ポケットモンスター紫   作:鯖風味鯵

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技22

 

 イワヤマトンネル付近に屯するゴース、ゴースト共を相手に実戦訓練することで晴れて「シャドークロー」を習得。

 

 頭痛に悩まされてきた「ねんりき」も、文字通り血反吐をぶちまけながらの練習を繰り返すことで熟練度を上昇させた。

 

 各技の威力、精度もグッと上がった。当然、俺自身の総合的な強さも大幅にレベルアップだ。

 

 それもこれも、ポケモンハウスの面々が全面協力してくれたおかげである。

 

 ブリーダーちゃんはしかめっ面しながらも俺の栄養管理に気をつかってくれた。

 

 保護ポケモン達は、トレーニングの付き添いなどを頼んでもないのにやってくれた。まあこれは喧しかっただけかもしれんけど。

 

 ストライクの兄ちゃんなんかは「シャドークロー」習得に一役買ってくれたんだぜ。

 

 自慢の鎌を使った戦い方の経験をもとに、どうやったら「シャドークロー」を覚えるのか一緒に考えてくれたのだ。マジで恩人ならぬ恩ポケ。

 

 ストライクよぉ。あんた、バトルはもうやりたくないっつってたけど、なんだかんだ未練があるんじゃねえのか? 

 

 

 他には、何の用事か分からんけど暫く遠出してたポケモンレンジャーの兄貴がハウスに帰ってきたりしたので、そいつの相棒ポケとバトルしてみたり。結果は俺の勝ちだが、不戦勝みたいなもんだ。レンジャーの相棒であるリーフィアは、毒タイプのポケモンが大の苦手だったのである。腫れ物みたいな扱いされるのって、けっこう傷つきますよね。

 

 

 

 で、だ。ほぼ全てが順風満帆にいって、さらに自身も強くなったことに調子乗ってたのがいかんかったのかね。ある日、事件が起きたのよ。

 

 ポケモンハウスが襲撃された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやはや、やられたね。

 

 襲撃者共は誰なのかっつったら、そこはもうご想像通りロケット団よ。マジで許せねえ。

 

 みんなが「さあ寝よう」と就寝の準備をしている最中に押し入って、ポケモン達とフジ老人をかっさらっていきやがったのだ。突然の犯行すぎてどうしようもなかったね。

 ハウスのポケモン達、無事にしてるかな。ブリーダーちゃんやレンジャー君は今頃どうしているだろうか。

 

 あ? 俺? 俺は襲撃時なにしてたのかって?

 

 まあ、はい。寝てましたよ。正確には眠らされた。そんで捕獲された。現在、絶賛モンスターボール生活を満喫中。

 

 いやいや言い訳くらい聞いてくださいよ。すっげぇ手際が良かったんだぜあいつら。

 

 まず、奴らの手持ちであろう、ドガース軍団がダイハードの如く窓をぶち破って「どくガス」「えんまく」で目くらまし。ズバットの「ちょうおんぱ」で混乱され、とどめにスリープの「さいみんじゅつ」が炸裂ときたもんだ。奇襲であんなんされたらどうしようもないって。

 

 

 結果、眠っている間に捕獲されちゃったみたいだ。なんという屈辱だろうか。真正面から戦って捕獲されたのならまだしも、不意打ちからの搦め手でついでのごとくゲットされるとか。

 

 無理矢理ボールから飛び出してやろうともしたが、錠前ってーのかギプスみたいなのが取り付けられているらしく、ボールが震えるだけで何の効果もない。連中の話し声は聞こえてくるので、それでだいたいの事情は把握できはしたのだが。

 

 いや~やっちまった。

 

 原作ゲームではフジの方からロケット団に絡んでいたらしいから、じいさんが変な気を起こさないか俺なりに神経尖らせてはいたんだがなあ。まさか向こうから問答無用で襲ってくるとはね。

 

 ちなみにボールの中の環境についてのコメントなんだが。

 

 うん、まあ、なんだ。ぶっちゃけ悪くはないよ。寧ろ良いよ。とても良い。

 

 ある程度自由に動ける広さの球状な空間なんだが、別段圧迫感なんかも感じないしストレスもない。外の光景もぼんやりとだが見える。

 

 気味が悪いくらい居心地がいいってのが感想だな。

 

 しかしあれだな、この程よい密着感。俺に何かを思い出させる。

 

 そうだ。

 

 とお~い昔に、まだ俺が鼻たれだったころに、今や顔すら思い出せない母ちゃんに抱っこされてるのを思い出しちゃった。なんでだろうなあ。

 すまんちょっと泣いた。この感情がロケット団によってもたらされたのだという事実に気づいて再びホロリ。最悪だよ。

 

 そういやアニメのピカチュウなんかは、ボールに入るのを嫌がってたよな。何故だ? こんなに居心地いいのに。変わり者だぜアイツは。

 

   

 

 

 話を戻す。現実に目を向けよう。

 

 トレーニング後で疲れてたところに強制催眠を食らったのがいけなかったのか、かなり長いこと眠っていたらしい。外から聞こえる会話内容から察するに、三日は経っている。

 

 

 ロケット団側の目的も盗み聞く。何やら、理想の達成のためにフジの知識が云々などとのたまっている。ろくでもない理想に違いないぜ。

 

 つーかこいつら! 「ハウスのポケモン達はおまけで捕獲」みたいな事をほざいてやがる! くそったれ共が。お前ら人間じゃねぇ!

 

 俺や、ハウスの保護ポケモンたちは所詮おまけかい。棚ぼた感覚で拉致りやがって。とんだ地獄の片道切符だぜ。

 

 

 今すぐにでもボールから飛び出してこいつらを毒漬けにしてやりたいが、相変わらずボールの開閉が固定されてるのか外に出られない。

 

 もしかして俺、このまま捕獲された状態で放置されるのかな。うわああやめてくれ~。

 

 最近運動ばっかしてたから、満足に体を動かせないとムズムズしてしょうがないのだ。確かにボールの中は快適な空間だが、走り回るくらいのスペースはやっぱ欲しい。

 

 てか、このロケット団共は俺をどうしたいんだ? 今後どういう扱いをされるのか。他の捕獲されたポケモン達は大丈夫なのか?

 

 よくてサファリゾーン送りかね。或いはスロットゲームの景品。それって完全に物扱いだなあ。

 

 ロケット団の傘下に加えられるって線もあるか。奴らの手持ちなんぞには断じてなりたくない。絶対にいうこと聞いてやらんからな。反抗しまくってやる。

 つーかこのボールを破壊してやる。外に出されたら即やってやる。俺はマジでやるぜ躊躇わねえぜ? マスターボールだろうとぶっ壊す!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポケモンハウスの面々の安否を気にしつつ、脱出の機会を窺う。

 

 

 はああ、フジのじいさんは無事かねぇ。ロケット団はフジを攫うことが主目的だったようだが。

 

 つーかさ、今更だけど此処ってどこなんだよ。

 

 ボール越しだとあんまり鮮明には見えないから何とも言えんが、たぶん屋内、かな? 

 

 おおほらほら! なんか「我らがロケット団のアジトへようこそ」とか聞こえるぜ。隠れ家か何かかね。

 

 

 

 おん? アジト??

 

 ロケット団の???

 

 

 

 っつーことはだ、もしかして寝てる間にタマムシシティまで運ばれたのか?

 

 

 おいおい勘弁してくれよ。事態が一層面倒になっちゃったじゃねえか。

 

 

 というかロケット団のアジトってこた、此処はスロットゲームセンターの奥地っつうわけか。俺、やっぱりスロットの景品にされちゃうのかな?

 

 

 ……ああ? 何だ? 外から騒音が聞こえてくる。

 

 

 ふーむ。どうやら、誰かがポケモンバトルしているらしいな。

 

 

 おお! 黒服の人影が数人、一気にぶっ飛んでいったぞ。ロケット団を懲らしめんとする正義漢の登場か?!

 

 

 「私に歯向かうなら、痛い目にあってもらう」

 

 

 なんか偉そうな奴っぽい声も聞こえるな。つか、この声めっちゃ近くで聞こえたんすけど。いやちょっと待って。超絶急展開で思考が追い付かないんだが、嫌な予感だけはビンビンに感じるぞおい。

 

 直後に、パチン、と音がした。何かを外した音だ。これって、俺が入れられているモンスターボールを開放した音じゃ、

 

 

 「行け! ニドラン!」

 

 

 ほわっつ??

 

 

 いきなりの浮遊感。視界が一気に鮮明になる。

 

 

 「世界中のポケモンを悪だくみに使いまくって金儲けするロケット団―――」

 

 

 背後から、ドヤり感満載の声。ちらり、と確認してみれば……。

 

 

 

 「私が、そのリーダー サカキだ!」

 

 

 

 げ、ゲェェーー!??

 

 サカキ!? なんで!?

 

 

 ちょ、どういう事やねん! 俺は今までサカキの腰にくくり付けられてたってこと?! つうことは、俺ってサカキの手持ちにされちゃってたのか??

 

 

 いやいやちょい待ち! 俺がサカキの手持ちとして繰り出されたって事は……。

 

 

 正面を見る。

 

 赤い帽子を被った少年が、足元のピカチュウと共にこちらを見据えていた。

 

 

 うええ、マジかよ。完全にヒール側じゃん。

 

 

 しかもあのピカチュウ、以前会った奴だな。ほら、クチバシティでの通り魔ネズミ。親の仇みてぇなツラで俺を睨んでやがる。

 

 

 参った。こりゃ参った。どうする? 相手絶対主人公ポジションじゃないか。俺だって被害者だってのに、なんでこんな事になっちまったんだ。

 

 

 




長く放置してましたが、最新話投稿となります。申し訳ありません。
おそらく、鯖風味はこのお話を完結させることはできないでしょう。以後、長期で放置することになれば、感想もしくはタイトルに報告することにします。

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