タケシがイシツブテを使わなかった理由ですが、単純にイシツブテでは敵わないと判断したからです。
恐ろしい体験をした。
おつきみ山の洞窟内にパラスがいて、喧嘩を売られたから買ったんだよね。
手こずることなく「つつく」で圧倒したんだが、その後よ。
突然、パラスが光った。
フラッシュとかじゃない、もっとほわほわした輝きだった。
光が収まると あら不思議。
パラセクト、 降 臨 。
アイエェェェェェェ?!!!
バトル中に進化っておまえ。タケシのイワーク程じゃないが、凄まじい強さだった。
攻撃受けても怯まないんだもん。強くなりすぎだろ。
「どくばり」ぶち込んだり「つつく」で四倍弱点狙ったりしたが、近接攻撃すると特性「ほうし」が舞ってめっちゃ戦いにくい。テンパってる間に「キノコのほうし」が直撃。しまった、と思う間もなく夢の中へ意識がフェードアウト。
…痛みを感じて目を覚ますと、パラセクトに「きゅうけつ」されていた。
鳥肌。絶叫したね。
かなり体力を奪われてしまったので、作戦変更。三十六計逃げるが勝ちだ。
当然追いかけて来る寄生茸野郎。鋏を鳴らしながらガサガサ迫ってくるその姿は、昨今のモンスターパニック映画顔負けの恐怖だった。どこのシザーマンだよこいつ!
洞窟を滅茶苦茶に走り回りつつ後方に「どくびし」を撒きまくるが、構わず追ってくるパラセクト。いや毒だぞ少しは躊躇しろよ。
毒ダメージが蓄積して動きが鈍りはじめたら方向転換、勝負に出る。
一転攻勢! 無我夢中で「つつく」しまくった。接触技は特性「ほうし」の危険があったんだが、そんなの考える余裕なかったんだよ!
気が付けば、パラセクトはひっくり返って足をピクピクさせていた。
俺の勝ち。ああああ恐かった。
いやほんとキツカッタ。
なにがキツイって「キノコのほうし」が…眠らせる技がマジキッツイ。
離れたら「キノコのほうし」、近づいたら特性の「ほうし」。なんなんだよこのキノコ蟹。どんだけ菌まみれなんだよかもすぞ。
非接触技欲しい。タイプ相性的には良好なはずなのに、フィジカルと技の有無でこんなに違うのか。パラスの時は楽勝ムードだったのになぁ。これが、最終進化系の恐ろしさか。
まいったねまったく。てか、ここっておつきみ山のどの辺だ。やべ、迷っちゃった。
洞窟を歩く。襲ってくるポケモンは、だいたいがズバットだ。
「きゅうけつ」しようと下降して来た所を「つのでつく」で迎え撃っているんだが、ちょい違和感。
「つのでつく」、威力上がってね? 検証のしようが無いから、感覚的な話だが。
「つのでつく」をやろうとしたら、得体の知れない力にほんのり後押しされてる気がする。ほんのり、ね。劇的な変化って訳でもない。
威力が上がる技は、「つのでつく」と滅多に使わない「みだれづき」だけだ。他は変わりなし。どういう作用が働いてんだ? 原因は? おつきみ山に、ノーマルタイプ技を強化させるフィールドギミックなんざ無かったよなぁ。
うーん、でもピッピの住処だしな、この山。あの不思議ポケモンの謎に満ちた生態を考えたら、そんな事があり得てもおかしくないっていうか。
…威力が上がる、ね。技の威力が上がる条件って、何だっけ。
特性、積み技、天候、持ち物、ドーピングアイテム。
持ち物???
まさか、おい。首に巻き付けられた手拭いを見る。タケシからの貰い物だ。
これって、シルクのスカーフだったの?
いやいやマジっすか? 嘘だろ、非売品だぞ。
でも、それなら納得がいく。「つのでつく」と「みだれづき」のみ、気持ち威力が上がっている。この二つはノーマルタイプだ。
…ええぇ、じゃあほんとにシルクのスカーフかよ。貴重品じゃん。なんでタケシがそんなモノ持ってたんだ。あ、タケシもトレーナーだから、ポケモン用の持ち物を所持してても変じゃないか。
完全に、手拭いだと思ってた。タケシからシルクのスカーフって、イメージしづらいだろ。専門が岩タイプだもんな。
聖人かよあいつ。今度会ったら礼をしなきゃ。
技マシンが見つからない今、「つのでつく」が最高威力の俺には嬉しすぎる代物だ。
もう少し鍛えたら「どくづき」を獲得するだろうが、同じ毒タイプなどを相手にする時は「つのでつく」が一番の有効打となる。こりゃニビシティに足を向けて寝れねえな。
頭の中で感謝。口に出したら、鳴き声に刺激されたズバットが攻撃してきて鬱陶しいからだ。
洞窟を抜けると、おつきみ山の外壁に出た。ちらほら植物が生えていたので、腹も減ったし食べることにする。
相変わらずただの草は美味くない。食えるだけマシだが。
腹が膨れたので休憩。うとうとしていると、人間の話し声が聞こえた。
眠気が吹っ飛んだ。聞き耳を立てる。ニドランの聴力を舐めんなよ。
声は、山の麓から聞こえてくるようだ。それなりに人数もいるな。
話してる内容がどうもきな臭い。月の石を探せ、化石を探せ、邪魔する奴には容赦するな、など。
これは、あれだな。きやがったかロケット団。
どうすっかな。
ロケット団がおつきみ山で活動開始したってこたぁ、近いうちに『主人公』さんが現れて成敗するだろう。レッドかサトシかは分らんが。
なら悪者退治は彼らに任せればいいんだが、俺の目的は月の石。
正義の味方は遅れてやってくるもんだし、手をこまねいていれば連中に先を越されてしまう。あいつらも狙っているみたいだしな。
というか、そもそも『主人公』なんて存在が本当にいるのか。
どうもこの世界、ゲームともアニメとも違う気がする。どちらの知識も、当てにしすぎると痛い目をみるのだ。主人公が現れないって可能性も無きにしも非ず。
むむむ、でも俺一匹で戦ってもな。あいつら絶対集団でボコってくるタイプだろ。勝てんて。つーか捕獲されそうだ。
タケシ譲りの手持ちアピールスカーフなんて、善良なトレーナーにしか効果ないだろうしな。悪の組織が盗みを働くのに、他人のものだからって遠慮などせんだろう。スカーフ諸共手に入れてラッキーてなもんだ。
悩んでも仕方ないか。あいつらより先に月の石を見つけよう。
月の石をみつけたらどうするかだが、その時に考える。考えてみりゃあ、俺は正義の味方って訳でもない。
まあでも、見つかってしまったら戦うしかないか。あのパラセクトの恐怖に比べたら、マフィアの下っ端なんぞ可愛いもんだぜ。
ところで、月の石ってどんな見た目だっけ?
面倒くさがりな鯖風味は、すべての感想に返事をすることはないでしょう。それでも有難く読ませていただいてます。
ポケモンの思い出
小さいころは技PPの存在を理解していませんでした。「わるあがき」しかしなくなった手持ちに失望した思い出。勝手なもんです