シルヴァリオシリーズ短編集   作:ライアン

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皆、ナギサちゃんのかわゆい水着タペストリーは当然予約したよな!
作者は当然予約したぜ!きっとあの輝く笑顔の向こうにはアッシュがいるんだろうなと想うとそれだけで昇天しそうになりますね!


ナギサ・奏・アマツの一番長い日(下)

「お、お待たせアッシュ。えっと……ど、どうかな?」

 

せっかくのデートだからそれっぽく待ち合わせしよう、でも一分一秒でも長く君と一緒にいたい等と言われて家の前で待ち合わせする事となり、アヤにも手伝ってもらいめかしこんだ服装でアッシュへと挨拶する。そうするとアッシュはこちらのほうをじっと見つめて来るものだから

 

「あ、あの……そんなにまじまじと見つめられると恥ずかしいよ」

 

「ああ、ごめんよナギサ。きっと今頃第二太陽は大騒ぎになっているんじゃないかって思ってね」

 

「?」

 

第二太陽が一体どうかしたのだろうかと私が訝しがると

 

「だってこんな美しい女神様がこっちの世界に下りてきてしまっているんだ。きっと今頃大慌てで君の事を探しているんじゃないかな?とっても綺麗だよナギサ、今から君と一緒にデートできると思うと俺の方があまりの心地よさに向こうの世界へ旅立ってしまうかもしれないよ」

 

そんな事を笑顔で告げてくるものだから私はしどろもどろになってしまうのであった。本当にどうしたんだろう、今日のアッシュは。すごく情熱的でキザなことを言ってくる。でもそれが凄く様になっていてカッコいい。整った身なりもあってそれこそ、どこかの王子様だと言われても皆信じてしまうのではないだろうか。

 

「それじゃあ行こうか」

 

「う、うん……」

 

優しく差し出された手に対して私もおずおずと手を出すとアッシュの暖かくて大きな手が私の手を包む。そうして私たちは手を握り合いながらデートを開始したのであった。

 

そこから先は私にとっては夢のような時間だった。アッシュはとても優しく紳士的にエスコートしてくれて、情熱的な言葉をいつも囁いてくれた。本当にその様はまるで昨日読んだ作品の王子様(・・・・・・・・・・・・)のようで、私も女の子だから本当にお姫様のような気分で恥ずかしいけどそれでも隠し切れない喜びも同時に感じながら最愛の人とのデートを満喫した。デート自体は途中で終わってしまう事になったけど、それでもその時もアッシュは私の事を優先してくれて、あまりに軍人さんが可哀想だから助け舟を出したけど、それでもそんなアッシュの気持ちが嬉しくて、確かに私は幸せだったのだ………今、こうして真実を知るまでは。

 

 

 

アッシュを今の状態にしたのは私の昨日の願いが原因。そんな事を双子に教えられた瞬間に急激に今日の出来事が熱を失って、色あせていく。まるで王子様のようだと浮かれていた自分が救いようも無い馬鹿に思えてくる、今日のアッシュはまるでどこかの王子様のよう?そんなの当然だ、だって他ならない私がそんな風に願ってアッシュを歪めてしまったのだから……それを知った途端に私は堪らずに懺悔の言葉を吐き出していた。大切で大切で本当に大切な愛する人を歪めてしまった自分がどうしようもない女に思えてしょうがない。マリアさんとアルバートさんは気遣ってくれたけど、それでも罪悪感は消えなくて……自分がどうしようもなく駄目で嫌な女に思えてきて涙が零れてきてしまう。そうして言葉を吐き出すと不意に涙が誰かの手によって拭われて

 

「君以上に素敵な人なんているものか!重荷だなんてそんな事あるわけが無い、前にも言っただろう。俺は馬鹿で単純な男だからさ、君のためならば無敵のヒーローになれるって。逆に言えば、君がいないと俺は駄目なんだよ。君が、ミステルが、アヤが、ヘリオスが、みんなが俺の傍に居てくれて支えてくれるから俺は頑張れるんだ。だからそんな悲しそうな顔をしないでくれ、俺はナギサの笑顔が大好きだからさ」

 

私の大好きな人が何時もと同じ真剣なだけど海のように包み込む優しい笑みを浮かべて私にそんな事を語りかけていた。それだけ告げるとまたさっきまでと同じように戻ってしまったけど、それだけで私には十分だった。ああ、どうして私は物語の中の王子様になんか憧れて、私もアッシュからあんな風に言われたいだなんて想ってしまったんだろう。私の理想の王子様は物語の中になんかじゃなくて、こうしてずっと現実に傍に居てくれたのに。

真面目でどこか不器用で、それでもとっても優しくて、泣き虫な私が泣き出すといつも必ず駆けつけてその涙を拭ってくれるとても素敵な男の子がずっと傍に居てくれたのに……。

 

(うん、大丈夫。もう不安になんてなったりしない)

 

大切な男の子を愛おしく見つめながら私はそんな決心を固める。そうしてアッシュも明日には元通りになるという説明を受けて安堵して、全てが丸く収まろうとした時にそいつは現れた。

 

「待て、我が片翼の名誉のために告げねばならぬことがある」

 

とそんな事を告げながら。私はついヘリオスに対して邪険に当ってしまう。

ーーーどうしてアッシュがこんな風に変えられるのを防げなかったのか。アッシュをこういうのから守るのがお前の役目だったんじゃないのか?

ーーーどうしてアッシュが今の状態になったのは第二太陽の影響を受けたせいで、普段のアッシュとは別人のような状態になっていると早く教えてくれなかったのか?

ーーーそれとも普段アレだけ我が半身だの比翼だのと呼んでいながら、アッシュが普段と違うという事に気づいてなかったのか

お前になら(・・・・・)なんとか出来たんじゃないのかと、八つ当たりだと分かりながらもどうしようもない思いをヘリオスに対して抱いてしまって。だがヘリオスはそんな私など意に介さないように続けていく。……その傍らで相変わらずアッシュが私に対して情熱的な言葉を囁いてきてくれているがもうさっきまでの嬉しさはなく、代わりに心の中に沸きあがるのはどうしようもない申し訳なさだ。

 

(ごめんね、アッシュ。私が馬鹿な事を願ったばかりに……)

 

アッシュは許してくれたけど、それだけに罪悪感は余計に消えない。あんなにも大切に私たちの事を想ってくれている男の子の想いをどうして私は疑うような事をしてしまったのかと、本当に穴があったら入りたい気分だ。そんな事を考えながらヘリオスとマリアさんの会話を聞いているととんでもない爆弾が投げ込まれた。

 

「そこの二名はわからんが我が片翼が今日告げた言葉の数々、断じて歪められたりしたものでも、ましてや別人が発したものなどではない。アレらの思いの数々、全てが紛れもない我が片翼の抱く真実の思いだ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?と思わずそんな声が漏れる。いや、ちょっと待って欲しい。今日アッシュが私やアヤにミステルに対して紡いだ情熱的な言葉は私が昨日読んだ物語の王子様のようにアッシュに情熱的に告白されたいなどと望んで、そのせいでアッシュが普段から歪まされたためではなかったのだろうか?と困惑する私を他所にアッシュは私に対して熱く語りかけてくる

 

「ああ、ナギサ、俺は悲しいよ。俺の君への想いがそんな第二太陽如きに歪まされたと想われて信じられていない事がじゃない、そんな風に君を信じさせられていない事が、俺がどれだけ君に対して伝えるべき言葉を伝えて来なかったかを実感させられるからだよ」

 

アッシュが私に伝えていた今日の言葉は全て紛れもない本心なのだとアッシュとヘリオスが同時に私に対して伝えてくる。そんな事を伝えられて顔がどんどん熱くほてっていく私を他所にアッシュとヘリオスはなおも言葉を重ねていく。曰くどんな状態になろうともアッシュは私に対する強い愛を抱いていた。曰くそんなアッシュの愛が第二太陽如きに歪まされるなど有り得ない。曰くアッシュが私を重荷に想うことなどそれこそ有り得ないなどと普段隠されていたらしいアッシュの想いを赤裸々に語っていく。私はというとあまりの羞恥にヘリオスを止めたい、でもアッシュが私をどう思っているか聞いてみたいという二律背反した感情が胸の中に渦巻いていて、その場から動けずただただ顔を真っ赤にするしかないのであった。

そうしてヘリオスが粗方語り終えると、その場に居たみんなのどこか生暖かい視線が突き刺さってきて……みんなの祝福の言葉に私はただただちぢこまるしかないのであった。

 

ごめんなさい、私が馬鹿でした……そこまで情熱的に私の事を想ってくれていたアッシュを疑うような事をした私は本当に救いようの無い大馬鹿でした、だから大和(かみ)様許してくださいお願いします………あ、そもそも大和様が今この状況になった原因だった。と私はあまりの羞恥にそんな現実逃避めいたことを考えだしていた時に、今私がこんな目にあっている元凶(ヘリオス)がどこまでも天然な表情で

 

「何か問題あっただろうか?」

 

等と呟くものだから、私は思わず涙目で

 

「やっぱりお前なんか、大嫌いだ!!!!」

 

と微笑ましい顔でこちらを見つめる人達を他所に叫ぶのだった……うう、明日からどんな顔して会えばいいんだろう。

 

 

「なるほど……今朝のアッシュ様のご様子はそのような事情があったのですね」

 

「うん……ごめんねアヤ、私のせいでぬか喜びさせちゃって。それとミステルも」

 

あの後みんなの生温かい視線を浴びながらセントラルを後にした私たちは一応デートの続きを行なった後(相変わらずアッシュはとても情熱的な言葉を送ってきて私はずっと顔を真っ赤にするばかりだった)、名残惜しそうにしながら師匠との夕方の稽古に行くアッシュと別れて家へと戻り、事の顛末を二人へと話していた。

 

「いやいや、ナギサちゃんはどう考えたって悪くないでしょ。悪いのはシスターとしては出来れば言いたくないことだけど、大和様でしょ」

 

はぁとため息をつきながらミステルがそんな事を呟く。

 

「ふふふ、そうですね。むしろ私としては役得も良い所でしたからナギサ様に感謝したい位です。もちろんいつものアッシュ様も素敵ですが、今日のアッシュ様はアッシュ様で……はふぅ」

 

恍惚とした表情を浮かべながらアヤがそんな風に答える。そんな二人の様子に私は本当にいい友達を持ったと喜びと同時に申し訳なさを抱きながら

 

「そういってくれるとありがたいけど、結局私だけがアッシュとデートさせて貰っちゃったし……」

 

俯きながらそう告げると二人はきょとんとした顔を浮かべた後に微笑んで

 

「ああ、もう本当にナギサちゃんは良い子ね~~~~~」

 

うりうり~などと言いながらミステルが私の頭を撫でながらそんな事を言う

 

「ええ、本当に素晴らしい主にして友人を持ったと想います。なんといっても自分だけアッシュ様に愛されたいなどと想わずに、皆で幸せに成りたいと願ってくれたのですから」

 

アヤはアヤでそんな私を微笑ましいものを見るかのような顔をしながらそんな事を呟いた。

 

「気にする事は無いのよ、本当に。やっぱりアッシュ君にとって誰が一番かって言ったらきっとナギサちゃんだろうしね」

 

「はい、私もそこに異論はございません。そしてたとえ側室であろうと一向に構いません」

 

そんな話をしたものだから改めて私は二人に対して再確認を行なう

 

「二人とも最初に言った通り今日の事は……」

 

「はい、心得ております。アッシュ様が告白された内容は全て我々の胸の内に留め置くという事ですね」

 

「まあ本人が覚えていないだろうに、昨日こんな事をあなたは言ったんだから責任とってなんていうのはちょっとね」

 

「ええ、そのようなアッシュ様の意志無き婚姻には何の意味がございません。今朝アッシュ様が言われていたことは例え半ば酔ったような状態であっても紛れもない本心であり、お二方の同意も頂くことが出来た。私にとってはそれで十分すぎますから」

 

後はアッシュ様が勇気を出せるように周期を見計らって三人でアタックをかけさえすればうふふふなどと言うアヤに私もミステルも引きつった笑いを浮かべて、そうして帰ってきたアッシュからの情熱的な言葉にまた頬を熱くさせられ、さっきまでの約束を興奮のあまりにどっかにやりそうになったアヤをミステルと二人で抑えて、私にとって長かった一日は終りを告げるのであった……

 

 

 

 

 




第二太陽「良かれと思って」
アオイ「死ね」
ヴェンデッタ「やっぱり引き摺り下ろしたほうがいいんじゃないかしら」
ナギサ「うう……確かに嬉しくなかったって言ったら嘘になるけど……嘘になるけど」


多分今回の話で終始一番得をしたのはアヤさんではないかという気がします。

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