R.I.D   作:神風雲

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二話「鋼の心」

 小さな地球(ほし)の話をしよう。

 そこは宇宙の片隅に芽生えた小さな人種だった。

 そこで彼らは文明を築き、独自の発展を遂げた。

 すると世界はある疑問にぶつかった。

 

 「もしあの時、あの場所で、別の選択肢を選んでいたら。人類はどうなっていただろう」

 

 全てはそこから始まった。

 

 様々な文化を持った世界が融合を始めたのだ。

 それはそれぞれの世界に崩壊をもたらすはずだった。

 

 そう。この物語も、全ての分岐の一つなのだ。

 意思を持った生命が誕生した瞬間、この未来は予期できるものだった。だが彼らはそれを自ら受け入れた。

 

 これはそんな彼らの。闘争本能のままに戦う“超世界(オーバーワールド)”の物語。

 

 

――――――――――

 

 

 「やっと一段落着いたぜ」

 

 砂埃舞う土木工事現場。

 土臭いこの場所で部下達を指揮するのが俺の仕事だ。

 

 「主任!大変です」

 

 「どうしやがった?開通用のダイナマイトでも爆発したか?」

 

 今、俺の事を主任と呼んだのは部下の石垣慧(いしがきけい)だ。

 俺の事を慕うこいつは常に周りを監視し、問題があればすぐに報告してくる僕のような存在だった。

 

 「違うんです!作業員の一人が怪人になって襲ってるんですよ!」

 

 「それは忌々しい事態だな」

 

 とはいう物の、一切驚く身振りをしないことから慧が怒りながら必死に伝えてくる。

 いくら責任者だからと何もかも俺に任せないでほしい。たまには自分達で何とかしろ・・・とは言えないから怪人なのだ。

 

 「仕方ねぇ。俺が行く」

 

 そう言い残し、俺は先に作業場へ向かった。

 現在新たに新幹線用トンネルを作っている最中で、それ故作業員も多くいる。その中に怪人の適性を持っている人間がいても不思議ではないし、それを差別してクビにする気もない。むしろそちらの方が恨みを買って襲われる可能性が高い。

 そして今回の作業にもそのような可能性を考慮していた。その対策として呼ばれたのが俺城嶋紫朗(きじましろう)だ。

 

 

 

 未開通トンネルの中に入ると、一塊りになって逃げ出す人の群れに当たった。

 話を聞くとこの先の採掘機の手前で暴れていると言う。先に進むと、トンネル中を照らす照明がいくつも壊れ、並べられている機械も無造作に捨てられていた。

 歩いて行くと先に一人の男の姿が見えた。

 

 「逃げ遅れか?怪人が出たらしいから早く逃げた方がいいぞ」

 

 と、明らかな口調で嘘を吐く。

 この状況で逃げ遅れは死につながる。つまりこいつが犯人だ。

 

 「そうですね。とりあえずあなたを倒してから逃げますよ」

 

 「お?俺を誰か知ってて言ってるのかな?」

 

 男は苦笑し、ゆっくり近づいてくる。

 

 「どうでもいいですよ。あなたが誰かなんて」

 

 胸ポケットから長方形のメモリを取り出し、スイッチを押した。

 

 「こいつがあるんでね」

 

 

 《アノマロカリス》

 

 

 機械声が流れ、首の付け根付近にメモリを指した。

 すると体が変化し、博物館などにありそうな古代生物の怪人へと変身した。

 

 「おー今回は古風だねぇ。じゃあ俺もやらせてもらおうか」

 

 赤と黒のメタリックな機械を取り出し、腰に当てるとベルトが自動で装着された。

 そして男と同じように胸ポケットから長方形のメモリを取り出す。それはガイアメモリと呼ばれる地球の記憶が封じ込められた、言わば情報の結晶体だ。これを体内に取り込む、あるいはその力を引き出す装置を使用すると、一時的にその力を利用できる。

 その装置の一つが今腰に装着した“ロストドライバー”だ。

 

 

 《メタル》

 

 

 メタルメモリ。これが俺の相棒だ。

 メモリをドライバーのスロットに差し込み、右手を誘導して展開する。

 メタルの発声と重低音の音楽と共に体に鋼鉄の鎧が纏い、右半身左半身を分ける様なラインのあるスーツが形成された。背部には金属の棒のような物も装着されており、その変身は正に一瞬だった。

 

 「お前は何者だ!?」

 

 「仮面ライダーメタル。お前を地獄に送る業鉄の戦士の名だ!覚えておけ」

 

 メタルメモリは鋼鉄の闘士を持ったメモリ。最大の腕力と防御力を誇り、攻撃的な武器「メタルシャフト」で攻撃する。さらにシャフトにはマキシマムコンバーターと呼ばれるスロットがあり、これにより強力な一撃を放てる。

 対して怪人側のメモリは強力だがその分肉体に対する影響力が大きい物だ。ドーパントメモリはそれ故危険で怪人を大量生産してしまう。

 

 「それにしても水も無いのにアノマロカリスとはな。場所が悪すぎた」

 

 「たかがその程度で勝ったつもりか!!」

 

 もちろん敵は怒って攻撃してくる。口から粘膜のようなものを飛ばし、こちらに突撃してくる。

 その粘液をシャフトで弾き返しつつ、歩いて接近する。何ともひ弱で戦いがいの無い攻撃だった。

 

 「威勢がいいのは怪人の特徴なのか?どうでもいいが」

 

 俺がここに配属されたのはこういう輩を排除するためだ。こんなふうに。

 

 「そろそろ飽きたな。終わらせるか」

 

 「そう簡単に!!」

 

 ドライバーからメタルメモリを抜き、メタルシャフトのスロットに挿入する。

 敵も同じような攻撃しかしてこないため、力の加減を見誤ったか、ただの雑魚か。

 

 

 《メタル マキシマムドライブ》

 

 

 メタルシャフトを前に突き出し、そのまま突進する。その際の衝撃で放たれていた粘液は全て弾かれ、その距離が急激に縮まる。

 敵ドーパントも抵抗しようと連射を早めたり鞭の様な触手を叩きつけに来たが、頑張りも空しくメタルシャフトはアノマロカリスの体を引き裂き、貫いた。

 攻撃を諸に食らったアノマロカリスは爆発し、飛び出て来たアノマロカリスメモリを破砕しておいた。

 

 「こっちも一段落着いたな。まったく仕事とはいえここまで弱いと困るな。平和すぎても食っていけないってことだな」

 

 自分で納得しながら変身を解き、工事現場を後にした。

 

 

 

 「主任大丈夫ですよね」

 

 「心配もしてくれないのか。殺生なやつだな」

 

 「主任の実力を信頼してるってことですよ」

 

 オーバーワールドとして世界が変わってから一世紀近く経ったが、この世界では俺の様な傭兵業に付く者も多い。俺の様に運良くライダーベルトを入手するとこの世界では幸先良い事間違いない。

 

 「俺も主任みたいにできたらなぁ」

 

 「俺は運が良かったからな」

 

 そしてライダーとして活躍すると、俺の様に信頼を簡単に得ることが出来る。 

 全てのライダーの世界が融合したからこの結果になったのだろう。だからこそ俺は今の生活が手放せないようになっていた。

 

 そして、この仕事を受けた時、俺は今までの生活が出来なくなった。この事実を知ってしまったからに、俺は全ての生活を投げ捨てた。

 

 

 

 

 

 

 「あるライダーを倒してくれないか?」

 

 

 

 

 

 




交互ストーリーです

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