一夢 発症
「ガァァァ!アァァァ!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ
自我が実った時には地獄だった。無数に迫り来る痛み、苦しみ。この周期的に来る痛みに馴れることはない。しかし、痛みが来る前の僅かな時間が彼の平穏だった。
「何故だァ!何故ェ、俺は苦しまなければならん!」
ここは病院。これだけ叫んでいれば看護師が来てもおかしくない。しかし、彼の場には誰も来ない。定期的に点滴を換えるために医師が来るくらいだ。
「何故だァ!俺が何をしたというのだ!」
彼の名前は兵藤一誠。一年前には健康としかいいようがない普通の存在だった。
何故こうなったのかそれは彼にはわからない。彼がこうなったのは夏に彼の姉と幼馴染みで遊んでいた時だった。
一年前の夏、とある教会の敷地内
彼は一つ上の姉である兵藤瑞希と幼馴染みである紫藤イリナと共にヒーローごっこをしていたときだった。
「よ~し、行くぞ~!」
「こ~い!」
何の特別なこともない。ただの日常。しかし、この日だけは違った。
「あれっ?」
「どうしたの?イッセーくん?」
一誠は何か視界に違和感を感じた。
「ちょっと大丈ょょょ、グァァァ!」
イリナの言葉に返答しようとしたとき彼を激痛が襲った。
「あ、アァァァ!」
「イッセーくん!」
一誠が叫び、イリナは彼に駆け寄ろうとしたが、
「イリナちゃんは紫藤さんを呼んできて!」
「えっ!うん!」
瑞希の頼みに彼女の父親を呼びに行った。
「イッセー。」
瑞希は一誠に語りかけた。
激痛を浴びながら一誠は大事な家族である。姉の言葉を聞こうとした。だが、
「やっとか。遅ぇんだよ。何でこんな時に発動すんだよ。めんどくせぇじゃねぇか!」
普段の姉にあるまじき言動だった。口調も粗っぽかった。
「くっくっく、イッセーよぉ!苦しんでくれよ?ハッハッハ、そうだ。お前の物語は俺が貰ってやるからな!」
一誠は反論しようとしたが、迫り来た激痛によって返事はできなかった。
「母さん達に言ってもいいぜぇ!言えるものならな!」
更に来る痛みによって意識が遠のいていった。最後に聞こえたのは、イリナの叫び声とイリナのパパの心配する声そして、猫被っている
病院にて
「どうなんです!イッセーは?」
一誠の両親は医者に向かって叫んだ。すると医者は顔を暗くし、
「普通は有り得ないことが起きてます。」
「「それは?」」
医者はとんでもないことを言った。
「一誠くんは死病と呼ばれるものにかかってます。それも、複数。」
両親は目の前が真っ暗になった。だが、それだけではなかった。
「本来すぐにでも死んでしまう筈が、死病同士が相殺しあって激痛が彼を襲っています。それでも彼の寿命は長くはないでしょう。」
両親は音も一時的とはいえ聞こえなくなるようなことに陥った。
少しして、
「○○さん!」
一誠の両親を訪ね、若々しい老夫婦がやって来た。
「お義父さん!お義母さん!」
一誠の父親は老夫婦のことをそう呼んだ。
そして二人を一誠の所へ案内した。そこでは、未だ一誠は苦しみ叫んでいた。
「アァァァ、グァァァ!」
老夫婦、否、一誠の祖父は苦しんでいる一誠の手を握り、
「お祖父ちゃんはここにいるぞ。頑張って!」
と涙声に元気付けようとしていた。
それとは別に一誠の祖母である世良
「(何で!逆十字の病みは希釈されたじゃない!もう、こんなことにはならない筈なのに!)どうしよう?ハッ!石神先輩に応援を!」
世良南天、旧姓緋衣南天はかつて(°∀。)y─┛による事件を最後まで知っているもう一人に連絡した。
『ん?この電話番号は?世良さんのもの?』
「石神先輩!力を貸してください!」
『どうしたというのだ。いや、いい。場所を教えろ、今すぐ行く。』
「はい。○○県○○市駒王町の○○○○です。」
『あい、わかった。では、後ほど!』
南天は通話を切った。そして彼女の先輩が来るのを待った。南天はもう盧生の眷属ではない。夢は使えないのだ。彼女は力が使えないこの事を歯痒く思ったのだ。
神祇省
「あい、わかった。では、後ほど!」
石神先輩こと、石神静乃は通話を終え、
「座標移動の用意を!」
「「「は!」」」
未だ現役な彼女はこの日本神話直轄組織であり国の機関である神祇省の部下に転移の用意をさせた。
ここでこの世界の神祇省について説明しておこう。神祇省は上記に記した通り、日本神話の直轄組織であり国の機関である。そのため昔から日本の裏事情の総括を行ってきた。更には大正時代、英雄柊四四八と共に行動した壇狩摩がここの元締めであったため、世界大戦が起きるのを防いだことから国際的に表社会にも名が広まっているのだ。有名になったことにより、その名声に見あった功績もあげなくてはいけなくなり各国に蔓延る
では、その事は置いといて。
再び病院
「来たぞ!世良さん!」
石神静乃一時間もせずに到着。
「石神先輩!」
「こらぁ!ここから先は関係者しか………って貴女は神祇省の!」
「そうだ。診させてもらうぞ。」
それから石神静乃による診断が始まり終わった。
彼女は別室に彼らを連れていった。そして、
「結論から言おう。神レベルの呪いがかかっている。」
石神静乃の言葉に南天が、
「なら!それを解けば!」
と呪いを解くという手段について言った。しかし、
「それだけはない。希釈し消え去ったはずの逆十字の病みがこの呪いで再発しているようだ。呪いを解こうとも彼は苦しむことになるだろう。」
それは聞いている一誠の両親や世良夫婦にとって最悪の答えだった。
「私も出来うるツテを全て使ってでも彼を助ける方法を探してみる。何、絶対助けてやる!」
だが、石神静乃のこの言葉により少し光明が晴れたのだ。