太陽は、いつか―――   作:biwanosin

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短いですが書けたので放り投げます。




「さて、と。どうしたものかな・・・」

 

あの後。可能な限り知り合いに合わないために、と電車で隣の市に来ていたのだがさすがにそこから買い物して帰る気にはなれず、家から近いスーパーマーケットへ移動、宣言通りカレーライスの材料と、本人が望んだので一部現代のお酒なんかも(暗示って便利だよね)買い、ついでに色々と補充してきた。

それまでの間も、実体化してという意味では初めて乗る電車に通る改札、レジの仕組みなど一つ一つに驚いているマルガはみていて飽きないものだった。・・・話がそれた気がする。

 

なんにせよ、その後二人でカレーを作り、食べ終えた。今はマルガがお風呂に入っているのでその間に今後のプランを練っているわけだ。

目下の問題はただ一つ。学校である。

 

「一回、ガッツリ暗示をかけるためにも学校に行かないといけないし・・・」

 

要するに、暗示をかけ忘れたのだ。聖杯戦争期間中は学校に行く暇などないだろう、とは最初から思っていたのだけれどそれを行動に移し忘れた。最初のころは何とかして不慮の事故で参加できませんでしたルートに向かおうとしてたからその影響かもしれない。

 

「・・・まあ、暗示の内容には困らない、ってのが唯一の救いかな」

 

親が大変協力的なので、口裏を合わせてもらえば暗示の必要すらなくなる勢いだ。まあ偶然街中で会ったりすると面倒だから暗示は使うのだが、『海外で仕事をしている親のところへ行く』というような内容で暗示をかけておけば十分だろう。

・・・何か抜けがありそうで非常に怖いな。もしくは明日登校したら問題が発生しそうなというか、なんか面倒事の予感がする。なんでだろう、ふっしぎだな?

 

「・・・よし、明日学校に行くか」

「あら、唐突にどうしたの?」

「おわっほい!」

 

ソファに寝転がって目を閉じて考えていたものだから、唐突なマルガの声にびっくりした。反射的に目を開くと、今日買ってきたスウェットに身を包んだマルガがいる。

風呂上がりらしく頬が上気していて、濡れた髪をタオルで拭いている。・・・うん、バスローブが大変しっくりきそうな感じだな。バスローブを買わなくて正解だった!

 

「や、しばらく聖杯戦争に参加するわけじゃん?」

「そうなるわね?」

「ってことは、学校行ってる暇ないから行かなくても大丈夫なように暗示をかけに行かないとなぁ、って」

「本格的に参加するわけじゃないんだし、別に大丈夫じゃないかしら?私も学校というものに興味があるし」

「やー、何かと理由を付けて俺がサボりたいだけなんだなこれが」

「もう・・・めっ、よ」

 

おでこを人差し指でつつかれてしまい、でへへへ、となる。いかんいかん、このままだと流される。俺はノーマル、俺はノーマル。

 

「まあ現実的な話もしておくと、真面目に参加してないって親に思われると後々面倒が多いかなぁ、って」

「あら、別に家を継ぐわけではないのだから大丈夫じゃないかしら?」

「確かに家を継ぐのは兄貴だけど、何かあった時の予備として育てられてるから、それなりに会う機会はあるしね」

 

その時に色々と言われてしまっても面倒だし、今ばれてしまうのも面倒だ。よって、ちゃんと従っているフリくらいはしておきたい。

それと口には出さないが、学校で他のサーヴァントに襲われたりすると面倒事がより多くなるのだ。ほら俺、教会に報告にも言ってないし、できる限り隠蔽作業の押しつけとかお世話になる事態は避けたいかなぁ、って。

 

「というわけで明日、暗示をかけに学校まで行くんだけど・・・よければ一緒に来る?」

「もちろん」

 

楽しそうだなぁ。うんうん、良きかな良きかな。

 

 

=☆=

 

 

 

「・・・言うまでもないと思いますけど、くれぐれも実体化しないでくださいよ?」

『大丈夫よ、ちゃんと霊体化して傍にいるわ。カズヤも念話で話すようにした方がいいんじゃないかしら?』

『・・・それもそうですね』

 

学校のそばまで来てからそう確認を行う。いやまあ見るからに異形ってわけでもないし服も現代のものを着てもらってるから大丈夫といえば大丈夫なんだけど、目立つことには変わりない。というかそうだ、学校に生徒でも教師でもない人がいる、ってのは問題だったか。

そう考えながら頭をかき、校門をくぐって・・・

 

「「死ねぇ!」」

「おわっ!?」

 

その瞬間、校門の影から現れた二人の男に襲われる。マルガが反射的に実体化しようとするのを流す魔力を抑えることで無理矢理止めて、襲い掛かってきた二人を足で迎撃する。

心配するマルガの声が脳に響くけれど、まあ、うん。大丈夫。問題ない。

 

「何のようだ、二人とも・・・」

「何の用だ、じゃない!」

「キサマこそ、昨日のあれは一体なんだ!」

 

昨日のあれ・・・おや、嫌な予感がする。昨日何があったかといえば候補は一つしかないし、あれだろうなぁ・・・面倒なことになったぞぅ。

 

『どうするの?二人に暗示をかけて記憶を消しておく?』

『そこまで強力な暗示は使えないかなぁ・・・仮にみられてたとしても、俺が嫉妬の対象になるだけだし』

『学校を休んできれいな女性とデートしていたのだものね』

 

状況ははっきり理解してくれたらしい。まあ、うん。そういう状況なのだろう。さて、どうするのが正解だろうか・・・

 

『よし、逃げよう』

『あら、逃げるの?』

『逃げる。職員室まで行けば一旦何とかなるだろうし』

 

クラスは同じだから逃げ切れるものではないんだけど、まあ、うん。大丈夫大丈夫、なんとかなるって。

 

「ではな、二人とも!」

「「逃げるな!」」

 

チクショウ・・・やっぱりもう少し変装するべきだったな。何か良いアイデアはないものだろうか。不審者にならない範囲で。

 

『今度私が服を選んであげましょうか?服の印象に小物と髪型だけでも変えれば大きく変わるものよ?』

『ぜひお願いします』

 

そうだ、すぐそばにスパイがいるんだから、最初っから聞いておけばよかった

 


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