情報好きな少女の青春はまちがっている   作:銅英雄

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思ったより早くあげることが出来ました。

3話目になります。どーぞ。


私と小説の原稿

由輝子「今日は学食にしましょうかね」

 

昼休み、私はすぐに教室を出て食堂に向かいました。

 

 

 

食堂に着いて私は日替わり定食を注文して席の確保に向かいました。

 

特に誰かと会うわけもなく1人でのんびりと食べました。

 

 

~放課後~

 

今日はバイトがない日なので比企谷君と一緒に部活に向かっていると部室の前で雪ノ下さんと由比ヶ浜さんがなにやらこそこそしていたので……。

 

由輝子「雪ノ下さん、由比ヶ浜さん、何をしてるんですか?」

 

と私は2人に声をかけました。

 

結衣「ひゃうっ!?」

 

雪乃「っ!」

 

すると何故か2人は悲鳴をあげました。そんなに驚きましたかね……?

 

結衣「な、なんだユッキーとヒッキーか。ってかユッキーも急に声かけないでよ!」

 

雪乃「ええ、いきなりでびっくりしたわ」

 

ユッキーってなんだか比企谷君と漫才コンビを組めそうな渾名ですよね。

 

由輝子「私の気配の遮断は特技の1つですから」

 

私の特技は108個あります。……多分。

 

八幡「すげえな剣……。ぼっちスキルとして羨ましいぞ」

 

雪乃「何が羨ましいのかわからないのだけれど」

 

結衣「なんか悲しいよ……」

 

由輝子「そんなことありませんよ。この技術は情報収集にとても役に立ちますから」

 

実際かなり気配遮断スキルには助けられています。

 

八幡「それよか部室の前で何してたんだ?」

 

結衣「部室に不審人物がいるの」

 

八幡「はあ?」

 

先程までの2人の方が不審人物に当てはまると思いますが……。

 

雪乃「中に入って見てくれないかしら?」

 

八幡「はぁ…」

 

比企谷君が溜め息混じりで部室のドアを開けました。

 

すると強風が吹き、肥満体のトレンチコートを着た男性が仁王立ちをしていました。

 

???「クックック…!まさかこんなところで出会うとは驚いたな……。待ちわびたぞ!比企谷八幡!!」

 

八幡「なんだと!驚いたのに待ちわびた!?」

 

凄まじい矛盾ですね。

 

雪乃「あの不審者はあなたの名前を呼んできたけれど知り合いなの?」

 

八幡「し、知らん。こんな奴は知っていても知らん!」

 

知っていても知らない。関わりあいたくないという意味でしょうね。

 

由輝子「彼は2年C組の材木座義輝君ですよ」

 

結衣「ユッキー、知ってるの?」

 

由輝子「一応この学校の生徒の名前は全員把握しています。中でも彼は少々癖が強いので印象に強く残っています」

 

八幡「お前すげえな」

 

由輝子「これも情報収集の一環ですからね、それで材木座君はどんな用で奉仕部に赴いたのですか?」

 

材木座「……時に八幡よ、奉仕部とはここでいいのだな?」

 

私の存在をなかったことにされてるのでしょうか?

 

雪乃「ええ、ここが奉仕部よ」

 

材木座「ふ、ふむやはりそうか。平塚教諭に助言頂いた通りなら八幡、お主は我の願いを叶える義務があるのだな?」

 

どうやら材木座君は女子と話すのが苦手のようですね。雪ノ下さんとも目を合わせようとしません。

 

雪乃「ねえ、なんなの?剣豪将軍って?」

 

八幡「あれは中二病だ」

 

結衣「ちゅーにびょう?」

 

由輝子「中二病とは中学2年頃に思春期にありがちな思考や言動を指します。後にそれが抜けてから酷く羞恥心などに苦しむことで中二病と呼ばれるようになりました」

 

八幡「というわけで病気ではない」

 

由輝子「ある意味心の病ですかね」

 

雪乃「つまり、彼は自分の作った設定でお芝居をしているのね?」

 

八幡「大体そんな感じだ。あいつは名前が一緒なだけで室町幕府13代将軍足利義輝を下敷きにした設定だ」

 

由輝子「比企谷君を仲間とみなしているのはおそらく比企谷君の八幡という名前を将軍の血筋・清和源氏が信奉していた八幡大菩薩を引っ張ってるんでしょうね」

 

八幡「そんな感じだ。鶴岡八幡宮とか知ってんだろ?」

 

雪乃「驚いた……。2人共詳しいのね」

 

八幡「まあな」

 

由輝子「歴史は好きですので」

 

特に好きなのは戦国時代と弥生時代です。

 

雪乃「大体わかったわ、あなたの依頼はその心の病を治すってことでいいのかしら?」

 

雪ノ下さんは材木座君に詰め寄る。

 

材木座「モ、モハハハ……これはしたり」

 

雪乃「その喋り方をやめてこっちむいて」

 

材木座君はすっかり雪ノ下さんに怯えてますね。

 

八幡「ん?これは……」

 

比企谷君が部室に散らばった紙を見つける。

 

由輝子「これは小説の原稿ですね……」

 

材木座「ご明察痛み入る。いかにもそれはライトノベルの原稿だ」

 

ラノベの原稿ですか……。

 

材木座「とある新人賞に応募しようと思っているが友達がいないので感想が聞けぬ。読んでくれ」

 

雪乃「何かとても悲しいことをさらりと言われた気がするわ」

 

結衣「……」

 

八幡「いろんな意味を含めた目でこっちを見んな」

 

由輝子「投稿サイトに載せてはいかがでしょうか?」

 

材木座「それは無理だ。あいつらは容赦がないからな、酷評されたら多分死ぬぞ我」

 

余程酷くなければ大丈夫だと思いますが……。

 

八幡「でもなぁ…」

 

材木座「ん?」

 

八幡「多分雪ノ下の方が投稿サイトより容赦ないぞ?」

 

まあ最近のサイトは優しめですからね。

 

こうして材木座君が書いてきた小説をそれぞれコピーして持ち帰りました。

 

 

 

~そして~

 

由輝子「ふむ、訂正部分が多めですね。これは朝になりそうです」

 

美咲「由輝子ちゃん、こんばんは!」

 

由輝子「どうしたんですか美咲さん?」

 

美咲さんが遊びに来たようです。

 

美咲「由輝子ちゃんに差し入れ持ってきたよ!」

 

由輝子「ありがとうございます」

 

美咲「それで、由輝子ちゃんは何してるの?」

 

私は美咲さんに依頼のことを説明しました。

 

美咲「クッキーの時といい大変だね由輝子ちゃん……」

 

由輝子「美咲さんの差し入れで気持ちが楽になりました。徹夜になりますが頑張れそうです」

 

美咲「そっか……私はこれからバイトに行くから頑張っってね!ファイトだよっ!」

 

美咲さんの『ファイトだよっ!』頂きました。2徹でも3徹でも頑張れちゃいます!

 

 

~翌日~

 

朝、学校につくと比企谷君と由比ヶ浜さんを見かけたので挨拶しましょう。

 

由輝子「おはようございます。比企谷君に由比ヶ浜さん」

 

八幡「ああ、おはようさん……」

 

結衣「おはよう!なんかヒッキー元気なくない?どしたー?」

 

八幡「いやいやいや、あんなの読んだら元気なわけないだろ。っつーかむしろなんであれ読んでお前らは元気なんだよ」

 

ああ(察し)……御愁傷様です。私は平気ですけど。

 

結衣「だ、だよねー!あたしもマジ眠いから……」

 

由輝子「私は1徹くらいなら問題ありません」

 

八幡「由比ヶ浜、絶対読んでないだろ……」

 

まぁ由比ヶ浜さんは活字とか読むようには見えませんよね……。

 

 

~放課後~

 

八幡「お疲れさん」

 

由輝子「おはようございます」

 

私と比企谷君は部室に入り雪ノ下さんに挨拶をした。

 

雪乃「………」

 

雪ノ下さんは寝ているようですね。

 

雪乃「!!……驚いたあなたの顔を見ると1発で眠気が吹き飛ぶのね」

 

起きるなり比企谷君の顔を見てそう言いました。

 

由輝子「その様子だと苦戦したようですね」

 

雪乃「ええ、徹夜なんて久し振りだわ」

 

由輝子「雪ノ下さんはライトノベルを読んだことってありましたっけ?」

 

雪乃「いえ、この手のものは読んだことないしあまり好きになれそうもないわ」

 

由輝子「ラノベは無理な人は無理ですからね」

 

結衣「あー……あたしも絶対無理」

 

八幡「お前は読んでないだろ……。今すぐ読め」

 

比企谷君がそう言うと由比ヶ浜さんは不満顔でパラパラと原稿を流し読みしていた。

 

材木座「頼もう!」

 

ドン!と材木座君が入室してきました。

 

材木座「さて、では感想を聞かせてもらうとするか!」

 

材木座君は自信満々と言った様子で感想を求めています。

 

雪乃「ごめんなさい。私にはこういうのはよくわからないのだけれど……」

 

材木座「構わぬ。凡俗の意見も聞きたいところだったのでな。好きに言ってくれたまへ」

 

そう……と雪ノ下さんは一呼吸おいて、

 

雪乃「つまらなかった。読むのが苦痛ですらあったわ」

 

材木座「げふぅっ!」

 

いきなりの辛辣な言葉から材木座君は奇声をあげました

 

材木座「ふ、ふむ……参考までにどの辺がつまらなかったのかご教授願えるかな?」

 

雪乃「まずは文法が滅茶苦茶ね。何故いつも倒置法なの?『てにをは』の使い方を知ってる?」

 

材木座「ぬぐぅ…!それは平易な文体で読者により親しみを……」

 

雪乃「それは最低限まともな日本語が書けるようになってからではないの?それにルビだけど誤用が多いわ。『幻紅刃閃(ブラッディナイトメアスラッシャー)』のナイトメアはどこから来たの?」

 

材木座「げふぅっ!う、うう……違うのだ!最近の異能バトルではルビの振り方に特徴を……」

 

雪乃「ここでヒロインが服を脱いだのは何故?必要性が皆無よね。白けるわ」

 

材木座「ひぎぃ!そう言う要素がないと……」

 

雪乃「それと完結してない物語を人に読ませないでくれるかしら。文才の前に常識を身につけた方がいいわね」

 

材木座「ぴゃあっ!」

 

雪ノ下さんの容赦ない口撃によりドサリと材木座君が倒れました。

 

八幡「……その辺でいいんじゃないか?あんまり言ってもあれだし」

 

雪乃「まだ言い足りないけどまあいいわ。じゃあ次は由比ヶ浜さんかしら?」

 

結衣「え、え~と……難しい漢字知ってるね!」

 

材木座「ひでぶっ!」

 

作家にとってその台詞は禁句ですね。他にいいところがないと言ってるのと一緒です。

 

結衣「じ、じゃあヒッキーどうぞっ!」

 

比企谷君は材木座君の肩をポンと叩き……。

 

八幡「で、あれって何のパクり?」

 

と止めを刺して材木座君は転がって……。

 

材木座「ぶふっ…!ぶ、ぶひ…ぶひひ…」

 

と倒れてしまいました。

 

雪乃「あなた、容赦ないわね…」

 

結衣「ちょっと……フォローした方がいいんじゃない?」

 

八幡「じゃあ次は剣だな」

 

由輝子「はい」

 

私は材木座君のもとに行き感想を述べます。

 

由輝子「言いたいことの9割は雪ノ下さんと比企谷君が言いましたので、私からは余り言うことがありませんがとりあえず……。文法も滅茶苦茶、パクりが目立ち、先が読みやすすぎて楽しみがありません。ですがこの原稿には材木座君の『魂』を感じます。なのでまずはこれを見てください」

 

私はもう1つコピーした原稿を材木座君に渡します。

 

材木座「こ、これは…?」

 

由輝子「それは私なりに文法を直したものです。続きを書くならそれを参考に書いてください。私でよければまた読みますよ?」

 

材木座「…………」

 

材木座君は俯き、3人もポカンと固まっています。はて

 

八幡「剣、それを昨日だけでやったのか?」

 

いち早く復活した比企谷君に問われたので……。

 

由輝子「はい」

 

私は返事をしました。

 

材木座「また、読んでくれるか?」

 

しばらくして材木座君は立ち上がりそう言いました。

 

八幡「おまえ……」

 

由輝子「まだやる気のようですね」

 

材木座「無論だ。確かに酷評もされたがアドバイスもしっかりもらえた。……嬉しかったのだ。自分が好きで書いたものを誰かに読んでもらって感想を言ってもらうというのはいいものだな。この思いに何と名前をつければいいのか判然とせぬのだが読んでもらえるとやっぱり嬉しいよ……!」

 

そう言って材木座君は笑いました。

 

どうやら材木座君は中二病だけではなくて立派な作家病にかかっているようですね。

 

書きたいことがあるから書きたい。そしてそれを読んで人の心を動かせたならそれは素晴らしいことだと思います。それが作家病というもの。私が感じたのはこういうことだったのですね。

 

八幡「ああ、読むよ」

 

その言葉に何か思ったのか比企谷君も立派な材木座君の小説の読者になったようですね。

 

由輝子「また持ってきてくれたら私達で読みますよ」

 

こうして材木座君の依頼は終了しました。

 

 

~帰り道~

 

材木座「少しいいか?」

 

由輝子「はい?」

 

材木座君が声をかけてきました。

 

材木座「アドバイス感謝する。最後に名前を教えてくれぬか?」

 

由輝子「剣由輝子です。覚えておいてくださいね?」

 

材木座「無論だ。では剣嬢、またな!」

 

由輝子「はい、また」

 

私と目を見て話せるようになってますね。…………ある人は言いました。

 

『人は予想を越えてくる』

 

女子とまともに話せなかった材木座君が私限定とはいえちゃんと話せていました。

 

まだまだわからないことが多いですね。また明日からも新しい情報を求めて頑張りましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、今回はここまでになります。

次回もよろしくお願いします。

この小説の登場人物である佐野美咲がヒロインの√を現在考え中ですが……。

  • 見たい
  • なくてもいい
  • そんなことより原作キャラの√がよか!

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