R.I.D   作:神風雲

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七話「時を駆ける列車」

 

 「クソッ!!なんでこんなに居るんだよ!!」

 

 今俺は複数の敵と戦っている。場所は先ほどの町からさほど遠くない砂浜だ。

 海岸沿いを走っていると突如目の前に砂状の敵が現れ、それが形状を持って襲いかかってきたのだ。

 

 「死ねェ!!」

 

 ネコ型の怪人が爪で攻撃してくる。それを俺はファイズエッジで受け止め、胴体部に蹴りを入れて押し返す。

 後ろにも存在を察知し、カニ型の敵に対してエッジを叩きつける。だがそれでも持ちこたえたカニ怪人は大きなハサミを胸部に切りつけて反撃をしてくる。

 

 「グハァ!・・・クソ・・・」

 

 ファイズエッジを地面に突き付けて体を持たせる。連戦により体に疲労が溜まってきていた。

 アクセルモードは先ほど使ったため今は使用できない。オートバジンに魅依奈を守らせてついでに援護射撃も頼んではいるが、俺が敵陣の中心にいるため迂闊に射撃も出来ない。

 

 「ヒロクン!!」

 

 ネコ型とカニ型とウシ型の三体の敵が俺の周りを周回する。完全に舐められた戦いだった。

 無造作に剣を振りまわしても受け止められるか避けられるか。もはや完全に出せる手を失っていた。

 そこに

 

 

 ファアァァァァン!!

 

 

 「なんだぁ?」

 

 謎の汽笛と共に周りの怪人達が吹き飛んだ。さらに砲撃音が続き、火花が派手に目の前を照らす。

 目の前が落ちついたとき、砂浜に堂々と流線形の列車が停車していた。赤と白の特徴的な列車だ。

 

 「これは・・・」

 

 列車から降りてきたライダーはパスをベルトに押し当て、左手に持つ剣を振りかざす。

 

 

 《フルチャージ》

 

 

 振り下ろした剣の剣先が飛んでいき、取り囲んでいた敵怪人を次々に撃破していった。

 

 「俺の必殺技・・・・・パート3」

 

 赤いライダー。その立ち振る舞いは戦闘を幾度も経験した連戦の戦士だった。

 

 「クソ!こいつ電王だ!」

 

 このライダーを見てネコ怪人が“電王”と言った。それを聞いた他の怪人たちが驚き、ウシ型怪人が電王に対して角攻撃を仕掛けた。

 

 「うおぉぉぉぉ!!」

 

 だがその突進は電王の蹴りによって岩へと進路を変えられてしまう。

 

 「ぶつかってくるならもっとマシな攻撃をしやがれウシ野郎」

 

 数度の斬撃を入れてから角を引っ張ってネコ型へ押し渡す。さらに挑発を入れて攻撃を誘うがカニの怪人が逃げようと海へ飛んだ。

 

 「カニが飛ぶな!」

 

 側の岩を蹴り飛ばし、カニ怪人に見事命中した。砂が落ちたと言うことはあれもイマジンなのだろう。

 カニ怪人はなんとか海の中へと潜り込み、脱出に成功したようだった。

 

 「めんどくせぇなぁ。おいテカテカしてるお前!」

 

 「・・・俺か?」

 

 「お前しかいねぇだろ。ちょっとの間こいつらを頼んだ」

 

 そう伝えた後、電王はベルトの青いボタンを押してパスをかざす。

 

 

 《ロッド フォーム》

 

 

 電王の各部を構成していた装甲が外れ、それぞれの順番が変わって体に連結した。その後から頭部ライダーフェイスが降りてき、全体的に青を基調とするフォームが出来あがった。

 

 「まったく。先輩も泳げるようになりましょうよ」

 

 先ほどとは喋り方が違う。さっきのガサツな声ではなく、おっとりとした青い声だ。

 電王は持っていた剣を分解し、別の形態へ合体させた後にいきなり釣りをし始めた。

 

 「釣れるまで時間がかかりそうだねぇ」

 

 「ちょ、調子のりやがって!!」

 

 ネコイマジンが爪を立ててこちらへ斬り込んできた。それをエッジで振り払い、射線上に誰もいない岩場へ動かす。するとお利口なオートバジンはすかさずバスターホイールに内蔵されてある16門ガトリング砲を乱射。ただ撃たれて消えると言うだけの最後を迎えたネコイマジンは声にならない断末魔を上げて爆砕した。

 そして次の攻撃を繰り出すために、ファイズショットを装備、ミッションメモリーを差しこんでファイズフォンのENTERキーを押す。手慣れた手つきでセットを終わらせ、殴りに掛る。

 

 「やめ――――」

 

 流れ作業で懐にグランインパクトを撃ちこむ。その巨体が仇となり、自らの死を招いたのだ。

 Φの文字を浮かび上がらせて砂に散った。

 

 「じゃあこっちも片付けちゃおうか」

 

 掛かった獲物を釣り上げ、空中に浮いた敵に長い釣り竿を突き差す。パスをベルトにかざし、二度目のフルチャージを発動させた。

 イマジンに突き刺さったロッドに青い陣が浮かび上がり、その場に拘束した。電王が飛びあがり、拘束された敵目掛けて足を突き出し、突き刺さるロッドに蹴り入れた。

 衝撃で敵は爆発し、電王は優雅に着地した。人差し指と親指でつまむ様な仕草をしてこちらを見る。

 

 「君が乾浩人、だね?」

 

 「そうだ。俺に用があったのか?」

 

 「まあね。君を連れて来いってオーナーに言われたからさ。まあ後は頼んだよ良太郎」

 

 ベルトを外し、中の人間が露になった。

 そこには今まで想像していた人物とは全く違う人間がいた。

 

 「初めまして、だね。僕の名前は野上良太郎」

 

 弱そうな声と俺と同じくらいの身長。歳は19~20といったところか。あの動きをこの少年がするには人格でも変えない限り無理だ。

 

 「色々事情がありそうだな・・・」

 

 半分何が起こっているのか理解が追いつかないところもあるが、それでもどうする事も出来ないので誘われて停車していた電車に入った。

 

 

 電車の中はカウンターがあり、無数の席が並ぶ喫茶店のような内装だった。その奥の一角に進み、旗付きチャーハンを上品に食べる老人が堂々と座っているが、こちらの存在に気が付くとまじまじと見つめてきた。

 

 「時の列車デンライナーへようこそいらっしゃいました」

 

 「デンライナー?この電車そんな名前なのか」

 

 「ええ、そう思っていただいて結構です」

 

 この老人もそうだがこの電車にはおかしな奴が多い。というよりは半分がイマジンだ。赤鬼、青面、黄猿、紫顔。どれも個性的だが何も言わずにここにいるのはどうかと思う。

 不審に思っていると

 

 「このイマジン達は僕達の仲間だから心配しなくて良いよ。たまに喧嘩して暴れるくらいだから」

 

 「そうそう、何も怖がることは無いわ。何なら追い出そうか?」

 

 俺よりかなり身長の低い少女が話しかけてきた。見た目中学生ぐらいの少女だが言い方がかなり大人ぶっている。

 

 「私はハナ。今はこんな姿だけど本当はもっと大人なんだからね」

 

 「頭がこんがらがってきたぁ・・・」

 

 後ろで魅依奈が悲鳴を上げて椅子に座りこんだ。ハナと言う少女が魅依奈を見守り、俺達は話を進める。

 

 「それで、俺に何があるって?」

 

 チャーハンの残りが少なくなってきていた。それでも旗を取らずに食べ続けているのは何かの挑戦だろうか。

 

 「あなたは何故か時間に干渉しているのですよ。それで少々事情を聴きたくお呼びしたのですが。どうやらその様子だと何も知らないようですね」

 

 「時間に干渉?」

 

 「ええ、あなたを中心に時が動いていると言っても良いでしょう。それが原因で時の運航にタイムラグが出来ているのですよ」

 

 デンライナーの仕組みについて長々と説明が入った。その最中にチャーハンの旗が倒れ、オーナーが変なポーズをしたのはスルーした。

 デンライナーと言うのは鉄道型のタイムマシンのことで、それらを類呼した物らしい。その一つがこの列車「ゴウカ」だ。

 そして今、時の運航で行けない時間軸があるらしく、現在進める時間軸がこの軸までしかないそうだ。

 

 「俺にどうしろと?」

 

 「それが私どもにも分からないのです。なので精密な検査を行いたいのですが、御同行お願いできますか?」

 

 「別にいいぜ、俺も自分に何があるか見たいしな」

 

 「成立だね。じゃあ僕は君達のバイクをデンライナーに積んでくるよ」

 

 「おいハナクソ女。お前も行ってやれよ、あいつ一人じゃ多分無理だぞ」

 

 赤鬼がハナに喋りかけた。だが顔面を殴られてハナは出て言った。

 

 「痛ってぇ・・・おい何じろじろ見てきてやがる」

 

 「先輩も態々喧嘩ふっかけないでくださいよ!」

 

 賑やかを通り越して騒がしい所だ。イマジンが四体もいるのにもかかわらず何故こうも平気でいられるのか自分でも不思議だった。

 後の話でイマジン達は電王に変身する際に良太郎に憑依することが分かった。変身の仕組みと性格の変化の謎が分かってスッキリした。

 

 

 

  ターミナル

 

 

 デンライナーでの時の旅は粗末なものだった。一面砂と岩しかない絶望的な風景だからだ。それでも粘土細工の様なコーヒーは格別美味かったが。

 デンライナーはそんな砂漠の世界の駅に到着し、広い駅内を歩いていた。

 

 「ど~も~」

 

 ガラッとしたホームでデンライナー一行と待っていると突然物音がして自動扉から駅長服を着た老人が歩いてきた。その顔を見て俺は驚愕した。

 

 「え・・・・あれ・・・・?」

 

 オーナーと駅長が握手を交わした時、確信に変わった。二人が同じ顔をしているのだ。双子かドッペルゲンガーか、何れにせよ二人は似過ぎている。そろってこちらを向かないでほしい。こっち見んな。

 

 「やぁやぁ君が(くだん)の少年だね。待っていたよ」

 

 駅長に連れられ、全員で向かったのは地下。こんな駅に地下室があることが驚きだったのだが、それ以上に驚く物が奥にあった。

 着いた場所は中心に噴水がある大広間。その奥の壁に等身が映る程の大きな鏡があった。

 

 「この鏡、実はいわく付きなんですよ。映った姿と別の姿が映るのが気味悪いと言われ引き取ったんですよ」

 

 「何が映るんだァ?」

 

 赤鬼のイマジン『モモタロス』が駅長に問いかける。見て見れば分かると言うのでモモタロスが鏡の前に建つ。

 

 「ああ?砂ん時の俺が映るじゃねえか。気持ちわりぃ」

 

 人間に憑依前に出現する砂状の姿が映っていた。人の記憶に支えられないと実体すら持てないのがイマジンの特徴だ。イマジンは人に取り付き、望みを乞う。望みを叶えた暁には取り付いた人間から記憶と時間を我が物にする。

 他のイマジン、ウラタロス・キンタロス・リュウタロスも同じように鏡の前に立ってみたが映り方も同様だった。

 

 「なんやこれェ?気色悪いな」

 

 「じゃあ今度は良太郎立ってみなよ」

 

 「うん」

 

 良太郎が鏡の前に立つ。先ほどまでの感覚では映るものが砂状に表示されるのかと思ったが、良太郎の場合は違った。

 

 「あれ?駅長さん、これどういう…」

 

 「はい、その顔を待ってました」

 

 鏡に映る良太郎の姿、それは何もない、だった。

 姿も影すらも映っていない。背景や遠くにいる俺達の姿は映っているのに鏡の前に立つ良太郎の姿だけが映っていないのだ。

 

 「この鏡はですねぇ~、鏡の前に立つ者の未来を映し出すのです」

 

 「未来?ということは僕の未来は無い、ということですか」

 

 「いいえ、その鏡に良太郎君が映らないのは未来が予想できないからです。特異点である君には未来をどうにでも変れるのですよ」

 

 一通りの事を説明し終わった時、駅長がさあと言って俺に手を差し伸べてきた。その時の俺にも大体予想はついていた。この状況、この手際で呼び出され、鏡の前に立たされるということは・・・

 

 「やっぱり・・・」

 

 ハナが思わず口に出した言葉はその通り。俺の姿は鏡に映っていない。つまり俺も良太郎と同じ「特異点」なのだ。

 特異点はどの時代に居ても時間の流れに影響されず、その時代に対して様々な影響を及ぼすことができる扱いどころによっては世界を崩壊しかねない存在だ。

 

 「やはりあなたにも特異点が備わっていましたか。しかし妙なものですね。あなたも仮面ライダーとは」

 

 「・・・何が言いたいんです?」

 

 その答えはオーナーからではなく駅長の口から発せられた。

 

 「実はですね~、現在この駅には関係者以外の者が誰一人いないのですよ。それは時の運行が一時的に停止している為でして~。一言で申すと現在時の列車は機能を失っております」

 

 「はぁ!?何言ってんだドッペルゲンガー!それじゃ俺たちはどうやってここまで来たんだよ!」

 

 モモタロスが荒げた声で物申した。無理もない。正直俺は大量に流れ込んでくる情報に対処しきれていなかった。だがモモタロスたちイマジンはこの状況を誰よりも理解していた。

 

 「ですから“一時的”にです。この場所での一時的の意味は局所的な時間のみのことを示唆します」

 

 捻った言葉を並べるために誤解の誘発が起きそうであった。だが俺にもなんとかくは理解できた。

 

 「つまりどっかの時間がダメになってるってことか?なんとなくな答えなんだが」

 

 「まあそんな感じで理解していただければ。正確な時間はあまり分かってはいませんが、主にこの時間軸から未来への時間軸が通行止めになっております」

 

 「それってまたレールが捻じ曲がったりしてる、とかですか?」

 

 良太郎が聞くが、俺はその捻じ曲がったレールという物を知らないため理解できない。

 

 「詳しいことはまだこちらでも把握できていません。ですがハナちゃんのように時間軸そのものが消滅することもあり得る話です。それに最近は時間の揺れが激しいので何が起こっても不思議ではありません」

 

 「時間の揺れ?」

 

 「ええ、原理はよく分からないのですがつい最近発見された不具合でして、ゲームでいうところのバグのような物で、時間がループしたりするのですよ。まあ数分の差ばかりですのであまり気にしなくても良いかと」

 

 「なんかよくわかんねえ話しやがって、キリねえから要件だけを言え、要件を」

 

 モモタロスがややこしい話に終止符を打って急がせた。トイレでも近いのかと思ったが単にイラちなだけのようだ。

 

 「よろしいでしょう。私共がお願いしたいのは一つ」

 

 砂ばかりの風景の空間でデンライナー一行はその言葉に角を立てた。

 

 「時を破壊してほしいのです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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