ポケットモンスター紫   作:鯖風味鯵

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誤字報告感謝します。設定はゴリ押すもの。メリハリは必要。


技13

 

 

 おれは いまから ほるぜ !

 

 

 うひょおおお「あなをほる」楽しいいいい。もりもり掘れるぜどうなってんだポケモンの技ってぇのはよおお!??

 

 ほれほれどうしたマダツボミ! さっきまでの威勢はどこ行ったんだ食虫植物め!

 

 ああん「つるのムチ」か?! 「あなをほる」で避けちゃうもんね残念でした。

 

 地中を進み、マダツボミの真下に到達。おお、おお、狼狽えておるわい。

 

 

 1、2の3。 ドーン! はいドーン!! 俺の勝ちーー!!!

 

 

 お次はサンドか?! かかってこいやつぶらな瞳ちゃん。

 

 早速「あなをほる」か。「あなをほる」合戦しようってか? 上等だコラァ!

 

 

 

 俺の負け。本職には敵いません。

 

 

 

 調子に乗るなって目をしてたな、あのサンド。地中でものっそい「ひっかく」された。すいませんでした先輩。

 まあ「あなをほる」では負けたが、その後の地上戦で制したけど。

 

 

 ふう、落ち着いたぜ。久々にテンション上がりまくったな。

 

 いいね、地面技。「つのでつく」しか有効打のない対毒タイプ戦で、大活躍してくれる。まあ今まで主力技として頑張ってくれた「つのでつく」や、それに恩恵を与えるシルクのスカーフの影が薄くなるのは寂しいが。

 

 やっぱ地面技は優秀すぎんよ。毒炎岩鋼電気と弱点特効の範囲も広い。

 

 当然、欠点はある。

 浮いてる敵には当たらない。これは常識だな。

 一度地面に潜る必要があるから、その分攻撃に移るまでにタイムラグがあるってのも無視できないところだ。攻めを途切らせたくない場合は、今までどおり「つのでつく」などに頼る事になるだろう。

 

 あと、潜ってる時に「じしん」などで地面を揺らされる事。あまり想像したくない。

 そんな事されたら、体ぐちゃぐちゃになるんじゃなかろうか。ひええ。

 

 

 しかし、ほっとしたぜ。

 

 行動の繰り返しや、特訓によって技を覚えられるってのが立証されたからな。これで、技のデパートに一歩近づいたな。

 寝る前や、木の実を隠す時なんかにちょいちょい穴を掘ってたから覚えたんだろう。日々の習慣に感謝。

 

 にしても不思議なもんだ。「あなをほる」で地中にいる時なんだが、地上のどの辺りに敵がいるのかがぼんやりと解るのだ。

 で、どういう原理なのか、いざ攻撃しようとしたらジェット噴射みたいに地上へ急浮上できるのである。理屈もくそもない。スゴイね、ポケモン。

 

 使い手が地面タイプならば、もっと自由に地中で行動できそうだ。ニドキングは毒地面の複合タイプだし、進化が待ち遠しい。

 

 あ。そういや「どくづき」も覚えてたな。ゴメンね、「あなをほる」が嬉しすぎて。

 

 

 もちろん「どくづき」を覚えたのもデカい。

 

 何たって、タイプ一致の物理技。追加効果の毒も素晴らしい。

 

 うん、素晴らしいんだけどね。覚えるべくして覚えたっつーか。すまん「あなをほる」のインパクトが強すぎたよ。

 

 物理火力が増したのは素直に嬉しいんだけど…って、なんだありゃ?

 

 ジュンサーさんが、息急き切ってやってきたぞ。お供にガーディを連れている。なにを焦ってるんだ、あのねーちゃん。

 

 例によってニドランの聴力に頼る。

 

 なになに、「穴を掘りまくって五番道路を荒らしてるポケモンがいる」 か。どこのどいつだよ。

 

 

 

 俺だ。

 

 

 

 ヤバい、どうしよう。草むらだから、見つかってはいないが。

 

 あ。ガーディがこっちの方を見てる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤマブキシティへのゲートを発見。ゲームやってた頃は、いつになったら通行止めってのが解除されるんだよ! とヤキモキしていたなぁ。

 

 

 にしても、ガーディ恐い。犬並みの嗅覚でどこまでも追いかけてきやがる。

 

 警察のポケモンに手荒な真似など出来るはずもなく、あっさり御用。めっちゃ怒られた。

 ガーディにも「おまえはしょうがない奴だ!」と肉球パンチをべしべし喰らった。すんません反省してます。

 

 その後、一人と二匹で俺が無意味に掘り返した穴を埋め(これってジュンサーさんの仕事なの?)、さらにちょっとした小言を受けて解放された。

 保健所行きじゃなくて良かったぜ。自由気ままなポケモンのする事、よっぽどな事件でもない限り捕まえるようなことはしないらしい。コレ、『よっぽど』な内に入らないんだ。

 

 別れ際に「傷だらけのニドラン? どこかで聞いたような…」と呟いていたので、ダッシュで逃げたがな。ニビのジュンサーさん、ちゃんと報告してたのね。

 

 

 ゲートの警備員にジュースを渡す事もなく、あっさり通過。街の中へ。

 

 おおお、さすがはヤマブキシティ。カントー一の大都会!

 

 何でか知らんが、長〇剛の『とんぼ』が脳内に鳴り響く。そこは『大都会』じゃないんかい。どうでもええわ。

 

 さて。せっかくのヤマブキシティだが、残念ながら今回は素通り。

 

 まあヤマブキにも名所はあるんだけど、今はクチバシティ優先だ。ナツメ? 勝てねーって。

 

 でも、ジムの場所くらいは把握しとくか? 

 

 

 てことで、一日中ヤマブキを走り回った。

 

 広いよ、ヤマブキシティ。まさに人工迷路。植物なんて生えてないから、何も食えてない。路地裏に入り込んだらニャースの群れに追い掛け回されるし、さんざんである。

 

 空腹に耐えながらも、ヤマブキジムを発見。隣にあるのは、格闘道場か?

 

 あ~、なんとか目的は達成できたな。えらい疲れたけど。溜息を吐きながら引き返そうとしたら、ジム前のベンチに腰かけていた少女が口を開いた。

 

 

 「来たのね。来てしまったのね」

 

 

 んあ?

 

 

 何やねん? と振り向いたら、ベンチに座っていた少女が立ち上がり…うおおぉ?! 

 一瞬で目の前に?! ヤードラット星人か!

 

 「あなたが来る予感は、二か月以上前からあったのよ」

 

 俺を見下ろして、そう言う。なにこの娘、サイコさんなの?

 

 …いやいやちょいまち。

 

 この娘、もしや本物の「サイコ」かも。いや危ない奴って意味じゃなくて。

 

 赤い服に同色のスカート、黒いタイツといった格好。長い黒髪。

 

 まさか、ジムリーダーのナツメ?

 

 「ヤマブキジムリーダーのナツメよ。私とバトルしに来たのね。分っているわ。今日は挑戦者もいないから、特別に」

 

 ごめんなさい。さようなら。そんな元気ないです。前足を顔の前で振って拒否。

 

 「…ポケモンフーズ、食べる?」

 

 目の前に、美味そうな匂いのする固形物を差し出される。

 

 いらないっす。なぁなぁで勝負にもつれ込むのが見えてるんで、遠慮しときます。まだ勝ち目がないだろうし。

 

 いや~びっくりした。まさか、ナツメが待ち構えていたとは。本物の超能力者は違うね。さっきのって、テレポートだろ? この人、格闘タイプのポケモン相手なら生身で勝てるんとちゃいますか?

 

 ささっと退散。後ろから「あ」って声が聞こえたが、無視させてもらった。

 

 しかし、あのナツメ。思ったより理性的な目をしてたな。アニメのホラーちゃんが嘘のようである。

 

 人混みをするすると抜け、ヤマブキシティの南のゲートに到着。おえ、街の騒がしさに酔ったかも。大自然の空気が恋しいよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あなたがクチバを目指している予感は数日前からあったのよ」

 

 回り込まれていたよおおおおお! エスパー少女こええ! キャリィィィィ!!

 

 戦慄していると、ナツメがモンスターボールを掌の上に呼び出した。表現、間違えてねえぞ? 呼び出したのだ、本当に。

 

 中から出てきたのは、フーディンだ。うっそやろお前。

 

 マジでバトルすんの? ニドラン対フーディンって、苛めなんてもんじゃないぞ。

 

 げんなりしていたんだが、今回はバトルはしない、と言う。え、どしたの?

 

 …嫌がっている相手と無理矢理バトルはしない。って、いやそれはそうと言うか、俺だってそうなんだが。

 

 じゃあ何のためにフーディンを? 

 

 「あなたの中に、微弱な念動力を感じる。それを起こしてあげる」

 

 勝手に何か言ってるぞおい。なんなの何する気なんだよ恐いんだけど。俺、どうしてもアニメのあんたのイメージが強く残ってて拭い去れない恐怖心ががが。

 

 フーディンが、目を閉じて両手のスプーンをこちらに向ける。

 

 集中してんのか? 攻撃するってわけじゃなさそうだが。

 

 

 おや? 体に違和感。ぶるぶる震えてる。

 

 

 

 あ、痛い。

 

 

 あたま痛い。

 

 

 痛い痛いすっごく痛いなんか脳みそグネグネしてる感覚あるんですけどこれ大丈夫なんってか気持ちわるウォエボボボボ。目ん玉が勝手にグルグルグル。

 

 

 …そんなこんなで。

 

 

 

 

 「ねんりき」覚えました。

 

 

 タマゴ技のはずなのに。

 

 

 

 




初代最メジャーの一角、フーディン。ナツメもライバルも、最も警戒しないといけないのはこの髭です。

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