思いつき倉庫   作:羽撃鬼

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連続投稿です。


EP1 機械の洗礼

天に届きそうな巨大な壁の前で数人の者達がいた。

 

 

「諸君!君達は優れた魔法使い達だ!そんな君達に頼みたいことがあるのだ!それは、この壁の向こうの調査だ。先日、調査に出ていった者達が帰らない。出来るならば彼等と合流し情報を共有せよ!西日本は今やあの化け物共の巣窟に成っている。我々はこれを奪還するために情報を欲しいのだ!」

 

 

隊長らしき人物は体を大きく動かし強く伝えた。彼の言葉に一人の隊員らしき人物が、

 

 

「あの我々だけで討ち果たしてはいけないのでしょうか?」

 

「「「そうだ。そうだ。」」」

 

 

話した疑問に他の隊員が賛同する。

 

 

「む。それもそうか。では、そうしよう。」

 

 

隊員は彼等の言葉に頷いた。

それを見ていた隊長の上官が、

 

 

「君達。いくら君達が奴等を軽く殲滅出来るのだろうが、確実性を増やすために今回は情報をしっかりと入手して欲しいのだ。わかったね?」

 

 

自分達よりも上の人物に言われてしまったのならしょうがない。故に彼等は、

 

 

「「「了解しました。」」」

 

「よろしい。」

 

 

了承した。

彼等は準備を整え、壁の外側に降り立った。

 

そこには雄大な自然が広がり、数年前には人の文化圏があった痕跡がほぼないほど、素晴らしい景色が広がっていたのだ。

 

彼等はこの光景に見とれた。一部は写真に修めていた。

そうして彼等は探索を始めた。ふと、歩いていると一人が何かの音が聞いた。

 

 

「どうした?」

 

「何か物音がしたので。」

 

「えっ?何処?」

 

「あっちです。」

 

 

物音を聞いた隊員は音の方を指差した。

彼等はその方向に向かっていった。そこには、動物のようなシルエットが見えた。しっかりと見てみると、大きな目のようなレンズを持ち二足歩行している機械がいたのだ。

 

 

「何だ?アレは?」

 

「機械?」

 

 

ふと、隊員の一人が大きな目のようなものを持った機械の側に何かを食べているような動きをする機械を見つけた。

それをしっかり見てみると一瞬にして顔を青ざめた。それを見た仲間が、

 

 

「おい!どうした?」

 

 

青ざめた隊員は原因の方を指差し、

 

 

「あの機械が貪っているのは人間だ!」

 

 

他の隊員達は弾けるようにそこを見た。そこには、ローブを着ている明らかに魔法使い然とした人物の死体が、

 

 

「あのやろう!」

 

 

一人が大声を上げて死体に向かって走り出した。

大きな目のようなものを持った機械が大声を上げた隊員に気付いたようだ。すると機械は、

 

 

『ギィッ、ギギギーーーっ!』

 

 

と警戒音を発した。大きな目のようなものを持った機械は隊員を視認すると今まで青く光っていたレンズを赤く光らせ、向かってきた。

そして、死体を貪っていた機械も、たぶん近くにいたのだろう数体の機械が先程の機械の警戒音を聞いて集まってきた。

 

 

「食らえ!魔法の矢!」

 

 

一人が機械に向けて魔法を放った。しかし、機械にあたる直前、かき消えたのだ。

 

 

「なっ!くそォ。総員!撤退!撤退!」

 

 

隊長は逃げながら号令を発した。だが、機械の攻撃により負傷し動けなくなった隊員に機械達が殺到する。

 

隊長は何人かの隊員と共に逃げて逃げて遂には一人になった。

 

 

「何だ!何が起こったのだ!俺達は化け物共を倒すために調査に来たのだ。だが、あんなのは聞いていない!」

 

 

ドシンドシン

 

 

と、足音が聞こえる。

 

 

「あ、あ、もう駄目だ。」

 

 

彼の脳裏には走馬灯が浮かんでいた。

 

 

『グルルルゥ!』

 

 

ザシュッ グチャ

 

 

隊長はこの地でその生涯を終えたのだ。

 

 

 

西日本の何処かの一室

 

 

モニターでその様子を確認している者がいた。彼は見終わって、

 

 

「ハッハッハ、マジか。あの魔法使い達、【ウォッチャー】と【スクラッパー】相手に全滅かよ。まぁ隊長らしきやつは【ソウトゥース】の生息域に入らなければ生き残れたのにな!いや、数が足りねぇ。その内くたばるか。」

 

 

彼が大声を上げて笑っていると一人の男の子が部屋に入ってきた。

 

 

「どうしたん?兄ちゃん。」

 

「いやな、魔法使いの糞共が攻めてきたみたいでな。」

 

「た、大変やん。だいじょうぶなんか?」

 

「ああ。壁近くで機械獣に殺られてほとんど全滅したんだよ。しかも、一人は逃げた結果、【ソウトゥース】の生息域に入って死んだ。」

 

「そうなんか。そうだ!兄ちゃん!」

 

 

男の子は彼の説明を受け納得し、別の要件を思い出した。

 

 

「兄ちゃん。俺のフォーカス出来たんか?」

 

 

彼はその言葉にモニター前の机から小さい三角形の物を取り出し、男の子に渡した。

 

 

「ほら、お前用にカスタムしといたやつだ。」

 

 

フォーカスを嬉々としながら受け取った男の子はそれを自分の右の耳近くに当てた。するとフォーカスは独りでに耳の近くに張り付いた。

フォーカスは電子音を響かせ、男の子の視界に文字を浮かび上がらせた。

そして、男の子は彼の机を見た。フォーカスは解析音を発し解析終了後、

 

 

【アマゾンズドライバーγ(ガンマ)

 

 

という文字を浮かべたのだ。


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