個性『桃球』 作:猫好き
「辞めろ!辞めてくれ!」
暗い室内で男の声が響き渡る。その男は椅子に座るように固定されており体を動かせないようになっていた。そして所々に金属のいたが貼られており、そこからはコードのようなものと繋がっている。
「何を言っているの?貴方は私がそう言っても止めなかった!これは復讐なのよ?貴方にはじっくりといじめてあ・け・る。」
「やめるんだ!悪かった。許してくれ!暴力を振った事も個性で傷を負わせたことも謝るから!」
「い・や・で・す」
少女は機械に手を置き電気を流す。またしても男性の悲鳴が部屋に響き渡る。
少女はこの個性を与えてくれた人に感謝した。お陰で昔の私では考えられなかったこのゴミ以下の者達に、復讐ができる事に感謝していた。
………
その少女は個性が世に浸透しヒーローが現れヴィランを逮捕し始めた頃に生まれた。少女の名前は満月 桜。桜は小学生になった今でも個性を発動出来ずにいた。
そしてそれはいじめられるという事を示していた。
「返して!それ私の鞄。」
「返して欲しければ取ってこーい!」
殴る蹴るなどの暴行は勿論の事、物を隠されたり机に落書き、今のように物を投げ捨てられることもあった。拾いに行き教室に戻れば先生から遅れてきたマヌケな生徒と言われ、制服に卵や生ゴミをぶつけられることもあった。
だが、そんな状況でも先生も生徒も周囲の人も親も擁護する事はなかった。何故なら…
「桜!昨日洗ったばっかりなのに何でこんなに汚すの!」
「うわ!見て見て無個性の子供が歩いているよ?どうしてあんなのが産まれてきたのかしら?」
「なあなああいつ今度冬のプールに落とそうぜ!」
「いいなそれ!折角入れるだし、縛り付けて氷プールに入れようぜ!」
「「「「だってあいつ無個性だもんな!」」」」
そう。全員がグルなのだ。味方など何処にもいなかった。嫌だった。どうせなら産まれてこなせれば良かったなんて何度も思った。自殺をした回数は両手ではとうに数えられない程だった。
しかし、生かされていた。死のうとしても死ねなかった。どんなに高い所から落ちても、車に轢かれようとしても、死ぬ事はなかった。
包丁で自分を切るのは躊躇いがあって出来なかった。薬を大量に飲む事もやったが、死ぬ事はなかった。
そんな生活が一生続くと思っていた。あの人に会うまでは…
その人にあったのは何もかもが嫌になって学校にも行かず家を出て知らない路地裏に入って時だった。
「おや?貴方いい感情を持ってますね?」
声を掛けられた時慌てて逃げ出そうとした。この町では誰もが私の味方ではないのは知っていたから…
「心配しなくとも私も貴方と同じこの社会に怒りを感じる者。どうです?一緒に壊しませんか?」
しかし、その後に掛けられた言葉に驚いた。私を見て暴言を吐く事もなく、不気味だけど私を見て話してくれたのだ。
「ねえ。私無個性だよ?何で私なんかと?」
「無個性なら尚更いい。私の個性は個性を奪い個性を与える物。私が貴方に力をあげましょう。苦しいかもしれませんが貴女なら乗り越えられるでしょう。貴女の願いは何ですか?」
「私の願い…?」
通常ならそんなお誘いには乗らないだろう。だが、私は違った。毎日が嫌で全てなくなればいいと考えた事もあった。これは全部夢で起きたら普通の生活が待っている何て甘い期待をした事もあった。
でも、現実は私に厳しかった。もしこれが悪魔の契約で自分の命が削れる者だとしても…私は
「…殺したい。何もかも殺したい!あの暴行する男子も!影で笑っている女子も!助けない親も!全部全部全部!殺したい!」
「ククク。契約完了だ。私の事は先生とでも呼びなさい。」
「よろしくお願いします。先生。」
それが私と先生との出会いだった。その日から私は見る景色が変わった。先生によって個性を手に入れた。人の苦しめ方を教わった。そして先生の過去を知った。
この人ならば私はどこまででもついて行ける気がした。いつしか先生無しの生活が考えられなくなった時、それは実行された。
「先生ありがとう。私1人だったらこんな事出来なかったよ。」
「気にする事ではない。君の約束を果たす時が来た。それだけだ。」
芦田区病院誘拐事件。後にそう名前が付けられ闇に消されたその事件は、芦田区にある全病院にいた住民がヴィランによって誘拐された。
後にその計画がとあるインターネットの書き込みによって計画されていた『無個性イジメ計画』を利用した犯罪と分かり、芦田区全域で1人の少女をイジメていた事が把握。
その当時の一大ニュースとなった。その事件により当時の役8割の人が誘拐され、残りの2割も後日死体となって発見された。
だが、その事件は直ぐに沈静化していった。まるである時期を境に
少女にとってはそんな事はどうでもよかった。ただようやく自分をいじめていたゴミ共を掃除できる事に感謝していた。
「やあみんな久しぶりだね?元気にしてたかな?ヴィランに捕まって何をされるか分からないまま恐怖に怯えない為に私が説明してあげるね。あれれ?私が撮影されてホッとしたかな?でもさ。何で捕まったのか思い出してみて?ネットに偽の情報を書き込み、皆がヴィランに捕まったのはなんでだろうね?」
そうこれから始まるのだ。私の満月 桜による復讐が…
………
「ねぇ。誰が寝ていいなんて言ったかな?気絶したって無駄だよ。直ぐに治してあげるからね。」
「悪かった。悪かったから許してくれ。」
「あれれ?この個性で私をいじめていたのはどこの誰かな?あ、これを見ている皆目を閉じても顔をそらしてもダメ。脳に直接映像を流しているだから無駄だよ?」
少女は決して許さなかった。男が泣き叫ぼうが、喚こうが少女にはまるで聞こえていなかった。たとえ気絶されても既に手に入れた回復個性によりたちまち覚醒させる。
「いいね。いいね!最高だよ!その表情!私は君のそんな顔が見たかったんだ。絶望に満ちたその顔…フフフ私ヴィランに入って良かった。」
「もう止めてくれ!あれはお前の父に無理矢理!」
「安心してね。父には最後ゆっくりなぶるようにいじめてあげるから…安心して死んでね。」
少女は止めを刺す様に流す電気を倍にする。今度は治す事はない。この私をいじめた事を悔いながらあの世に行くがいい。こうしてまた1人この世のゴミが消えた。
「さあ次は誰にしようかな?♡」
今日初めていきなりステーキ行ってきました。行く機会がなかった為楽しみにしてきましたが、1時間待っても中に入れていません。オープンしたてに行くものじゃないですね(・・;)
え?誰の肉かって?さあ?誰の肉なんでしょうねこれ?