思いつき倉庫   作:羽撃鬼

3 / 15
連続投稿です。


EP2 調査報告

メガロメセンブリア魔法協会麻帆良支部

 

 

本来ならば麻帆良学園と呼ばれる都市にある。学園が並ぶはずの場所には軍の施設らしきものがある。その中の一室では、

 

 

『どういうことかね?近衛支部長?何故、壁の向こうに魔法使いを派遣したのに何の報告も無いなんて。』

 

 

魔法世界のメガロメセンブリア元老院から報告を求める声が来ていた。しかし、

 

 

「第一次派遣組も、第二次派遣組も出発してから何の連絡も来ていないのです。」

 

『じゃがな、本国も何か進展が欲しいと他の元老院の者達も言うておる。』

 

 

そこに一人の男が駆け込んできた。

 

 

「支部長!」

 

「何じゃ!今は取り込み中じゃ!」

 

「大変です!派遣した魔法使いから音声メッセージが!」

 

『何じゃと!そこの者。早く再生せよ。』

 

「はっ!了解です!」

 

 

男は何か操作し、準備した。

 

 

「では、再生します!」

 

 

ジジジ

 

 

「『壁外調査一日目 壁の外は雄大な自然が広がり、人が生活していた痕跡がほとんど無くなっていた。建物の跡から見るにまるで、1000年放置しているかのような崩れ方だった。』」

 

「『壁外調査二日目 昨日記録しなかったが川の水は澄んでいた。夜、高台より確認した所、遥か遠くに灯りが見えた。人間若しくは知的生物が居るところだろうと思い、これを確認に向かうことにする。』」

 

 

「ふむ。人の暮らす痕跡を見つけたのか。素晴らしい戦果だ。」

 

 

「『壁外調査三日目 何か音が聞こえ、その方向へ向かってみると鹿のような機械が動物の死体を貪っていた。その後、我々は音を発ててしまったが、機械は一目散に逃げていった。』」

 

「『壁外調査四日目 今日は二足歩行している頭部に大きな目のようなレンズを付けている機械を見つけた。この前、機械が逃げていったため、調査員の一人が隠れていた茂みから音を発てた。用心して姿は見せなかったが。すると、その機械は音の原因を探るようにこちらに向かってきた。我々は息を潜めた。機械は何も無かったようにもとの場所へ歩いていった。その後観察を続けると、あの機械の動きには一定の法則があることがわかった。』」

 

 

そしてここから悲劇が始まった。

 

 

「『壁外調査五日目 一人が死んだ。調査員の一人があのデカ目のヤツに見つかった。するとヤツは他の機械を呼び寄せ、襲ってきやがった。見つかった調査員は責任を感じたのか囮に成って機械共に殺された。』」

 

「『壁外調査六日目 俺だけ生き残った。機械共の強襲だ。俺は昨日の機械共がいた方向がよく見える高台でヤツらの見張りをしていた。他の調査員の声が聞こえたため、下るともうそこには機械の群れがいた。俺は咄嗟に隠れて確認すると、仲間は全滅していた。俺は恐くなり音を発てずに逃げた。』」

 

 

これはどういう事だろうか。派遣した魔法使いは皆高位の実力者だったはずだ。それが一方的に殺られるだと!

 

 

「『壁外調査七日目 現地住民に会った。俺が機械に襲われもう駄目かと思ったとき彼女は現れた。彼女は原始的な槍と弓で機械共を倒したのだ。その後、彼女が教えてくれたのだが俺達が襲われる原因は魔法発動媒体にあったらしい。これらから変な信号が出ていてこれがレーダー持ち機械に気付かれたらしいのだ。』」

 

「『壁外調査八日目 彼女は親切にも機械のことを教えてくれた。あのデカ目が【ウォッチャー】で、鹿のようなヤツが【グレイザー】、レーダー持ちのヤツが【スクラッパー】というらしい。彼女は機械を狩り生活しているようだ。機械は野生生物の様なものだと教えてくれた。物騒だな。後、機械から採れるシャードというのがこちらのお金に当たるようだ。』」

 

 

『機械か。少しはわかったが何故他のものが全滅したのかわからんな。』

 

 

「『壁外調査九日目 高台より壁の方より複数の集団が現れたのが見えた。もしや救助か?と思い、向かうことにする。彼女も着いてきてくれると言っているので安心だ。しかし、女性が助けてくれるから安心だと言うのはカッコ悪いな。』」

 

「『壁外調査十日目 駄目だ。彼らも全滅した。一人が大声を出したことにより機械に見つかったのだ。機械に見つかることを恐れ発動媒体を捨てた俺には向かうことも出来なかった。たぶん、発動媒体が有っても役に立たなかったと思う。ヤツらは魔法が通じていなかったからだ。すると、一人身なりがいい者がこれまで彼女が避けた方角に向けて走っていった。これは助けられるのではないかと思い彼女に尋ねると、あそこには一流の狩人が命を落とすことがある狂暴な【ソウトゥース】という機械の生息地らしいのだ。彼女は装備が潤っていれば狩れるらしいのだが、最近【ソウトゥース】を三匹同時に相手したらしいので無理だそうだ。くっ、すまない。』」

 

 

これで事実上第二次派遣組も全滅したという事がわかったのだ。しかも、魔法が通じないという事実!

 

 

「こいつはこれからどうするのだ?」

 

「まだ続きがあるようです!」

 

 

 

「『壁外調査十一日目 彼女が作ってくれた槍や弓でイノシシや七面鳥などの野性動物を狩った。その後、料理して出すと高評価だった。趣味が料理でよかった。改めて彼女を見ると素晴らしい女性だと思った。彼女は(長くなるので割愛・・・、だから素晴らしい!これが口に出ていたらしく、顔を真っ赤にしていた。俺もだが。彼女を顔を見て愛しく感じその事を正直に話した。彼女も俺の事を気に入っていたようだ。その日、俺達の影は一つになった。』」

 

「『壁外調査十二日目に成るのだろうか。だが、俺は壁内に帰還する気も無かった。俺はこれから彼女と共に行きようと思う。音声で悪いが魔法使いは廃業だ。いずれ彼女を守りきれるような男になってやる!』」

 

 

ブツッ ザザザ

 

 

「ここまでのようです。」

 

「何と言えばいいかのう?」

 

『そうだな。個人的にはは素晴らしく応援したいが、上司的に見ると…うむむ。』

 

「彼は好青年だったが自分を抑え込んでいるところがあったから、個人的には良かったが…はぁ。」

 

『本国には全滅したと通知しておこう。』

 

「助かります。それと。」

 

『うむ。次壁外に派遣するためには魔法より物理的攻撃が得意なものが必要だな。そちらも候補を探して見てくれ。』

 

「はっ!了解です。」

 

『それと、来月にはイギリス支部より見習いの英雄の子供をそちらに派遣する。教育を頼むぞ!』

 

「かしこまりました。」

 

 

そして通信が切れた。この支部の支部長は長い顎髭を触りながら、

 

 

千の呪文の男(サウザンドマスター)の息子か。英雄本人が行方不明になった今、新しい風を起こしてくれるのだろうか?」

 

 

と、かの少年に期待を寄せていたのだ。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。