イロジカル・ゲーム-The girl of match merchant-   作:職員M

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362日ぶりの更新です。お待ちでした方々、言い訳は致しません。本当に長い間お待たせしまして申し訳ありませんでした。


第二十四話 勇気

 一マッチ商人から商団のリーダーへと変貌を遂げた女商人リンゴの最初かつ統括の仕事は、同盟を組んだメンバー全員のリサーチとアドバイスだった。

 

「これで全部か?」

 

 エミルから全ての同盟メンバーの情報が書かれた紙束を受け取ったリンゴは、早速全ての資産と負債の計上を始める。

 

 全メンバー61店。その過半数は赤字店舗でダンスケ銀行を始めとする各種金融機関への支払いに追われていた。健全なる経営を続けられている店舗は2割にも満たない。残りは収支計算がどっこいどっこいの状態だった。

 

「まずは赤へのテコ入れだな」

 

「ですです!」

 

 いくつかのやるべきことを素早く紙の切れ端に書き込んだリンゴは、ハルを連れ昼も過ぎてしばらく経つデンマークコペンハーゲンの広場へと繰り出した。

 

 

 

――――――――――

 

「よ、カール。今は厳しいだろうなァ」

 

「お客さんかと思ったらトップじゃないすか。どうしたんですか俺なんかの店に」

 

「視察さ。この時期魚はあんまり売れないだろ」

 

「全く完全に赤字ですよ。今年は不漁なのかねぇ。ニシンやサーモンだけは売れてるんですが貝類がてんでダメで」

 

「燻製にして保存力は高めた?」

 

「それが燻製器が無いんですよ。他の店だと常備されてて当たり前なんですがウチにはそれを買う余裕も……」

 

「なるほど、燻製食品の不足は経営に影響与えてそうだ。何とか見繕おう。今晩、日付が変わる頃に今日の売上報告に来てくれ」

 

「了解です。あんまり期待しないでくださいよ」

 

 

 

 続けてリンゴ達が向かった先は黒字経営真っ只中の配達屋だった。

 

「うーっすモーテン運送。儲かってる?」

 

「……ぼちぼちだな」

 

 寡黙な髭面のモーテンは資金力の余裕からか不敵な笑みを浮かべる。たまたま仕事が入っておらず店舗にいる状態であったのは幸いであった。

 

「公私組織関係なく一律料金で運ぶ。良いやり方だと思うぜ?」

 

「そいつはどうも。余裕"だけ"ならあるんだが」

 

「ならば独立は?」

 

 素早くリンゴが問う視線を寄越すと、店主モーテンはその視線を受け止める。

 

「情報とネットワークだ。できる限り大きな組織に身を置いた方が繋がりは広がりやすいだろ」

 

「だけど今の組織体系では自分の力を発揮しきれない、と?」

 

 

 

 

 次にそう問うたリンゴに、モーテンは驚きの表情を浮かべる。

 

「驚いた。最近よく思ってることを言い当てられるとはな」

 

「表情と現況見たらそりゃそう考えるだろうよ。ならばもう少し合体してみる気はないか? せっかくの"同盟"だ」

 

 悪そうな笑みをするリンゴ。

 

「……なにか考えでも?」

 

「そんなところかな。助成金を出し合う関係よりも有益になるかもしれないよ? あ、今晩日付跨ぐ頃に相談することがあるから昨日集合した本部っぽいところに顔出してね。ここの店舗がモーテンの家っぽいし」

 

「良いアイデアを期待しているよ」

 

「請合おう!」

 

 

 

 

「……リンゴさん、今何を?」

 

 モーテンの運送屋を後にしたところで、ハルは初めて口を開いた。

 

「そうだなー。まずは売上高最下位と最高位の二つを見比べてみたかっただけだ。業務携帯、業界、経営方針にどんな違いがあるのかって」

 

「何か得られました?」

 

「いいや、特に変わりはない。デンマーク自体別に不況なわけじゃないしなァ。基本的にどの業界も平均して売れてるところは売れてる」

 

「じゃあ、一体どこにそんな差が?」

 

「島国のデンマークじゃ魚はどこでも獲れるから単純にレッドオーシャン※なんだよ。店の数だけ需要は分散しちまう。差別化ができなけりゃそりゃジリ貧だろうさ」

 

 しかも今は不漁の兆候あり、ときた。

 

「工夫こそが身を助ける、ですか?」

 

「その通り」

 

「だから燻製を?」

 

 確認するようなハルの視線に、リンゴは即答する。

 

「いや違う」

 

「えっ?」

 

「そこで運送屋のモーテンだ。彼には実質的に稼いでもらおうと思ってる」

 

 

 

「まさか……協同?」

 

「正 解」

 

 にやりと笑うと、ハルの頭をくしゃくしゃと撫でる。

 

「やるようになったなぁ」

 

「い、いえいえ……」

 

「またマッチ売ってみるかァ? 今のハルならもう普通に商人としてやっていけそうだ」

 

「そうですか?」

 

「立派な商人になってから、ご両親迎えに行ってやんな」

 

 そう言うといきなりフードを脱ぎ、久々に頭部を露出させたかと思うと、リンゴはハルをグッと抱き寄せる。

 

「……やってやろうぜ」

 

 

 

 

――――――――――

 

 魚屋のカールと運送屋のモーテンが同時刻に訪れたエミルの屋敷には、いつの間に人払いをしたのかリンゴだけが佇んでいた。昨日の集会の熱狂が嘘のように静まり返り、蝋燭が照らし出すリンゴはまるでこの部屋の主のように思わせた。

 

「二人とも、座ってくれ」

 

 その時が初対面だったのか、お互いの顔をまじまじと見つめ合いながら二人は案内されたソファに座る。

 

「カール、悪いが燻製器は簡単には手に入らない。自力で準備してくれ」

 

「……ま、そんなこったろうと思ってたよ。別に気にしなくていい」

 

「こいつと組んで、な?」

 

 リンゴはモーテンの肩を叩きながら、カールに笑いかけた。

 

「どういうことだ?」

 

「運送屋のモーテンと協働してもらう。今まで話したことは?」

 

「いや、無いが……。そもそもうちらの稼ぎ頭と絡む機会なんざ―――「だからこそだよ」

 

 被せたリンゴの言葉に、カールは訝しげな表情を浮かべる。言っている意味が分からないといった表情に、面白げな表情で商人はレスポンスを返した。

 

「今まで鮮魚を買っていった客はいたか?」

 

「いや……。冬支度に備えた客が塩漬けやら乾物を買っていくことが多くて鮮魚はあまり売れ行きが良くなかったな」

 

「でもカールは鮮魚も置いていた。それは何故だ?」

 

「そいつぁ、漁村のみんなが買っていってくれる訳でさ。魚はやっぱり獲れたてに限るって。俺もそう言われちゃ期待に応えたいんですよ」

 

「だったらそれを広い市場で商売できりゃあ一件落着なんだよなァ?」

 

「そんなことが……?」

 

 その問いにはリンゴではなく、それまで黙っていたモーテンが答えた。

 

「なるほど、その為の俺か」

 

「正 解」

 

 ニヤリと笑うリンゴに、カールはポカンと口を開く。

 

「カール。俺はあんたが見つけた客の所に鮮魚を運ぶ。逆に俺はあんたに鮮魚が好きそうな客を紹介する。……だろ?」

 

「私はあんたみたいな頭の回転が早い人間が好きだ。鼎商同盟を除いてな!」

 

「待ってくれ。……それじゃ、あんたが俺の客を増やしてくれるってのか?」

 

「それだけじゃない。モーテンはそれで新しい客を開拓できる」

 

「「は?」」

 

 リンゴの言葉に、二人は同時に言葉を発した。

 

「お、モーテンは気づいてると思ったが……。モーテンさ、そのままただカールの魚を配達するつもりだった?」

 

「いや……。そのついでに頼まれていた品がありゃ届けるつもりではあったがな」

 

「その時に営業かけなきゃ。自分がどれだけ早く配達できるか。そして目の前の客が"今"何を欲してるか」

 

「それは見ていなかった」

 

「そこができりゃモーテンは本格的に自立を考えてみても良いかもな。……面白いぜ? 自分の業が他に何に化けるのかを考えるのはな」

 

「…………ほう」

 

 たっぷり数秒間かけてモーテンは答えた。その目は新たな発想を思い浮かべる。何故自分がこれまでエミルの一団から抜け出せなかったのか、ただ速いだけを取り柄としていなかったか。そんな思いが彼の脳裏を過ぎる。

 

「これは双方にとってウィンウィンな関係だ。……そして私はこの関係をこのリンゴ商団全体に広めたいと思っている。これはその第一段階だからあんた達には成功してもらわなきゃ困るぜ?」

 

「……俺に任せときな」

 

「頑張ります!」

 

 二人は握手を交わし、毎日終業後にリンゴの元へ報告に来ることを約束したのだった。

 

 

 

※レッドオーシャン:競争が激しい既存市場を指す。その逆がブルーオーシャン(戦略)。読者の皆様方、起業を狙うならブルーオーシャンですよ!

――――――――――

 

「昨日はどんなお話をしていたんですか?」

 

 翌朝開口一番にハルは問うてくる。リンゴはまだ眠気覚めやらぬ様子でハルに答えた。

 

「ハルの想定通りだよぉ。最近じゃ私の思考を読めるだろ?」

 

「そんなことはぁぁ……」

 

「謙遜する必要はないさ。それに私が言ってんだから間違いないって」

 

 どこか嬉しそうにリンゴは言う。

 

「でしたら……そうなのでしょうね。運送屋さんが塩漬けにしたニシンでも運ぶのですか?」

 

 同じく嬉しそうに顔を赤らめながら俯いたハルに、今度こそリンゴは目を丸めた。思わず眠気も覚めたという風に、ハルを見つめる表情を鋭くする。

 

「正解ではないが遠くはない。……ほんと成長したよ。一番初めに見た時と同じ影とは思えない」

 

「あの時は死にたくない思いだけでいっぱいでしたから……。その、お恥ずかしい」

 

「気持ちは分かるぜ。私だって泣きながら雪舐めてた姿なんか誰にも見せたくない」

 

 恥ずかしがるハルに過去の自分を重ねながら、リンゴはどこか遠くを見つめるように答えた。

 

「今のハルを見てると、自分もそれなりに成長してきたのかなって思うよ」

 

「私には未だにリンゴさんの過去話が信じられないんですけど……」

 

「いやいやマジなんだって! それメアリちゃんにも言われたぞ!?」

 

「……え? それ……いつ! いつ!! 言われたんですか!?」

 

 目を見開きいきなり迫ってくるハルに、恐れおののきつつ、リンゴは船内でのやり取りを語った。

 

 

 

 

「メアリさんとお風呂を!?!?」

 

「いやいやでもハルを理由に断られたんだからさ、セーフだろ?」

 

 大声を出すハルに目を白黒させ、喋りすぎた、と自省しつつ咄嗟に思い出したメアリ撃退法を伝える。

 

「……あの泥棒猫」

 

「えっ?」

 

 能面のような無表情で自身に向き合うハルに、尋常ならざる何かを感じ取ったリンゴは思わず敬語になる。

 

「あの、ハルさん? もしかして怒ってますか?」

 

「ふふふ……怒るわけないじゃないですか」

 

「そうか良かっ――」

 

「この世界のどんな財宝だろうがニュボーの罪人だろうが好きのものを掻っ攫っても良いですけど私のリンゴさんだけは何が何でも許しませんしやるなら私ごと奪うか逆に私にリンゴさんごと奪われて欲しいですねお船で逃げられる範囲は海だけですけど私はデンマーク超えてでも追いかけていk」

 

「ちょちょちょ待ってストップストップ!!」

 

 あまりのハルの剣幕に恐れをなしたリンゴは、ここで本格的にハルを懐柔する作戦に切り替えた。

 

「落ち着いてるのは分かったからとりあえずメアリちゃん許してやってくれ! あいつだって特に他意は無かったみたいだ。珍客をもてなす儀礼だったみたいだぞ? それに今の私にとってメアリちゃんは割と切り札みたいなもんだからもしも万が一のことがあってやられちゃったら色々支障がだな……」

 

「ほんとですか?」

 

 元の表情に戻しつつ問うハルに、平静を装いつつリンゴは答える。

 

「もちろん」

 

「リンゴさんの切り札という部分は」

 

「……そうだけど?」

 

「では"今は"味方として捉えておきます。ジョーカー(切り札)でなくなった場合は私が好きなようにするということで」

 

「お前さ……。最近私の悪い部分引き継ぎすぎてねぇか?」

 

「何のことか分かりません!」

 

 ふと鋭い眼光が消えぷいっとそっぽを向くハルにリンゴは軽く安堵を覚える。

 

「おめぇは商人に向いてる」

 

「そうでしょうか?」

 

「私の言葉尻を捉えて突き詰める。交渉術の基本だ。……仮にそれが自分の欲望故だとしてもな」

 

「リンゴさんには何もかも全て見通されているようです」

 

「それはいくらなんでも買い被り過ぎだが、ハルのことは理解したいと思っている」

 

「そう言えば……。元は何のお話でしたっけ?」

 

「そうだった! ……モーテン運送にカールの魚を運ばせることにした。鮮魚をな」

 

 きょとんとするハルにたっぷりと含みを持たせてから、調子を取り戻したリンゴは答える。

 

「なっ……! カールさんの販売品ではないのですか?」

 

「それだと今の値付けとそう変わらないだろ? モーテンの手数料を加えたとしてもだ。……ならばカールが仕入れているブツをそのまま市場に流せりゃ良い。漁村以外じゃまずお目にかかれない鮮魚をなァ!!」

 

 それを聞いたハルはその場で突っ伏した。

 

「私には思いも付きません!」

 

「ギリギリ面子は保てたかな?」

 

「どうやって……それを?」

 

「カールの持ち味とモーテンの持ち味、その両方を活かした結果だ。私が元々持ってたものじゃない」

 

「それでもエミルさん達ではそれを引き出せませんでした」

 

 エミルを引き合いに出してまでももリンゴを持ち上げようとするハルに、リンゴはこれまで自身が見、感じたたままのことを話す。

 

「エミルは商人それぞれの屋号を大切にしていたらしいからな。全体会議があったとしても商売同士をくっつけようだなんて思わなかったんじゃないか?」

 

「自分の持ち味が消える……からですか?」

 

「一側面から見たらその通り。でも実際はそうでもないんだよな。協業はお互いの持ち味が100%以上活きる結果になる。それは私がこれまで証明してきたはずだが?」

 

 ハンスと手を組む。行商人と手を組む。露天商と、ゲオルグと手を組み、仕舞いには公的機関や海賊とも手を組んできたリンゴには確実な手応えがあった。それは確かに一人で作られた成果ではなかっただろう。自分の持ち味を消した部分もあっただろう。だが。

それ以上に――――得られた大きな成果もあったであろう。

 それを心底信じられるからこそ。彼女は言葉を紡ぐ。

 

「だからこそ今回も手を組む。……全員勝つ為にはそれしかないんだ!」

 

 確信に満ち足りた様子で商人(リンゴ)は言い切った。

 

 

 

 

――――――――――

 

「で、初動はどうだった?」

 

「得意先で宣伝したらたちまち予約で一杯になった」

 

 誇らしげに語るモーテンの横で、カールは興奮覚めやらぬ様子で口から泡を飛ばす。

 

「この商売始めてこんなに売れ行きが良かった試しはない! モーテンの宣伝のおかげか!? これまで捨てちまってた魚ですら売り切れになっちまうほどだ!!」

 

「それはさっき何回も聞いたぞ」

 

「あんたには感謝してもしきれないんだよ! よくぞここまで……!」

 

「俺だって稼がせてもらったんだ。鮮魚を届けられるくらいの速さなら今度からあんたを使うってな」

 

 それは新規顧客が開拓できた嬉しさ。得意先ばかりを巡っていては得られない喜びである。

 

「なんだ心配するまでもなかったみたいだな」

 

「トップ……いや団長! 本当にありがとうございます!!」

 

 深々と頭を下げるカールに、照れ隠しを交えながらリンゴは手を振った。

 

「勘違いするな。私は今回の選挙で"あいつら"をぶっ潰したいだけだ」

 

「鼎商同盟は資本力の強さでスケールメリット※を武器にしてくる組織。つまり低価格競争に持ち込まれたら簡単には倒せない相手だ。人気投票の選挙戦じゃ不利になるんじゃないか?」

 

 改めてリンゴをトップと認識したモーテンは、今自身が危惧するネックを突き詰める。それは商人にとって外せない要素であり、選挙というシステム上致命傷にもなり得た。

 

「私は、価格に唯一対抗できるのは人柄だと思っている。"その人"だからこそ買うんだよ。」

 

「「……。」」

 

「別に大したことじゃない。どんな時に行っても元気な挨拶を返してくれたり、多めに買ってくれた人にちょっとしたおまけをしてくれたり、店が暇だからって荷物持ちの手伝いをしてくれたり。そういう思いやりが身を助けることがあったっていいはずだと思うんだわ、私は」

 

「サービスだけで勝てるでしょうか? あいつらは思いもよらぬ手を……」

 

「それなら今私たちがやってることこそあいつらが思いもよらないんじゃないかァ?」

 

 たっぷりと下卑た笑みを浮かべるリンゴに、カールもモーテンも背筋が凍る。

 

「吸収に能はあっても協業には能がない。それがどれだけ不協和をもたらすか、あいつら自身が身を持って知る事になるだろうさ」

 

「勝てる……」

 

「えっ?」

 

 ぽつりと呟いたモーテンの言葉に、カールはリンゴからモーテンへと素早く目線を移す。

 

「この勝負、リンゴ商団に賭けた俺たちが勝つぞ」

 

 それに当てられたように、カールもまた更にテンションを上げるのだ。

 

「よっしゃいっちょやってやろうじゃねぇか!!!!」

 

 二人の商人に、改めてリンゴは握手を交わしたのだった。

 

※スケールメリット:規模の経済性とも言います。生産量が拡大した場合に単価が安くなることを意味します。例えば1個あたり固定費が20円で変動費が10円合計原価30円のパンがあったとします。これを定価100円で売れば70円の儲け。それを一気に10個生産すればあら不思議!固定費は10分の1の2円に抑えられて原価は12円になり利益は88円つまり25%アップ! 作れば作るほど単価は抑えられて利益は上がるのです。なお在庫リスクを抱える可能性がありますので皆様同人誌を刷る際はスケールメリットに囚われることのなきよう!

 

 

 

――――――――――

 

 

「総長! コペンハーゲンの民間金融系をほぼ制圧しました!」

 

 突如として入ってきた朗報に、レーネは思わず歓声を上げる。

 

「まさか本当に落ちてくれるとは! 私たちの活動範囲が知れ渡った証かもしれませんね。……主導した主力部には後ほど褒賞を」

 

「かしこまりました!!」

 

 頭を下げて出て行く側近を満足げに眺めながら、レーネは次の策を練る。

 

「……これで主戦線は包囲したも同然。あとは醜い足掻きを高みから見下ろすだけで済みそうね。……()()()()()()()()()()()()()

 

 レーネが唯一懸念していた存在さえ消せば、あとはデンマークは自分のものだ。

 

「いい場所になったわね、リンゴちゃん」

 

 ここはコペンハーゲンの港町ニューハウンの一角にある拠点。黒髪を揺らしながら金色の瞳であのリンゴの姿を思い浮かべる。自分と瓜二つの見た目をしながら髪と瞳の色は真逆。それはそのまま性格の対極にも現れているようだった。

 

「もし貴女が私に勝ったら……いいものをあげる」




読んでいただいてありがとうございます!
スケールメリットの解説二回目だったかもしれないと思いつつ、次なる彼女らの展開に私自身が一番楽しみにしております!
リアルイベントが色々と重なりようやく書けたので一安心ですが、これからはしっかりと終盤に向けて書いていきたいと思いますので、これを機に読み返していただけたら何よりも嬉しいです。本当にお待たせいたしました!!

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