目的地である図書館で、かばんは自分が人であると知った。
そして次の目的は。
「人の住む場所を探したいんです」
『了解』
LBはこの図書館での一件でかばんが、職員の遺物から生まれたヒトのフレンズである事に気づく。
しかしながら、ヒトのフレンズともなれば研究対象として最悪の場合拘束されかねない。
かばんにとって現在のパークに人が居ない事はある意味幸運だったのかもしれない、しかし不幸でもあるのかもしれない。
LBはそれを決めるのは自分ではないと分かっていながらも、思考を続けた。
そして一つだけ分かった事、それはかばんがフレンズ達を助けて来た事、職員がすべき事を満たして来た事。
『かばん、提案があります、あなたを暫定パイロットに任命すれば、より多くの情報を開示できます、しかしながら同時に幾つかの責務があなたに与えられます』
故にLBはかばんに選択肢を与える事にした。
・タイタンとリンクする事
・セルリアンと戦う事
・フレンズを助ける事
これから先の旅路でこの三つを優先する事を条件に、かばんに内部データベースの閲覧を許可する事にした。
「大丈夫ですよラッキーさん、今までもやってきた事です……そこにセルリアンと戦う事が加わるだけなら……やっぱり怖いですけど……大丈夫です」
「じゃあ私がかばんちゃんを守るよ!」
『了解、かばんを暫定パイロットに認定、権限を付与します』
するとLBは膝をつき、胸のハッチを開いた。
「ええー!?ボスが開いたー!?」
『かばん、ジャンプキットを装備してください』
パークガイドの装備であるジャンプキット、それは猫化のフレンズ達にも劣らない程の機動力を人に与える道具だ。
具体的には空中でのジャンプや壁を走ったりできる。
「すっごーい!かばんちゃん!かけっこしようよ!」
「えっあわわわわわっ!」
新しい道具に困惑しながらもしっかりと『説明も無しに』それを使いこなすかばん、それを見てLBは改めてかばんがフレンズだと確認する。
――もしも彼女が生まれたのが戦いの時代であったら、彼女はどうしようもなく不幸な存在だっただろう
だがこの世の奇跡を凝縮し、友(フレンズ)に恵まれた彼女はどうしようもなく
『最良』のパーク職員になれるだろう。
もしかしたら、彼女はあなたを越えていくかも知れません。
LBは、かつてのパートナーを想いながら、草原を駆ける二人を見つめた。
そして目的地は新たに旅路は続く、草原から水辺へと向かえばPPPのライブ、なかなか勇気をもって踏み出せないプリンセスの背中を押したり、会場設営を手伝ったり、ライブを見たり。
他にも色んなフレンズ達と出会い、かばんとサーバルは成長していく。
LBはそれを『うれしく』思いながら、今は雪山を行く。
『たまには程々に休むことを提案、かまくらを作ってみるのはどうでしょう』
「ボス、かまくらってなに?」
『わかりません、ガイドブックに書いてあったモノを丸々読んだだけです』
「いっつも真面目なボスもたまには面白い事いうんだね!」
『皮肉を検知』
「えっと…多分雪の塊を掘って作るんだと思います」
「かばんちゃんはやっぱすごいや!」
途中、バスのタイヤからクローラーに換装しつつ、温泉を目指す、しかし山の天気は変わりやすく当たりは猛吹雪となった。
「こんなに…寒いなんて……」
サバンナ出身であるサーバルは寒さに弱くかばんも大分平然としているが、やはり薄着であり、このままでは危険だと判断。
『プロトコル3、パイロットの保護……暖房を起動します』
LBは自身のコックピットに二人を載せる事で何とか吹雪をやりすごした。
「でっかいのがいるぅ!?」
「ボク知ってる!ゲームで空から降ってくる奴!」
そして山頂、温泉で出会ったのはキタキツネとギンギツネ。
かばん達が温泉で休んでいる間に発電所でバッテリーを回復させるLB。
だが、多数のセルリアンの反応を検知、かばん達と合流を優先し非常用バッテリーの充電を確認すると直ぐ様動き出した。
「ボクもうゲーム出来ないのか……がっくり……」
雪崩の様なセルリアンの群れ、かばんは咄嗟に桶をソリにして場を切り抜けるが段々と山の斜面がなだらかになっていく、このままではセルリアン達に追い付かれてしまう。
だがその時、オレンジの光がセルリアンを焼いた。
それはLBの背中のレーザーキャノンから放たれたモノだった。
『パイロットかばん、乗ってください、あなたの仕事です』
「わかりました!ラッキーさん!…行ってくるよサーバルちゃん……!」
「気をつけてね、かばんちゃん!」
ソリからジャンプキットで飛び出し、走るLBへと跳躍するかばん。
そしてかばんをキャッチするLB。
『戦闘モード、権限をパイロットに付与します』