください」

 

八幡「あ、ああ……」

 

私達は練習を中断して戸塚君の治療に入りました。

 

由輝子「よし…!応急処置ですがしばらく休めば動けるようになるでしょう」

 

雪乃「怪我の手当も完璧なのね」

 

雪ノ下さんが褒めるなんて珍しいですね……。

 

由輝子「バイトの上司に教わりました。色々なことを出来るようにと」

 

結衣「ユッキーの上司って何者!?」

 

由輝子「私の尊敬する人です」

 

美咲さんはなんでもできる人です!

 

???「あっテニスしてんじゃん!」

 

侵略者が現れたでゲソ!……失礼、現れました。

 

クラスのトップカーストの三浦(みうら)さんですね。

 

三浦「あーしもテニスやりたいからこの場所開けてくんない?」

 

やりたいから開けろってかなり横暴ですよね。

 

由輝子「すみませんがここは生徒会に許可をとってからじゃないと使えないんですよ。因みに私達は許可をとっていますので悪しからず」

 

三浦「は?何言ってんの?」

 

ええ…わからないんですか?

 

???「まぁまぁ、喧嘩腰になんなって。みんなでやった方が楽しいしさ」

 

そう言ったのはうちのクラスでトップを張っている王様(笑)の葉山(はやま)君。この学校の女子はほとんど彼のファンで他校の女子にもファンクラブがあるらしいです。この人のどこがいいのかさっぱりわかりませんね。私からしたら材木座君の方がいいと思いますよ?

 

由輝子「戸塚君は真剣に強くなろうとしてるんです。邪魔しないでください」

 

八幡「お、おい剣」

 

我ながらかなり冷たい声を出していると思います。ですが戸塚君のためにも引けないものがあるんです。

 

葉山「うーん……じゃあこうしないか?部外者同士で俺とヒキタニ君が勝負する。勝った方が今後ここを使えるってことでどうかな?」

 

由輝子「は?なんでこちらが妥協しなきゃいけないんですか?葉山君はサッカー部の次期部長ですよね?あなた達が一生懸命練習しているところに私達が割り込んできて私達が『勝負して勝った方が今後グラウンドを使えるってことで』って言ってもし私達が勝ってグラウンドを占拠してサッカー部の練習の妨げになっているのを見ているんですか?あなた達がやっているのはそう言うことなんですよ?あと彼はヒキタニ君じゃなくて比企谷君です。わざと間違えないでください。不愉快です」

 

葉山「わ、悪い……」

 

由輝子「先程も言いましたが自分の立場になってよく考えてください。考えた上での発言ならばこちらにも考えがあります」

 

もしものときのためにこの会話をボイスレコーダーで録音しています。これは敵の弱……情報を得るための必須アイテムです。最悪これを校長先生のところへ持っていきましょう。

 

葉山「……わかった。俺達が悪かった」

 

由輝子「謝るなら戸塚君に謝ってください」

 

葉山「そうだな、戸塚すまなかった。行こう優美子」

 

三浦「え?は、隼人?」

 

葉山君はそう言って取り巻きを連れて去っていきました。

 

八幡「……お前スゲーな。葉山に対して」

 

由輝子「たいしたことじゃありません。これは本来戸塚君がやらなくてはいけないことです。戸塚君は次期部長ですからこれくらいの威厳は持っていなくてはいけません」

 

彩加「うん、そうだね」

 

由輝子「さて、昼休みも残り少ないですし練習を再開しましょう」

 

彩加「うん!」

 

雪乃「ええ」

 

八幡「ああ」

 

結衣「うん!」

 

こうして私達は戸塚君の練習に付き合い、後日、テニス部に部員が増えたそうです。

 

 

 

 

 




今回はここまでです。テニス勝負は書こうか悩み増したが自分にとってこの結果が普通ではないかと思い、テニス勝負はカットしました。

では、次回もよろしくお願いします。

この小説の登場人物である佐野美咲がヒロインの√を現在考え中ですが……。

  • 見たい
  • なくてもいい
  • そんなことより原作キャラの√がよか!

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